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2009年冬:メーカーインタビュー−−オリンパス編

マイクロフォーサーズは期待以上の立ち上がり

 2009年冬メーカーインタビューの4社目は、3社目として掲載したパナソニックとともに、マイクロフォーサーズ機で絶好調のオリンパスをお届けする。オリンパスイメージング イメージング事業本部の小川治男副本部長に、新製品「E-P2」にかける期待とE-P1との違い、フォーサーズ規格の今後について訊いた(編集部)。※聞き手:本田雅一氏

オリンパスイメージング イメージング事業本部 副本部長の小川治男氏 12月4日発売のオリンパス・ペンE-P2

E-P2は予定より2カ月早く投入

――今年、国内向けのオリンパス製カメラとしては一番の話題となったE-P1は、大変に好調だったと伺っていますが、期待していた以上だったのではないでしょうか?

 まったくその通りで、新マウント規格の立ち上げとしては想像以上に良い結果を出すことができました。公式発表では月産2万台と言っていますが、通常、この80%ぐらいで商品が回れば売上としては好調と言えると思います。我々もそう考えて2万台作れるようE-P1に使うデバイスを用意していました。ところが実際にはやや不足気味で、調達したデバイスの分だけ製造ラインがきっちりと動き続けている状態です。

 デバイスの調達数を増やすのには時間がかかりますから、集中して製品を割り当てている日本市場でも、E-P2発表直前まで2週間ほどお待たせする状態が続いてしまいました。

――“優先配分している日本でも……”とのことですが、マイクロフォーサーズは海外では苦戦とささやかれていました。パナソニックも同様のことを話していましたが、海外でも受け入れられているのでしょうか?

 それは海外への出荷比率の問題です。最初から日本向けには多めに配分しようと思っていましたが、現地販売会社の考え方などもあり、海外比率が低かったのです。このため、日本以外の市場では、発売以来、ずっとお客様に届ける商品がない状態が続いてしまいました。年末商戦ではE-P1の海外割り当てを増やす予定です。

2009年の話題モデルとなったオリンパス・ペンE-P1

――そこに外装EVFを利用できる上位モデルのE-P2が投入されます。外装EVFを望む声が大きかったこともありますし、今後はE-P2が主力になっていくのでしょうか。

 E-P2の月産計画は1万台で、E-P1の2万と合わせて3万台ペースと考えています。価格が異なる2ラインナップなので、このような配分になるだろうと判断しました。アートフィルタが2つ追加され、外部マイクなどのアクセサリポートも追加されています。追尾AFやi-FINISH、HDMIコントロールなど、実はかなり多くの機能追加がなされていいます。このため、1万5,000円ぐらいE-P2の方が価格的に上に来ると思われます。

――先ほど海外比率が低かったために、実は海外でも品不足気味だったとのことですが、実感としてワールドワイドにミラーレスのレンズ交換式カメラのトレンドが広がるだろうという実感はどれぐらい感じていますか?

 マイクロフォーサーズの需要が日本市場中心というのはその通りで、圧倒的に日本で売れています。ただ、それは早い時期からPENというブランドで強気のマーケティングをしてきた結果でもあります。これに対して、PENのブランドが日本ほど強く残っていない海外では慎重になっていたのです。このため海外向けの数字は、計画していた出荷数で決まっていて、出荷したものはすべて売れてしまっています。北米などは、発表した時点で3カ月の予定分のオーダーが入ってしまいました。このため、前倒しで北米向けは出荷したのですが、それでも全く間に合っていません。北米の景気の悪さから、かなり保守的な読みをする販売・流通が多かったのですが、想像以上によく商品が動いたということです。店にも全く展示品さえ並んでいない状況で、海外のお客様には申し訳なく思っています。

――販売動向さえ正しくキャッチアップできれば、ワールドワイドで受け入れられる商品として、マイクロフォーサーズ規格のカメラを広めていける自信が持てたというということでしょうか?

