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“改造マウント”に「輪っか遊び」の極地を見る

アダプティストPENTAX K+Multi-Mount

 アダプティストはシンガポールの新興アクセサリーメーカー。現時点の主力商品は、PENTAX K+Multi-Mount(以下PK+MMと表記)。ホームページによると、世界的なペンタックスの情報交換サイト、PENTAX FORUMSに投稿したアイデアが話題になり、これを製品化するために設立された会社であるという。

PK+MMは、ペンタックスKマウントボディをマルチマウント化する画期的なアクセサリー。これを使えば、ペンタックスKに加え、コニカAR、ヤシカ/コンタックス、ニコンF、オリンパスOM、フォーサーズレンズが、アダプターなしで取り付けられるようになる。

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 昔からカメラファンの間で、コニカARマウントレンズがニコンFマウントボディに付くことは広く知られていた。これは偶然の結果に過ぎないが、たぶん両社のレンズとボディを持っていた人が、「なんか似てるなぁ。」と思いながら、試しに付けてみたら付いちゃったということなんだろう。

 アダプティストの設計者も、Kマウントボディと他社製レンズを前にして「内径はほとんど変わらないに、なんで嵌まらないんだ?」と試行錯誤しているうちに、「おっ! マウントの爪の形をちょっと変えれば、付くじゃん」という結論に達したのではないだろうか。

Adaptist PENTAX K+Multi-Mount。防塵防滴ボディ用のPK+MM WR(117シンガポールドル)、非防塵防滴ボディ用(98シンガポールドル)の2種類がある。日本への送料は5シンガポールドル。ニコンFマウント用シム2枚(写真左)とドライバーがサービスで付く。写真はWR。マニュアルがWebにある

 なんと言っても、クラシックレンズファンの理想はマルチマウントボディ。昔、コシナがマウント交換式一眼レフを作ろうとして断念した話を耳にしたことがあるが、あらゆるマウントのレンズが取り付けられるボディがあったら、どれほど便利だろう。まさにアダプティストはこんな夢を叶えてくれる究極のリング。「輪っか遊び」の到達点だ。

 PK+MMはカメラ側のマウントを交換して、ボディをマルチマウント化してしまう常識破りの製品である。改造対象はペンタックスKマウントボディ。既存のマウントを外し、このリングに取り替えれば、Kマウントのほか、ニコンF、オリンパスOM、ヤシカ/コンタックス、コニカAR、フォーサーズレンズが、そのまま装着できるようになる。

 だがここで気を付けて欲しいのは、あくまでも「付く」という機能しか持っていないこと。とにかく使用上の制約が非常に多く、「マウントアダプターの延長」くらいの軽い気持ちで手を出すと痛い目に遭う。

 たとえばフランジバックはKマウントのままなので、無限遠が行きすぎたり、接写しかできいないレンズもある。さらに致命的と言えるのが、Kマウント以外では、レンズのロックが利かないこと。気を付けないと使用中にレンズが外れて落下することもある。とにかく欠点を数え出したらキリがないという欠陥商品スレスレの危ないリングだが、これを補って余りあるほど、不思議な魅力(魔力?)を備えている。

 というより「やること全部やっちゃったよ。ほかにすることないし」といった「輪っか遊び」を極めた粋人向けの商品というべきかも。

PK+MMの装着方法

マウントを上に向けてボディを置き、付属のドライバーで5本のネジを取り外す。このとき、外したネジをミラーボックス内に落とさないこと。ピンセットがあると便利だ(※保証期間中のボディでも、この時点でメーカー無償サポートは受けられなくなる)。
防塵防滴ボディのマウント外周にはOリングが付いていて、ボディにぴったり嵌まっている。マウントを外すときはマウント内側のマウントとボディの隙間にマイナスドライバーなどを差し込み、少しずつ隙間を広げるようにして外すと良いだろう。なお非防塵防滴ボディのマウントは簡単に外すことができる。またマウントを外した状態でカメラを立てると、接点の部品などが落ちることがあるので、カメラは寝かせたままで作業する。
AFカプラーと電子接点に位置を合わせてPK+MMをカメラにセット。外したネジを使って固定する。ネジを締めるときの順番は対角線上が鉄則。マウントの平行が保たれるよう少しずつ締める。
PK+MMを取り付けたペンタックスK-x(左)と、PK+MM WRを取り付けたK-7(右)。リングの外径が異なるので両者に互換性はない。PK+MMは、*istDからK-01までの非防塵防滴ボディ用で、KAFマウントのフィルム用一眼レフにも対応。PK+MM WRはK10D以降の防塵防滴ボディ用だが、Oリングが省いてあるので防塵防滴は保証されない。
ボディから取り外したオリジナルのマウント(左)とPK+MM WR(右)。よく見るとマウント内側の爪の形状が、わずかに違う。またPK+MM WRは、ニコンFマウントレンズの絞りリングとの干渉を防ぐため段が付いている。

使用方法と作例

 レンズの取付には慣れが必要。指標はあくまでも目安なので、レンズによっては上手くはまらなかったりする。また同じマウントのレンズでも、仕様の違いによりボディ側を傷付けたり、きちんと嵌まらなかったりするが、これもご愛敬。何よりも寛容の精神が大切である。また使えるレンズの重量はKマウントを除き重量800gまで。

