交換レンズレビュー

Vario-Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM II

対逆光性能がはっきりと向上 ボケ味も文句なし

今回はα99で試用した。発売は6月。実勢価格は税込26万1,950円前後

6月26日に発売されたソニーのAマウントレンズ「Vario-Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM II」(SAL1635Z2)は、2009年1月に発売された「Vario Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM」(SAL1635Z)の後継モデルだ。開放F値2.8通しで焦点距離16mmから35mmという、いわゆる大口径超広角ズームであり、同社の「α99」などが搭載する35mm判フルサイズセンサーに対応する。

前モデルからの主なリニューアルポイントは、「大幅に向上したAF速度と精度」、「T*(ティースター)コーティングの特性向上」、「防塵防滴への配慮」の3点。

AF性能の向上や防塵防滴への配慮は使用上の利便性に直結し、コーティングの特性向上は逆光耐性やヌケのよさといった描写性能に大きく関わってくる。リニューアルとしてはやや地道な変更に感じるかもしれないが、前モデルの発売から6年が過ぎ、その間に培われた設計技術を真面目に採用しているのであるから、これは歓迎すべき正統進化と呼んでいいだろう。

レンズ構成は非球面3枚、スーパーEDレンズ1枚、EDレンズ1枚を含む13群17枚となっているが、これはリニューアル前と同じであり、発表されているレンズ構成図を見ても新旧モデルの間に目立った違いは見られない。0.28mの最短撮影距離と0.24倍の最大撮影倍率は同クラス中において立派な値であるが、これらの仕様も前モデルとまったく同じ。レンズ構成に関しては基本的に大きな変更はないようである。

デザインと操作性

新しいVario-Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM IIの長さは114mm、最大径は83mm、質量は872g、フィルター径は77mmである。前モデルは、長さ114mm、最大径は3mm、質量860g、フィルター径77mmなので、外形寸法は変わらず、質量だけがわずかに増えている。

円筒形のデザインであるためか、実際の寸法以上に大きく感じる。質量も872gとなかなかの重量級。とはいえ、描写性能を優先するツァイスブランドと考えれば不思議と許せてしまう
35mmフルサイズカメラであるα99に装着したイメージ。大柄なレンズではあるもののハイエンドモデルのα99やα77 IIとのマッチングはよい

他社製で仕様の近い現行レンズとしてはキヤノンの「EF 16-35mm F2.8L II USM」をあげることができ、こちらは長さが111.6mm、最大径88.5mm、質量640g、フィルター径82mmなので本レンズが特段に大きいというわけではないが、レンズ先端から後端まで筒形の直線形のデザインをしている分、数字以上に大きく重く感じてしまう。実際にボディに装着して使用していても、焦点距離16mmスタートの超広角ズームとしては相当な存在感を覚える大きさであることには違いない。

とはいえ、本レンズは「ツァイス」の名を冠した高性能レンズなので、描写性能を優先して大きさと重さは(ある程度)度外視して設計されたのだと思えば、十分に許容できるレベルであるともいえるだろう。

非球面レンズ3枚、スーパーEDレンズ1枚、EDレンズ1枚を含む13群17枚のレンズ構成は前モデルから基本的に変更されていない

ツァイス銘の高性能レンズに位置するだけに、鏡筒の造りは大変しっかりしており、金属外装に施された塗装から、細部の加工、リング・スイッチ類の操作感触に至るまで、名に恥じることのない高級感と信頼性を備えているのはいうまでもない。

前モデルにはなかった本レンズの特長の1つが防塵防滴への配慮である。同社の「α99」や「α77 II」といった上位モデルのボディは、同じく防塵防滴に配慮した構造なので、これでボディ・レンズともにめでたく防塵防滴性を身につけ、従来以上に過酷な条件での撮影でも安心して使うことが可能となったわけである(ただし、ほこりや水滴の侵入を完全に防ぐものではないので、使用者側にも良識のある“配慮”が求められることに注意したい)。

防塵防滴のためにシーリングが採用されたためか、前モデルよりズーミング時の操作はいくぶん重めに感じられ、気密性が高く信頼性が増した印象がある。

レンズ後面からみたところ。マウント部はもちろん金属製で、ボディ装着時にもガタつくことなど一切なく、精度の高い造りであることを感じることができる
鏡筒側面には円形のフォーカスモードスイッチが配置され、その中心部分にはフォーカスホールドボタンが搭載されている

