【新製品レビュー】パナソニックLUMIX DMC-FZ38

〜AVCHD Lite対応など多機能な高倍率ズームモデル
Reported by 小山安博

 パナソニックから、高倍率ズーム搭載のコンパクトデジタルカメラ「LUMIX DMC-FZ38」が登場した。昨年8月に発売された「LUMIX DMC-FZ28」以来1年ぶりの登場となる高倍率ズーム機で、従来通り光学18倍ズームレンズを搭載。幅広いシーンに対応できる高機能カメラに仕上がっている。

 撮像素子は1/2.33型有効1,210万画素CCD。発売は8月21日。価格はオープンプライス。実勢価格は5万5,000円前後の見込み。



超望遠撮影がコンパクトなボディで楽しめる

 FZシリーズは、従来から一眼レフカメラライクなスタイルにこだわった製品で、レンズ一体型のいわゆる高倍率ズーム機のジャンルに属する。「コンパクトデジカメ」とは呼びづらい大きさだが、しっかりとしたグリップを持っており、レンズの下に手を添えて撮影する分には構えやすい。

 ボディが大型なのは光学18倍の高倍率ズームレンズを搭載しているから。レンズはライカDC VARIO-ELMARITで、焦点距離は27〜486mm(35mm判換算)、F値はF2.8〜F4.4だ。光学手ブレ補正も内蔵し、レンズスペック自体は前モデルのDMC-FZ28と同等となる。

 ワイド端は27mmという広角で、テレ端は486mmまでズーミングできるのが最大の特徴。コンパクトデジカメとしては大きいとはいえ、18倍ズームレンズを搭載しながら、本体サイズは約117.6×75.8×88.9mm(幅×奥行き×高さ)というのは非常にコンパクト。デジタル一眼のサブカメラとして、望遠側を任せるといった使い方もできるだろう。

ワイド端こちらはテレ端。レンズはあまりせり出さない
花形フードが付属。フードの装着にはレンズアダプターが必要で、そのアダプターにテレコンなどを装着する。NDフィルターやMCプロテクターは鏡筒に直接装着可能だコンバージョンレンズ装着時にはメニュー画面から設定を行っておく

 レンズのズーミングも速く、強くズームレバーを操作すると27mmから486mmまで高速にズームでき、軽くレバーを押すとゆっくりとズームするので、細かい操作も快適に行なえる。

 広角から超望遠までこれ1台で対応できる利便性は、ほかのジャンルのカメラにはないものだ。子どもの運動会などのイベント、旅行など、こうした望遠ズームが必要になる場面は結構あるが、一眼レフカメラ用のレンズで400mmを超えるものは、一般的に大きくて重い。それだけでもこのカメラの存在価値はある。軽いので、手を伸ばして人の頭の上から超望遠ズームで撮影する、という芸当も可能だ。

 光学手ブレ補正は、新たにPOWER O.I.S.を搭載。これは、従来に比べてセンサー特性の改善などで精度を向上させ、小刻みな手ブレだけでなく、大きくゆっくりとしたブレの補正精度を大幅にアップさせたそうだ。ワイド側でも効果のある手ブレ補正だが、望遠撮影時にもっとも威力を発揮する手ブレ補正が強化されたことはポイントが高い。もともと強力な手ブレ補正機能だったのでその効果は実感しづらいが、安心感が高まっている。

 DMC-FZ38は、コンバージョンレンズもサポート。テレコンバージョンレンズを使うことで、望遠端が826mm相当になり、30.6倍ズームが楽しめるようになる。テレコン装着時は433.5mmからになるので、広角撮影をするときは取り外す必要があるが、より望遠撮影を楽しみたいときに有効だ。また、通常のテレマクロより約3倍クローズアップできるクローズアップレンズも用意されている。

FOCUSボタンを押すことで、おまかせiA時の追尾AF、MF時でのAF動作、AFエリア選択、再生時のAFポイント拡大、動画撮影時のピント合わせといったさまざまな機能が利用できる。AFやMFの切り替えも1ボタンで可能AFエリアを自由に移動させることができる

強力なHD動画機能

 前モデルから720pのHD動画撮影はサポートしていたが、DMC-FZ38では、新たにAVCHD Liteをサポート。容量を抑えたHD動画の撮影が可能になった。4GBのメモリーカードに対し、従来のMotion JPEGでは約16分20秒しか撮影できなかったところ、AVCHD Liteなら約1時間記録できる。

