【 2016/05/31 】
【 2016/05/30 】
【 2016/05/27 】
【 2016/05/26 】
【 2016/05/25 】

キヤノンGP-E2

ついに登場したEOS用の純正GPSレシーバー

 キヤノンから4月28日に発売されたGPSレシーバー「GP-E2」は、デジタル一眼レフカメラEOSシリーズ用として開発されたキヤノン初のGPSユニットである。

 これまでいくつかのメーカーからデジタル一眼レフカメラに装着するGPSユニットが発売されていたが、キヤノン純正の製品は存在せず、撮影画像に位置情報を付与するには、他社製のGPSロガーとの組み合わせで使用するしかなかった。それだけにEOSユーザーには待望の製品だといえる。

 GP-E2では、地球の衛星軌道をまわるGPS(グローバルポジショニングシステム)衛星より発信されている電波信号を受信することにより、受信機が現在いる場所を確認することができるというシステムを利用している。GPSから得た位置情報は緯度・経度の情報としてGP-E2内のメモリーに記録される。この情報を基に、後述する地図アプリケーションと照らし合わせることで地図上に所在地を表示することができるのだ。

GP-E2の商品構成。GP-E2本体、携帯用ケース、収納ケースなど。GPS機器使用の規制内容書も添付する。

 GP-E2に対応しているカメラは、この記事執筆時点において実質的にはEOS 5D Mark IIIのみである(最新ファームウェアへのバージョンアップが必要)。対応予定のカメラはこれ以外にもEOS-1D X、EOS 7D、EOS Kiss X6iがある。

 GP-E2のデザインはシンプルで、電源&モード切り換えスイッチはEOS 5D MarkUまで採用されていたメイン電源スイッチと似たデザイン。スイッチはOFF/ON/LOGの3ポジションとなる。外形寸法は約54.3×72.9×44.2mm。質量は約81g(電池含まず)。

 電源は単3型のアルカリ乾電池またはニッケル水素充電池、リチウム電池が使用できる。

GP-E2本体。 カメラにはクイックシューにクリップオンストロボを固定するのと同様に装着する。スライド式の脱着ロック付き。
電池室の蓋を開けたところ。

 ひとつめはホットシューを介して取り付ける方法。シュー接点には4つの接点がある。シュープレートは金属を使用。シュー部分はラバーのスカートで囲われている。メーカーに確認したところ、GP-E2本体はEOS 5D Mark IIIと同等の防滴構造となっているとのことだ。

 もうひとつは、ケーブルにてカメラと接続する方法。ラバー蓋を開けて中のDIGITAL端子とカメラのDIGITAL端子を付属の接続ケーブルで接続する。この状態ならカメラのホットシューにクリップオンストロボを装着して併用することも可能だ。

GP-E2本体裏面のシュー接続部。4つの接点が見える。 カメラとの接続端子。シューを使用しないでケーブルにてカメラと接続する方法もある。

 ちなみにEOS 7Dではアクセサリーシューに装着しただけでは使用できず、必ずGP-E2に同梱された接続ケーブルで接続する必要がある。

 GP-E2内に記録されたGPSログをPCに転送する際にも、同じくDIGITAL端子にカメラ同梱のUSBケーブルを接続してPCのUSB端子と接続する。

 キヤノン純正品だけにデザイン、装着感共によい。シューロックをしっかりしておけば誤って外れる恐れもなさそうだ。シューロックのスライドにもプッシュ式ロックボタンがある。

 EOS 5D Mark IIIにGP-E2を装着してみた。クリップオンストロボより小型で軽量なので、装着したまま持ち歩いても邪魔に感じることもない。

 GP-E2を使用するには、カメラ側での設定が必要になる。今回はEOS 5D Mark IIIとの組み合わせで説明していこう。

 電源スイッチを「ONポジション」または「LOGポジション」にするとGPS電波を捕捉後、位置情報の取得が可能となる。

 BATT.ランプで電池状態、GPSランプでGPS電波の受信状態を表示。電源を入れた直後はGPSランプが速く点滅する。GPS信号を補足できたら点滅が3秒間隔とゆっくりになる。また一定時間が経つと電池消耗を抑えるため6秒間隔の点滅となる。

BATT.とGPSの2つのインジケーターで受信状態を表示する。 EOS 5D Mark IIIのメニュー画面で表示されるSET UP2画面の「GPS機器の設定」にて各設定を行なう。

 GP-E2では直近に得たGPS信号をもとに現在の位置情報を計算して記録する。従って定期的にGPS信号を更新する必要がある。GPS信号の更新は手動と自動のどちらかを選択可能で、自動更新の場合は更新間隔を設定する。更新間隔が短いほど移動している場合でも正確な位置情報を得ることができるが、それだけ電池の消耗も早くなる。

