トピック

インスタントカメラの雄、あの「Polaroid」が見事に復活

CEOダン・ディアコーニス氏に現状と今後を聞く

日本正規代理店のVISTAL VISIONによると、国内で最も売れているのは「Polaroid Go」。小ぶりなサイズが好評の理由だそうだ

CP+2026で独自の存在感を放っていたのがPolaroid(ポラロイド)のブースだ。PolaroidとしてインスタントカメラをメインにしたCP+への出展は今回が初めて。

日本でも知名度の高い老舗のカメラブランドがいよいよ表舞台に出てきたとあって、ブースは連日大きな賑わいを見せていた。

今回、CP+2026の会場でPolaroid CEOのDan Dossa氏にインタビューする機会を得た。いまのPolaroidはオランダの会社だが、CEO自らこうした場に現れるのは珍しい。現在のビジネスや他社製品との違いなどについて話を聞いた。

「Polaroid Flip」を持つPolaroid CEOのDan Dossa氏

Polaroid CEO| Dan Dossa氏プロフィール

世界初のインスタント写真ブランドであるPolaroidのCEO。アナログ写真の価値とクリエイティビティを現代に再定義しながら、ブランドのグローバル展開をリードしている。

国際ブランド経営において豊富な経験を持ち、以前はThe Walt Disney Companyにて要職を歴任。特にDisney Consumer Products部門ではシニアポジションとして、世界各市場における事業成長とブランド拡張を牽引した。

現在はPolaroidのCEOとして、アナログ体験を軸にしたブランドの現代化と、新世代との接点拡張を推進している。

Polaroidとは?| Polaroid本社からのメッセージ

1937年の創業以来、写真の世界を切り拓いてきた世界初のインスタント写真ブランド。オランダに本社を置き、世界中で展開しています。製品ラインナップは、世界最小のアナログインスタントカメラから高度なアナログモデルまで幅広く取り揃えています。Polaroidは現在もアナログ製品を作り続けており、「人生で最高の瞬間は、リアルで、アナログで、人間らしいものである」という価値観を提唱しています。

——CP+に初出展し、来日もしました。日本市場をどのように見ていますか?

私は幸運なことに色々な国で生活してきました。アジアや欧州にもいました。ですが、これだけ熱心に愛情を持って写真に取り組んでいる愛好家のいる国はほかにないと感じています。

本当に生き生きとした場所で、アーティストも含めて写真の文化がしっかり根付いています。今ここで本格的にローンチできることをとても喜ばしく思っています。

Polaroidのブース

——Polaroid社のビジネスは好調ですか?

ご存知の通り、10年ほど前に会社として再生して持ち直したところです。その日を境に我々はどんどん成長を続けている状態です。

今となっては、需要を満たせないくらいまで成長しています。生産性を上げるために、これまでになかったほど工場に大きな投資もしています。今後もそのような需要に対応できるようにしていきたいと考えています。

著名な芸術家にもPolaroidの愛用者は多い
2017年、現在のPolaroidに直接繋がる「Polaroid Original」として再出発した

——ワールドワイドでよく売れているアイテムは?

すべての製品がうまく売れている状況です。例えば「Polaroid I-2」であれば熟練したレベルの高いユーザーに受け入れられています。また「Polaroid Flip」はレンズが4つある独自性が売りですが、初心者でも簡単に撮影できます。

Polaroid I-2

「Polaroid Go」であれば、よりコンパクトで持ち運びがしやすい作りになっていますので、ありとあらゆるユーザーに対応しており、どのシリーズも販売が好調です。

Polaroid Go

筆者注:国内での売上上位は、 Polaroid Go Generation2、Polaroid Flip、Polaroid Now+、Generation3の順。代理店のVISTAL VISION株式会社によると、現在想定を上回る需要と幅広い層からの支持を実感しているとのことで、今後はポラウォークやエマルージョンリフトといった施策で、一層の盛り上げを図る意向だそうだ。

——Polaroidが今でもアナログにこだわってインスタント方式を採用する理由は?

今まさに世の中はどんどんデジタル化が進んでいて、そのスピードも増しています。

暮らしの中がデジタルで溢れているからこそ、若い世代の皆様が一旦デジタルから離れて休憩を取るような、そんな時間を設けられたらと思っています。

もちろん我々はアンチデジタルではなく、デジタル化に反対しているわけではありません。しかし、デジタル中心の生活から一歩引いてアナログでクリエイティブなことをやってみることで、デジタルとのバランスを取ってみてほしいということです。

Polaroidがそうした時間を持つきっかけを提供したいと考えています。

あえて立ち止まり、スローな表現を追求するというメッセージがブースに掲げられた

アナログという言葉は、現像したプリントが実際に出てくるということですが、最終的にモノとして1枚の写真が手元に残るという体験そのものもアナログだと考えています。

我々はその体験を提供するのにうってつけであり、それが今支持されている理由でもあると思います。

——Polaroidのカメラは世界でどのような人が使っていますか?