AF性能は確かにストレスなく速く、精度の安定性が増したことを感じる。ただ、超広角域では動体撮影を必要とする機会が少なく、またフォーカシング系レンズ群の移動量もそれほど大きくないこともあって、劇的といえるほどの進化を体感できるものではないように思えた。前モデルのAF駆動がもともとSSM(超音波モーター)とインターナルフォーカシングを組み合わせた高性能なものなので、これはある意味仕方のないことだろう。

そうはいっても、本レンズで採用されたレンズ処理LSI(マイコン)の高速化は、今後登場する望遠系のAマウントレンズにも継続して採用されていくことが予想できるので、こうした進化はやはり大いに歓迎すべきことだ。

なお、現行でラインナップされているAマウントのボディは、すべてボディ内手ブレ補正機構を搭載しているため、Aマウントレンズである本レンズ側には手ブレ補正機構は搭載されていない。

花形のレンズフードが同梱される。フードも本体に負けず劣らず高級感のある造りだ

遠景の描写は?

広角端の焦点距離は16mm、ソニーのAマウントレンズラインナップ中では最もワイドな画角だ。画面中央では絞り開放から十分な解像感とコントラストがあり、絞り込むほどに画質は向上、F5.6からF8の間で最高となり、F11まで絞っても画質の低下はあまり見られない。F16まで絞ると回折の影響で解像感、コントラストも低下する。

画面周辺では、視角を超える超広角の画角ということもあって、絞り開放での描写はさすがに甘さが残り、また周辺光量の低下もいくらか見られる。四隅での解像感の甘さはF5.6に絞り込むことでほぼ解消され、F8からF11の間で画面全体の均質性が最も高くなる。

35mmフルサイズのボディとレンズを組み合わせた場合、通常はF5.6からF8で最も良好な描写性能を得られることが多いが、本レンズの広角側において画面全体で安定した描写を望む場合は、多少の回折の影響には目をつむってF11程度にまで絞り込んだほうが好結果を得られるようである。

望遠端の焦点距離は35mm、超広角ズームとはいえ望遠端がスナップ撮影などで馴染みのある画角であるのは使い勝手がよく安心感が高い。望遠端では画面の中央、周辺とも絞り開放から十分な解像感とコントラストがあり、F5.6からF8の間で描写性能、画面全体の均質性とも最高となる。

広角端ではやや厳しい評価をしてみたものの、フルサイズ対応の超広角ズームとしてこれは十分に優秀な描写性能である。ズーム全域において諸収差や色収差は大変良く抑えられており、ヌケがよくシャープで、ツァイスの名に恥じない高性能をしっかり維持している。F11以上に絞り込んでも画質の低下があまり見られないのは、本レンズの大きな特長の1つといえるだろう。

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広角端―中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。共通設定:α99 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 16mm
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
広角端―周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。共通設定:α99 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 16mm
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
望遠端―中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。※共通設定:α99 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
望遠端―周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。※共通設定:α99 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

ボケ味は?

本レンズの最短撮影距離はズーム全域で0.28mとなっており、フルサイズ対応の大口径超広角ズームの近接撮影能力として申し分ない。この近接撮影能力を利用して、絞り開放で被写体に近づいて写せば、望遠端35mmの場合はもちろん、広角端16mmの場合でも、大きく背景をぼかした撮影が可能である。

ただし、超広角域特有の被写界深度の深さがあるため、被写体から数mも離れると、それほど大きなボケは期待できないと考えたほうがいいだろう。

試写では一面のキバナノコスモスを撮影したが、こうした条件でも二線ボケの発生などによって煩わしさが目立つようなことはほとんどなく、前ボケ、後ボケとも被写体から離れるほど素直に溶け込んでいった。文句なしで柔らかで美しいボケを演出するレンズだといえる。

広角端
絞り開放・最短撮影距離(約28cm)で撮影。α99 / 1/1,000秒 / F2.8 / +0.5EV / ISO100 / 絞り優先AE / 16mm
絞り開放・距離数mで撮影。α99 / 1/1,250秒 / F2.8 / +0.5EV / ISO100 / 絞り優先AE / 16mm
絞りF5.6・距離数mで撮影。α99 / 1/320秒 / F5.6 / +0.5EV / ISO100 / 絞り優先AE / 16mm
望遠端
絞り開放・最短撮影距離(約28cm)で撮影。α99 / 1/1,600秒 / F2.8 / +0.5EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm
絞り開放・距離数mで撮影。α99 / 1/1,000秒 / F2.8 / +0.5EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm
絞りF5.6・距離数mで撮影。α99 / 1/250秒 / F5.6 / +0.5EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm

逆光耐性は?

