メーカー直撃インタビュー:伊達淳一の技術のフカボリ!

キヤノン「EOS M3」

APS-C EOSを越える解像感の秘密とは?

EOS M3
発売日:2015年3月26日 実勢価格:5万4,000円前後(ボディ単体)
イメージセンサー:有効約2,420万画素CMOS/AF:ハイブリッド CMOS AF III/測距点:49点/ISO感度:ISO100〜12800(ISO25600まで拡張)/シャッター速度:1/4,000〜30秒、バルブ/連続撮影速度:最高約4.2コマ/秒/背面液晶モニター:ワイド3型TFT約104万ドット(チルト式)/Wi-Fi:搭載/大きさ:約110.9(W)×68(H)×44.4(D)mm/重さ:約366g(バッテリー、SDカード含む)

24メガピクセルのAPS-Cセンサーを搭載したキヤノンのミラーレスカメラで、ハイアマチュア層をメインターゲットとしている。前後2つの電子ダイヤルや露出補正ダイヤル、タッチ操作可能なチルト式液晶モニターを装備し、外付けEVFにも対応している。

従来よりもカメラとしての基本機能や操作性を向上させ、一眼レフのサブカメラとしての魅力を訴求。位相差画素を水平方向に高密度に配置した「ハイブリッドCMOS AF III」の搭載で、ライブビューAFも高速化されている。

EOS Mシリーズ専用に設計されたEF-Mレンズのラインアップはまだ少ないものの、マウントアダプターを併用することで、EF/EF-Sレンズを専用レンズと同じように、AE/AF撮影できるのが特徴だ。

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本インタビューは「デジタルカメラマガジン2015年9月号」(8月20日発売、インプレス刊)に掲載されたものに、誌面の都合で掲載できなかった内容を加筆して収録したものです。(聞き手:伊達淳一、本文中敬称略)


リテラシーの高いユーザー層を意識。AF性能や操作性を高めたのが奏功

――従来のEOS M/M2に比べ、EOS M3の製品コンセプトやターゲットユーザーは変わってきたのでしょうか?

山田:2012年9月、キヤノンでは初となるミラーレスカメラとしてEOS Mを発売しました。圧倒的な軽量コンパクトさとライブビュー撮影による簡単な操作性、といったミラーレスカメラならではの良さを生かし、ミラーレスカメラの主な購入層であるエントリーユーザーをメインターゲットとしつつも、一眼レフユーザーのサブカメラにもなりうるようなバランスの良いカメラを目指しました。

ところが、いざ発売してみると、想像していたよりも写真に対するリテラシーが高いお客さまが多く、一眼レフのサブカメラとしての役割をEOS Mに求められていることが分かりました。そこで、EOS M3ではハイアマチュア層にターゲットをグッと絞り込み、サブカメラとして十分に満足してもらえるミラーレスカメラを目指しました。

「快速・快適・高画質」というEOS共通の思想をより向上させながら、ハイアマチュアのニーズにもしっかり応えられるような機能や操作系を採り入れ、作り上げています。

――EOS M/M2で不満とされていたのは、主にどのような部分だったのでしょうか?

山田:軽量コンパクトでありながら一眼レフカメラ同等のEOS画質を得られるという点では高い評価をいただきましたが、一方で、特にAF性能と操作性に関してはお客さまからご要望をいただいておりました。EOS M3では、これらの点を大いに反映させております。

AF面については、新しくハイブリッドCMOS AF IIIを搭載することで、ストレスの少ないAF性能を実現できたと考えております。また、操作性についても、外付けEVFへの対応やモードダイヤル、露出補正ダイヤルの搭載、さらには、マウントアダプターを介して大きめのレンズを装着しても安定したホールディングが得られるよう、コンパクトでありながらしっかり握れるようなグリップを設けました。

これらEOS M/M2との違いはEOS M3のデザインを見てもご理解いただけるかと思いますが、その凝縮感や機能美については、高い評価をいただいております。

――EOS Mを発売したときと比べ、反響の大きさはどれくらい違いますか?

