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2009年冬:メーカーインタビュー−−パナソニック編

内容の濃い1年。最初のラインナップを完成できた

 この1年で、もっともそのブランド認知を伸ばしたカメラメーカーは? と言えば、それはパナソニックLUMIXではないだろうか。高性能レンズや特徴的なライブビュー機能を搭載したカメラで話題を振りまきつつも、なかなか市場では存在感を出せていなかったパナソニックがマイクロフォーサーズ規格のLUMIX DMC-G1を発売したのは、ほんの1年前にしか過ぎない。

 その後、動画撮影機能を追加したLUMIX DMC-GH1、EVFを省略して小型化を果たしたLUMIX DMC-GF1と続けざまに製品を投入し、そのどれもがカメラの売上チャートを賑わした。“マイクロフォーサーズが売れたのは日本だけ”と揶揄する声も聞こえてくるが、しかし事実はやや異なるようだ。

 そのあたりの話も含め、いつものように企画・一眼レフ事業担当 総括部長の房忍氏に話を聞いた(聞き手:本田雅一)。

パナソニック株式会社AVCネットワークス社 ネットワ−ク事業グループ DSCビジネスユニット 企画・一眼レフ事業担当 総括部長の房忍氏 DMC-GF1本体+LUMIX G 20mm F1.7 ASPH. の「DMC-GF1Cレンズキット 」(アーバンレッド)

垂直統合型スタイルの良さが出た

――パナソニックのスチルカメラ部門にとって、この1年は本当に中身の濃い1年だったでしょう。自己採点をすると100点近いのでは?

 本当にこの1年は内容が濃かった。我々の願いであった、ミラーレスのシステムで新世代の一眼を作りたいという思いは、これで第1シーズンを無事終えて、最初の製品ラインナップを作ることができました。

 まずテクノロジーの面。技術的には、かなり自分たちの得意な技術、これまで培ってきたものを商品に盛り込むことができたと思います。フレームシーケンシャル方式の144万画素相当EVFを、家庭向け製品では初めて採用することができましたし、ミラーレスシステムで必要となるコントラストAFの技術も、十分に実用性のあるものを組み込むことができたと思います。もともと、マイクロフォーサーズという規格そのものが、自分たちの思いを詰め込んだものでしたから、思う存分に、自分たちの得意な土俵の上でやりたいことができました。100点とは言いませんが、合格点の80点はもらえると思います。

――今ではDMC-G1、DMC-GH1が採用しているEVFや、オリンパスやリコーが新たに採用したEVF用液晶パネルに何ら驚きを感じなくなってきましたが、当初、見たときにはちょっとした驚きがありました。まさか、EVFできれいな映像が見えるとは思っていませんでしたから。まだ技術的に成熟しているとまでは言いませんが、インパクトは十分でしたね。

 その通りで、あの驚きがあったからこそ、その後のラインナップ展開がうまくいったんです。現在のDMC-GF1の大ヒットを見て、なぜDMC-GF1を第1号機にしなかったのか? とよく訪ねられます。最初からDMC-GF1から入って、それから上位モデルに展開すればいいじゃないかと。しかし、一眼の良さというのは、本来ファインダーに宿っているものだと私は思います。レンズ交換式カメラを販売していく上で、EVFの品質向上は避けて通れません。発売時点でこれ以上のEVFは技術的に存在しないというレベルのものを搭載し、果たしてこれでどうか? と世に問うてみたのです。

マイクロフォーサーズ第1号にして完成度の高さで話題になったLUMIX DMC-G1 半年後にリリースされたLUMIX DMC-GH1は、フルHD動画記録時のフルタイムAFに対応

――DMC-G1で驚かされたのは完成度の高さでした。どのレンズを付けてもリアルタイムでレンズ収差補正が入った像が見えますし、AF速度も高速。さらにファインダー像も想像以上に高解像度ということで、EVFというものに対してあまり多くを期待していなかった業界の多くの人を驚かせました。もちろん、光学ファインダーの方が良い面もたくさんありますが、従来のEVFに対するイメージを大きく変える品質で出せたことが、ミラーレス一眼への抵抗感を薄れさせたように思います。

