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エントリーEOSの違いを見てみよう
8000D、X8i、X7i、X7、X70の5機種をスペックと実売価格で比較
Reported by 北村智史(2015/2/23 11:00)
この4月、キヤノンから2機種のエントリー一眼レフカメラが発売される。ひとつは、従来のEOS Kiss X7iの後継となる「EOS Kiss X8i」。もうひとつが、キヤノンのエントリーモデルでは初の“数字”モデルである「EOS 8000D」だ。
現行のX7iは、実売価格を抑えたお買い得モデルとして、当面は併売の見込み。一眼レフとしては超小型軽量なEOS Kiss X7も、その独自性から残す方針とのこと。つまり、新しい2機種と従来の2機種、これにローエンドのEOS Kiss X70を加えた計5機種で、エントリークラスを受け持つことになるわけだ。
今回は、他社に比べて厚みの増したキヤノンのエントリー一眼レフ5機種について、スペックやコストパフォーマンスをチェックしてみることにしよう。(価格はすべて税込です)
エントリーEOS最上位の注目モデル――EOS 8000D
- ボディのみ:実勢価格10万5,620円前後(2015年4月下旬発売)
- EF-S18-135 IS STM レンズキット:実勢価格14万5,570円前後(2015年4月下旬発売)
- ダブルズームキット(18-55mm + 55-250mm):実勢価格14万5,570円前後(2015年4月下旬発売)
キヤノンのエントリークラスでは最上位となるモデルで、唯一「Kiss」を名乗らない。フィルム時代からの人気シリーズとはいえ、そのネーミングに抵抗感を持つ人も多いことから、初の「数字」モデルとなったようだ。
基本スペックは同時に発表されたX8iと同じで、有効2,420万画素CMOSセンサー、映像エンジンDIGIC 6、全点クロスの19点測距AF+ハイブリッドCMOS AF IIIなどを搭載する。X8iにはない、ライブビュー時のサーボAF(最高3コマ/秒連写が可能)、最大10倍の動画デジタルズーム、電子水準器機能なども持つ。
エントリークラスでは初となるサブ電子ダイヤル、上部液晶表示パネルを装備。上位モデルに迫る操作性の高さも特徴だ。
機能、性能面から考えれば5機種中トップで、X8iとの実売価格の差は5,000円ほどと小さい。上位のEOS 70Dもそれなりに値崩れしてきているので、スペック重視ならそちらを選ぶのも手だ。ただし、重さは190g(電池とメディア込み)も違うので、軽快さ優先なら本機がはるかに上となる。
機能充実のKiss最新モデル――EOS Kiss X8i
- ボディのみ:実勢価格10万220円前後(2015年4月下旬発売)
- EF-S18-55 IS STM レンズキット:実勢価格10万9,930円前後(2015年4月下旬発売)
- ダブルズームキット(18-55mm + 55-250mm):実勢価格14万170円前後(2015年4月下旬発売)
8000Dと同時に発表されたEOS Kissシリーズのトップモデル。従来のX7iの正常進化版であり、女性・ファミリー層向けという位置づけといえる。
現行EOSで最多画素数となる有効2,420万画素CMOSセンサーに、最新の映像エンジンDIGIC 6を搭載。ファインダー撮影時のAFはEOS 7Dや70Dにも搭載されていた全点クロス19点測距。ライブビュー/動画撮影時には、大幅な高速化を果たしたハイブリッドCMOS AF III、NFC対応のWi-Fi機能なども備えている。
測光システムが、従来の63分割デュアルレイヤー測光から、7,560画素RGB+IR測光に変わったほか、人物の肌の色を認識して優先的にピントを合わせる色検知AFなどによって、ピントや露出の精度を向上させている。
また、レンズ光学補正に歪曲収差補正が追加、蛍光灯などの光源下での撮影時に威力を発揮するフリッカーレス撮影機能、ファインダー撮影時にもマルチアスペクトが有効となった点なども、見どころといえる。
お買い得になった旧モデル――EOS Kiss X7i
- ボディのみ:実勢価格6万1,990円前後(2013年4月発売)
- EF-S18-55 IS STM レンズキット:実勢価格7万3,300円前後(2013年4月発売)
- EF-S18-135 IS STM レンズキット:実勢価格8万9,500円前後(2013年4月発売)
- ダブルズームキット(18-55mm + 55-250mm):実勢価格8万9,500円前後(2013年8月発売)
- トリプルズームキット(10-18mm + 18-55mm + 55-250mm):実勢価格11万2,860円前後(2014年8月発売)
X8iの前身で、X8i発売後もお買い得モデルとして継続販売されるという。有効1,800万画素CMOSセンサー、DIGIC 5を搭載する。AFは全点クロスの9点測距で、新機種に比べると見劣りするが、測距点のカバーエリアはあまり変わらない。
ただし、新機種はAIサーボAF IIを装備しているので、動きの速い被写体に対する捕捉力、追従性は多少差が出る可能性がある。連写は5コマ/秒とスピードは同じだが、1度に連写できる枚数は大幅に違うので、動きものを撮りたい人は要注意だ。
ライブビュー時は、画面の中央部のみ位相差検出が可能なハイブリッドCMOS AFとなる。ピント合わせには少々時間がかかってしまう。液晶モニターはタッチパネルを内蔵した3型、104万ドットのバリアングル仕様。ライブビューや動画撮影には便利だ。
発売から2年近く経過していることもあって、実売価格はかなりこなれている。Wi-Fi機能がないのは少々今風ではないが、そのあたりに目をつぶれるならお買い得だ。