山田:EOS M発売時も、キヤノン初のミラーレスカメラということで、大きな反響をいただきましたが、EOS M3ではコンセプトを変更したということもあり、特にハイアマチュアユーザーの皆さまから高い関心をいただいております。おかげさまで、数量限定で発売したEVFキットも完売状態です。

また、発売当初はほとんどが一眼レフのEOSのサブカメラとしてご購入いただいておりましたが、ご購入いただいたお客さまのネットなどでの口コミの効果もあってか、徐々にコンパクトカメラからのステップアップユーザーのお客さまからも興味を持っていただいており、発売当初の勢いをうまくキープできていると思います。

(左から)
山田竜也氏
キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部 ICP第三事業部

山口利朗氏
キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部 ICP第三開発センター 室長

荻野宏幸氏
キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部 ICP第三開発センター 主任研究員

福井貴明氏
キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部 ICP第3開発センター 主任研究員

――ところで、EOS M3は、EOS M2の後継機種なのでしょうか?

山田:現状は、EOS M2も現行機種として併売しており、ハイアマチュア向けの上位機種がEOS M3、ミラーレスの裾野を広がるエントリー向けにEOS M2という形ですみ分けています。

――EOS M/M2のミニマルデザインを高く評価する人も多いですしね。それに対してEOS M3は、デザイン的には普通になってしまった感がありますが、モードダイヤルや露出補正ダイヤルが付いて、かなり使いやすくなっていますね。

それと、僕は老眼の洗礼を受けているので、外付けEVFが装着できるのは非常にありがたいです。できれば、一眼レフのEOSにもこうした外付けEVFが装着できるよう、ホットシューにEVF用の拡張端子を標準装備してほしいところですね。

ちなみに、この外付けEVFはPowerShot G1 X Mark II用のオプションとして作られたものですよね? PowerShot Gシリーズも、比較的写真にこだわりを持った層をターゲットとして開発されているカメラだと思いますが、Kiss、PowerShot Gシリーズと、今回のEOS M3、それぞれどのようなすみ分けを想定しているのでしょうか?

山田:Kissシリーズは、光学ファインダーと位相差AFで動く被写体にも強いのが特徴ですので、例えばお子さまの運動会を撮られるような方におすすめしております。

一方、EOS M3は、何よりも軽量コンパクトさが売りですので、すでに一眼レフのEOSを持っているハイアマチュアのサブカメラとして、お散歩のお供のような普段使いのカメラとして企画しております。

EOS M2のミニマルデザイン
EOS M2はミラーレスならではの小ささ、軽さを追求し、シンプルな機能美を追求。ボディカラーはブラックに加え、ホワイト、レッド、ベイブルーの4色のカラーバリエーションが用意されている
EOS M3のダイヤル部
モードダイヤルや露出補正ダイヤルを装備していて、直感的に素早い操作を実現。グリップの握りも深くなり、大きめのレンズを装着しても安定したホールディングが可能だ
EVF-DC1
オプションの外付けEVFで、画素数は236万ドット。上方向に90度跳ね上げられるので、ローポジション撮影にも便利。PowerShot G1 X Mark IIにも装着可能だ

――PowerShot Gシリーズとはどのようなすみ分けとなるのでしょうか?

山田:PowerShot Gシリーズについては、ハイアマチュアをメインターゲットとしているという点ではEOS M3と同様ですが、ズームレンジや開放F値の明るさなどレンズ一体型だからこそ実現できるスペックとコンパクトネスを備えていますので、EOS M3ではレンズ交換式カメラならではの拡張性を、PowerShot Gシリーズではレンズ一体型カメラならではのコンパクトさを実現しているという点で、お客さまへの幅広い選択肢をご提供できていると考えております。

――レンズ交換ができるのがEOS Mシリーズの魅力ですが、EOS Mが発売されてから3年弱も経っているのに、専用のEF-Mレンズは、標準ズーム、望遠ズーム、広角ズーム、パンケーキタイプの広角レンズの4本しかありません。マウントアダプターでEF/EF-Sレンズが装着できるとはいえ、EF-Mレンズのラインアップが少ないのは残念です。

山田:貴重なご意見ありがとうございます。EF-Mレンズのロードマップについてはお客さまのご意見もいただきながら引き続き検討していきたいと考えております。

一方、キヤノンには、これまで蓄積してきた豊富なEFレンズラインアップもございますので、ぜひマウントアダプターを介して、さまざまなレンズをお楽しみいただきたいと考えております。


――EOS M3が発売されてから約4か月が経ちましたが、お客さまからどのような声が届いていますか?

