気になるデジカメ長期リアルタイムレポート

ニコンD7100【第5回】

手軽に望遠撮影を楽しめる「対DX1.3×クロップ」を試す

 ニコンのFXフォーマット(35mmフルサイズ)のカメラには、DXフォーマット(APS-Cサイズ)などの撮像範囲で記録できる「撮像範囲設定」機能が搭載されている。それによって、画角を狭めて望遠効果を高めたり、DX専用レンズでも支障なく(ケラレなく)使用することができるのだ。

 そんな撮像範囲設定の機能が、DXフォーマットモデルである「D7100」にも搭載された。ベースとなるDXフォーマットは、装着レンズの約1.5倍の焦点距離に相当する画角が得られるが、撮像範囲設定を「対DX1.3×クロップ」に設定すると、装着レンズの実焦点距離の約2倍の焦点距離に相当する画角が得られる。

 そう、この“対DX1.3×クロップ機能”によって、装着レンズの望遠効果を高めることができるのだ。D7100における画質面の大きな特徴が“光学ローパスフィルターレス仕様”だとすると、撮影機能面の特徴にはこの“対DX1.3×クロップ機能”を挙げることができるだろう。

 DXフォーマットモデルでの“クロップ機能”と言えば、フラッグシップモデルの「D2X」(2005年2月発売)や「D2Xs」(2006年6月発売)が思い出されるが、有効1,240万画素のD2XやD2Xsで「クロップ高速機能」を使用すると、その撮像範囲の画素数は680万画素になってしまう(まあ、実用的にはさほど問題のない画素数だが)。

 これに対して、有効2,410万画素のD7100で「対DX1.3×クロップ」を使用すると、その撮像範囲の画素数は1,540万画素と、現在の水準からしても十分に高画素である。ちなみに、D2Xシリーズの連続撮影速度はDXフォーマット時は5コマ/秒だが、クロップ高速機能使用時には8コマ/秒と大幅に高速化される。同様に、D7100の連続撮影速度もDXフォーマット時は6コマ/秒だが、対DX1.3×クロップ使用時には7コマ/秒に高速化される(JPEGもしくは12ビットRAW時)。

撮像範囲の設定・変更は、撮影メニューの「撮像範囲」で行なう。ちなみに、カスタムメニューf2「Fnボタンの機能」の「コマンドダイヤル併用時の動作」を「撮像範囲選択」に設定すれば、Fnボタンとコマンドダイヤルの操作でも設定できるようになる。
背面左下にある「iボタン」を使用すれば、インフォ画面下部(上段左端)に表示される「撮像範囲」に簡単にアクセスして設定することができる。
撮像範囲を対DX1.3×クロップの「1.3×(18×12)」に設定すると、ファインダー内にはその撮像範囲を表わす枠とアイコン(右上隅)が表示される。個人的には、D2Xsのような半透過のマスク表示の方が好みだが。
「対DX1.3×クロップ」時には、51点のフォーカスポイントが画面全域を広くカバーできるようになる。特に、画面の左右に関しては、ほぼ目一杯カバーする。まあ、そのあたりのAF関連の詳しい話は、また次回以降に……。

 言うまでもなく、「対DX1.3×クロップ」機能の大きなメリットは、画角を狭めて望遠効果(引き寄せ効果)が高くできる点にある。高倍率ズーム28-300mmや望遠ズーム70-300mmなどの一般的なレンズでも「約600mm相当」という超望遠撮影が楽しめるようになるのだ。さらに、DXフォーマット専用の「AF-S DX NIKKOR 18-300mm F3.5-5.6 G ED VR」だったりした日には、DXフォーマットと対DX1.3×クロップの切り替えにより、27mm相当から約600mm相当という驚きの画角変化が得られるのである。

 そして、最短撮影距離まで接近した際の被写体サイズ(画面内における)も大きくなる。また、同じ被写体サイズなら、DXフォーマット時よりも離れた距離で撮影できる。これらの特徴は、小さな花や昆虫などの撮影に有利に働いてくる。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
対DX1.3×クロップで撮影(約600mm相当)。D7100 / 1/640秒 / F5.6 / 0EV / ISO140 / 絞り優先AE / WB:オート / 300mm
DXフォーマットで撮影(450mm相当)。D7100 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO110 / 絞り優先AE / WB:オート / 300mm
FXフォーマット対応の高倍率ズーム「AF-S NIKKOR 28-300mm F3.5-5.6 G ED VR」を使用して、少し離れた位置にあるユリの花を狙う。DXフォーマット時「450mm相当」の画角でも望遠らしい引き寄せ効果が期待できるが、対DX1.3×クロップ時「約600mm相当」の超望遠画角はさらに強烈!! こうやって両者を比較すると、その引き寄せ効果の差が実感できる。

