デジカメドレスアップ主義:ドレスアップギア製品改良の美学

パナソニックLUMIX DMC-GF2 + Gゾナー T* 90mmF2.8
Reported by澤村徹

  • ボディ:パナソニックLUMIX DMC-GF2(ファインレッド)
  • レンズ:カールツァイス Gゾナー T* 90mm F2.8
  • マウントアダプター:muk select M4/3系ボディにコンタックスGマウント
  • ストラップ:weiche Brise センターワイドストラップ[12MM~38MM バックルタイプ・ヴィンテージスタッズA]
  • ストラップパーツ:weiche Brise カメラ用ストラップパーツ/コードバン(角穴ベルト式)
  • ケース:Aki-Asahi GF2用レザースナップケース(ライトキャメル)
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 本連載では様々なドレスアップギアを紹介しているが、特にショップブランド的なメーカーの製品を取り上げることが多い。これらの製品は、メーカーならば作り手、販売店なら選び手の顔が見え、大手メーカー製とはひと味ちがったおもしろさがある。中でも興味深いのが製品改良の過程だ。ファーストプロダクツは創意工夫が際立つものの、時として使い勝手が犠牲になりがちだ。これらが改良を重ね、ユーザーフィードバックを反映していく様は、物作りのダイナミズムを感じさせる。そこで今回は、改良点に着目しながらドレスアップギアを紹介していこう。

Aki-Asahi GF2用レザースナップケース

 Aki-Asahiのレザースナップケースは、ステッチの美しさ、そして装着時のフィット感に定評がある。いわゆるレザークラフト系の工房だが、その製造アプローチは独特だ。まずステッチから見ていくと、ステッチ用のネン(ライン)をレザーに付けるために専用の治具を作る。この治具は、わかりやすくいうと木型だ。切り出したレザーパーツを治具に押しつけると、外周にそってステッチ用のラインが付く。こうした下処理のおかげで美しいステッチが縫えるわけだが、この治具自体の作り込みが突出しているのだ。

グリップ部の浮きが最小限に抑えられているのは、革の間にステンレス板を挟んでいるからだ外部ファインダー専用ポートが隠れているが、そのぶん抜群のフィット感を実現している

「3Dモデリングソフトで治具を設計しています。そのデータを元に3D切削機で木材を削り出し、正確な治具を製作します」(Aki-Asahi代表、中村陸雄氏)

 レザーパーツの設計ならいざ知らず、いわば下処理の道具を作るためだけに、これだけの手間をかけている。もはやステッチにかける執念といえるだろう。

カラーレザー(左)は9,200円。ダークタン/ライトタン(中央)は1万200円。ブライドルレザー製は1万300円(右)治具に革を押しつけ、ステッチ用のラインを付ける。この治具ひとつにかける熱意がハンパではない。(C)Aki-Asahi

 すぐれたフィット感も地道な改良の賜物だ。レザーは厚みがあるため、どれだけ正確に採寸しても、レザーがたわんでボディとケースの間に隙間が生じてしまう。

「革の浮きを防ぐために、液晶面の周囲は表革と裏革の間にPET板(プラスチック板)を挟みます。こうすることで、背面の平滑性をキープできます。グリップ部にはステンレス板を挟み、グリップにそった形状を保つように配慮しています」(中村氏)

 こうした工夫で革の浮きを防ぎ、ボディにしっかりとフィットしたケースができあがる。ハンドメイドとマシンメイドを巧みに組み合わせている点が、Aki-Asahi独特の製作スタイルといえるだろう。

weiche Brise センターワイドストラップ

 今回取り上げたセンターワイドストラップは、weiche Briseがブランド立ち上げ時にリリースしたものと同じデザインだ。当初は裏側がむき出しでスタッズのピンが見えていたが、この春からすべて裏革付きに仕様変更することになった。

バックル付きのセンターワイドストラップは1万5,435円。裏革付きだが価格は据え置きだ。ストラップパーツはひとつ1,365円奥が従来型の裏面、手前が新型だ。裏革付きでもビンテージ志向のコンセプトは変わらない

「初期のセンターワイドストラップは、ビンテージ感を出すために昔ながらの製法で作っていました。とはいえ、カメラストラップは衣類が薄いと摩擦が気になるアイテムです。裏革をあて、より使いやすい仕様に変更しました」(weiche Brise代表、成田昌輝氏)

