写真展
安田菜津紀写真展「君が生きるなら−HIVと、子どもたちと−」
(オリンパスギャラリー)
Reported by 本誌:河野知佳(2015/3/26 11:00)
「あそこにエイズの村がある」
人々が指差した先には、緑の壁。それがこの村との出会いだった。
カンボジアに初めて渡航してから12年となる。目まぐるしく変わり続けるもの、そして変わらず残る温かいもの。そんな光と影が交錯し、混じり合う社会に生きる人々の姿を目にしてきた。
通い続けている村では、HIV感染者を抱えた家族たちが生活を共にしている。元々は首都プノンペンにあった集落が、開発に伴い郊外に追いやられたものだ。いつも出迎えてくれる少年が「遊びに行こう」と手をとると、荒れた指の感触が残る。薬の副作用で、その肌はぼろぼろになっていた。
この村に過った死の不安。いまなお根強い偏見と、外から浴びせられる心無い言葉。そんな運命と向き合いながら育つ子どもたちは、どんな大人になっていくのだろう。出会った頃はただただ不安を胸に、シャッターを切り続けていた。
けれども時を共にするごとに、そこには小さな喜びがあり、ごく穏やかに流れる日常があることを知った。大切なのは相手の言葉にじっくりと耳を傾けながら、自然体で向き合うことだと教えてもらってきた。
そんな村の息吹のひとつひとつを、写真に込めました。
(写真展情報より)
会場・スケジュールなど
- ・会場:オリンパスギャラリー東京
- ・住所:東京都千代田区神田小川町1-3-1NBF小川町ビル1階
- ・会期:2015年4月9日木曜日~2015年4月15日水曜日
- ・時間:10時~18時(最終日15時まで)
- ・休館:日曜日・祝日
- ・入場:無料
- ・会場:オリンパスギャラリー大阪
- ・住所:大阪府大阪市西区阿波座1-6-1MID西本町ビル1階
- ・会期:2015年5月7日木曜日~2015年5月14日木曜日
- ・時間:10時~18時(最終日15時まで)
- ・休館:日曜日・祝日
- ・入場:無料
作者プロフィール
- 1987年神奈川県生まれ。studio AFTERMODE所属フォトジャーナリスト。
16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、カンボジアを中心に、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で貧困や災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。2012年、「HIVと共に生まれる−ウガンダのエイズ孤児たち−」で第8回名取洋之助写真賞受賞。共著に『アジア ×カメラ「正解」のない旅へ』(第三書館)、『ファインダー越しの3.11』(原書房)。上智大学卒。