(撮影時の状況)花壇に張られたロープの関係で、これ以上は狙った花に接近できない……。そういったシチュエーションで「対DX1.3×クロップ」機能は威力を発揮する。
対DX1.3×クロップで撮影(約600mm相当)。D7100 / 1/640秒 / F8 / -0.3EV / ISO400 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 300mm
DXフォーマットで撮影(450mm相当)。D7100 / 1/500秒 / F8 / -0.3EV / ISO400 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 300mm
(参考)D800のFXフォーマットで撮影(300mm相当)。D800 / 1/500秒 / F8 / -0.3EV / ISO400 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 300mm
「画角が望遠寄りになるほど有難い!」と実感するのが、動物園などでの撮影だ。ここでもFXフォーマット対応の高倍率ズーム「AF-S NIKKOR 28-300mm F3.5-5.6 G ED VR」を使用してスイギュウを狙っているが、D800での額面(?)通りの300mm相当の画角だと十分な大きさには写せない。だが、DXフォーマットの450mm相当の画角なら“まずまず”の大きさに、そして対DX1.3×クロップの約600mm相当の画角なら“かなり!”の大きさに写すことができた。300mm相当で撮影したカットと見比べると、その望遠効果の大きさがよくわかるだろう。

(撮影時の状況)離れた位置から狙った動物が大きく写せる! そんな単純にして明快なメリットが享受できるのが「対DX1.3×クロップ」だ。
対DX1.3×クロップ(約170mm相当)の最短撮影距離で撮影。D7100 / 1/400秒 / F8 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 85mm
DXフォーマット(127.5mm相当)の最短撮影距離で撮影。D7100 / 1/400秒 / F8 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 85mm
DXフォーマット専用の標準ズーム「AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR」でセンニチコウの花を撮影する。しかし、この花は直径2~3cm程度と小さいため、この標準ズームの“望遠端+最短撮影距離”では十分な大きさには写せなかった。画角が狭まる「対DX1.3×クロップ」機能を使用すれば“さらに寄った”ようなクローズアップ効果が得られる。

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 以下は、自分が所有するレンズで「対DX1.3×クロップ」機能を使用して撮影した作例である。持参レンズの中で最も焦点距離の長いレンズの画角を“さらに望遠寄りにできる!”というのが「対1.3×クロップ」機能の大きな魅力である。だが、それ以外のレンズでも、手軽に望遠寄りの画角にして楽しみたい。1.4倍テレコンバーターのような制約(装着できるレンズの制限、開放F値が暗くなる、着脱の手間、画質劣化への懸念……など)も気にせず、手軽に望遠効果が高められるのだから。あと、撮影可能枚数が増えるのも有難い(約1.5倍強に増える)。

AF-S NIKKOR 28-300mm F3.5-5.6 G ED VRで撮影。自分が所有するニコンFマウントの交換レンズで、最も焦点距離が長いのはコレ。望遠端での「約600mm相当で開放F5.6」という仕様は、動物園撮影などでかなり重宝する。D7100 / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / 絞り優先AE / WB:オート / 300mm
AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VRで撮影。望遠端の画角は約170mm相当になる。この標準ズームはIF方式による近接撮影時の焦点距離の目減り(画角が広くなり撮影倍率が低くなる)が顕著だが、「対1.3×クロップ」機能はそれを補う働きをしてくれる。D7100 / 1/320秒 / F8 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 85mm
AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8 G EDで撮影。画角は約120mm相当になる。最大撮影倍率の数値は「等倍」でも、撮像範囲が狭いために“約2倍相当”とクローズアップ度は高まる。でも、ちょっと持て余すかも!?(笑)。D7100 / 1/60秒 / F11 / 0EV / ISO800 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 60mm
AF-S NIKKOR 50mm F1.8 Gで撮影。画角は約100mm相当になる。「約100mm相当で開放F1.8」という仕様は、大口径中望遠レンズとしてかなり魅力的だ(ここではF2.2と微妙に絞ってるけど)。D7100 / 1/125秒 / F2.2 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 50mm

吉森信哉

1962年広島県庄原市出身。東京写真専門学校を卒業後、フリー。1990年からカメラ誌を中心に撮影&執筆を開始。得意ジャンルは花や旅。ライフワークは奈良・大和路の風景など。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。カメラグランプリ2018選考委員。