トピック
保護フィルターは必要? 不要?
画質低下は過去の話……愛用派の写真家・関一也さんに聞く
2026年7月31日 12:00
各社から高品質・高機能な保護フィルターが出回ったことで、昨今は保護フィルターに、「元のレンズの画質を損なうもの」という意識は少なくなりました。
それでも抵抗のある方々に向け、保護フィルターが持つ意外な側面や、いかにして高品質を実現しているかを写真家の関一也さんに語ってもらいました。
関一也
長野理容美容専門学校卒業 2011年より美容師として活動すると同時に写真家としても活動を開始。2013年、+ONE Film Worksを設立。星景ポートレートの先駆者。写真&動画のハイブリッドカメラマンとして活動。主にポートレート、ウェディング を中心に風景、物撮り、スポーツ、広告、ストロボ、写真&動画の講師、カメラ雑誌の執筆、寄稿、テレビ関連の動画撮影などを行う。
お相手として株式会社レイクプラッツ(H&Y日本総代理店)の代表取締役、新井渉平さんにもお越しいただき、期せずして「いまどきのフィルター談義」が盛り上がりました。
なぜ「保護フィルター」を使い続けるのか
——最近は「フィルターなしの方が画質が良い」という意見もSNSなどで見かけますが、関さんが保護フィルターを重視される理由は何ですか?
関 :初心者の頃、レンズを床にぶつけてフィルターが身代わりになってくれたという経験もありますが、今の僕が一番恐れているのは「レンズ内部へのゴミの侵入」です。
——え? それはどういうことですか?
関 :以前、防塵防滴でないレンズを掃除していた時にブロアーをかけたら、前玉の隙間から中にゴミが入ってしまったんです。中に入ったゴミは、逆光で撮影した時に光を反射して、消せないフレアやゴーストの原因になります。画質低下云々の前に、レンズの寿命に関わる致命的な問題です。だから僕は、箱から出したらすぐに保護フィルターを付けるのを鉄則としています。
——なるほど、確かにその観点はありませんでした。納得しました。
撮影テストを敢行、その結果は……
——とはいえ、フィルターをつけることでの画質の変化が気になると思います。そのあたりはどうお考えですか?
関 :H&Yのフィルターは当初マグネット式のK-Series角形フィルターを導入しました。その後可変式ステップリング(REVORING)など取り入れていき、その後保護フィルターもH&Yを導入しました。角形フィルター等で品質の良さは分かっていましたが、僕は疑い深いので、新井さんに相談して実際にテストさせてもらいました。H&Yの保護フィルターはもちろん、国内・海外の有名メーカーの最高級クラス、1枚1.5万〜2万円ほどするものを揃えて、三脚で固定して同じ環境で撮り比べたのです。
——具体的にはどのようなテストを?
関 :太陽を画面内に入れた逆光条件で、中心部から周辺部まで解像度がどう変化するか、そしてゴーストやフレアがどう出るかをRAWデータで厳密に比較しました。
新井 :結果はどうでしたか?
関 :驚いたのは、H&YのUltimate保護フィルター(以下、Ultimate)が、フィルターを装着していない状態と見分けがつかないほど高い描写性能だったことです。安価なフィルターでは、フレアが不自然に青く浮いたり、周辺部の解像感がわずかに低下したりすることがあります。しかし、Ultimateではそのような変化は見られず、画質への影響を感じることはありませんでした。また、国内・海外の有名メーカーの最高級クラス、1枚1.5万〜2万円と比べても最も良い結果で、しかもメンテナンス性が高く、枠も薄くて軽量、それでいて直営店での販売価格が82mmで7,880円という手ごろな価格です。
新井 :ありがとうございます。それは私たちが採用しているNanoコーティングやHD研磨技術の賜物でしょう。両面を非常に高い精度で平滑に研磨し、日本から取り寄せた最新のコーティングマシンをカスタマイズしてコーティングしているため、光の屈折や乱反射を極限まで抑えています。この技術は、普及版のMRC保護フィルター(以下MRC)にも一貫して採用されています。
関 :等倍まで拡大して隅々までチェックしても、悪影響が見つからない。この結果を見て初めて、「これならレンズの性能を100%引き出しつつ、ゴミの混入を防げる」と確信して、所有する60本以上のレンズすべての保護フィルターをH&Yに切り替えようと決めました。他社製品に比べてコーティングが落ちにくく、長く使える点もありがたいです。
——「Ultimate」と「MRC」、それぞれの特徴と違いを教えてください。
新井 :私が日本市場向けに企画したのが「Ultimateプロテクションフィルター」です。一番の違いはコーティングによる反射率です。MRCは0.3%ですが、Ultimateは0.1%まで抑えています。
関 :0.3%でも十分高性能だと思いますが、0.1%の意義はどこにあるのですか?
