【 2016/05/27 】
【 2016/05/26 】
【 2016/05/25 】
【 2016/05/24 】
【 2016/05/23 】

2009年冬:メーカーインタビュー−−ソニー編

いずれ必ずα700の後継機と言えるような製品を

 カメラメーカーインタビューシリーズ第2回は、一眼レフカメラのフルラインナップ完成から1年を経て、新しい挑戦が期待されるソニー、勝本徹事業部長に話を伺った。

 ソニーは昨年にα900を発売し、エントリークラスからハイエンドまでのラインナップを完成。今年はエントリーモデルの再整備を行ない、さらにエントリークラスの中でもワンランク上のスペックを目指したα550を発売した。

 1年前に伝統あるカメラ業界のメーカーとして、認知してもらえるラインナップを揃えることができたと話していた勝本氏。ソニーの一眼レフカメラは、次にどういった方向に向かおうとしているのだろうか。

パーソナル イメージング&サウンド事業本部イメージング第3事業部 事業部長の勝本徹氏 α550



「気軽に」「手軽に」持ち歩けるカメラを

――1年前、カメラの伝統を受け継ぐための開発から、新しい価値を創造することにも挑戦したいと話してました。

 α100に始まって、ラインナップを整備する最初の一周が昨年秋のα900で終わりました。一眼レフカメラの設計から生産、販売まで含め、すべての価格レンジの製品について扱わせてもらい、ソニーとしては貴重な時間を過ごすことができました。

 今年はこれからの“2周目”もエントリー機から順にやっていこうということで、α330、380を発売しました。この製品のテーマは初めて一眼レフカメラに触れるユーザーが、写真の取り方を自然に学べるように工夫することでした。

――具体的にはどのようなシナリオでユーザーが使用することを想定しているのでしょう。

 メカニズム的にはα300、350と大きくは変わりません。しかし何か操作をしたいと思ったとき、すぐにガイドを表示できるグラフィカルなユーザーインターフェイスを用意しました。どのような操作を行えばボケ味の調整ができるのか、といった、非常に基本的なテクニックや知識を学びながら使えるようにしました。現在のところ、特に初めてカメラを使うユーザー層に、わかりやすいとのフィードバックを受けています。

 しかし、これだけではカメラのことをよく知っている、すでに一眼レフカメラを持っているというユーザーには物足りない製品になってしまいます。そこで秋に発表したα550では、連写性能や高ISO感度撮影、クイックライブビュー時の拡大表示フォーカスなど、一歩上の使い方をサポートするスペックを搭載しました。

――αビジネスを始めた当初、ソニーは"ミノルタのαシリーズを支持していたユーザー"をとても大切にしていました。しかし、一方でそろそろ”ソニーのα”を買ったユーザーの比率も大きくなってきていますよね。新たにソニーの顧客になったユーザーに、どのような価値を提供したいとお考えですか?

 おっしゃるように、既存のαマウントのお客様だけでなく、“ソニーのα”をお買い上げになった方が増えています。特に今年の春モデルでは、全く新たに一眼レフカメラの世界に入ってきた顧客が多く、かつてのミノルタ製カメラをご存じない方も増えてきました。一方、中級機以上ではαレンズのインストールベースを継承してソニーのカメラを購入してくださった方と、あらたにαユーザーになってくれた顧客がほぼ半々くらいだと思います。

 我々がソニーのカメラユーザーに提供したいことは、とてもシンプルです。気軽に持ち歩いて、撮影すること自体を楽しんでもらえるようにすること。これまで知識を身に付けてからでなければ楽しめなかったカメラを、もっと手軽に使いこなせるようにすることです。私自身、今はα550を持ち歩いて、趣味としての撮影を楽しんでいます。



ミラーレス機については「まだ何も決まっていない」

――今年は海外でかなり好調なビジネスを展開したと伺っていますが、日本市場だけを見ると、そうした好調さを実感できません。ワールドワイドでの現状を教えていただけますか?