 そうですね。予想以上のデキです。現在、ユーザー向けにアンケートを実施しているところなのですが、発売当初は想定以上にカメラマニアの方々が購入する量が多かったのです。購入する方の年代も40から50代、あるいはそれ以上の方々です。しかし8月の中旬以降になってくると、E-P1の良さが浸透してきたのか、それまでコンパクトデジタルカメラしか持っていなかったユーザーが、購入してくれるようになりました。E-P1ユーザーの半分以上が、コンパクトデジタルカメラからのステップアップユーザーです。これは海外市場でも同様で、他社SLRユーザーがプラスアルファの1台としてお求めいただいているケースも多いようです。こうしたことは、おそらく日本市場以外でも同じでしょう。海外での、ここまでの強い需要は想定外でしたが、ワールドワイドでの展開に自信は持つことができました。

 では、どんなところが受け入れられたのかですが、小型軽量を評価する声が圧倒的です。これにメタルボディの質感を評価して選んでいただけたお客様も多い。この2つを評価する声は、どこの地域でも全く同じです。

――そこにE-P2が投入されたのですが、発売までの期間がかなり短かったのですが、なぜこれほど短期間での上位モデル追加となったのでしょう。

 実はE-P2の発売は、当初全く計画にはありませんでした。満足できるだけの高精細なEVFユニットの開発は、来年にならないと実現できないと考えていたらからです。高精細EVFを外装で取り付けようとすると、小さなコネクタで超高速の通信を行なわなければならなくなります。様々な面でハードルが高く、年内には製品化できないと考えていました。

 E-P1の大きな問題のひとつとして、老眼の方がとても使いづらいというものがあります。それでE-P1の購入を見送ったという方は意外に多く、なんとか早い段階でEVFを付けたいと考えて開発を進めていたところ、予定よりも2カ月早く高精細EVFの外装接続を実現できたのです。

待望の外付けEVFに対応したE-P2

――ということはE-P1とE-P2では電気的にもかなり異なるものなのでしょうか?

 144万画素のEVFを実現するための信頼性やデータのやり取りのハードルが高くなり、E-P1の設計のままでは不可能だったため、ハードウェアをかなり思い切って変えています。具体的には内蔵しているLSIの設計を変えてピン配置を最適化し、インターフェイスの問題を解決し、不要輻射の問題を解決しました。もともと来年の春に発売するモデルにしようと考えていたため、とてもではないですが年内発売なんて絶対無理だと思っていました。

 発売間隔が短過ぎるという批判が出ることは十分承知の上で、しかし技術的な問題が解決したのであれば、少しでも早いタイミングで顧客に届けようということになり、E-P1と併売することになりました。

――上位モデルという位置づけですが、デザインや重さを含め、かなり近いスペックを持つ2つのカメラですから、徐々にE-P2にシフトしていくように思えるのですが、E-P1の位置付けは今後どうなっていくのでしょうか。E-P2に盛り込まれた機能のうち、ソフトウェアで対応できるものに関してはE-P1でも使いたいという声は大きくなってくるでしょう。どのように対応していく予定ですか?

 追加機能についてファームウェアアップデートで使いたいという声が出てくるとは、当然予想しています。しかし、前述したようにハードウェアをを変えてしまっているため、単にファームウェアを入れ替えればそれで動くという単純な状況ではありません。どこまで対応できるかを含め、開発陣の中で検討しているところです。LSIの外部インターフェイスの配置が変化しているので、信号処理や制御のタイミングなども含め、かなり変更しないとE-P2にはそのままソフトウェアを移植できないため、結果として、時間は少しかかると思います。しかし、初代機であるE-P1を購入していただいたユーザーは、我々にとっても特に大切な方々なので、技術的に可能な範囲で対応したいと思います。


フォーサーズにもきちんと取り組む

――国内ではマイクロフォーサーズばかりが目立っている状況ですが、このトレンドがワールドワイドに広がってくると、フォーサーズ規格のカメラの開発計画に影響を及ぼしませんか?

