デジカメ Watch

ソニー「Vario Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM」

交換レンズ実写ギャラリー
Reported by 藤井智弘

α900 / Vario Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM / 約12.7MB / 4,032×6,048 / 1/160秒 / F8 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 28mm




α900に装着。定価は28万3,500円。発売日は1月29日
 ソニーからα900と同時に発表された、カールツァイス「Vario Sonnar(バリオゾナー)T* 16-35mm F2.8 ZA SSM」が発売された。ソニーでは初の35mmフルサイズ対応の大口径広角ズームレンズだ。ここではα900に装着して使用した。ちなみにカールツァイスの広角ズームとしては、コンタックスNシリーズ用の17-35mm F2.8以来になる。

 外観は同社の標準ズームレンズ「Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM」によく似ている。一見すると見間違うくらいだ。重厚感のある鏡胴の仕上げで、いかにもツァイスレンズらしい高級感がある。また24-70mm F2.8と同様、大柄で重いのもツァイスらしい。重量は約860g。24-70mm F2.8の約955gほどではないが、それでも手にするとズッシリとした重さが伝わってくる。フィルター径は77mm。α900に装着すると、総重量は1.7kgを超えるヘビー級だ。それでもボディとのバランスは良好に感じる。

 ズーミングもピントリングもスムーズに回る。どちらも適度な重さなので、微調整も楽に行なえた。また鏡胴には24-70mm F2.8と同じく、フォーカスモードスイッチとフォーカスホールドボタンを設置。カメラを構えた状態で、フォーカスのコントロールが可能だ。できれば90度下にもうひとつ同じスイッチとボタンを設けると、縦位置でも使いやすくなるだろう。

 AFは超音波モーターのSSMなので、とても静かだ。驚くほど高速、というわけではないが、不満のないレベル。スッとピントが合うのは気持ちいい。AFモードのままMFも可能だ。大きくて重いレンズながら、使い勝手は上々と言える。

 レンズの構成は13群17枚。うち非球面レンズを3枚、スーパーEDガラスを1枚、EDガラスを1枚使用した贅沢な作り。もちろんT*コーティングが施されている。その写りは、絞り開放からズーム全域で優秀。周辺光量低下は16mm側の絞り開放ではやや目立つが、2段絞るとかなり改善され、気にならない程度となる。35mm側は絞り開放ではわずかに周辺光量低下が見られるが、1段絞っただけでほぼ解消される。

 残念ながらαには、他社のような周辺光量低下を補正する機能は入っていない。どうしても明るさを均一にしたい場合は、RAWで撮って現像時に調整することになる。とはいえ、実写では周辺光量低下が気になることはあまりなかった。むしろ周辺が暗くなることで、画面が引き締まる効果も捨てがたい。歪曲収差は、16mm側が樽形、35mmが陣笠形。格子状の被写体を正面から撮ればわずかに気になるかもしれないが、普通に風景やスナップを撮る分には全く問題なかった。


 解像感は、画面四隅で急に落ちるようだ。特に最短撮影距離付近まで寄ると、画面中心部と周辺部の画質の差が大きくなるように感じる。ただ、これもα900で撮影した画像を拡大して見た時の印象。通常の使用では問題ないだろう。それ以上に過剰にシャープではない点も好感が持てた。色収差もよく抑えられている。十分な解像感とシャープ感がありながら、柔らかさも併せ持つ。そのため立体感のある、リアルな描写だ。α900の有効2,460万画素の画質を引き出すことができる。

 最短撮影距離は28cm。最大撮影倍率は0.24倍になる。広角レンズでも、最短まで寄れば背景はボケる。このレンズは円形絞りを採用し、ボケ味に優れている。しかもピントが合っている部分からアウトフォーカスにかけて、なだらかにボケていくため、とても自然な仕上がりになる。二線ボケもないので、細かな枝が背景になる条件でも安心だ。こうした描写力の高さは、さすがツァイスと唸ってしまう。被写体にグッと迫って、広角らしい遠近感を誇張したダイナミックな作品を撮りたくなるレンズだ。

 さらに感心したのが逆光性能。太陽のように極端に強い光源が画面内に入ると、さすがにゴーストは出てしまう。それでもごくわずかだ。しかもフレアはほとんど出ない。そのため逆光でもコントラストが高く、クリアな写真を撮ることができる。

 このレンズで最も気になるのが価格だ。28万3,500円という定価は購入の決断に気合が要る。カールツァイスだから仕方がない、と言えば仕方がないが、とても気軽に買うことはできない。また大きくて重いため、気軽に持ち歩けるレンズでもない。「本気で作品を撮りたい」と思わないと、なかなか手が出せないだろう。しかし手に入れられれば、価格に見合う高い描写性能が堪能できる。誰にでも勧められるレンズではないが、α900ユーザーで超広角から広角域を常用したい人は、ぜひ検討してみたい。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。





α900 / Vario Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM / 約6.5MB / 6,048×4,032 / 1/125秒 / F16 / +0.3EV / ISO200 / WB:オート / 16mm α900 / Vario Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM / 約6.9MB / 6,048×4,032 / 1/250秒 / F11 / +0.3EV / ISO200 / WB:太陽光 / 16mm

α900 / Vario Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM / 約9.1MB / 6,048×4,032 / 1/200秒 / F11 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 16mm α900 / Vario Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM / 約7.6MB / 6,048×4,032 / 1/500秒 / F11 / +0.3EV / ISO200 / WB:オート / 16mm

α900 / Vario Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM / 約5.9MB / 4,032×6,048 / 1/80秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 35mm α900 / Vario Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM / 約7.6MB / 4,032×6,048 / 1/60秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 16mm

α900 / Vario Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM / 約5.1MB / 4,032×6,048 / 1/20秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO200 / WB:太陽光 / 35mm α900 / Vario Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM / 約5.0MB / 6,048×4,032 / 1/125秒 / F4 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 35mm

α900 / Vario Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM / 約5.8MB / 6,048×4,032 / 1/80秒 / F4 / -0.7EV / ISO200 / WB:太陽光 / 35mm α900 / Vario Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM / 約6.5MB / 4,032×6,048 / 1/125秒 / F11 / 0EV / ISO200 / WB:太陽光 / 35mm

α900 / Vario Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM / 約9.8MB / 4,032×6,048 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 35mm α900 / Vario Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM / 約4.4MB / 6,048×4,032 / 1/30秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO200 / WB:太陽光 / 20mm

α900 / Vario Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM / 約9.0MB / 6,048×4,032 / 1/160秒 / F16 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 16mm α900 / Vario Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM / 約6.0MB / 6,048×4,032 / 1/640秒 / F11 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 16mm




α900 / Vario Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM / 約10.0MB / 6,048×4,032 / 1/500秒 / F8 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 35mm


URL
  ソニー
  http://www.sony.co.jp/
  製品情報
  http://www.ecat.sony.co.jp/dslr/lens/lens.cfm?PD=32468&KM=SAL1635Z

関連記事
ソニー、「16-35mm F2.8 ZA」と「70-400mm F4-5.6 G」を29日に発売(2009/01/13)
ソニー、ツァイス銘の超広角ズーム「16-35mm F2.8 ZA」(2008/09/10)



藤井智弘
(ふじいともひろ)1968年、東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1996年、コニカプラザで写真展「PEOPLE」を開催後フリー写真家になる。現在はカメラ雑誌での撮影、執筆を中心に、国内や海外の街のスナップを撮影。社団法人日本写真家協会会員。ホームページはhttp://www.fujiitomohiro.com/

2009/02/10 00:53
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2009 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.