自動更新を選ぶと、更新間隔を指定できる

 GP-E2には電子コンパス機能も搭載されている。GP-E2をEOS 5D Mark IIIに接続することで、地磁気などから得た情報を基にカメラが向いている方位を撮影データに記録することができる(EOS 7Dは対象外)。

 また電子コンパスを使用すると、カメラの電子水準器表示と一緒に、方角を表示する機能も利用できる。真北をN0°と表示し、真東をE90°という具合に方位が目盛りで表示される。

電子コンパスの設定メニュー。 EOS 5D Mark IIIの電子水準器表示に方位情報が追加される。

 電子コンパスは、地磁気センサーと3軸の加速度センサーからの情報を得ることで方位を測る。ただし地磁気は測定する場所の環境などによりさまざまな影響を受ける。さらに地球の地磁気によって得られる北の方位は、実際の地球の北極点からずれた位置を指すことが知られている。これは地球の地磁気におけるN極(磁北)が北極点(真北)とは異なるためだ。日本の位置からでは現在、およそ5〜10度の偏差がある。

 そこで電子コンパスを使用する際には、これらの補正(キャリブレーション)を使用する場所であらかじめ行なっておく必要がある。こうした補正の必要性について使用説明書には書かれていないし、キヤノンの製品情報ページにも記載されていない。メーカーに直接問い合わせることでやっと確認することができた。

電子コンパスのキャリブレーション方法示す画面。周囲の磁気の影響や磁北と真北のずれなどを補正することができる。 ライブビュー撮影画面に撮影設定情報を表示させたところ。方位を示すアイコンも表示されている。このアイコンからはカメラが東を向いていることが判る。

 GPS信号を利用してのカメラの時刻合わせもできる(EOS 7Dは対象外)。GPS衛星には原子時計という、高精度な時計が搭載されており、GPSの位置情報を得る仕組みの一要素となっている。その時刻情報をGP-E2で受け取り、それをカメラに反映させる仕組みだ。カメラに搭載された時計はさほど精度が高くない。意外な程頻繁にずれるので、この機能はとても便利だ。なお、時刻設定は5基以上のGPS衛星からの信号を受信している場合にのみ可能となる。

 ただし「EOS Utility」などで複数カメラの時刻管理を行なっている場合は、カメラ間の時刻差の原因となるので「しない」にしておいたほうがよいだろう。

時刻設定を自動更新にしておけば、GPSからの信号を得ると同時にカメラの時刻合わせも行なってくれる。

 正常にGPSからの信号を受信できていれば、「GPS情報の表示」に現在地の緯度、経度、標高、方位、UTC時刻、衛星からの信号の補足状態が表示される。なお標高は信号の補足状態が「3D」表示のときのみ記録が可能。「2D」表示の時は標高は記録されない。

  GP-E2には2つのモードがある。ひとつは撮影した画像に自動的に位置情報を付与する「ONポジション」、もうひとつはGP-E2が移動した軌跡を、定期的に記録した位置情報を基にログファイルとして保存する「LOGポジション」だ。

 ONポジションはGP-E2に対応したEOS DIGITALカメラ専用のモードで、GPS信号をもとに導きだした位置情報を撮影と同時に画像のExifデータに緯度・経度として記録できる。GPS信号を正常に受けていることを確認した上で、通常と同じように撮影を行なう。位置情報が記録されるのはJPEG、CR2(RAW)、動画ファイルだ(EOS 7Dの動画ファイルには位置情報は記録されない)。

EOS 5D Mark IIIの再生画面で位置情報を表示したところ。撮影時刻はUTC(協定世界時)となる

 位置情報が記録された画像は、GP-E2付属の地図ユーティリティーアプリケーション「Map Utility」で位置情報と写真を地図上に表示させることができる。

 Map Utilityを起動して「ファイル - 画像の追加」にて表示させたい画像を追加すると、地図上に赤いピンがマッピングされる。ピンをクリックすると画像を表示できる。さらにメニューから「ツール - 位置情報詳細の表示」を選択すると、画像の詳細な位置表示が記されたウインドウが開く。

位置情報付きの画像をMap Utilityに画像を読み込ませたところ。方位も表示される

 一方LOGポジションは、衛星からの電波を受けられる状態を保ち移動することにより、Map Utilityの地図上にその軌跡を表示させることができる。これはGP-E2の初期設定時に設定した「位置情報の更新間隔」に伴い、自動的にGP-E2内のメモリーに定期的に記録された位置情報を地図上に線で繋ぐことで移動経路を表示している。