山田:今回コンセプトを変更したこともあり、EVFへの対応を含め操作性については高い評価をいただくことができ、企画者としてうれしく思います。一方で、多くのハイアマチュアの方々にEOS M3を手にとっていただいたということもあり、より詳細なカスタマイズ機能などの操作性やシャッターの音や押し感といった緻密な質感について、こだわりを持ったご意見もいただいております。

また、1つ意外だったのは、今回「クリエイティブアシスト」というエントリーユーザー向けの機能を新規に搭載しているのですが、意外にもハイアマチュアのお客さまにもご好評いただいている点です。

クリエイティブアシスト
絞り、明るさ(露出補正)、コントラスト、鮮やかさ、色あい、モノクロの6つのパラメーターを分かりやすい表現とスライダー操作で設定でき、6つまで記憶できるのが特徴

――確かに、カスタム機能のメニューはまだまだスペースが余っていますね。EOS 60Dで採用された「表現セレクト機能」とは違うんですか?

山田:「クリエイティブアシスト」は、よりライブビュー撮影の強みを生かしたモードで「表現セレクト機能」とは異なります。モードダイヤル内のカメラのアイコンの中に★が付いているマークがこのモードになるのですが、絞りや露出補正などの各パラメーターを「ぼかす」や「明るく/暗く」といった簡単な言葉に置き換えた上で、ライブビュー画面で効果を確認・調整しながら撮影することが可能です。

また、あらかじめ設定したお好みのパラメーターを6つまで登録しておくこともできます。自分でテーマを決めて、設定した絵作りを登録しておき、その設定を即座に呼び出し、切り替えられるので、ハイアマチュアのお客さまにも受けているようです。

――キー(中間調の明るさ)やWB補正、トイカメラのようなフィルター効果も組み合わせて設定を登録できるようになると、かなり作画で重宝する機能ですね。

そのフィルター効果ですが、EOSの場合、写真表現として積極的に使いたくなるフィルター効果があまりないんですよね。撮影効果を確認しながら気楽に撮影できるのがミラーレスの魅力でもあるので、写真表現として使えるフィルター効果のバリエーションをもっと増やしてほしいですね。

山田:まずは今ある範囲の中で提供させていただいて、お客さまの声を聞きながら検討していきたいと思います。

――ちょっと気になったのが、ストラップの吊り金具がEOS M/M2とは違って、一般的な仕様に変わっている点です。デザイン的にもかなりこだわっていたと思いますが、なぜ吊り金具の仕様を変更したのでしょう? ボディ重量が増えたからですか?

山田:従来の吊り金具でもEOS M3ボディの重さを支えることは可能だと思いますが、EOS M/M2の釣り金具はストラップを簡単に着脱できる一方、汎用性に欠ける面もあったので、EOS M3は標準的な吊り金具を採用することにしました。


ローパスフィルターは2点分離タイプ。画素数増とあわせて解像感が高める

――EOS M3は、APS-Cの24MピクセルCMOSセンサーを搭載していますが、これはEOS 8000DやKiss X8iと同じセンサーですか?

山口:EF-Mレンズに合わせたさまざまなチューニングを施していますが、基本的にセンサーは同一です。

――ということは、画質的にはEOS 8000DやKiss X8iと同じということですか?

