デジカメドレスアップ主義:【特別編】ありそうでなかったミラクルアダプター

ソニーNEX-5 + マイクロフォーサーズ用交換レンズ/マウントアダプター
Reported by澤村徹

  • ボディ:ソニーNEX-5(ブラック)
  • レンズ:フォクトレンダーNOKTON 25mm F0.95
  • マウントアダプター:Hawk's Factory M4/3 MICRO FOUR THIRD MOUNT TO SONY NEX E-MOUNT ADAPTER
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 上の写真を見て、瞬時に違和感を感じた人はなかなかの事情通といえるだろう。ソニーNEX-5とNOKTON 25mm F0.95の組み合わせは、一見するとフルブラックの端正なセットアップだ。しかし、よく考えてみてほしい。Eマウントボディにマイクロフォーサーズ専用MFレンズが付いているのだ。M4/3 TO NEXというありそうでなかった夢のセットアップ、これを実現したがHawk's Factoryのマウントアダプターである。

 Hawk's Factoryは台湾のマウントアダプターメーカーで、アリフレックス、カメフレックス、ロボットなど、ミラーレス機向けのレアなマウントアダプターを得意としている。オールドレンズファンの間では名の通ったメーカーだ。現在のところ日本国内での取り扱いはなく、今回取り上げるM4/3 TO NEXアダプターはeBay経由で購入したものだ。

Hawk's FactoryのM4/3 TO NEXアダプターはeBayで購入した。本体は89ドルで、送料は7ドルだロック機構はアダプター内周にレバーを這わせ、小さなスプリングが組み込んである

 NEXが登場した当初から、マイクロフォーサーズ用レンズを付けるマウントアダプターは要望があった。マイクロフォーサーズの登場でオールドレンズとマウントアダプターがブームになり、NEXはAPS-Cのオールドレンズ用ボディとして一部の注目を集める。しかし、NEX用に改めてマウントアダプターを買い揃えるのはけっこうな出費だ。もしM4/3 TO NEXのブリッジアダプターが登場すれば、マイクロフォーサーズ用のマウントアダプターをすべてNEXで流用できる。NEXとマイクロフォーサーズをクロスオーバーさせるドリームアダプターというわけだ。

 このようにM4/3 TO NEXアダプターはユーザー待望のアダプターだが、登場するまでに思いのほか時間がかかった。その理由として考えられるのは、M4/3 TO NEXアダプターがマウントアダプターメーカーにとって諸刃の剣だからだ。マイクロフォーサーズ用アダプターが流用できるということは、NEX用アダプターの売り上げに少なからず影響する。M4/3 TO NEXアダプターはある種のパンドラの箱なのだ。

 その一方で、技術的な難しさも挙げられるだろう。マイクロフォーサーズのフランジバックは約20mm(一部では19.3mmと言われている)、NEXのEマウントは18mmだ。その差は1mm強しかない。しかもともにバヨネット式マウントなので、薄いアダプターにロック機構を組み込む必要がある。Hawk's FactoryのM4/3 TO NEXアダプターは、こうした難問をクリアして登場した製品だ。今回はこのM4/3 TO NEXアダプターに様々なレンズを付け、動作と使用感をチェックしてみよう。

・マイクロフォーサーズ用AFレンズ

 まずはじめにマイクロフォーサーズ用AFレンズを付けてみた。パナソニックとオリンパスのいわゆる純正マイクロフォーサーズレンズだ。アダプター経由だとAFが効かないのはもちろんだが、これらのレンズは絞りとピント合わせも電子制御しているため、撮影がままならない。装着自体は可能だが、基本的には撮影不可と考えた方がよいだろう。

パナソニックのLUMIX G VARIO 14-45mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.を装着してみた。見た目はよいが、絞りもピント合わせも効かないこのレンズはピントリングがついているが、調節自体は電子制御なので、リングを動かしてもピント合わせできない