 オリンパスはマイクロフォーサーズ規格の発表後にも、E-30などの新製品を発売してきました。フラッグシップモデルとしてのE-3と、エントリークラスのE-520の間が開きすぎているという指摘もありましたが、E-30とE-620が登場したことで、隙のないラインナップになったと自負しています。もし、E-30とE-620を発売していなければ、フォーサーズは今後どうなるんだ、という話になっていたでしょう。

 しかし、両機種を発売したことからもわかるとおり、我々の方針は変わりません。それはE-P1、E-P2を発売した現在でも変わりません。

2008年12月発売のE-30。アートフィルターを初めて搭載 次いでE-620を2009年3月に発売した

――マイクロフォーサーズの位置付けに関して、オリンパスはフォーサーズとコンパクトデジタルカメラの間をつなぐ製品という位置付けだとお話されていましたよね。しかし、現在のマイクロフォーサーズは、そうした2つの異なる市場をつなぐ役割以上の存在になっているように見えます。

 これだけ売上が上がってくると、マイクロフォーサーズの機種でカバーする領域を再検討しなければならないとは思います。たとえば、一眼レフスタイルでEVFを内蔵したマイクロフォーサーズ機などはその筆頭かもしれません。どのような写真が撮れるのか、自分の絵作りの結果を見ながら撮影できるのがEVFの利点とするならば、光学ビューファインダーの利点はダイナミックレンジの広さにあると思います。いずれにしろ、異なる特性を持つ二つの方式ですから、今後も両輪で進めていきます。

 E-P1は本当に多くの顧客に支持していただけましたが、かといってすべての用途をマイクロフォーサーズだけで満たせるわけではありません。他社がフルサイズセンサー機とAPSセンサー機の両方を出しているのは、それぞれに異なるニーズがあるからですが、同じことはフォーサーズとマイクロフォーサーズの間にもあると思います。

――マイクロフォーサーズのどのような点が特に評価されたとお考えでしょうか?

 コンパクトカメラと一眼レフカメラの間にある敷居は、想像以上に高いものです。その敷居の高さをマイクロフォーサーズは下げることに成功したと言えるのではないでしょうか。また、レストランで食事をしている最中など、一眼レフカメラを出して撮影はしづらいけれども、マイクロフォーサーズ機ならば平気という意見もよく伺います。こうした“敷居を下げること”は、マイクロフォーサーズで我々が意図したことの一つですから、とてもうれしい反応です。

 昔、一眼レフカメラ市場はコンパクトカメラの2割程度の台数と言われていましたが、マイクロフォーサーズが登場したことで、それ以上の割合のユーザーがレンズ交換式カメラを使ってくれるようになると思います。

――この年末商戦、オリンパスだけでなくパナソニックも含め、マイクロフォーサーズが市場を席巻していますが、この熱は世界的に広がっていくでしょうか?

 日本では、とにかく圧倒的にマイクロフォーサーズが売れているのですが、これが良い意味でフォーサーズ規格の製品にも影響を与えています。たとえばE-P1ではじめてアートフィルタに触れ、それを使いこなすためにE-620を追加購入したというお客様が、実はけっこういらっしゃいます。現在、日本ではマイクロフォーサーズ熱が高まっているところなので、それがすなわち市場における潜在ニーズの差ではないと思っています。今はマイクロフォーサーズが、ひとつのブームのような形になっていますが、よく市場分析をしなければ、実際にどのようなニーズがあるのかは判断できません。

――では、なぜここまでマイクロフォーサーズがブームになったのでしょう?

 その年のヒット商品を紹介しているある雑誌で、ヒットベスト30のうちの15位にE-P1が選ばれました。製品そのものの魅力に加えて、市場性、新規性なども評価されての受賞とのことでした。これまでは、どんな新しい機能、どんな優れた機能を持っているかを競う時代でしたが、今は機能を崇める時代ではなく、生活スタイルに密着した製品が受け入れられるようになってきているのだと思います。以前にも話しましたが、不景気になると多機能ではなくて、シンプルで自分に合った使いやすい製品を慎重に選ぶ傾向があります。そこに訴求できるようにと考えて作った面もあります。そこは以前から意識していた部分なのですが、こういうデザインになってより明確に消費者に伝わったのだと思います。


EVF内蔵タイプも一つの選択肢

――来年もマイクロフォーサーズ製品の発売が続いていくのでしょうか? フォーサーズ規格のボディで新製品は?