福井:基本は一緒ですね。同じEOSということで、ピクチャースタイルをはじめ、EOS 8000DやKiss X8iの開発チームと一緒に、画質を作り上げています。

――EOS M3を買ったものの、実は持っているEF-MレンズはEF-M 11-22mm F4.5-5.6 IS STMだけで、標準ズームとして、EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS STMにマウントアダプターを装着して使っています。

EOS 7D Mark IIにEF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS STMを装着して撮影したものよりも、解像感が良くなっているというか、なんだか細部までシャープに写るんですよね。画素数が20Mピクセルから24Mピクセルに増えている効果もあるのでしょうが、それ以上にキレが良くなっている気がするんです。

福井:やはり画素数が増えたことが、解像感が良くなった大きな要因だと思います。さらに、EOS 5Dや7D系のローパスフィルターは4点分離タイプを採用しているのに対し、EOS M3は2点分離タイプを採用しています。

しかも、画素数が増えたことで、ローパスフィルターでぼかす量も画素ピッチに合わせて少なくなっていますので、同じレンズを使用してもEOS 7D Mark IIよりも若干キレが良くなったと考えられます。

ローパスフィルター:高周波成分の光を選択的に隣接する画素にぼかす光学フィルターで、偽色やモアレを低減することができるが、わずかに解像を鈍らせる副作用もある。EOS M3はローパスフィルターが1枚構成の2点分離タイプを採用
ローパスフィルターの2点分離と4点分離の概念図
一般的には、2枚のローパスフィルターで水平/垂直方向に2回光を分離させるのに対し、EOS M3はローパスフィルターが1枚構成で、1回しか光が分離しないぶん、ローパスフィルターの効果は弱めになっている

――なるほど。EOS M3は、ローパスフィルターが2枚構成ではなく1枚構成なんですね。たぶん、画素数アップとローパスフィルター効果の効きが弱めになったぶん、レンズのキレが増したように感じたのだと思います。高感度はともかく、低感度で撮影する場合には、EOS 7D Mark IIよりも解像感が高く、風景など静止した被写体の撮影に強みを発揮しますね。

福井:ローパスフィルターが1枚構成になったことで、偽色や偽解像が増える側面はありますが、解像感が良くなったというお客さまからの声もいただいており、妥当な設定と考えています。

――従来の18Mピクセルや20Mピクセル機と比べ、高感度の画質は低下していないのでしょうか?

福井:ノイズという観点でいうと、データ的にはほぼ同等です。画素数が増えたぶん、センサーの特性としてはやや高感度に厳しい方向になっていますが、結果としてはほぼ同等のノイズ感に抑えられています。

――単にノイズのあるなしだけでなく、低コントラスト部分の解像を損なわずに、低ノイズ化を図れているのかが気になります。

山口:細部の解像を保ったままで、従来と同等のノイズ感に抑えています。あからさまに解像感が失われるような高感度画質にはしていません。

――画像処理エンジンがDIGIC 5からDIGIC 6になり、高感度ノイズリダクションのアルゴリズムや画質は大きく変わっているのでしょうか?

福井:静止画に関してはあまり変わっていません。動画に関しては、ノイズ処理が向上し、動画のコーデックがMOVからMP4に変更になっていて、高解像の動画をより少ないデータ量で記録できるようになりました。処理スピードも向上しています。

DIGIC 6:キヤノンの画像処理エンジンで、DIGIC 5に比べ、処理スピードが高速化されているほか、MP4形式の動画コーデックに対応し、動画の高感度ノイズ処理も向上するなど、主に動画機能の強化が図られている

――EOS 5Ds/5Ds Rでピクチャースタイルに「ディテール重視」が追加され、より細部まで線の細い繊細な描写が得られるようになりました。残念ながら、EOS M3のピクチャースタイルには「ディテール重視」が搭載されておらず、DPP4.2でもEOS M3だけピクチャースタイルを「ディテール重視」でRAW現像できません。これはどうしてですか?

山田:5Ds/5DsRと同時に発表しましたが、発売時期はEOS M3の方が早く、EOS M3にはピクチャースタイル「ディテール重視」を搭載できませんでした。しかし、8月6日にリリースされたDPP4.3で、EOS M3のRAWも「ディテール重視」で現像できるようになりました。


位相差画素の配列を変更。AFを速めるハイブリッドCMOS AF III

――EOS M/M2よりもライブビューAFが高速化していますが、従来のハイブリッドCMOS AF IIとIIIはどのような違いがあるのでしょうか?