幅広い層に使っていただいていますが、3分の2以上のいわゆるZ世代の人が、スマートフォンを使う時間を積極的に減らしたいと考えているという調査結果があります。インスタントカメラを使うことも、その1つの答えになり得ると考えています。

アナログのモノを提供することは必要なことなのです。一過性のものではなく、今後も継続して提供されるべきであると思います。

——Polaroidの製品は写真文化にどのような貢献をしてきたと考えていますか?

初めてのPolaroidカメラが登場した当初から、文化、そしてポップカルチャー、アーティストの皆様との関わりで影響を与えたと思っています。それは今後も継続していくべく、より深めていきたいところです。

1972年に登場した「Polaroid SX-70」は20世紀の名プロダクトの1つに数えられる
ブースに展示されたPolaroid SX-70。折りたたんで薄くできる画期的なデザインだった

我々が考える写真のコミュニティとはアーティストや愛好家の皆様です。そうした方々との関係性をより高めていくことも、我々ができる今後の貢献だと考えています。

——他社のインスタントカメラに対するPolaroidならではの優位点は何でしょうか?

世界でインスタントカメラを広く展開している素晴らしいプレイヤーが存在し、私もそのブランドを強くリスペクトしています。

一方Polaroidは、1947年に世界で初めてのインスタントカメラを出した原点、立ち位置に強みがあると感じています。

Polaroid創業者のエドウィン・H・ランド氏(2010年のCESで展示されていた肖像を撮影)
「娘の一言」がインスタントカメラ誕生のきっかけになったという有名な逸話がある
ランド氏の名前を冠したPolaroid初期のモデル「ランドカメラ」も展示された

文化にも根ざしていますし、写真芸術や写真の愛好家にも関わりがとても深いと自負しています。世界中のアーティストが自分の表現のために、Polaroidを使ってくださっているのも強みです。このあたりが我々が差別化できている部分だと思います。

——「Polaroid Now Generation 3」の新色としてティールとピンクが加わりました。

特に若い人たちにとっては、製品の色が自分たちのアイデンティティであったり、何か自分を表すものという認識もあるかと思います。

そういったニーズにも応えられるようにいろいろなカラーを取り揃え、拡充しているということです。

もともとPolaroidのユーザー層は非常に幅広いのですが、特にこのユーザーに対応したいといったターゲットは実はなく、アナログ写真を撮りたい人であれば誰でも使えるものを提供したいと考えています。

ですから若い人から高齢の方、初心者から熟練した人まで皆様に対応できるようにラインアップしていきます。

Polaroid Now Generation 3の新色は手前のティールとピンク

——「The Impossible Project」時代のフィルムは品質に難があったことを覚えている人もいると思いますが、現在のフィルムの品質は?

フィルムに関してはもう5世代目に来ており、品質は紛れもなく向上しています。

The Impossible Projectの時代から世代交代をするたびに大きな品質改善が見られています。ブースに展示されている写真を見てもわかると思いますが、本当に精細に写るようになりました。

失われたフィルムを復活させたのが「The Impossible Project」。当時はフィルムの品質が安定しなかった

——フィルムの供給は安定していますか?

ここ数年で大規模な投資をしており、生産能力を大幅に向上させています。2026年末にはきちんと需要を満たせるような体制ができると考えています。

——今後の新製品やブランドの展望について聞かせてください。

新しい製品に関して、今の時点でお話できることはありません。しかし間違いなく出ますので、改めてお知らせできればと思います。

そして、ブランドの方向性を変える予定はありません。我々はインスタントカメラにおけるオリジナルのブランドという自負があるからです。

今後は世界がより早く動いていく中で、それに対応するスピードでその時々に適したものを意識して取り組んでいきます。

——最近Polaroidで撮影したお気に入りの写真は何ですか?

私には4人の子供がいるので、成長の記録をPolaroidで撮っています。私は家族を大切にしていますし、子供を撮ったものはどのシーンも特別ですから。それらの写真がお気に入りです。

——日本のPolaroidファンにメッセージをお願いします。

日本の愛好家の皆様には本当に感謝していて、大切に思っています。今後も関係を深めて、どんどん盛り上げていきたいという気持ちがあります。

我々は「愛好家の皆様のためにある」という考えの基に、今後も活動していきたいと思っています。

Polaroid Now Generation 3

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。