新井 :夜景撮影など、非常に強い点光源がある状況での安心感です。日本のユーザーは世界一品質にシビアですから、最高峰のスペックを求めています。ただ、私がそれと同時にこだわったのが「デザインのステルス性」でした。
——フィルターにデザイン、ですか?
新井 :他のメーカーのフラグシップモデルは金文字などでブランドを主張する傾向があるようです。でも、ユーザーとしては高価でかっこいいレンズとカメラを使っているのに、フィルターだけが主張しすぎるのはちょっと嫌ですよね。だからUltimateは目立ちにくい白印字にし、主張の弱いさりげない見た目としました。人によっては好みが分かれるかもしれませんが、個人的には保護フィルターはあくまでレンズを守るためにあり、付けてるのが分からないくらいの方がいいと思っています。派手ではなく、性能で勝負する質実剛健な存在、自分がユーザー目線で本当に欲しい製品を目指しました。
関 :あれは良いですね。レンズに馴染んで目立たない。これは撮り手にとって嬉しい配慮です。
新井 :一方でMRC保護フィルターは、反射率こそ0.3%ですが、撥水・防汚・帯電防止コーティングなどの基本性能はUltimateと同等です。通常の使用であれば、こちらでも他社の高級フィルターを凌駕する性能を持っています。こちらはマットブラック印字として、より一層ステルス性を高めた製品としました。私が日本市場向けに(正確には自分が欲しくて)企画したのですが、フィルターの存在感をできる限り削ぎ落した「レンズに溶け込むデザイン」をコンセプトに設計しています。富士フイルムなどのクラシックなデザインのレンズやデザイン性が高いオールドレンズとの相性は最高だと思います。付けてるのを忘れるくらい薄くて軽く、全く主張のないデザインなので。
自社工場を持つ強み
——H&Yの製品は高級ラインを含めて比較的買いやすい価格設定に思います。なぜ、こうした価格で提供できるのでしょうか。
新井 :それはH&Yが自社工場を持つフィルターメーカーだからでしょう。実は、著名なメーカーの多くも、自社でコーティングマシンを持っていません。H&Yがコーティング済みのガラスやフレームを供給し、彼らが組み立てて「メイド・イン・ジャパン」、 「メイド・イン・ジャーマニー」などとして販売しているケースも多々あるのです。
関 :つまり、H&Yは中抜きなしの「産地直送」みたいなものですね。
新井 :その通りです。加えて私たちはオンラインでの直販を軸にしています。これにより、他社の高級ラインと同等のスペックを、よりお手頃な価格でお届けしています。
CPLやVNDにもこだわりを
——関さんはCPL(円偏光)フィルターを多用されるそうですが、その効果について教えてもらえますか?
