【女性向け講座】富士フイルム LOVEPHOTO

山本彩乃先生に教わる!「風景にとけこむポートレート」編

横浜・赤レンガ倉庫前で山本彩乃先生と一緒にパチリ♪

富士フイルムイメージングシステムズが運営するXセミナーズ【LOVEPHOTO】は、同社のデジタル一眼カメラのユーザーや購入を検討している人向けの女性限定の写真講座です。

今回は、横浜・赤レンガ倉庫周辺で行われた山本彩乃先生の「風景にとけこむポートレート」セミナーをレポートします。

講師の山本彩乃先生。1980年、山梨県甲府市生まれ。東京学芸大学美術科卒業。在学中グラフィックデザインを学び写真を始める。バンタンデザイン研究所、外苑スタジオを経て独立。雑誌・広告等で活動中。SECESSION所属。写真新世紀入賞。

いろいろな視点で撮影の引き出しを増やす

山本彩乃先生の「風景にとけこむポートレート」セミナーは、風景写真の中に人物を風景に溶け込むように入れることで、ストーリーが感じられるスナップにするというもの。

今までに、大桟橋、銀座、代官山、原宿、荒川遊園、浅草で行われ、今回は赤レンガ倉庫周辺で行われました。

最初に赤レンガ倉庫内のカフェで、「風景にとけこむポートレート」を撮るコツとXシリーズのカメラの使い方について学びました。

「風景にとけこむポートレート」を撮るコツ

1)いろいろな視点で撮ってみる

「いいな!」と思う素敵な場所を見つけたら、「どこからどう撮ろうか?」と、アングル、構図、光、レンズ、カメラの設定などを考えましょう。自分が動くことで邪魔なものを画面から外したり、光の向きを順光から逆光に変えたりできます。アングルを変えることで背景が空から地面に変わったり、人物を配置する大きさで写真の主題なのか副題なのかが変わったりします。

エリオット・アーウィット、ロベール・ドアノー、ウィリー・ロニスなどの有名なスナップ作品を見せながら、その作品撮影の逸話や人物が入り込むことで作品にどのように影響しているかを教えていただきました。

2)ベストな1枚を撮るために粘る

ポートレート撮影と違い、風景に溶け込むような人物は思い撮りに動いてくれるとは限りません。ベストな位置やタイミングで人が来るのを待ちましょう。スナップ撮影というと、決定的瞬間のような瞬発的な写真を想像する人も多いと思いますが、待つことで生まれる決定的瞬間もあります。

過去に行われた「風景にとけこむポートレート」セミナーで撮影した彩乃先生の作品を見ながら、撮影意図やどのように撮ったのかを教えていただきました。

3)自分の気配を消す

風景に溶け込む自然な人物を撮るには、自分の気配を消すことが大切です。バリアングル液晶を使って被写体を見ないようにして撮ったり、望遠レンズで遠くから切り取ったりするのがオススメです。

体の向きとは別の方向にレンズを向けて、液晶モニターで確認しながら撮影する彩乃先生。

4)人物の動きを予測する

周囲の人の動きを観察して、「向こうから赤い服の人が歩いてきているから、赤を差し色に画面構成しよう」とか「ハイヒールの人が歩いてきているから、足をぶらして撮るためにシャッター速度を遅めに設定しよう」とか、人の動きを予測しながらシャッターを切りましょう。ファインダー撮影は両目を開き、利き目でファインダーを覗き構図を、もう片方の目で周囲の状況を確認すると、予測の精度が上がります。

スケートリンクは回る方向が同じなので、人物の動きが予測しやすいシチュエーションです。「撮りたい」と思った人を見つけたら、その人を狙って撮ってみるといいと参加者にアドバイスする彩乃先生。

5 ピントの合う範囲を広めに設定する
絞りを開けるとピントの合う範囲が狭くなるので、ピントが外れやすくなります。スナップ撮影では、F5.6〜F8程度まで絞った方が人物全体にピントが合いやすくなります。