 この際、GP-E2に記録された位置情報はLOGポジションをONにしてからOFFにするまでがひとつの「ログ」として記録される。また、LOGポジションで撮影すると、撮影画像への位置情報付与とログファイルの記録が同時に行なえる。

 生成されたログは、GP-E2をUSB経由でPCに接続することでPCに取り出せる。Map Utilityの「ファイル - ログファイルをGPS機器から読み込み」メニューで読み込ませることが可能だ。

GP-E2から読み込んだログファイルを選択すると地図上にGP-E2を携え移動した軌跡が赤い線で表示される。

Map Utilityでは地図を航空写真および航空写真に地図を重ね合わせた状態での表示もできる。

 GP-E2をカメラに装着せず、単体で持ち運ぶことでGPSロガーとして使用することもできる。スイッチをLOGポジションにすると、カメラに装着しているときと同じように定期的に位置情報が自動記録される。そのログをMap Utilityで取り込むことで同様に軌跡を表示させることが可能だ。

 またGP-E2をカメラに接続せずに撮影した画像でも、LOGポジションにしている間に撮影した画像なら、PCへ取り込んだ後にMap Utilityを使って画像に位置情報を付与させることができる。ただし位置情報を付与できる画像はキヤノンEOS DIGITALカメラで撮影した画像(JPEG、CR2)のみとなる。また動画ファイルにも位置情報を付与することができる(EOS 7Dは対象外)。

ログを利用することで、GP-E2に対応していないEOS DIGITALにも位置情報を追加できる。ただしカメラの時計は正確に合わせておきたい

地図上から選んだ任意の場所の位置情報を画像に付与することもできる。逆に位置情報を画像から削除することも可能。

Map Utilityには、Google Earthなどで利用できるKMLファイルへの変換機能もある

 GP-E2をカメラに取り付けずに持ち運ぶ際には付属の携帯ケースが便利だ。ケースに入れたままでのスイッチ操作や、USBケーブルの抜き差しが可能。また、ズボンのベルトに通して固定することもできる。

専用につくられたケース。作りはしっかりしており、汚れや傷の防止にも効果的。 フラップは面ファスナーで開け閉めできる。USB端子へのアクセスも可能。ただし電池交換はケースから出して行なう。
裏面にはベルトなどが通せる環状フックもある。

 GP-E2を使いはじめてから1カ月ほど経つが、EOS 5D Mark IIIとの組み合わせにおいては非常に扱いやすい製品だ。GP-E2の設定もカメラメニューから行なえるのでとても判りやすく、設定ミスも起きにくい。1日中LOGポジションにしたまま持ち歩いても電池切れすることもなく、位置情報の更新間隔を長めにしておけば数日間の使用も可能な様子だ。

 肝心の位置情報取得の精度だが、複数のGPS機器を一緒に持ち歩いて緯度・経度を比較したところ、いずれもほぼ一致した結果となった。周囲を山や高いビルなどで囲われて衛星からの信号が遮られてしまうような場所を除けば、十分な精度となっていると判断できる。

 ただし記録された標高の情報にはかなりのばらつきが見受けられる。同じ位置で時間をあけて複数回撮影してもその都度に標高が異なって記録されることがあった。また高さがあらかじめ判っている展望台の最上階にて測位した標高が、実際よりも低く記録されることもあった。GP-E2での標高算出は複数のGPS衛星からの信号を得ることで計算されるものだそうだ。この際の衛星の配置状況などで誤差が出るものと思われる。この点から標高は目安程度と考えておいたほうがいいだろう。

 電源を入れた後、GPS衛星からの信号を補足するには約1分ほどかかるが、一度補足すれば信号を安定して捉えることができているようだ。1日をかけて撮影していた画像のExif情報を見る限り、位置情報が記録されていない画像は見当たらなかった。

 また自動車の助手席にカメラにGP-E1を装着した状態で置いておき、位置情報を記録させながら移動してみたが、途切れることもなく記録され続けていた。もっとも条件によってはGPS信号を受信できない状況も考えられるが、印象としては比較的感度は良い方だと思われる。
 
 これまでにもGPS内蔵のコンパクトデジタルカメラやGPSロガーなどを使用してきたが、GP-E2の登場で、EOS DIGITALでの撮影でも位置情報が撮影と同時に記録できるようになったのはありがたい。対応カメラの少なさが難点といえるが、今後発売される機種では積極的に対応していってもらいたい。




礒村浩一
(いそむらこういち)1967年福岡県生まれ。東京写真専門学校卒。広告プロダクションを経たのちに独立。人物から商品、建築、舞台など幅広く撮影。近年は自然と人の営みをテーマに作品展/セミナー/ワークショップを各地にて開催。Webサイトはisopy.jp Twitter ID:k_isopy

2012/6/12 14:38