 とにかく最初の印象は大切ですから、DMC-G1では徹底的に完成度を高めてから出そうと話していました。最初の製品が良いものでなければ、その後がなかなか続いていきません。そのために、半導体の開発チームとも協業しながら、徹底してEVFを磨き上げて開発しました。ここで完成度を高めておくことができたので、その後のDMC-GH1では動画機能にフォーカスして開発を行なえましたし、DMC-GF1ではコンパクト化に取り組むといったように、方向を見定めて集中した取り組みを行なえたのです。もし最初にDMC-GF1をやろうという話になっていたら、こうはうまく3機種を短期間に開発はできなかったと思います。

 一眼の気持ちよさは、なんといってもレスポンスの良さにあると思います。他の部分がどんなに良くても、レスポンスが悪かったり、AFの速度が遅いと良い評価を得られません。さらにファインダーの見え味です。このあたりは、徹底的に改善をしようとすればするほど、物理的にサイズが大きくなっていきます。なんとか一眼らしいレスポンスやAF速度をキープしながら、いかにコンパクトなサイズを実現できるか。最初の1機種目は印象を決定づける重要な製品ですから、それこそ必死になってやりました。

――あまり目立って取り上げられることは少ないのですが、パナソニックはグループ全体の製品から半導体部門の強さを随所に感じます。マイクロフォーサーズ機に関しても、その部分はかなり大きく貢献していたと思うのですが、具体的にはどのように半導体社とコラボレーションを進めたのでしょう?

 パナソニックの垂直統合型の開発スタイルが効果を発揮した典型的な例だと思います。システムLSIだけでなく、レンズとボディとの信号のやりとりや信号処理アルゴリズムの開発など、多様な技術要素の組み合わせをうまく摺り合わせて作るのが、パナソニックは得意なのです。EVFながら像の遅延を抑えつつリアルタイムの補正処理を行い、さらにAFの速度も高速といったことは、社内の摺り合わせ技術のたまものです。

 採用しているLSIの性能などは素晴らしいのですが、そうした技術面の背景はあまり全面に出してもおもしろくないかな? と考えて、これまでは意図的に全面には押し出していませんでした。実際にはデジタルカメラ開発のチームが、半導体開発チームと一体になって開発をしています。このあたりは半導体会社に丸投げしていたり、社外とのコラボレーションで開発している他社に比べ、優位性があると思います。なにしろ、とても身近で同じフロアにLSI開発をやっている担当者がいるので、必要な機能があるとすぐに相談してLSI側からのアプローチで性能や機能を改善できないか検討できます。


ブランド認知度が予想以上に向上

――技術の面ではということでお話が進みましたが、ビジネスの面ではどうでしょう?

 まずブランド認知度では、思っていたより遙かに進みました。120点ぐらいを出していいと思います。一方、実際にビジネス、売上の方ですが、ちょっと生産能力が不足気味の状態が続いてしまいました。いまだにDMC-GF1は数が不足していますし、DMC-GH1も秋になって少し不足した時期がありました。そうした意味では、我々の生産計画がちょっと保守的過ぎたのかもしれません。

――特にDMC-GF1の白(シェルホワイト)が不足しがちのようですが、今回の色で言えばカラーバリエーション展開の難しさもあるのでしょうね。

 その通り、DMC-GF1の白が想定以上に売れました。事前に様々な流通などに声をかけてリサーチはしていたのですが、カメラ流通の意見では、白は最初は売れてもすぐ止まると言われて、あまりたくさん作っていなかったんです。実際には全販売数の3割が白、赤が2割、残りの5割が黒という需要でした。ただ、これは発売当初の数値でして、その後に生産を続けていても恒常的に足りない状況ですから、現在はもう少し白の割合が大きいかもしれないですね。

 女性ユーザーがコンパクトカメラからステップアップしてDMC-GF1を使うというシナリオを考えていて、その中で白という選択肢を作ったのですが、男性も白をかなり購入してらっしゃいます。しかも年齢層も幅広く、予想以上に幅広いユーザーがGF1を支持していただいているという印象です。

