コーワPROMINARの世界 高画質マイクロフォーサーズレンズの秘密を探る

解像感良し・ボケ良しの大口径標準レンズ「PROMINAR 25mm F1.8」

使い道が多い標準画角 近接撮影でも安心できる高画質

PROMINAR(プロミナー)レンズの魅力を探る本連載。最終回は「PROMINAR 25mm F1.8」の紹介です。標準画角でも一切手を抜かないコーワの究極画質と、使いこなしについてみてみましょう。

コーワPROMINARの世界

25mmレンズの画角は35mm換算で50mmに相当。3本あるプロミナーレンズのなかで、唯一の標準レンズだ。開放F値はF1.8で最短撮影距離は0.25m。マイクロフォーサーズ用標準レンズとして不足ないスペックを備えている。

円筒形のフードは金属製でねじ込み式

浅い被写界深度と美しいボケ味が魅力の標準レンズ

マイクロフォーサーズに正式参入するメーカーが発売する20〜30mmクラスの単焦点レンズは全部で7本。コンパクトさを優先したパンケーキタイプや開放F値がF1を切る超大口径タイプなど、個性派ぞろいの激戦区といえるだろう。

PROMINAR 25mmの開放F値はF1.8。このクラスとしては標準的な明るさで暗い場所での手持ち撮影も余裕でできる。だが、なんと言っても、このレンズ最大の魅力は浅い被写界深度と美しいボケ味だ。

大口径を売り物にする他社製品より数値的には暗めだが、ポートレートなどを実際に撮影してみるとF1.8でも被写界深度の浅さは十分すぎるほど。特にこのレンズはマニュアルフォーカスなのでピントを合わせてシャッターを切るまでの間にモデルがわずかでも動くとピントがずれてしまう。また被写体までの距離が近ければ絞り開放でなくても被写界深度はかなり浅くできるので、ピンぼけを防ぐという意味ではF2.8程度に絞って使うと失敗が防げるだろう。

このほか9枚の絞り羽根により絞りが円形に保たれるので木漏れ日などのボケも丸いきれいな形になるほか、口径食による影響も最低限に抑えられ画面周辺部でもボケの形が崩れにくい。

さらにピント合わせ時に光学系の後群だけを移動させるリアフォーカスの採用で近距離撮影時の画質低下を防ぐなど、特に接写する機会が多いネイチャーフォトにも威力を発揮する。

ポートレートで試写

絞りによる被写界深度の変化

絞り開放から1段づつ絞って撮影。開放時の被写界深度は非常に浅く、ピント合わせの後、ほんの少しでも被写体まで距離が変わるとピンぼけになってしまう。円形絞りの採用で絞っても木漏れ日のボケも丸く保たれるうえ、周辺部のボケも見苦しい形にならない点は高く評価できる。

F1.8 1/320秒 +0.3Ev補正 ISO200 WBオート 仕上がりナチュラル
F2.8 1/200秒  ISO200 WBオート 仕上がりナチュラル
F4 1/125秒   ISO200 WBオート 仕上がりナチュラル

手前のまつげにピント合わせて絞り開放で撮影。横顔を開放で撮影すると被写界深度が浅くなりすぎるので……

F1.8 1/400秒  ISO100 WBオート 仕上がりナチュラル

カメラ側に顔を少し向けて撮影すると良い。

F1.8 1/400秒 +0.3Ev補正 ISO200 WBオート 仕上がりナチュラル

バストアップなど撮影距離が近いときは、絞りを1段ほど絞るとボケが落ち着く。

F2.8 1/640秒  ISO200 WBオート 仕上がりナチュラル
F2.8 1/250秒 +0.3Ev補正 ISO200 WBオート 仕上がりナチュラル

標準レンズの使いこなし

肉眼の視覚に近い自然な遠近感が得られる標準レンズの特徴を活かして撮影。

F4 1/60秒  ISO1600 WBオート 仕上がりナチュラル

奥行きのある被写体を斜めから撮影すると広角レンズのような効果が得られる。

F2.8 1/6秒  ISO1600 WBオート 仕上がりナチュラル

他の2本の広角レンズのディストーション値がプラスであるのに対し、このレンズの値はマイナス0.57%。8.5mmの回で説明した通り、この値はTVディストーションなので通常のデジタルカメラだと約3倍になるが、写真用レンズとしてディストーションの少なさはトップクラスだ。

F2.8 1/100秒 +1.3Ev補正 ISO1000 WBオート 仕上がりナチュラル

手前から奥に行くにしたがって大きくなるLEDのボケが美しく再現された。

F1.8 1/100秒  ISO320 WBオート 仕上がりビビッド

最短撮影距離の0.25mで撮影。

F1.8 1/2000秒  ISO200 WBオート 仕上がりビビッド

椿の花の中央にピントを合わせた。ピント位置より奥にある外側の花びらのボケが柔らかく再現され雰囲気のある写真になった。

F1.8 1/800秒  ISO400 WBオート 仕上がりナチュラル

最後に…

3本のプロミナーレンズが私の手元に届いたのは3月の終わり。それから4ヶ月の間、これらのレンズを使ってきた。

なかでも印象に残るのは8.5mmを最初に使ったときのディストーションの少なさ。とにかくカメラのEVFを覗いただけで、そのすごさが実感できる。デジタルカメラの場合、カメラ側のソフトウェアでレンズの欠点がカバーできるので、これに頼るレンズが増えているが、やはり画質の低下につながる要素をレンズ側で徹底的に排除したレンズは使っていて気持ちが良い。

それからプロミナーレンズのもうひとつの魅力は快適な操作感だ。高い工作精度によって作り出された3本のレンズは大きな回転角により微妙なピント合わせが可能。ピントリングの回転角も約180度に統一され、レンズを交換してもまったく違和感なく使うことができる。

さらに鏡筒はアルミ削り出しによる金属製でピントリングの滑り止めにもゴム素材を用いずローレット加工を施すなど高級感のある作り。カメラを構えたときに左手に伝わる感触は、いちど使うと手放せなくなる。この4ヶ月の間、マイクロフォーサーズカメラで撮影するときはプロミナーをメインにしてきたが、たまにAFレンズを使うと頼りなく感じるようになってしまったぐらいだ。

ただ最後にひとつだけ要望がある。それは電子接点の追加である。プロミナーレンズはマウントに電子接点を備えていないので、レンズの焦点距離情報がカメラに伝わらない。特にオリンパスOM-D E-M5 Mark IIのようなボディ内手ブレ補正を搭載したカメラと組み合わせた場合、レンズ交換の度に焦点距離を手動でインプットしなければならず、これを忘れて悔しい思いをすることが多い。気になったのはこの一点。PROMINARシリーズの充実を期待したい。

(制作協力:興和光学株式会社)

中村文夫

(なかむら ふみお)1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。