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本当にどんなレンズでも背景がぼかせるの?

lastolite「アウトオブフォーカス背景」を試してみた

 8月22日に、マンフロットから発売されたLastoliteブランドの「アウトオブフォーカス背景」は、実に斬新なアイデアの折り畳み式背景キットだ。“Out-of-focus”すなわち「ボケ」の名が示す通り、被写体となる人物の後ろに広げるだけで、背景を大きくぼかした写真がどんなレンズでも簡単に撮れるという。

「アウトオブフォーカス背景」をケースに収納した状態。収納時の直径は約76cmで、この状態なら携帯性に問題はない
ケースから「アウトオブフォーカス背景」を取り出した状態。いわゆる丸レフと同じ容量で展開・折り畳みをする
「アウトオブフォーカス背景」はリバーシブルになっており、両面に別な画像がプリントされている。こちらは「夏の葉/シティライツ」の例
ラインナップは2種類が用意されており、こちらは「秋の葉/海辺」の例。今回の試写ではこちらを使用した

 1枚2役のリバーシブルになっており、現在発売されているラインナップとしては、「秋の葉/海辺」と「夏の葉/シティライツ」の2種類が用意されている。「秋の葉」は紅葉した樹林の中、「海辺」は強い日差しに照らされた海辺、「夏の葉」は緑に茂る木々の木漏れ日、「シティライツ」は煌びやかな都市の夜景、をそれぞれイメージしたものだろう。

 ポイントは、どの絵柄も大口径の中望遠〜望遠レンズで撮影したかのように大きくボケてプリントされているところ。これならば、F値がそれほど大きくない一般的なキットのズームレンズなどでも、背景を美しくぼかしながら(ボケたように見せかけながら)、それでいて人物自体は深い被写界深度の中にバッチリピントをキメた写真が撮れるはずだ。

 が、果たしてそんなに上手くいくものだろうか?

 価格は税別で各2万7,000円、大きさは幅が1.25mで高さが1.55m(収納時は直径76cm)と、決して安いとは言えず、小さいとも言えない。気軽に使いたい一般使用において、価格と大きさが効果に対してどれほど見合うものなのか? 試してみた。

 ◇           ◇

「アウトオブフォーカス背景」を紹介するウェブサイトを見てみると、スタジオのような場所でモデルの背後にセットされており、周りにはライトスタンドや外部ストロボなども置かれている。どうやら本製品は、本来、室内での使用を主に想定しているようだ。

 しかし、今回の目的は、背景が大きくボケた写真を、いかに手軽に撮れるかどうかを確認するところにある。なので、レフ板やストロボは使用しないこととした。試用した「アウトオブフォーカス背景」の種類は「秋の葉/海辺」である。

試写その1は、EOS 70Dと16-300mm F/3.5-6.3 Di ll VC PZD MACROの組み合わせで行った

 まずは、APS-Cサイズのデジタル一眼レフカメラキヤノンEOS 70Dで試してみた。レンズはタムロンの高倍率ズーム16-300mm F/3.5-6.3 Di ll VC PZD MACROである。広角から望遠まで1本でこなす本レンズをデジタル一眼レフにつけて、旅行や普段使いの撮影を楽しんでいる人も多いことだろう。

背景なしで普通に人物撮影をした例。

 被写体までの距離は約3m、絞り優先AEでF5.6に設定。「アウトオブフォーカス背景」を使わずに普通に撮影した写真では、ある程度背景がボケるものの、大きなボケというには程遠い。背景の配置も乱雑だ。こう言ってしまってはなんだが、記念撮影にもなっていないつまらない写真である。

「アウトオブフォーカス背景」を人物の背後に入れると、一気に背景が大きくボケたポートレートに変身! まるで青く輝く海辺にいるようだ

 そこで、「アウトオブフォーカス背景」を被写体の背後に入れると……見事! 綺麗な海辺で撮ったかのようなポートレートに生まれ変わった! 被写体の顔に当たった強い太陽光と、背景の青く輝く“海辺”とのマッチングはなかなかのものだと思う。正直、スーツ姿の男性では違和感を覚えるが、もしも夏らしい服装の女性だったらかなりOKな結果になったことだろう。

「アウトオブフォーカス背景」を使って撮影をしている状況

 ちなみに、上の写真を撮影した状況をみると、あまりにも現実感が強く、結構間抜けかも知れない。しかし、そんな近所の“現実感”を、美しい“ボケ感”に変えてしまうのが、本製品のすごいところ言えるだろう。

試写その2は、LUMIX DMC-GM1とLUMIX G VARIO 12-32mm / F3.5-5.6 ASPH. / MEGA O.I.S.の組み合わせで行った

 さて、つぎに、マイクロフォーサーズのミラーレス機パナソニック LUMIX DMC-GM1で同じように撮影してみた。レンズはキットズームのLUMIX G VARIO 12-32mm / F3.5-5.6 ASPH. / MEGA O.I.S.。4/3型センサーはAPS-Cよりも小さいので、一般的にキットズームとの組み合わせでは先の例よりもボケを得にくくなると考えてよい。