小型・軽量を優先する人に――EOS Kiss X7
- ボディのみ:実勢価格3万9,510円前後(2013年4月発売)
- EF-S18-55 IS STM レンズキット:実勢価格5万3,330円前後(2013年4月発売)
- ダブルズームキット(18-55mm + 55-250mm):実勢価格5万9,290円前後(2013年4月発売)
- ダブルレンズキット2(ホワイトボディ。18-55mm + 40mm F2.8):実勢価格7万4,330円前後(2014年6月発売)
X7iと同時に発売されたモデルで、一眼レフとしては画期的と呼べるほどの小型軽量化を果たしている。基本的な部分は、X7iと共通で、有効1,800万画素CMOSセンサー、DIGIC 5を搭載する。
AFは菱形配置の9点測距で、中央1点のみがクロスセンサーとなっている。ライブビューや動画撮影時は、画面の左右80%×上下80%の範囲で位相差検出が可能なハイブリッドCMOS AF IIが利用可能。X7iに比べるとぐっとストレスは少ない。が、新機種は格段に進化しているので、ここは要チェックのポイントといえる。連写スピードも4コマ/秒と、やや控えめのスペック。
液晶モニターは3型、104万ドットのスペック。タッチパネルを内蔵しており、タッチAFなどが利用できる。ただし、小型軽量化を優先したためだろう、固定式となっている。X7iと同じく実売価格はずいぶんこなれているので、予算重視の方には魅力的だと思う。
敢えて選ぶ必然性無し――EOS Kiss X70
- ボディのみ:実勢価格3万8,220円前後(2014年3月発売)
- EF-S18-55 IS IIレンズキット:実勢価格5万2,380円前後(2014年3月発売)
EOS Kissシリーズのローエンドモデル。上位モデルと同じく有効1,800万画素CMOSセンサーを搭載するが、映像エンジンは世代の古いDIGIC 4となる。最高感度は、常用ISO6400、拡張ISO12800で、上位4機種(常用ISO12800、拡張ISO25600)より1段低い。
ファインダー撮影時のAFは、中央のみクロスセンサーの9点測距。連写スピードは最高3コマ/秒。ライブビューや動画撮影時はコントラスト検出AFで、スピード面では期待できない。液晶モニターは、サイズこそ3型だが、46万ドットと解像度は低め。タッチパネルも内蔵しない。
ローパスフィルターなどを振動させてゴミを落とす機能も備えていない。また、レンズキットに同梱の標準ズームがSTMでないのも物足りない点だ。実売価格は、レンズキットで5,000円ほどX7より安いだけなので(ボディ単体ではX7のほうが少し安い)、特別な事情がなければ、X7を選ぶことをおすすめする。
まとめ
新しい2機種の実売価格は税込みで10万円(ボディ単体)を超えており、相対的に、現行の3機種のお買い得感が増したかっこうとなっている。
新機種の8000DとX8iについては、「Kiss」のネーミングやスタイル(右手側にモードダイヤルと電源スイッチがある)にこだわりがあるのでなければ、8000Dを推す。実売価格の差は小さいし、機能面でX8iが上まわる点は見当たらない。大きさは同じで、重さも15gだけの違い。となれば、8000Dを選ばない理由はない。
X7iとX8iの価格差は、ボディ単体では3万5,900円ほど、ダブルズームキットでは5万7,280円ほど。X7とX8iの価格差は、ボディ単体で6万600円ほど、ダブルズームキットでは実に7万7,980円ほどにもなる(ただし、望遠ズームは非STMのEF-S 55-250mm F4-5.6 IS IIとなる)。
そのため、コストパフォーマンス重視で選ぶならX7iとX7がおすすめとなる。X7iの優位点は、全点クロス9点測距、5コマ/秒連写、バリアングル液晶モニターなど。機能面ではX7よりも上といえる。一方のX7の優位点は、小型軽量さとハイブリッドCMOS AF IIなど。ライブビューや動画で子どもなどの動く被写体を狙うには有利となる。
残るX70は、現時点では選ぶ必然性はない。機能や性能、実売価格の面からもX7のほうがお得だ。
製品名 | EOS 8000D | EOS Kiss X8i | EOS Kiss X7i | EOS Kiss X7 | EOS Kiss X70 |
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撮像素子サイズ | APS-Cサイズ相当 | ||||
有効画素数 | 約2,420万 | 約1,800万 | |||
最高感度 | ISO25600 | ISO12800 | |||
記録媒体 | SDXC/SDHC/SDメモリーカード | ||||
連写性能 | 最高約5コマ/秒 | 最高4コマ/秒 | 最高3コマ/秒 | ||
液晶モニター | 3型約104万ドット | 3型約46万ドット | |||
液晶モニター可動 | フリーアングル | ― | |||
タッチパネル | ○ | ― | |||
動画 | 最高1,920×1,080/29.97p | ||||
Wi-Fi | ○ | ― | |||
幅(mm) | 約131.9 | 約131.9 | 約133.1 | 約116.8 | 約129.6 |
高さ(mm) | 約100.9 | 約100.7 | 約99.8 | 約90.7 | 約99.7 |
奥行き(mm) | 約77.8 | 約77.8 | 約78.8 | 約69.4 | 約77.9 |
質量(g) | 約565 | 約555 | 約580 | 約407 | 約480 |
※感度は拡張設定を含む
※質量はバッテリー、メモリーカード含む