動画撮影ボタンは、どんなモードでも動画を1ボタンで撮影できる動画撮影モードはAVCHD LiteとMotion JPEGの2種類。PCでの管理・編集を重視する場合はMotion JPEGでもいいが、基本的にはAVCHD Liteでの撮影がおすすめ。ただし、より高速なメディアが必要だ

 本体上部のストロボ全部にはステレオマイクが搭載されており、ドルビーデジタルステレオクリエーターによるステレオ音声の録音ができる。動画の撮影は、液晶モニター右上にある動画RECボタンを押すだけでよく、モードダイヤルがどの位置にあっても動画の撮影が開始できるので便利。

 実際に撮ってみると、映像はなめらかで、音声もリアル。AVCHD Lite対応の製品は同社のテレビやBDレコーダーの一部だけだが、対応製品ならそのままSDメモリーカードを挿して再生できる。HDMI端子も備えるので、本体とテレビなどを接続して再生することも可能だ。

 AVCHD Liteは基本的に家電向けで、PCでの編集環境は限られているが、新OSのWindows 7ならAVCHDに標準で対応し、Windows Media Playerで再生できるほか、Windows Liveツールの1つ、Windows Liveムービーメーカーでの編集も可能になる。Windows 7限定ではあるが視聴、編集環境は改善されている。付属の「PHOTOfunSTUDIO 4.0 HD Edition」でAVCHD Liteに対応しているので、Windows 7以外のユーザーも基本的な閲覧・編集は可能だ。もちろん、従来通りのMotion JPEGを使えば多くのPCで再生、編集は行なえる。

 動画撮影機能では、おまかせiAによって、顔や風景、接写、ローライトといった状況を認識し、それに適した設定で撮影してくれる。高感度や夕焼けといったシーンモードも利用できる。モードダイヤルに用意されている人物や夜景&人物といったモードも動画で利用できるので、難しいことを考える必要はない。

 さらにクリエイティブ動画モードを用意。このモードでは、シャッタースピードや絞りを自分で操作して設定でき、たとえば絞りを開けてボケを生かした動画を撮影するといったことができる。

 画像の色や明るさ、鮮やかさを調整するマイカラーモードにも対応。モノクロ動画やハイキー・ローキーな動画なども撮影できる。

 撮影中の光学ズームも可能で、ズーム速度はゆっくりになるが、広角から望遠まで幅広い動画が撮影できる。ズームレバーの操作音が入ることもあるが、ズーム音やAFの駆動音は特に記録されない。

 ビデオカメラ並みとまでは言わないが、動画と静止画を2台体制で撮影するのに対して、DMC-FZ38のみで撮影できるというメリットは大きい。とっさの時に動画を撮影する場合も、1ボタンで撮影開始できて利便性が高いので、チャンスを逃さずに撮影できるだろう。

マニュアル露出をはじめ、充実した撮影機能

 撮影機能では、起動速度が向上。電源スイッチをスライドさせるとすぐさま撮影が可能になる感じで、快適に動作する。AF速度も向上されており、前モデルに比べてワイド端で約2倍の高速化を実現したという。DMC-FZ38には高速1点AFが用意されているが、ピントがあった瞬間に画面が一瞬停止してしまい、特に望遠端では動く被写体を逃しやすい。AFが高速化されたので、通常のAFの方が使いやすい印象だった。

撮影時にはジョイスティックを押し込むことでよく使う設定が表示される。このあたりのインタフェースは従来通り個人認識の設定画面。同じ人を撮影していると自動的に顔が登録される。顔を登録する際に名前以外に生年月日も登録可能。登録した生年月日はおまかせiAの赤ちゃん認識に使われる

 撮像素子は従来の1,010万画素から、1/2.33型有効1210万画素CCDに高画素化。画像処理エンジンは「ヴィーナスエンジンHD」で、AVCHD Liteをサポートするほか、個人認識機能も利用できる。新たに、3人の顔を同時に認識すると同時に、画面上に名前を表示できるようになった。

 認識精度自身はそれほど変わっていないような印象も受けたが、同時に複数の人物を認識できるようになったのは面白い。個人認証は、再生時に登録した人名をもとに、その人だけが写った写真を再生するといったことも可能で、閲覧性にも優れている。

 マニュアル露出撮影にも対応しており、P、A、S、Mの各モードで撮影が可能。背面のジョイスティックを使うことで絞りやシャッタースピードの変更ができ、デジタル一眼レフカメラのようなダイヤル式と比べると手間はかかるが、操作性はそれほど悪くはない。

