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「ライカSL3」ハンズオンレポート&担当者インタビュー
2024年3月9日 10:34
ライカカメラジャパンは、3月16日(土)に発売するミラーレスカメラ「ライカSL3」を都内でお披露目した。実機のハンズオンレポートと、ドイツから来日していた担当者のインタビューをお届けする。
ライカSLシリーズは、初代「ライカSL」(2015年)の登場以来、特にプロの写真家の意見を反映して改善してきたというカメラシステム。続く「ライカSL2」(2019年)および「ライカSL2-S」(2020年)で多くの新規ユーザーを獲得しており、今回さらに進化したライカSL3を試してほしいとアピールする。
ボディ外観は、一見して従来のライカSLシリーズを継承したイメージであるものの、小型軽量化を実現したのが特徴。ライカ以外も含むフルサイズミラーレスカメラ市場全体を見渡せば、いわゆる“小型軽量ミラーレス”の部類でこそないものの、従来のライカSL2比では明らかな小型化と言える。特に幅は数値にして5.2mmの減少だが、より角を丸めた造形も影響してか、ライカSL2と持ち比べると体感では1cmぐらい小さくなっているように思えた。
約70gの軽量化を実現した背景には、シャッターユニットの小型化など内部構造を見直したほか、トップカバーの素材変更もある。従来のアルミ削り出しから、より比重の低いマグネシウム製に変更。チクソモールディングにより成形されたもので、いわゆる“マグネシウム外装”と聞いてイメージするカメラの手触りとは異なる、平滑な表面仕上げだった。
イメージセンサーはライカSL2の4,730万画素から6,030万画素に変更。ライカM11やライカQ3と同様に3,600万画素もしくは1,800万画素でのRAW記録も可能なことに加え、新たに像面位相差AFに対応したことが大きなトピック。位相差検出で素早く大きくフォーカスを移動し、最後に合焦精度を追い込む部分でコントラスト検出を併用するハイブリッド式とした。また、物体検出AFも組み合わせたことで信頼性を高めているという。
画像処理エンジンは「Maestro IV」となり、静止画と動画のどちらのモードでもレスポンスよく信頼性のある操作を可能としている。加えて、ノイズ低減や色再現の最適化、効率的な手ブレ補正を実現。CFexpressや8K動画への対応も、同エンジンによるものだという。
ユーザーインターフェースでは、操作画面のハイライト色が「静止画は赤」、「動画は黄色」と分けられたことで、どちらのモードを選んでいるかを一目で把握できるようにした。情報画面もカスタマイズ可能としたことで、画面上のボタンの数そのものは減った(12→8)が、好きな機能を任意に配置できるため使い勝手は高まったとしている。
また、ボディ上面左手側にダイヤルを1つ増やしている。例えばここにISO感度を割り当てると、「絞り/シャッター速度/ISO感度」の3ダイヤル操作が可能となる。
会場には、別売のSL3用マルチファンクションハンドグリップとDCカプラーも用意されていた。
製品説明に続き、クリエイティブスタジオ「bird and insect」の阿部大輔氏と桜屋敷知直氏が登壇し、ライカSL3で撮影した写真と映像作品を披露。阿部氏は静止画を撮影する中で、肌色の自然さと、色やハイライト/シャドーの描き方が綺麗だとコメント。動画を撮影した桜屋敷氏は、阿部氏が写真を撮影する様子を通じて、「M型ライカが自分の世界に没頭するカメラなら、SLでの撮影にはM型と異なる被写体とのコミュニケーションが見えた。ブツ撮りもできたり、いろんなシーンで活躍できるカメラ」と印象を語った。
なお、阿部大輔氏がライカSL3で撮りおろした写真展「shape」が、ライカギャラリー東京およびライカギャラリー京都で3月31日(日)まで開催中。
担当者にインタビュー。「いいところを伸ばした」
製品発表会に登壇したイェスコ・フォン・エーンハウゼン氏に、ライカSL3の製品開発について話を聞いた。
——ライカSL3のアップデートは、どのように行われましたか? 例えばM型ライカとは想定しているユーザー像や意見の取り入れ方も異なりますか?
ライカSLシステムとライカMシステムのユーザー像には大きな違いがあります。ライカSL3については、基本的にライカSL2のユーザーから良いところ・悪いところを聞き、特に満足してもらえていたポイントをより伸ばすというアプローチを採りました。もちろん、ライカSL2ユーザーではない人にも意見を聞いています。
主だったところでは、6,030万画素センサーによりAPOレンズを生かす画質を更に向上し、操作画面の見やすさなど、使いやすさも高めています。
ライカはSLシステムにおいても“Fotoapparat”(フォトアパラート。日本語でいうなら“写真機”)という言葉がベースにあります。その上で、例えば動画のタイムコードのような、現代のシステムカメラに求められるものを搭載しつつ、ライカルック(画作り・画質)をしっかり体験できるカメラにしています。
——UI開発にはどのようなコンセプトがありますか?
ユーザーインターフェースには大きく2つあり、1つはGUIやメニュー画面の遷移など、ソフトウェア的な部分です。こちらはよりシンプルにしました。もう1つはライカが常にこだわるハプティック(メカ的な感触)の部分です。これも更に改善を加えました。
M型もそうですが、ライカのカメラはボタンが少なくメニュー構造もシンプルな点が、同業他社との大きな差別化要素になっています。そこをより発展させていこうというコンセプトです。
——電源スイッチもレバー式からボタン式になりました。
未来のカメラを考えた時、カメラの電源は「オン」か「オフ」の状態だけではありません。起動時間が長くなるため、「スタンバイ」のような中間の状態が重要になると考えています。例えば、スマートフォンやタブレットで「Leica FOTOS」アプリからリモートで電源を入れたり操作したりするようなことが既に実現されています。そういった状況が今回の新しい電源ボタンに反映されています。
ライカSL3では中間のスタンバイ状態でも消費電力をかなり抑えつつ、シャッターボタンの半押しで素早く撮影状態に復帰できるようにしました。
——ライカSLシステムは動画にも強いですが、熱対策などに新しい工夫はありますか?
パナソニックとの協業関係もあり、元々ノウハウを持っていました。ライカSL3では大きな放熱スリットや冷却ファンなどは設けず、熱伝導性の高い素材を効率良く配置するなど、従来の技術の積み上げで対策しています。
——ファインダーの光学系はライカSL2と同じですか?
はい。光学系、EVFパネルともに同じです。ライカSLからライカSL2にアップデートされた段階で新しくなり、既にとても高いレベルにありました。
——ライカMレンズに対するサポートはどのようになっていますか?
ライカSL2と同じ哲学で、まずはLマウントレンズに最適化し、次いでMレンズに最適化しています。Lマウントは他社レンズへの対応も必要ですから、ライカM11ほどMレンズの性能を引き出すことに特化したセンサー特性にはしていません。
ライカMレンズの性能をフルに引き出す場合、レンズから急角度でCMOSセンサーに入る光にも対応できるようにしておく必要があります。そのためイメージセンサー前のカバーガラスのデザインが重要です。薄いほどMレンズ本来の性能を発揮できると言えます。それが、他社のLマウントカメラよりカバーガラスを薄くしている理由です。イメージセンサーの構造としては「ライカM11にとても近いけれど、違う」といったもので、緻密に撮り比べれば、周辺光量などに多少違いが出るかなというイメージです。
かつてはMデジタルでも、画素の開口や入射角について課題があり、画面周辺部のみ各画素のマイクロレンズをオフセットして何とか対応するような時代もありましたが(注:ライカM8などの頃)、今ではセンサー技術が進歩したため、そこまでしなくてもよくなりました。