PK+MMにはレンズ取付位置の指標が赤いペイントで表示してある。指標は全部で3つだが、レンズロック用ピンも指標の役目をするので、実際の指標は全部で4カ所。レンズによってこれを使い分けなければならず、意外と面倒くさい。

ペンタックスKマウント

Kマウントレンズは通常通り着脱でき、AF、AEなど、すべての機能が作動する。ただしオリジナルに比べるとガタがあり、焦点距離の短いレンズでは片ボケが起こる可能性が---- なおノーマルタイプよりWRタイプの方がガタが少ない。

ニコンFマウント

説明書には、APSフィルムカメラ(プロネア)用を除くすべてのFマウントレンズが使用可能とあるが、AIレンズの中には、絞りリングにある連動ピンなどがボディと干渉して取付不可能のものがある。絞りは手動絞り、絞り優先AEが利用できる。なお測光値に誤差が出ることあり、多くの場合、露出補正が必要になる。
使用できないAIレンズ。緑の矢印で示したピンがミラーボックスと干渉して取付不可能。赤い矢印で示した絞り連動ピンも、ボディ側をこすることがある。
ニッコールレンズを取り付ける際は、ボディとの干渉を防ぐ付属のシム(樹脂製スペーサー)を使用。ただし干渉は完全に防げない。
レンズ取付指標(黄色い〇印)は、ペンタックスK用と共通。ニコンFマウントは、本来反時計方向に回転させて固定する仕様だが、PK+MMでは時計回りで装着。レンズは、ほんのわずかしか回転せず「マウントの爪に引っ掛ける」といった感じになる。
「オートニッコールO 35mm F2」絞り開放だと柔らかな描写になる。このレンズは、きちんと固定できず、使っていて不安になる。F2 / 1/1,250秒 / -0.7EV / ISO400 / カスタムイメージ:鮮やか / K-7

フォーサーズマウント

フランジバックが短いので近接撮影専用。絞りは電子式なので開放専用になる。またパワーフォーカス式なので手動でピント合わせができず、実用性はそれほど高くない。レンズ取付指標はペンタックスKと共通。回転角は約60度でガタつきは少ない。
「ズイコーデジタル14-45mm F3.5-5.6」設計上APS-Cサイズのイメージサークルはカバーしないが特に問題なく使用できた。いずれにしても、ピント合わせと絞りの変更ができないのはつらい。絞り開放 / 1/125秒 / -0.7EV / ISO200 / カスタムイメージ:鮮やか / K-7

コニカARマウント

フランジバックが短いので近接撮影専用になる。レンズのヘリコイドを∞に合わせると60cmくらいにピントが合う。絞りは手動絞り、絞り優先AEが利用できる。
黄色い〇印のレンズ取付指標を利用し時計回りで装着。回転角は約60度で意外としっかり装着できる。絞り連動ピンがボディと干渉するので、着脱時は絞りリングをEEに合わせる必要がある。
「ヘキサノン52mm F1.8」コントラストは低めだが、プラス補正したことで、パステル調の描写になった。F5.6 / 1/50秒 / +1.3EV / ISO200 / カスタムイメージ:鮮やか / K-7

ヤシカ/コンタックスマウント

フランジバックはペンタックスKと同じなので∞からピントが合う。ただしレンズ側の絞り連動ピンがミラーボックス内の部材に当たるので絞りは常時開放になってしまう。そのため絞りを絞るときはレンズ全体を反時計方向に回さなければならず、レンズ落下の危険性が増す。絞り優先AEが利用可能。
黄色い〇印のレンズ取付指標を利用し時計回りで装着。回転角は約35度。きちんと固定できないので手で押さえながら使う。
「プラナー50mm F1.4」逆光のためややフレアっぽいが、描写は非常にシャープ。F4 / 1/250秒 / ISO400 / カスタムイメージ:鮮やか / K-7

オリンパスOMマウント

フランジバックはペンタックスKより少し長く、∞にピントが合うがオーバーインフになる。絞りを絞るときはレンズ側のプレビューボタンを押す必要がある。優先AEが利用可能。またレンズのマウント面がボディ側と密着するのでMモードも作動する。
黄色い〇印のレンズロックピンを取付指標として利用し時計回りで装着。回転角は約40度で、固定感はまずまず。プレビューボタンがマウントの真下に来るので使い勝手が良くない。
「ズイコーオートズーム35-70mm F4」発売当時、人気の高かった標準ズーム。コントラスト、シャープさともに申し分ない。F4 / 1/2,000秒 / +0.3EV / ISO200 / カスタムイメージ:鮮やか / K-7

【8月29日】記事初出時、ニコンFマウントレンズの使い方に関し「説明書には、APS-C用を除くすべてのFマウントレンズが使用可能とあるが」と記載していましたが、正しくは「APS-C用」ではなく「APSフィルムカメラ(プロネア)用」でした。該当部分を修正しました。

中村文夫

(なかむら ふみお)1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。