露出補正画面。十字キー上の露出補正ボタンを押してもいいが、ジョイスティックを左に倒すと露出補正がアクティブになるこれはプログラムシフト画面だが、絞りやシャッタースピードはジョイスティックを上下させるだけ。露出補正をする場合や、マニュアル露出で絞りとシャッタースピードを変える場合はジョイスティックを左右に倒して切り替える
十字キー下にあるFnボタンのカスタマイズが可能。DMC-FZ38では再生は、モード切替スイッチを操作しないといけないが、カスタマイズすれば十字キー下を押して画像を素早く再生できる。シャッターボタン半押しで再生が解除されるので、撮ってすぐに確認する場合に向いている

 おまかせiAモードで撮影すれば、顔や風景、接写、顔&夜景など、7つのシーンを自動認識して最適な設定で撮影してくれる。個人認識機能を使って赤ちゃんを登録しておくと、誕生日をもとに3歳未満であれば「赤ちゃん認識」が動作するほか、新たに夜景を認識するモードが追加されている。

 DMC-FZ38は、広角から望遠までカバーするレンズ、1ボタンでいつでも撮影できるHD動画が最大の特徴で、設定いらずの簡単操作から本格的なマニュアル撮影までをサポートするため、幅広い人にお勧めできるカメラだ。デジタル一眼カメラを持っている場合でも、DMC-FZ38も併用すれば、レンズ交換の暇がない場合に広角や望遠の撮影を任せることができる。ビデオカメラ代わりに持ち歩いてもいいので、まさに万能選手と言えるだろう。

作例

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

・ISO感度

ISO80
DMC-FZ38 / 約5.8MB / 4,000×3,000 / 1/80秒 / F3.4 / 0EV / WB:オート / 12.4mm
ISO100
DMC-FZ38 / 約5.8MB / 4,000×3,000 / 1/100秒 / F3.4 / 0EV / WB:オート / 12.4mm
ISO200
DMC-FZ38 / 約6.0MB / 4,000×3,000 / 1/125秒 / F4 / 0EV / WB:オート / 12.4mm
ISO400
DMC-FZ38 / 約5.4MB / 4,000×3,000 / 1/200秒 / F4.5 / 0EV / WB:オート / 12.4mm
ISO800
DMC-FZ38 / 約4.3MB / 4,000×3,000 / 1/250秒 / F5.6 / 0EV / WB:オート / 12.4mm
ISO1600
DMC-FZ38 / 約4.0MB / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F6.3 / 0EV / WB:オート / 12.4mm

マイカラー

 マイカラーは光の色、明るさ、鮮やかさを調整して撮影できる。特定の色を強調したいときなどに有効。マイクロフォーサーズのLUMIX DMC-GH1などと同様の機能だ。

標準
DMC-FZ38 / 約5.6MB / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F6.3 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.8mm
赤を強調
DMC-FZ38 / 約5.7MB / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F6.3 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.8mm
青を強調
DMC-FZ38 / 約5.8MB / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F6.3 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.8mm
鮮やかさを強調してみた
DMC-FZ38 / 約6.5MB / 4,000×3,000 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.8mm

自由作例

DMC-FZ38 / 約5.3MB / 4,000×3,000 / 1/200秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.8mmDMC-FZ38 / 約6.8MB / 4,000×3,000 / 1/250秒 / F4.5 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.8mm
DMC-FZ38 / 約4.8MB / 3,000×4,000 / 1/400秒 / F7.1 / -0.3EV / ISO80 / WB:オート / 4.8mmDMC-FZ38 / 約6.5MB / 3,000×4,000 / 1/320秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 43.3mm
DMC-FZ38 / 約6.2MB / 3,000×4,000 / 1/200秒 / F4.4 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 83.2mmDMC-FZ38 / 約5.6MB / 3,000×4,000 / 1/160秒 / F4 / -1EV / ISO80 / WB:オート / 51.5mm
DMC-FZ38 / 約6.6MB / 3,000×4,000 / 1/400秒 / F5.6 / -1EV / ISO80 / WB:オート / 86.4mmDMC-FZ38 / 約6.1MB / 3,000×4,000 / 1/80秒 / F3.7 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 59.5mm
DMC-FZ38 / 約4.5MB / 3,000×4,000 / 1/400秒 / F5.6 / 0EV / ISO125 / WB:オート / 20.1mmDMC-FZ38 / 約3.6MB / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F5.6 / 0EV / ISO125 / WB:オート / 4.8mm




小山安博
某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。

2009/9/9 00:00