背景なしでの撮影。背景のボケはあまり大きくない

「アウトオブフォーカス背景」を使わない状態では、やはり背景のボケは小さい。

撮像センサーはAPS-Cサイズより小さなマイクロフォーサーズ規格のカメラでも、バッチリ背景が大きくボケたポートレートが撮れた

しかし、「アウトオブフォーカス背景」を被写体の背後に入れると、EOS 70Dの場合と同じように、背景が大きくボケたポートレートに変身する。使用するカメラとレンズにかかわらず、どこでも簡単にボケ表現を演出できる効果は本物と思ってよいようだ。

試写その3は、OM-D E-M1とM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROの組み合わせで行った

「アウトオブフォーカス背景」はリバーシブル仕様で、両面にそれぞれ異なる背景がプリントされているため、「海辺」の反対の「秋の葉」も試してみた。使用したカメラはOLYMPUS OM-D E-M1、レンズはM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO。

「海辺」をリバースさせて「秋の葉」を背景にして撮影。人物に当たった直射光と背景の光の方向が異なり違和感がある

 ところが、撮影した画像は人物と背景の光の状態に違和感がある。「秋の葉」は紅葉の中の木漏れ日が玉ボケとなったシーンをイメージしており、往々にしてそうした状況は逆光条件である。順光で人物の顔に影が落ちた状況では、背景と光の向きが一致しないのが違和感の原因となっているのだろう。

被写体となる人物に日陰に移動してもらい、光の方向性がないフラットな条件にした
フラットな光線状態で「秋の葉」を背景にしたところ、人物と背景の違和感が軽減され、紅葉の樹林の中で撮影したかのような効果が得られた

 そこで、人物に当たる光が方向性を意識しなくてもよいように、人物に日陰に移動してもらって再度撮影したところ、背景と人物の光の向きの違和感はかなり軽減された。簡単に綺麗な背景を作れる本製品であるが、撮影の基本である被写体にあたる光の方向性については矛盾のないように気をつける必要がある。

RAW現像時にホワイトバランスを日陰に変更。青味がかっていた人物の色味が背景と同じ温調となり、さらに背景と馴染ませることができた

また、背景の温調な赤味と、人物の冷調な青味にも違和感が残っていたので、撮影後のRAW現像時にホワイトバランスを「日陰」に変更したところ、背景と人物はさらに馴染んで感じられるようになった。

「アウトオブフォーカス背景」に不要な影や背景の縁が写り込んでしまうことが意外に多かった。撮影者の不注意であるが、撮影時にはよく気をつけるようにしたい

 今回のように、屋外で「アウトオブフォーカス背景」を使っているときに多かったのが、背景に影が写り込んでしまうという失敗だ。被写体となる人物の陰が背景に写り込んでしまうこともあった。室内であっても、照明が背景に不均等に当たっていると、結果として光のムラとなって表れるので、撮影時は背景に均等に光が当たり、影が写り込んでいないことをよく確認したい。

 製品の縁が画面に入ってしまうことにも気をつけたい。サイズ自体は大きな本製品であるが、人物の背景としては割とギリギリの大きさなので、油断していると四隅に製品の黒い縁が入ってしまうことがよくあった。

 広げた本製品を折り畳んでケースに収納するのにはある程度のコツと慣れが必要である。いわゆる丸レフを折り畳むのと同じ要領なのであるが、経験したことがないと、どうやって畳めばよいか、頭を悩ますことになるだろう。また、大型の商品の隅と隅をもって畳む必要があるため、1人で折り畳むのは難しい。外出して撮影する場合は、一緒に片づけを手伝ってくれる協力者を確保してから広げた方がよいだろう。

 ◇           ◇

「本物の美しい背景とくらべても遜色がない」、とまではさすがにいかないが、大きくボケた綺麗な背景を手軽に写すことができる効果は思った以上に大きかった。時間や場所を選ぶことなく、手もちのレンズを使って、さまざまなシーンのポートレート撮影が可能となる、まさに新発想の背景キットといっていいだろう。

 影の写り込みや照明のムラなど、基本的な撮影の注意はあるが、それさえ気をつければ誰でも簡単に大口径望遠レンズで写したような写真が撮れるのは確かだ。

 ただ、「それでは何を目的としてこのアウトオブフォーカス背景を使いますか?」ということが問題となってくる。考えられるのはアパレル関係の商品撮影や、ウェブ上で使うイメージ写真などであるが、一般の人にとって本商品の使用目的は限られたものとなるのではないだろうか。

 そうした撮影の目的がハッキリしているなら、安くはない本商品の価値を、費用対効果として見いだすことができるだろう。

 いずれにしても、あれば便利に使える興味深い機材であるのは間違いない。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「エイレホンメ 白夜に過ぐ」(リコーイメージングスクエア新宿)など。