交換レンズレビュー

非純正なのにAFが可能 超広角なのにボケも得意

フルサイズEマウント対応のZEISS Batis 2.8/18

発売は5月20日。希望小売価格は税込19万4,000円前後。今回はソニーα7R IIで試用した。

カールツァイスの「Batis」シリーズは、35mmフルサイズのソニーEマウントに対応するAFレンズだ。すでに25mmの「Batis 2/25」と85mmの「Batis 1.8/85」が発売されており、今回取り上げる18mmの「Batis 2.8/18」の登場で、超広角、広角、中望遠と計3本のラインナップとなった。

デザインと操作性

Batis 2.8/18のレンズ構成はDistagonタイプ10群11枚。特殊低分散ガラス、非球面レンズを採用し、優れた解像力とコントラストを誇る。レンズデータをボディ側と通信し、収差の補正やExif情報記録などに利用している最新設計の単焦点レンズとなっている。

大きく重たく見えるレンズだが重量は330gで、実際に手にしてみると意外なほど軽く感じる。フィルター径は77mm、最短撮影距離は25cmという仕様だ。防塵防滴なので過酷な環境下での撮影でも安心だ。

フィルター径は77mm。超広角レンズには見えない前玉である
防塵防滴仕様なのでマウント周囲にはラバーが巡らされている。ZEISSブルーが美しい

同社のAPS-Cミラーレスカメラ用交換レンズシリーズ「Touit」からの流れを汲む外観デザインが目を引く。マウント面からグッと直線的に立ち上がった鏡筒は、フォーカスリングに向けてゆるやかに拡がっていき、指がかりのいいラバーが施されたフォーカスリングに達する。

そこから、このレンズ最大の特長である有機ELのディスプレイ付近より、花びらが開くように一体化したフードに向かって、放たれるようなカーブを描いて先端に到達するレンズのシェイプは、「あ、ツァイスのレンズだ」と一瞬で認識できるほど独特だ。

ZEISSのバッジが眩しいサイドビュー。流れるようなフォルムがホールド感を高めてくれる
シナバーカラーのマウントと、ブルーのZEISSバッジとマウント着脱指標がいいマッチングだ。α7R IIとのバランスもよく、とても持ちやすい

使い勝手も良好だ。といっても操作する部分はフォーカスリングのみしかない。MF時やDMF時でも、適度な接触感があるラバー張りのおかげで、確実にピントを合わせることができる。トルク感も一定の重さがあり、軽すぎてスコスコと回りすぎてしまうことがない。AFもほぼ無音で高速だ。精度もまずまずで安心してピント合わせを任せられる。

Batisシリーズは斬新な有機ELディスプレイを採用しているが、電源をONにすると一瞬ZEISSロゴが浮かび上がる。撮影時は合焦距離を表示するほか、被写界深度も数字表示する。2m以上遠い被写体の場合は被写界深度をカメラからの距離で、それより近い被写体は合焦したポイントからの距離で表示する。

一番目を引く有機ELのディスプレイ。暗所で合焦距離を知りたい時には便利だろう。もちろん表示OFFにも設定可能だ(左:2m以上の時にはカメラからの被写界深度を表示。右:2m未満の場合には合焦位置からの被写界深度を表示)

ディスプレイの表示変更はフォーカスリングを回転させて行うのが面白く、最短撮影距離から時計回りにリングを1回転させると表示の単位がmとftに切り換える可能で、無限遠の位置から反時計回りに1回転させると、表示モードのオンオフ、やマニュアルフォーカスやDMF時だけ表示するモードに変更が可能だ。

流れるような造形のフードはZEISSの新しいアイコンだ。バヨネット式だがロックも節度感があり、フードを持っての撮影でも不用意に外れることはなかった

作品

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、回転処理を施しています。

新緑とガラスとメタルの美術館を撮影。画面中央部の葉の1枚1枚や、ガラスにプリントされているドットまでキレイに判別可能だ。

α7R II / 1/125秒 / F8 / 0EV / ISO100 / プログラムAE / 18mm

黒い砂利の浜辺で寝そべるモデル。18mmという超広角レンズだが、画面のどの部分も均一で高解像だ。四隅でもそのパワーは健在で、流れるような描写になることなく、しっかりと確実に砂利の1つ1つがわかる。

α7R II / 1/125秒 / F11 / -1EV / ISO100 / 絞り優先AE / 18mm

絞り開放で、消波ブロックの上に立つモデルをググッと寄って撮影。合焦面のシャープさが見事ながら、背景のスムーズなボケも素晴らしい。上品でうるさくないボケがイイ感じ。

α7R II / 1/800秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 18mm

竹でできた趣のある塀に寄ってシャッターを切った。前ボケ、後ろボケとも同じような質の描写で、とてもバランスがいい印象だ。木々の間の玉ボケもほぼ真円で均整である。

α7R II / 1/160秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 18mm

最短撮影距離は25cm。金属表面の凸凹感がとてもよく表現されているのがわかるはずだ。超ワイドながら被写体に寄って絞りを開け放つことによって、背景をぼかして撮影することもできる。

α7R II / 1/200秒 / F2.8 / +1.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 18mm

太陽が画面内に入るようにモニュメントと高層ビルを撮ってみた。コントラストも低下することなく、不自然な光芒も出現せず、非常にクリーンでヌケのいい写真となった。超広角レンズは太陽がフレーム内に入ることが多いので、この写りは頼もしく感じた。

α7R II / 1/1,000秒 / F8 / -1EV / ISO100 / 絞り優先AE / 18mm

モデルの肌のトーンから、背景のトタンの発色、その経年劣化の具合など、ZEISSらしいシャープさと再現性で狙ったとおりに撮れた1枚。モデルの瞳と髪の毛の感じが実にいい。

α7R II / 1/320秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 18mm

まとめ

広大な風景や室内を広く撮る、ということに多く使われる超広角レンズだが、このレンズは様々な被写体をZEISSらしく捉えられるレンズだと感じた。

オートフォーカスも優秀だし、前後のボケもスムーズ、逆光にも強く、防塵防滴構造でもある。Batisシリーズを3本揃えて、シャープで高コントラストの写真を楽しむのもよさそうだ。

モデル:高実茉衣

三井公一