 ここで自己採点ですが、こうした生産計画が保守的過ぎた反省も踏まえて80点ぐらいにしたいと思います。マイクロフォーサーズに関しては、やっと1年が終わったところで、これからやることの方がずっと多いのですから。現在、国内ではミラーレス機が2割近い構成比になっていますが、これを来年はさらに伸ばしたいと思います。一眼市場は1,000万台規模に成長すると言われていますが、その一部を切り取るのではなく、別の市場として一眼レフとミラーレス一眼の総和で、1,000万台の上を狙えるようになるとうれしいですね。コンパクトカメラの需要は頭打ちになってきていますから、新しいタイプの市場として育てていきたいと思います。

人気の高いDMC-GF1シェルホワイト

――もっとも多くミラーレス機ユーザーを持っているのがパナソニックですが、どのようなユーザー層が見えてきていますか?

 ミラーレス一眼は一般に"ブリッジカメラ"と言われていますが、まったくその通りで、コンパクトカメラを使っていたお客様が、そのままの使い方でレンズ交換式のより高機能、高画質なカメラを求めるときに、購入のハードルが低い機種として選ばれているようです。

――ミラーレス機としてはサムスンが近くNXシステムを発表すると言われています。APS-Cサイズセンサーのミラーレス機には、様々な意見がありますが、パナソニックとしてはどのように見ていますか?

 他社の製品についてはコメントできませんので、一般論として我々の考え方を話します。APS-Cサイズセンサーはフォーサーズセンサーよりも大きいわけですが、本当に高画質にこだわるのであれば、35mmフィルムフルサイズの方が利点が大きいと判断しています。このサイズのセンサーであれば、かなりリーズナブルに生産可能になってきていますから。しかし小型軽量なボディと画質のバランスを取るのであれば、フォーサーズセンサーには優位性があります。コンパクト機からのアップグレードを考える場合、通常の機種と比較して8倍ものセンサー面積がありますし、コンパクト機ハイエンドの2/3インチクラスと比べても4倍。今後もさらに画質は上がっていきます。印刷すればA3クラスのサイズに引き延ばしても十分に使える実力があります。

 それ以上の画質を求める人ならば、フルサイズ、そうでないのであればフォーサーズぐらいがちょうどいいのではないでしょうか。特にミラーレスシステムの場合、コンパクトさがひとつの特徴ですから、そこを活かすのであればということです。フルサイズセンサーならば、全紙でさえも良い画質が得られますよね。そんなことはフィルム時代には考えられませんでした。確かに、今はピクセル等倍で画質を語るケースもありますので、画素単位で見て、同程度の画素数を持つAPS-Cサイズセンサーの絵と比較し優劣を話す場合もあるかもしれません。しかし、写真を写真として全体像が見える形で鑑賞するのであれば必要以上の実力はあるのではないでしょうか。

 従ってAPS-Cサイズセンサーを搭載したライバルがサムスン、そしてそれ以外に登場したとしても、マイクロフォーサーズの地位が危うくなるとは思いません。

――一通りのラインナップがそろい、これからマイクロフォーサーズの第2章への扉が開きます。今後はどんな展開が待っているのでしょう?

 う〜ん、それは言いづらいなぁ。でもマイクロフォーサーズの発表時から話している、小さくて軽くて使いやすいカメラを目指すというコンセプトは、これからも追求の手をゆるめません。動画カメラとしての使いやすさについても、DMC-GH1のさらに先を目指して突き詰めていきます。コンセプトを大きく変えるのではなく、それぞれの特徴を伸ばすために個々の機能や性能を追求していきます。もっとも、新しいことをやらないというわけではなく、新しい要素も順次入れていく予定です。

――現在のラインナップを固定化して後継機を開発していくのでしょうか?

 ラインナップの固定化を図るつもりはないのですが、既存の機種をベースに改良していくことも重要だと思っています。。DMC-G1やDMC-GH1を使っていただいている方々の意見を取り入れ、改善・改良は続けていきます。例えばコンパクト機では定番になっているLUMIX DMC-FXシリーズは、DMC-FX7から数えて10代目になりました。基本コンセプトは変えていませんが、徐々に改良を加えてここまで来ました。こうした完成度の高め方をすることで、我々のマイクロフォーサーズ機のプラットフォームを磨き込むことができます。

 例えばDMC-G1とDMC-GH1は動画機能の追加と、それに伴うセンサーやマイク配置などの違いしかないと思っている方が多いですよね? でも、よく見るとグリップ部のデザインが変化していたり、ダイヤルを押し込む際のバネの強さを変えていたりします。スペック上のわかりやすい改良だけでなく、細かな部分も含めて積み重ねていくことが重要だと考えています。

――動画機能も改良するとのことですが、どこまで動画カメラとして使えるようにするか?については、静止画カメラである以上、限界もあるように思います。どこまで動画機能について追いかけるお考えでしょう?