関 :風景では木々の葉の反射を抑えるために必須と考えています。反射を抑えることで、現像時の色の調整幅が劇的に広がります。昨日も山の中で撮影していましたが、「これがないと無理だ」と再確認しました。
新井 :関さんの面白いところは、風景だけでなくポートレートでもCPLを使いこなしている点ですよね。
関 :そうなんです。ポートレートでも、肌のテカリを抑えたり、衣装の質感を出したりするためにCPLは非常に有効です。さらにそこに「ミスト効果」を組み合わせることで、解像度を維持しながらも独特の空気感を演出できます。
編集部注:CPLにミスト系の効果を加えたフィルターがH&Yから発売されています。関さん本人が監修した製品です。
関 :EVOシリーズのマグネット/ねじ込みシステムは、一度使うと戻れませんね。特にVND(可変ND)フィルターやCPLフィルターの着脱がワンタッチになるのは革命的です。
新井 :特にEVOのVND+CPLフィルターについては、マグネット式を選択できることに利点があると考えます。通常のねじ込み式のみのVNDフィルターだと、本体を回すとネジが締まったり緩んだりすることがありますが、EVOはマグネットアダプターを介して本体を自由に回転させられる。これにより、反射の抑制具合を維持したまま濃度だけを変えるといった操作がスムーズに行えるのです。
関 :夜景撮影で、ゴーストを防ぐために一瞬だけ保護フィルターを外したい時も、EVOシリーズのUltimate保護フィルターならマグネット式でワンタッチです。ただしマグネットが仕込まれているためフレームの外周がわずかに大きく、それがレンズによってはフードに干渉することがありますよね。
新井 :おっしゃる通り、レンズによってはレンズフードの設計をかなりギリギリに設計している場合があり、そういったレンズでは着脱時に引っかかるかと思います。ただし、アダプターを装着した状態であれば原則レンズフードとは干渉しないはずなので、その状態でフィルターを着脱してもらえば問題ないです。現状では、レンズフードの着脱頻度が高ければEVOシリーズよりも従来からあるねじ込み式タイプのUltimate保護フィルター、またはMRC保護フィルターをおすすめしています。
ちなみに、可変NDとCPLが一体化した製品は2015年にH&Yが世界で初めて開発し、特許を持っています。現在は様々なメーカーから類似する可変ND+CPL製品が出ていますが、本家H&Yでは使い勝手など非常によく考えられており、EVO-seriesの可変ND+CPLフィルター日本でも非常に人気です。
少し脱線しますが、こちらもH&Yが特許を持つ可変ステップ機構のREVORINGとVari ND、CPLの3つを1つにした、REVORING Vari ND3-ND1000 CPLも非常に人気です。画期的なシステムを次々に開発し、進化し続けています。
撮影アクセサリーとしての「本質」を見据えて
——保護フィルターにおいても、帯電防止機能の評価が高いようですね。
関 :絶対必要です。スタジオでもモデルさんが衣装を動かした瞬間にホコリが舞います。H&Yのフィルターは両面に帯電防止コーティングが施されているので、ホコリがついてもブロアー一発で飛びます。
新井 :撥水・防汚についても、良質なコーティングを施すようにしています。自社開発の強固なコーティングにより、数年使っても性能が落ちにくいのが自慢です。
関 :実際、僕も3年くらいハードに使っていますが、物理的な傷がつかない限り、撥水性能や画質に問題を感じたことはありませんね。
関 :最近は0.1%より少ない反射率0.08%といった数字の競争もありますが、正直0.1%との違いを判別できる人はいるのでしょうか……。性能は十分上がったので、そうしたマーケティングのための数字よりも、メンテナンス性の良さや、現場での使い勝手を追求してほしいですね。
新井 :同感です。個人的にも研磨精度の高いガラスに、反射率 0.1%で撥水・防汚・帯電防止機能があってしかも手ごろな価格のUltimate保護フィルターが最適解だと思っています。しかしながら、日本のユーザー様、特に年齢層の高いユーザー様はそういった数字に惹かれて購入される方も多いので、悩ましいところです。反射率0.08%以下で現状のメンテナンス性を維持した製品も作れるので、価格は少し上がりますが、需要が高いようであれば弊社でも検討しようと思います。ただ、個人的にはあまりスペックの細かい差を示すよりも、H&Yは自社工場があるからこそできる独自の特許技術を活かし、面白い挑戦を続けていきたいですね。
——最後に一言あればお願いします。
新井 :H&Yは先ほども話題に出たVari ND+CPLや可変式ステップリング(REVORING)の他にも、マグネット式の角型フィルターシステムやドロップインフィルターシステムを備えた角形フィルターホルダーなど、多くの特許技術を持つメーカーです。多くの世界初に挑戦してきたメーカーであり、昨今は各社も行っている「機構を見直し、フィルターを扱いやすくする」というトレンドを作った先駆け的存在です。昔は丸型フィルターならねじ込み式だけ。角形フィルターなら裸のガラスを差し込こむだけという、何十年も変わらないフィルターの機構の世界に変化をもたらしました。そのため、機構の利便性を中心に今までは訴求してきましたが、今回は保護フィルターにフィーチャー頂いたので、光学性能の点でもPRでき、とても良い機会となりました。
H&Yはエンジニア出身で革新的な製品開発が好きな香港人の社長を中心とした香港の会社です。加えて、日本のユーザー様のリクエストを基にした日本発の製品が多くあります。このシナジー効果がH&Yの一番の売りであり、日本のお客様に受け入れられている要因の一つだと思っています。これからも日本の皆様に喜んでいただける製品作りに励んで参ります。

