 現時点でフォーサーズには、様々な技術が盛り込まれています。E-3発売時にお話ししたEシステムの第2章は一通りのラインアップを完成させ、さらにそれをアップデートをして磨き込んでいます。そうした意味では、今のフォーサーズボディは、オリンパスのカメラ技術の集大成的なものです。これをさらに磨き込んでいくことになるでしょう。

 それに対してマイクロフォーサーズは、ハードウェア構成の自由度がとても高い規格です。最初の2機種はターゲット、コンセプトを絞り込んで商品を作りましたから、この次はもう少しボディタイプにバリエーションが出ても良いのではないか? と考えています。

――それはEVF内蔵タイプなども含めた展開ということでしょうか。またフォーサーズに比べると、マイクロフォーサーズ対応レンズはまだラインナップが少ない状況ですから、この部分の強化についてもマイクロフォーサーズ中心になっていくのでしょうか。

 EVF内蔵というのも、もちろん有望な選択肢の一つになりますが、特に形を決めてかかっているわけではありません。様々な可能性があると思っています。来年の前半はレンズを含めてマイクロフォーサーズをさらに強化していかなければならないと考えていますから、しばらくはそこに力点が移ったように見えるかもしれませんが、永遠にそうであるということではなく、来年中にはフォーサーズにもきちんと取り組んでいきます。

 マイクロフォーサーズ用レンズは、すでにM.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6とM.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6の2本を発売することを発表していますが、別途、2011年までのロードマップも示しました。

オリンパスがイベントで掲示した交換レンズ新製品のロードマップ。下部がマイクロフォーサーズ用レンズ

――フォーサーズのスタート時には画質やスペックを最優先した仕様決めを行っていた印象でしたが、マイクロフォーサーズでは軽量・コンパクトであることと、画質も高いこと。この二つのバランスが重要になってきますよね」

 描写力を活かした撮影が行えるレンズを用意することは、レンズ交換式カメラメーカーとして当然のことなのですが、一方でボディ内手ブレ補正機能を持っていることを最大限に活かし、メカ的にも光学的にも工夫したコンパクト設計を心がけて開発しています。

 たとえば単焦点レンズは明るくなければならないでしょうが、ズームの場合は明るさを追求するとどうしてもサイズが大きくなりますから、F4からF5.6程度にとどめて小さなサイズとするように考えています。

――マイクロフォーサーズの場合、電子的に光学収差を補正する機能を積極的に使っています。この場合、像面湾曲の少なさを重視して設計しつつも、色収差や歪曲に関しては電子補正に任せるといった考え方もあると思いますが、そのあたりはどう考えていますか?

 電子補正は技術的に可能なものですから、これは必要な範囲で適切に行っていくべきものだと思います。しかしオリンパスの文化として、やっぱりレンズに収差を残すというのはできません。そこはオリンパスのカルチャーとして、収差の少ないレンズをまず作る。基本的な性能はきっちり出して、その上で最後の調味料の“ひとふり”として電子補正を使う程度に考えています。

――動画機能について、今後はどのように発展させていきたいと考えていますか?

 長期的な取り組みとして動画機能の改善に取り組んでいきたいと考えています。とはいえ、今のカメラユーザーはスチル写真中心の使い方です。またコンパクトカメラのユーザーも、一眼には伝統的な“カメラらしさ”を求めているので、スチルカメラとしての機能性を落とすようなことはやりません。

 その上で、一般的な家庭向けカムコーダのような記録のための動画撮影ではなく、映像作品を創り出すための動画撮影機能を目指したいと考えています。長時間を撮影し続けるというよりも、短いカットで、しかし美しくレンズの力を感じられるような、味わい深い動画の方が、レンズ交換式カメラにはあっているように思います。

 またアートフィルタに関しても今回、ジオラマ動画というものを追加していますが、今後も様々な可能性を考えていきます。スチルカメラでの動画撮影は、やはりビデオというよりも、写真が動いている……すなわち映画が好きな方々にも違和感のないものにすることもひとつのテーマとして考えています。



(本田雅一)

2009/12/16 00:00


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