荻野:コントラストAFだけではレンズをどちらに動かせばピントが合うのか、とりあえずレンズを動かしてみなければ分かりません。そこで、センサー上に像面位相差AF用の画素を配置し、像面位相差AFをコントラストAFと併用することで、レンズを動かす方向とおおよその駆動量を瞬時に検出し、コントラストAF特有のムダな動きを減らそうというのが、ハイブリッドCMOS AFの基本的な考え方です。

従来のハイブリッドCMOS AF IIまでは、像面位相差AFだけでは十分な測距精度が得られなかったので、最終的にはコントラストAFでピントを追い込む必要がありました。これに対して、ハイブリッドCMOS AF IIIは、位相差画素を水平方向に高密度に配置することで、像面位相差AFの精度が向上し、シーンによっては位相差AFだけで最終合焦まで持っていけるようになりました。

これにより、コントラストAFによって最終的なピントの追い込みをする必要がなくなったぶん、ライブビュー撮影時のAFが、EOS M2比で最大約3.8倍の高速化を実現しています。

像面位相差AF:センサー上に配置された位相差画素で位相差測距を行うライブビューAF方式で、コントラストAFよりも高速でスムーズなピント合わせが可能。撮像面で測距するので、高精度なピント合わせが可能だ
コントラストAF:撮像面のコントラストがピークになる位置を探しながら、レンズを微小駆動させるライブビューAF方式で、ピント位置をいったん通り過ぎないとピークが分からないため、どうしてもレンズのムダな動きが生じてしまう

ハイブリッドCMOS AF IIとIIIの違い

ハイブリッドCMOS AF III(EOS M3)
ハイブリッドCMOS AF II(EOS M2)
ハイブリッドCMOS AF IIは、像面位相差画素が離散的に配置されるので、最終的には必ずコントラストAFでピントを追い込む必要がある。一方、ハイブリッドCMOS AF IIIは、像面位相差画素の密度を水平方向に高め、像面位相差AFのみで最終合焦まで追い込めるのが特徴
ハイブリッドCMOS AF IIは最終的にコントラストAFでピントを追い込むぶん時間のロスがある。一方、ハイブリッドCMOS AF IIIは、像面位相差AFのみで最終合焦まで追い込める。また、コントラストAFの制御もムダが少ない

――像面位相差画素を水平方向に高密度に配置したということは、従来よりも位相差画素の数を増やしているのですか?

荻野:位相差AF用の画素数についてはお答えできませんが、AF性能と画質を両立するように配置を工夫しています。

――EOS 5Ds/5Ds Rは、センサーからの読み出しとコントラストAFのアルゴリズムを改善することで、像面位相差AFがないにもかかわらず、ライブビューAFがスムーズに動作するようになっていますが、EOS M3もコントラストAF部分のスピードは従来よりも向上しているのでしょうか?

荻野:コントラストAFは、原理上、どうしても合焦点をいったん通過してから戻す、という作業が必要になりますが、なるべくレンズがムダな動きをしないよう、アルゴリズムを改良することで、従来よりもスムーズなコントラストAFの動きになっています。

――EOS 70DやEOS 7D Mark IIのデュアルピクセルCMOS AFと、ハイブリッドCMOS AF IIIの違いとは?

山口:今回のハイブリッドCMOS AF IIIでは、像面位相差画素の配置を改善しましたので、お客さまに満足していただけるAFスピード、像面位相差AFの適用シーンの拡大が実現できていると考えています。

デュアルピクセルCMOS AFは、原理上、1つ1つの画素が像面位相差検出の構造を兼ねているので、ハイブリッドCMOS AF IIIに対し、さらに像面位相差AFの適用シーンの拡大が可能になります。

デュアルピクセルCMOS AF:1つの画素を2つのフォトダイオードに分割することで、すべての画素が像面位相差画素としての機能を備え、ワイドエリアで高密度な像面位相差AFが可能。撮像時には2つのフォトダイオードの信号をミックスするので画質低下の心配もない

――EOS M3のハイブリッドCMOS AF IIIの測距エリアはどのくらいの範囲ですか?

