マニュアルレンズギャラリー

APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical

“フォクトレンダー史上最高性能”の標準単焦点レンズ

デジタルカメラだからこそ使いたいマニュアルフォーカスの交換レンズ。自分の意思と努力と根性でピントを合わせる撮影行為には、不思議とAFにはない魅力があるものです。本連載で、描写性能はもちろん、プロダクトデザインなどなど、MFレンズならではの拘りを感じてもらえればと思います。

MFレンズの良さを凝縮したレンズ

今回取り上げるのは、コシナ・フォクトレンダーの「APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical」。“フォクトレンダー史上最高性能”を謳う本レンズは、ソニーEマウント用が2019年12月に発売されました。その後、2021年1月にVMマウント版、2022年5月にニコン Z マウント版を展開しています。

製品名のAPOはアポクロマートの略。アポクロマートとは、要するにRGB三色の色収差(本レンズの場合、軸上色収差)をキチンと補正しましたということで、刻印されたRGB三色のラインはその証というわけですね。アポランター50mmの場合その補正レベルが非常に高く、ソニーEマウント用に光学設計が最適化されていることもあって、絞り開放のF2から本当に驚くほど高い描写性能を楽しめます。

AF機構を備えていないだけにとてもコンパクトなサイズの標準単焦点レンズです。“標準単焦点”といえばかつてはこのサイズが普通だったよな、などと懐かしさすら覚えさせてくれます。F2という開放F値も、MFレンズにとっては大変実用的な仕様です。MFレンズの良さを凝縮したような本レンズ、初めてのMFレンズとしても最適かもしれません。

外観

作例

赤い滲みの軸上色収差が発生しがちなネコのヒゲですが、本レンズではほとんど見られず素直で美しい。ピントの合った瞳の生々しい迫真の描写にもご注目。アポランター信者が増える所以です。

α7 IV/APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical/50mm/絞り優先AE(1/125秒、F2.0)/ISO 400

主な仕様

焦点距離:50mm
最小絞り:F16
画角:46.5°
最短撮影距離:0.45m
最大径×全長:φ62.6×61.3mm
重量:364g
電子接点:あり
Exif情報:対応
5軸ボディ内手ブレ:対応(5軸対応ボディに限る)
口径比:1:2
レンズ構成:8群10枚
絞り羽根構成:12枚(F2/2.8/16で円形絞り)
最大撮影倍率:1:6.46
フィルター径:φ49mm
レンズフード:付属
フォーカス拡大機能:対応
レンズ補正選択:可能
その他:絞り切替機構付き
希望小売価格:税込13万2,000円

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。