交換レンズ実写ギャラリー
カールツァイス「Touit 2.8/12」
(2013/5/30 00:00)
ミラーレス機は今、大きな変革期を迎えている。当初、エントリーモデルとして登場したミラーレス機だが、昨今は本格画質を実現したモデルが増えてきた。ソニーNEX-7、FUJIFILM X-Pro1、OLYMPUS OM-D E-M5など、高画質モデルが続々と登場している。ボディの高画質化が進めば、当然ながら高性能レンズのニーズも高まってくる。ここで取り上げるカールツァイスのTouit(トゥイート)2.8/12は、こうした高画質化の波を背景に登場したレンズだ。
本レンズはソニーEマウント用と富士フイルムXマウント用があり、ここではXマウント用をX-Pro1と組み合わせてみた。35mm判換算で18mm相当となり、超広角の世界を提供してくれる。なお、レンズシリーズ名はTouitだが、レンズの銘板には「Distagon」の文字が刻まれている。Distagonはツァイスが伝統的に広角レンズに与えている名称だ。
Touit 2.8/12で撮影した第一印象は、とにかく直線が美しい。歪曲がほぼ感じられないため、直線が縦横無尽に気持ちよく伸びる。水平を出してかっちり撮るもよし、あおってパース強調を楽しむもよし、ストレスなく18mm相当の世界を堪能できる。また、周辺描写も実に手堅い。今回試写した範囲では色収差がほぼ気にならず、もちろん周辺で像が流れるようなこともない。X-Pro1はローパスフィルターレスでそもそもディテール再現に定評があるが、Touit 2.8/12の緻密な描写はそのアドバンテージをしっかりと活かしてくれる。また、シャドウの粘りがよく、薄暗いシーンでは被写体がヌッと顔を出すような描写が官能的だ。
デザインと操作性については、絞りリングの搭載が特徴的だ。FUJIFILMのX-Pro1とX-E1は対応するレンズの側で絞りも制御できる仕様で、それに準拠してXマウントのTouit 2.8/12はEマウント版にはない絞りリングを備えている。絞りリングは1/3段刻みでクリックストップがあり、リズミカルな動きだ。ただし、クリック感が軽めで、期せずして絞りが動いていることが幾度かあった。個体差の可能性もあるが、この軽い動きは好みが分かれるかもしれない。
ピントリングはほどよい重みと粘りがあり、微妙なピント調整もやりやすい。鏡胴デザインはシンプルなテーパー状で、純正レンズフードを付けるとデザイン的に完成する。近未来的な鏡胴は賛否両論あるかもしれないが、ミラーレス機との相性はわるくない。
本レンズはAFに対応している。AF動作は軽快で、純正Xマウントレンズと比較してもストレスなく撮影できた。筆者は日頃からヤシコンマウント、旧コンタックスマウントといったオールドのMFツァイスレンズを愛用しているため、ツァイスレンズをAFで使えるということに、ちょっとした感動すらおぼえた。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。