 ワールドワイド全体では、レンズ交換式カメラ市場の10%以上を獲得しています。一番好調なのは欧州です。イギリス、フランス、オランダ、スイス、オーストリアなどは、多くの国で10%台も後半のシェアがありますし、国によっては30%という占有率です。また市場規模そのものは小さいのですが、ラテンアメリカはαがとても強く、メキシコではシェアナンバーワンになりました。さらにアジアも大変好調で、中国では20%くらいのシェアがあります。そのほか、韓国、マレーシア、シンガポールなどでよい成果を挙げることができました。

――アメリカ市場への言及がありませんが、日本と同様に市場進出に手間取っているのでしょうか?

 日本とアメリカは、いずれもシェアが一桁で、今後の課題だと認識しています。欧州やアジアで成功した理由は、カメラ専門の販売チャネルが強く、この3年間、かなり親しくやってきたために、店の展示スペースへの進出などでうまく行きました。粘り強く専門店や専門チャネルに通い詰めて信頼を得て、αの特徴を説明して回ることに注力しました。

 もちろん、日本とアメリカでも同じように努力は続けているのですが、双方とも大手量販店が流通の中で大きな割合を占めています。展示スペースは確保できても、どのような製品なのか、新たにソニーがどんな機能を携えて市場に挑戦しているのか、今後のレンズ供給計画など、詳しく説明する機会が少ないのがネックです。

前モデルから小型化を達成したαエントリーシリーズ。左からα380、α330、α230

――そうは言っても、地元の日本での厳しい状況にはほかの理由もありそうです。

 お客様にソニーのカメラにどんなことを期待するかを訪ねてみると、「技術の粋を集めたものをドーンと出してほしい」と言われます。“ソニーのカメラと言えばコレ”といった、ザ・ソニー・カメラというべきものが必要なのだと思います。昨年で言えばα900がそうでしたし、今年ならばα550こそが全力投球した製品なのですが、市場からの期待はもっと“上のクラス”の製品にあるのかもしれません。想像もつかないような、斬新で圧倒的な機能と性能を持ったカメラを期待されていると思います。

 もうひとつは、我々としてはギリギリまで軽く小さい一眼レフカメラを作ったのですが、いかんせん“一眼レフカメラ”の枠を超えた小ささは実現できていません。世の中にはマイクロフォーサーズのような製品も登場してきています。もっと“新しい形”の提案も必要なのかもしれないと考えています。既存の"一眼レフ"の枠からはみ出た製品を考え出さなければ、ライバルが多く厳しい日本の市場で勝ち抜くのは難しいのでしょう。

――昨年のフォトキナでは、α900をもっていったん伝統を踏襲することに区切りを付けて、新たなテーマに挑戦をしていくとおっしゃっていました。大きくαのイメージが変化していくのは、まだこれからでしょうか?

 我々が考えていることは、既存のシェアを奪うのではなく、新たな使い方や機能を提案することで、業界全体をのばしていくことです。斬新な製品を作ると言っても、既存のαユーザーが新製品登場を悔しがるようなものではなく、新しいことへの挑戦を喜んでくれるようなものにします。

――ミラーレス一眼に関しては、何度も噂が出ていますが、現時点で取り組んでいるのでしょうか?

 ミラーレス一眼に関しては、商品を小型化できるのが大きな利点ですね。しかし、必然的にコントラストAFになります。我々はビデオカメラでコントラストAFを長くやってきた経験がありますが、コントラスト検出型は動画的なAFです。俊敏にフォーカスを合わせて一瞬を切り取る一眼レフカメラのAFとして相応しい性能を引き出せるのか? というと、まだ検討の余地が残っていると思います。

 αの戦略ではなく、個人的な意見ですが、そのカメラが狙う市場やユーザーシナリオに応じて、ミラーレス一眼に対するアプローチもいろいろあると思います。

――もしミラーレスに取り組むとすれば、新たにレンズマウントを設計し直すことになりますよね?

 既存のマウントを継続して利用する可能性、新規に起こす可能性の両方があると思います。我々としては、αマウントは“デフォルトで必ず”やっていくマウント規格ですから、まずはここをさらに充実させていかなければならない。しかし、それ以外にプラスアルファのミラーレスも全くやる可能性がないかというと、そうも言いません。もっとも、絶対にミラーレス機をやりますよ、とも言いませんが。要はまだ何も決まっていないということです。

 それよりも、我々が持っている光学ファインダーの技術をさらに磨き込んでいかなければなりません。α550は10万以下というエントリークラスの価格帯ながら、HDRや高感度撮影、高速連写など、中級機に求められるスペックを全部入れましたが、さらに改善できることはあると思います。また画質に関しても、正常進化できる部分は少しづつでもベースアップさせていきたい。目標としては、このクラスにプロ機でしか手の届かないような機能や画質を提供していくことです。



見た目はオーソドックス、中身は斬新な新モデル

――現在のソニーのライブビュー方式では、動画撮影機能の実装は難しいですよね?このあたりはどのように対応していきますか?