本レンズの大きなリニューアルポイントのひとつがコーティングの特性向上となっている。当然、逆光時の描写性能も向上しているはずなので、太陽が画面内にある場合と画面の外ぎりぎりに外した場合で試写を試みてみた。

結果をみると、広角端の画面内に太陽がある場合のみ、画面の反対側に極小さな緑色のゴーストが発生しただけで、他の場合ではゴーストの発生はまったく見られなかった。また、すべての条件でフレアの発生によってコントラストが低下するようなこともなかった。

これは非常に優れた結果だといえる。前モデルも優れた描写性能であったが、こと逆光時においてはゴーストやフレアの発生に悩まされることがままあった。画角が広い超広角レンズでは、作画上、画面内から太陽などの強い光源をどうしても避けることができない場合が多いので、この逆光耐性の劇的な向上はユーザーにとってまことに喜ばしいことである。

広角端
太陽が画面内に入る逆光で撮影。α99 / 1/640秒 / F5.6 / +0.5EV / ISO100 / 絞り優先AE / 16mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。α99 / 1/640秒 / F5.6 / +0.5EV / ISO100 / 絞り優先AE / 16mm
望遠端
太陽が画面内に入る逆光で撮影。α99 / 1/500秒 / F5.6 / +0.5EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。α99 / 1/640秒 / F5.6 / +0.5EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm

作品

被写体に近づいて写せば広角域でも大きな背景ボケを得られるのがフルサイズ対応レンズのよいところ。F4での撮影であるが、ピントの合ったヒマワリはしっかりシャープに、背景は柔らかく大きくぼかすことで、階調豊かな立体感のある表現ができた。

α99 / 1/640秒 / F4 / +0.5EV / ISO100 / 絞り優先AE / 22mm

広角端での撮影。高速高精度になったAFで、動く白鳥にも素早く正確にピントを合わせることができた。被写体に寄りながら、背景を広く写した遠近感の強い表現は超広角レンズを使うときの醍醐味だと思う。

α99 / 1/2,500秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / 絞り優先AE / 16mm

焦点距離30mm、絞りF8で撮影。このくらいの焦点距離でF8まで絞り込むと画面全体の安定感は抜群に高くなり、近くから遠くまで解像感の高い緻密な描写が得られる。風景撮影などで頼りになる高性能レンズだ。

α99 / 1/100秒 / F8 / 0EV / ISO400 / 絞り優先AE / 30mm

クリエイティブスタイルを夕景にして広角端でワイドに撮影。雲の切れ間から夕陽が直射するという真逆光であったが、描写が破綻することは一切なく、ススキ野原を情緒豊かに写し撮ることができた。新コーティングの性能は相当なものである。

α99 / 1/400秒 / F7 / -0.2EV / ISO400 / 絞り優先AE / 16mm

望遠端焦点距離35mm、ほぼ最短撮影距離での撮影。近接時でもピントの合った部分の解像感は落ちることなく、前後のボケ味も自然で美しい。

α99 / 1/60秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm

まとめ

レンズ構成や外観デザインこそ前モデルと基本的に同じであるものの、今回の試写からは格段に向上した逆光性能を確認することができ、それに伴って全体の描写性能も向上していることを実感できた。

AF性能の向上や防塵防滴性の付加などは、前モデルの発売以降に登場し最新の機能をもつハイエンドモデルと相性が素晴らしくよく、使い勝手や利便性も向上していることは明らかといえる。

目立った仕様変更こそないものの着実な進化を遂げた本レンズ。ミラーレス用のEマウントレンズに押されてやや影の薄い感のあるAマウントレンズであるが、こうなってくるとAマウントの将来にも期待をもってしまうというものだ。例えば、現行より高画素のAマウントデジタル一眼レフが登場すれば、さぞ心も踊ることだろうと思うのだが、果たしていかがなものだろう。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「エイレホンメ 白夜に過ぐ」(リコーイメージングスクエア新宿)など。