 とことんまで突き詰めてほしいとか、パワーズームも含めて動画カメラらしい機能をといった声もあることは確かです。実際、内部では検討もしていますし、技術的には問題がありません。しかし、一般のカムコーダと同じ使い勝手を目指しても、あまり良い結果は得られないとも考えています。まずは静止画カメラとして優秀であること。そこに加えて、フルHDでレンズの描写力を活かした、一眼の世界でなければ描けない映像作品を生み出せるカメラとして育てたいと思います。マイクロフォーサーズのカメラで映画を撮ってほしいというのではありませんが、それに近い楽しみをユーザーに知ってもらうために、何かできないかと考えています。

――今後、パナソニックのマイクロフォーサーズ機を改善していく上で、鍵となる要素は何だとお考えでしょうか?

 やはりレスポンスです。そこにはこだわってきましたし、もっとこだわらなければならないと感じています。決して、現状に満足しているわけじゃありません。ファインダーの画質もそうですし、AF速度もそうですし、画質に関してもです。その時点のベストな技術、ベストなコンポーネントを選んで物作りをしていますが、そこで満足するのではなく、ひとつの成果が出たならば、次のステップへと踏み出していかなければなりません。LSIやEVFに使う液晶パネルなどデバイスの進化や要素技術の進歩を含め、まだまだ伸びる要素がたくさんあるのがミラーレスの世界です。

――実際にミラーレス機を使ってみると、個人的にはファインダーの見え味よりもシャッターラグの大きさが気になってきます。

「そこはかなり意識はしています。問題点としてシャッター幕の動かし方といったメカニカルな部分にポイントがあるのですが、将来は改善できると考えています。いつまでに改良しますと具体的に言える段階ではありませんが、実際に製品化することを前提にターゲットを決めて開発に取り組んでいる最中です」


パナソニック製レンズ交換式カメラへの流通の見方が変わった

――“マイクロフォーサーズが受けているのは日本だけ”という声をよく耳にするのですが、メーカー側の実感としてはどうでしょう?

 そう言われるのは、日本以外の市場にマイクロフォーサーズ機をあまり持ち込んでいないからです。生産計画や規模の問題もあって、海外ではまだあまり積極的に展開していません。しかし、例えばDMC-GF1の例ですが、アジア地域には投入したとたんにすぐ売り切れてしまいました。欧州は国によって受け止め方が違いますが、当初の予定通りには売れています。北米も10月からの発売なので、まだはっきりした結果は出ていませんが、初回出荷分はすぐになくなってしまいました。このようにDMC-GF1に関しては順調です。

 DMC-G1に関しては昨年秋の発売で、リーマンショックの直接の影響が海外では避けられませんでした。在庫調整が進む中で新たな製品を押し込むのはとても難しかった。しかし、在庫調整が業界全体で進んだ時期に発売されたDMC-GH1は、非常に順調に売れていて計画以上の実績が出ています。元々、海外展開分の台数が少なかったこともありますが、あちこちの地域・国でDMC-GH1が不足しています。

 海外は日本に出ていない安いモデルを各社がたくさん出し、それがエントリークラスの標準になっています。しかし、海外でのGシリーズは日本と同じ価格帯で、廉価モデルのバリエーションはありません。日本ではエントリークラスでも、海外ではミドルクラスなので、数はそう出ないと踏んでいたのですが、結構な数が出ています。まだ日本ほどの成功は収めていませんが、いずれはミラーレス一眼が大きなシェアを占めるようになるでしょう。第一世代が予想以上に動いたことで、流通のパナソニック製レンズ交換式カメラへの見方が変わってきていますから、次の世代からは海外でも大きな展開ができると思います。



(本田雅一)

2009/12/10 12:54


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