 注目すべきは、そのていねいな仕上げだ。表と裏、2枚の革が貼り合わせてあるのだが、注意深く見ても境目が見当たらない。

「接着剤がはみ出さないように、分量に細心の注意を払っています。貼り合わせもしっかり圧をかけ、剥がれないように気をつかっています。その上でコバ(革の切り口)を丹念に磨き上げ、一体感のある裏革付きストラップに仕上げます」(成田氏)

 裏革にキャメルレザーを用いているのは、風合いが変化しやすく、短期間でビンテージ感が出てくるからだという。ブランドコンセプトと安全性を、高次元で両立した改良だ。

muk select M4/3用コンタックスGアダプター

 muk selectはいち早くマイクロフォーサーズ用コンタックスGアダプターを取り扱ったショップだ。当初の製品は、小さなダイヤルでピント合わせするタイプで、お世辞にも使いやすいものではなかった。今回取り上げる製品は、フォーカスリングを備えた新型だ。グリスアップしてあるので動きが滑らかで、レンズの着脱も従来製品にくらべて格段に作業しやすい。付加機能付きマウントアダプターのなかでも、特に複雑な機構を備えている。この製品は中国(香港)のマウントアダプターメーカーRJ Camera製だが、中国メーカーの技術力の高さに驚かされる。

新型マイクロフォーサーズ用コンタックスGアダプターは35/45/90mmに対応する。価格は8,800円従来のダイヤル式(左)は操作性に難があったが、新型(右)はフォーカスリング搭載で実に使いやすい

 かつて海外製マウントアダプターといえば、安かろう悪かろうというネガティブなイメージが強かった。現在はコンタックスGアダプターのように複雑な製品も高精度に製造し、店頭に並ぶマウントアダプターも海外製品が増えている。海外製マウントアダプターは、従来よりも確実に高精度になった。しかし、諸手を挙げてよろこべる状況でもないようだ。

「マイクロフォーサーズ用コンタックスGアダプターを例にとると、入荷するロット単位で製品精度にバラつきがあります。全部OKのロットもあれば、全滅というロットもある。複数の工場で製造しているため、工場によってクオリティに差があるようです」(muk select代表、小菅宗信氏)

 昨今ポピュラーになりつつある海外製マウントアダプターだが、精度の安定性という点で少なからず問題があるようだ。では、販売サイドとしてこうした製品とどう折り合いをつけているのだろう。

「届いた製品をひとつずつ検品しています。精度の出ているロットに不良品が混じることもあるので、気が抜けません。マイクロフォーサーズ用オート110アダプターなどは、いつ頃からか無限遠の出ないものが届くようになりました。こうした場合、こちらで研磨をかけて無限遠が出るようにしてから出荷します。マイクロゲージが手放せません(笑)」(小菅氏)

 muk selectには、大手企業から注文が入ることもめずらしくないという。精度の出ている製品に関しては、国内製品と遜色ないと太鼓判を押す人もいるほどだ。反面、よい製品を作っているのに、仕上げがいまひとつで惜しいという意見もある。こうした現状を踏まえると、信頼できるショップで購入するというのが、海外製マウントアダプターとの賢い付き合い方といえそうだ。

 ここでは新型コンタックスGアダプターとGゾナー T* 90mm F2.8と組み合わせてみた。ゾナーはいろいろなマウントで供給されているが、「ゾナーはシャープに写る」というのが定評だ。コンタックスGのゾナーもその定評に違わず、開放から合焦部が力強く立ち上がり、切れ味の良さが実感できる。今回の作例は曇天下で撮影しているが、それでもコントラストが高く、メリハリのある画だ。なお、作例はRAWで撮影し、Lightroomでストレート現像している。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなしのRAW現像画像(JPEG)を別ウィンドウで表示します。
DMC-GF2 / Gゾナー T* 90mm F2.8 / 4,000×3,000 / 1/640秒 / F2.8 / 0.66EV / ISO200 / WB:オート / 90mmDMC-GF2 / Gゾナー T* 90mm F2.8 / 4,000×3,000 / 1/500秒 / F2.8 / 0.66EV / ISO200 / WB:オート / 90mm
DMC-GF2 / Gゾナー T* 90mm F2.8 / 4,000×3,000 / 1/125秒 / F2.8 / -0.66EV / ISO200 / WB:オート / 90mmDMC-GF2 / Gゾナー T* 90mm F2.8 / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 90mm
DMC-GF2 / Gゾナー T* 90mm F2.8 / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F2.8 / 1EV / ISO200 / WB:オート / 90mmDMC-GF2 / Gゾナー T* 90mm F2.8 / 4,000×3,000 / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 90mm


(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp

2011/2/17 00:00