6)四隅まで意識する

人の動きに集中すると、画面の四隅への意識がおろそかになりがちです。余計なものが入っていたり、中途半端な切れ方をしていたりすると、人のタイミングがベストでも残念な印象に。構図を決めるとき、シャッターを切るときは四隅を確認しましょう。

今回の講座は機材貸出しがあり、希望者には参加申し込み時にカメラボディ1台(X-T1、X-E2、X-M1)と、貸出カメラのキットレンズと希望レンズ1本のレンズ2本を借りることができます。いちばん人気のカメラはX-T1でした。
この日のオススメの設定は、フィルムシミレーションはブラケット機能を使い、白飛びしにくい「アステア(ソフト)」、こっくり色が乗る「クラシッククローム」、色がないことで物の形や質感が強調される「モノクロ」。ダイナミックレンジは「200%」。

赤レンガ倉庫周辺は、冬限定の特設スケートリンクや海の見える景色、象の鼻パークなどが撮影できます。撮影エリアが広いので集合時間を決めて、それぞれで被写体を探しながら撮影することになりました。

バラバラに分かれる前に彩乃先生から参加者の方へアドバイスがありました。

「スナップ撮影の面白さは、切り取り方で見え方がガラッと変わること。壁や窓枠越しから撮ると、被写体をストレートに撮ったときよりワンクッション挟むので世界観が変わって見えます」

「今日のような曇りの日では難しいのですが、影を主役にしたり、逆光状態で人物をシルエットにしたりすると雰囲気ある写真にまとまります」

「スナップ撮影では画面に入ってくる人は選べません。頭をフル回転させ状況判断をして、最適な選択をしましょう。しかし、どんなに粘っても撮れないときは、その場所ではないんです。諦めて次の場所を探しましょう。失敗してもいいんです。挑戦することが大切です」

「スナップ撮影というとレンズの広角側というイメージがあるかもしれませんが、広角側は広い範囲が写るので余計なものが入りやすくなり画面構成が難しくなります。望遠側で遠くからそっと切り取ると画面が整理しやすいですよ」

スケートリンクを参加者と一緒に撮影する彩乃先生。X-T1に付けているレンズは望遠ズームレンズ「XC50-230mmF4.5-6.7 OIS」です。
彩乃先生のアドバイスを受けて撮影する参加者たち。動く人を撮るのは難しかったようです。
赤レンガ倉庫裏の広場ではパフォーマンスを練習している人々がいました。話しかけて撮影させてもらう参加者さん。記念に撮影させていただきました。

Xセミナーの講評会は、セミナー近くのパレットプラザ55ステーションで2Lにプリントしたものを見ながら行います。

撮影した人が感想や撮影意図を発表し、別の参加者がその作品についての感想を述べ、最後に彩乃先生が講評するというスタイルで行われました。

自分の作品の感想を言うだけでなく、人の作品を見て「どう感じたか」を言葉にするのも勉強になったようです。

パレットプラザ55ステーションのプリントが終わるまで近くの喫茶店でケーキセットとおしゃべりを楽しみました。
ケーキセットで好きなケーキと飲み物を注文しました。撮影で疲れた体に甘いものは美味しかったですね。
ひとりずつ作品を発表していきます。撮影者以外の方は、同じ時間・同じ場所に何をどのように撮っていたのか、感心しながら作品を見ていました。