・マイクロフォーサーズ用MFレンズ

 次にマイクロフォーサーズ用MFレンズとしてフォクトレンダーのNOKTON 25mm F0.95を付けていた。MFレンズなので手動の絞りリングとピントリングがあり、普段通りに実絞りで撮影できる。ただし、マイクロフォーサーズはNEXよりもレンズのイメージサークルが狭いため、開放絞りから四隅にケラレが発生した。また、無限遠が開放ではわずかに甘く、F5.6あたりでピントがくる印象だ。

レンズの取り付けに若干遊びがあり、ピントリングなどをまわすとレンズが左右に動いてしまうMFレンズはピントと絞りを手動で調節するため、マウントアダプター経由でも支障なく撮影できる
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開放から四隅がケラレているのがわかる。また、無限遠も開放だとわずかに甘い
NEX-5 / NOKTON 25mm F0.95 / 4,592×3,056 / 1/4,000秒 / F0.95 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 25mm
F5.6まで絞ると無限遠でしっかりとピントが合う。フランジバック調整に多少厚みを持たせてあるようだ
NEX-5 / NOKTON 25mm F0.95 / 4,592×3,056 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 25mm

・日本製ライカMマウントアダプター

 今度はブリッジアダプターとしての実用性を見ていこう。要はマイクロフォーサーズ用マウントアダプターを重ねた際の動作チェックだ。はじめに日本製のレイクオールLeicaM-M4/3を試してみた。レイクオールのマウントアダプターは精度の高さに定評がある。無限遠できっちりとピントが合い、初心者にも使いやすいアダプターである。M4/3 TO NEXアダプターと組み合わせてみたところ、開放では無限遠が甘く、F4〜F5.6あたりでピントが合ってくる。M4/3 TO NEXアダプターは無限遠が若干甘い仕様なので、そのためだろう。見方を変えると、レイクオール LeicaM-M4/3がライカMレンズにとってジャストなフランジバックをキープしている証拠だ。

マウントアダプターを2枚重ねしているが、レンズの取り付け、取り外しは普段通り行なえるレイクオールはLeicaM-M4/3は1万9,950円。無限遠の勘所を心得た高精度なマウントアダプターだ
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開放時の無限遠撮影はわずかにピントが甘い。四隅のケラレは発生していない
NEX-5 / ズミクロン35mm F2 RF / 4,592×3,056 / 1/2,500秒 / F2 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 35mm
F5.6まで絞れば無限遠でカッチリとピントが合う。四隅もクリアで気持ちよい
NEX-5 / ズミクロン35mm F2 RF / 4,592×3,056 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 35mm

・中国製Cマウントアダプター

 昨今は中国製のマウントアダプターがずいぶんと増えてきた。中国製アダプターの特徴のひとつは、オーバーインフ気味に設計された製品が多い点だ。このオーバーインフ気味のアダプターをM4/3 TO NEXアダプターと組み合わせるとどうなるだろう。RJ Camera製のCマウントアダプターを組み合わせたところ、開放からほぼジャストで無限遠が出た。今回入手したM4/3 TO NEXアダプターは無限遠が甘かったものの、オーバーインフ気味のアダプターとの組み合わせではそれが幸いしたことになる。RJ Cameraのアダプターはオーバーインフ気味のものが多いので、M4/3 TO NEXアダプターの良きパートナーになってくれそうだ。

NEXはマイクロフォーサーズよりもイメージセンサーが大きいので、イメージサークルの広いスイター50mm F1.4を合わせてみたRJ Camera製のマイクロフォーサーズ用Cマウントアダプターは、muk selectで取り扱いがある。価格は4,500円
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開放絞りから問題なく無限遠が出る。周辺光量落ちでうっすらと四隅が暗くなっている
NEX-5 / スイター50mm F1.4 / 4,592×3,056 / 1/3,200秒 / F1.4 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 50mm
F5.6まで絞ると無限遠のシャープさが増す。わずかにケラレが見えるが、シネレンズとしてはイメージサークルは広い部類だ
NEX-5 / スイター50mm F1.4 / 4,592×3,056 / 1/320秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 50mm


(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp

2011/1/20 00:00