 静止画カメラとしての基本は、この3年でしっかりやってきましたから、そろそろ動画撮影に取り組んでもいいとは考えています。元々、動画用カメラに関して、ソニーは多くの技術とノウハウを持っていますから、それらを応用していくことで業界全体にも貢献できればいい。具体的な機能や実現手法については話せませんが、“普通のカムコーダとして使え、操作に関しても煩わしくない動画撮影機能”を目指しています。もちろん、しっかりとした静止画が撮影でき、動画でもレンズ描写を活かした撮影が可能にすることはいうまでもありません。

レスポンス面での優位性を持つソニー独自のクイックAFライブビュー(α350)

――一眼レフカメラの動画撮影機能が注目されているのは、一般向けのカムコーダにはなかったレンズ描写の楽しみと圧倒的な画質でしょう。一方で、使いこなしは相当に難しいという問題もありますね。そのあたりに切り込むということでしょうか。

 一眼レフカメラで撮影した動画の醍醐味は、圧倒的なS/Nの良さとレンズの描写にあるというのは同感です。現在、これを使いこなして楽しんでいる方々は、映像記録ではなく映像作品として撮影しています。結果的には、そうした作品製作のための道具としての性能が求められるのでしょうが、もっと実用的なオートフォーカスや動画カメラとして使いやすい記録フォーマットの採用も必要だと思います。そこにハンディカムのノウハウを埋め込んで、一眼レフカメラなんだけど、動画カメラとしても“使える”仕様にしていこうということです。

 現在のライブビューと共存できるか? についての答えは控えます。秘密というよりも、どんな可能性があるかを含め、可能性の幅を狭めずに検討を進めたいからです。動画撮影機能の実装は最後発になりますが、普通にカメラ入門機を買った人が、その日から普通に動画も撮れるようなものにします。

――αのレンズラインナップは、数あるレンズシステムの中でも"デジタル対応フルサイズ"という視点で見ると、トップクラスの充実度だと思いますが、一方で日本市場にはα850の投入が見送られました。フルサイズセンサー機の今後の拡充に関してはどう考えていますか?

 α850の日本発売に関しては、販売会社の考えが優先されるため、我々の方ではコメントできません。α900に関して言いますと、主に風景写真を撮るユーザーが幅広く受け入れてくれました。2400万画素センサーとツァイスレンズ、Gレンズの描写を含め、風景写真を撮るならばコレだと言って買っていただけている方が多い。一方で、スポーツ写真を撮りたい方にはあまり向いていないでしょう。オールマイティではありませんが、1枚の撮影に精力を傾けるタイプのお客様にはよい製品だと思いますので、今後もαのフルサイズフォーマットの価値を広げられるように開発をしていきます。

海外で登場したフルサイズ機「α850」。α900より視野率を下げたことで、購入しやすい販売価格になっている
7月にソニーが生産完了を告知した中級機「α700」

――では、ハイアマチュア向けの高スペック機はどうでしょう。

 来年中に発売するとは約束できませんが、企画として考えてはいます。カメラボディの開発は、その中に入れるデバイスの開発トレンドやロードマップにも左右されますから、いつやりますとは言い辛い。しかしα700の後継機と言えるような製品は、いずれ必ずお見せできます。存在感のある上位モデル、夢のあるモデルがないとユーザーの夢もしぼんでしまいます。ハイアマチュア向けの高スペック機は、是非とも夢のあるカメラにしたいですね。

――最後に来年のαが目指すカメラを一言でいうと?

 技術的には新しいことにチャレンジした製品を出していきます。見た目は際物じゃない、オーソドックスなカメラですが、中身はとっても斬新な製品になります。カメラとしての機能と性能で勝負できるものになりますから、期待してください。



(本田雅一)

2009/12/4 00:00


デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright © 2016 Impress Corporation. All rights reserved.