「風景にとけこむポートレート」セミナーに参加した方の作品と感想をご紹介します。

horiさん。「撮影前にスナップのコツを作例を見ながら具体的に教えていただけたのがよかったです。彩乃さんの言葉を思い出しながら撮影に臨むことができました。そして、撮影後の講評会は同じ舞台で撮影しても、参加者一人ひとりのベストショットはまさに十人十色。作品を通して、撮り手の視点を感じることができ、とても参考になりました。感想を言い合いましたが、みなさん褒め方が的確なのにも感心しました。雰囲気も和やかで楽しいひと時でした。また、参加したいですね」
maniさん。「今日は勉強になりました^_^ 風景に溶け込んだ絵になる人物を入れるのは中々難しいと思いました。また、トライしたいです」
maiさん。「同じ場所でも人によって全く違う写真ができあがってきて楽しかったです。ほかの方の写真を見ることで新しい”気づき”もあり、とても勉強になりました。また機会があれば参加させていただきたいです」
yumiさん。「初めてのポートレート撮影セミナーで緊張しましたが、学ぶことが多く、とても勉強になりました。またお借りしたX-T1が使いやすく、欲しくなってしまいました。またぜひ参加したいです!」
marika*さん。「ポートレートを撮ることが普段はあまりなく、動く人を町並みに入れて撮るということは難しかったのですが、とても楽しい経験となりました。これを機に人物もうまく溶け込むように撮影したいと思います。講師の彩乃さんもとても素敵な方ですっかりファンになってしまいました。また参加したいなと思います」
のぞみさん。「セミナーでは、普段撮らない角度から写真を撮ることに挑戦できました。自分の作品に対して、彩乃さんからの講評だけでなく、ほかの方々からも意見をいただけるのは貴重な経験なので、とても楽しかったです」
宮内静さん。「風景に溶け込むポートレートということでしたが、私にとっては難しいお題でした。結局、寄って撮ってしましいましたが、自分の好きな撮り方が明確になりました。今日は吉祥寺に行って風景に溶け込むような写真を一人リベンジしてきました。講座に出たことで新しいエッセンスが増えました」
さしだ さん。「毎回写真の引き出しを増やしたくて、山本彩乃先生のセミナーに何度も参加させていただいています。ワクワクできるセミナーです。ほかの方の作品を拝見したり、自分の写真を振り返って今回も新しい引き出しを見つけられたように思います」

最後に彩乃先生にお話を伺いました。

「初めて参加していただいた方も、最初のレクチャーでお伝えした“いろいろな視点を持つこと”を実践してくれて、“視点を変えると見える世界が変わる”ことが実感できたと思います。“どう撮れば、いちばんよく見えるか”を意識するだけで、写真はどんどん上達しますよ」

「自分の撮影スタイルが決まってくると、いつも同じ撮り方ばかりになりがちです。自分のスタイルを持つことはいいことですが、今回のように別の撮り方にも挑戦してみてください。普段と違う撮り方をすることで経験値が増えて、撮影の引き出しが増えます。そして撮影の引き出しが増えれば、自分がイメージした写真に近づきやすくなるので写真がもっと楽しくなりますよ」

撮影:山本彩乃先生。「アドバンストフィルターのパートカラー、ブルーを使用して青をポイントにし、右手前から奥のラインと、左からのラインの2つの世界を見せられる構図にしました。人通りが多かったのでシンプルになる時を待って撮影しました。」
撮影:山本彩乃先生。「象の鼻パークをプロムナードから見下ろして撮影。サークル状に波止場を囲むように配置されているスクリーンパネルをメインに、モノクロでシンプルに。偶然、左手前にハトが止まったので、ハトの動きと、カーブの先にカップルが来る位置を狙ってシャッターを切りました。」

次回の「風景にとけこむポートレート」セミナーは、3月21日の葛西臨海水族館です。興味のある方は参加してはいかがでしょうか。

(2015/3/6)
加藤マキ子(ツナ☆カメラ)
1981年生まれ。写真編集者。カメラ書籍を手掛ける編集プロダクションで女性向けのカメラ雑誌や書籍を多数手掛ける。その後、実用書系編集プロダクションを経て、2013年に独立。『光と色の写真の教科書 〜ふんわりフォトもこっくりフォトも思いのまま〜』『まりこ先生が教える やさしい写真の教室』などの企画・編集を担当。ときに、撮影や執筆も手掛けることも。仕事が好きで、マグロのように止まらず常に全力疾走中!