荻野:EOS M3のハイブリッドCMOS AF IIIの測距エリアは横70%、縦80%ありますので、実用上、ほぼ問題ない範囲をカバーできています。

――マウントアダプター経由でEF、EF-Sレンズを使う場合と、EF-MレンズとのAFスピードなどの違いはありますか?

荻野:EF-Mレンズと、EF/EF-Sレンズとでは、レンズの光学系や駆動系も異なるので、直接の比較はできませんが、マウントアダプターを介しているからといってライブビューAFの速度が遅くなるということはありません。そのレンズが持っている本来のスピードでライブビューAFが行えます。

――ミラーレスカメラの中には、ライブビューAFを高速化するために、レンズとの通信を高速化している機種もありますが、EOS Mシリーズは、EF-Mレンズでも、マウントアダプターを装着したEF/EF-Sレンズでも、通信速度や内容は変わらないのでしょうか?

荻野:基本的に一緒です。

――マウントアダプターを介してEOS M3に装着するなら、やはりSTMタイプのレンズの方が良いのでしょうか?

荻野:そうですね。特に動画を撮影する場合に、レンズの駆動音が静かで、動きもスムーズですので。

――レンズの駆動モーターによって、サーボAFのなめらかさというか、AFの品位は異なるのでしょうか?

荻野:駆動モーターのタイプでひとくくりにはできませんが、STMタイプのレンズの方が比較的品位が高く安定した駆動が得られます。

――そういう意味でもEF-Mレンズをもっと拡充されることを期待しています。

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【実写ミニレビュー】解像力が高くレンズの描写力をしっかり引き出してくれるカメラ

あくまで私見ではあるが、一眼レフを主力にしているメーカーにとって、ミラーレスカメラは“諸刃の剣”だと思う。ミラーレスに全力投球しすぎると、一眼レフのエントリーモデルが食われて屋台骨を揺るがしかねない。

かといって、ミラーレスを無視し続けていたのでは、他社のミラーレスカメラにジリジリとシェアを奪われるだけだ。そのため、自社の一眼レフとできるだけ競合しない範囲で、一眼レフシステムにない魅力を打ち出すといった制約に縛られた製品展開を強いられている気がするのは気のせいだろうか?

キヤノン EOS M3/EF-M 11-22mm F4-5.6 IS STM /15mm(24mm相当)/絞り優先AE(F11、1/320秒、-0.3EV)/ISO 100/WB:オート

とはいうものの、これまでのEOS M/M2に比べ、今回のEOS M3はかなり攻めの仕様になっている。カメラとしての基本機能や操作性も底上げされているし、チルト式タッチモニターを装備していたり、外付けEVFに対応しているのもポイントが高い。

しかも、APS-CフォーマットのEOSよりも描写にキレがある。単に画素数がアップした効果かとも思ったが、マウントアダプターを介してEF/EF-Sレンズで撮影してみても明らかに写りが良い。この疑問をぶつけると、EOS M3は、ローパスフィルターが4点分離ではなく、2点分離タイプになっているという。つまり、ローパスフィルターレスほどではないが、一眼レフのEOSよりは効果が弱めになっていることで、同じレンズを使っても、より解像感が高く感じられたのだ。

特に、バックフォーカスを短さを生かしたEF-M 11-22mm F4.5-5.6 STMは、その小ささ、軽さ、値段の安さからは考えられないほど、周辺まで安定した描写が得られ、EOS M3の描写の良さを引き出してくれるのが魅力。開放F値はやや暗いが画質的満足度は高い。

伊達淳一

(だてじゅんいち):1962年広島県生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒。写真誌などでカメラマンとして活動する一方、専門知識を活かしてライターとしても活躍。黎明期からデジカメに強く、カメラマンよりライター業が多くなる。