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【発表会レポート】往年のフォルムに現代らしい機能も

ターレット式AFレンズのインスタントカメラ「Polaroid Flip」

Polaroid Flip

VISTAL VISIONは5月22日(木)、Polaroidのインスタントカメラ「Polaroid Flip」の発表会を新宿 北村写真機店で開催した。ここではその模様をお伝えする。

既報の通り、Polaroid Flipは往年のフリップ式ポラロイドカメラをモチーフにしたモデル。価格は3万9,800円となっている。カラーはホワイトとブラック。発売は5月16日(金)。

4レンズ切り換え式でシャープな描写

かつてのポラロイド600シリーズなどにインスパイアされたというポラロイドカメラらしいデザインながら、最新のテクノロジーを投入したという1台になっている。

現在のポラロイドブランドのカメラで開閉機構を持つフリップ式は初めて。フリップに電源が連動しているので、開けるとすぐに撮影状態になる。加えて、閉じることでレンズや距離センサーといったパーツを保護するカバーの役割も果たすのがフリップ式の大きなメリットになっている。

収納状態(ホワイト、以下同)
撮影状態

USB Type-C端子で充電して使用する。そのため600フィルムに加えてバッテリーを内蔵していないi-Typeフィルムも使用可能だ。

側面にUSB Type-C端子を装備
底面に三脚穴もある
ホワイトモデルはオレンジカラーが目を引く
こちらはブラック

ハードウェア開発全体を統括しているWilliam Duffy氏は、「ポラロイドは常にイノベーションを追求してきました。ポラロイドカメラを開発したエドウィン・ランド氏のビジョンは技術を簡易化し消費者が使いやすいものにすることでした。現代のポラロイドでもこの考えを引き継いでいます。過去の製品のインスピレーションを取り入れつつ現代風に展開しました」とPolaroid Flipを紹介した。

William Duffy氏
ポラロイドの歴史にも触れた。右はPolaroid創設者のEdwin Herbert Land氏
検討したデザインの数々
過去のモデルの要素が至る所にちりばめられている(中央がPolaroid Flip)

William氏によると、現代はスマートフォンで簡単に写真を撮ることに消費者が慣れていることから、Polaroid Flipの開発では使いやすいシンプルなカメラを目指したという。

シンプルということでは入門機として「Polaroid Go」があるが、むしろPolaroid Flipは最上位モデル「Polaroid I-2」の要素や信頼性を加えた上位モデルと説明されており、Polaroid I-2のすぐ下という位置付けになっている。

Polaroid Flipはクリエイターにもおすすめという。I-2よりも価格が大幅に抑えられている
各部の名称
ステータスが表示されるディスプレイも備えている

上位モデルということでターレット式のAFレンズを搭載。このカメラで最も使われるであろうという近距離に多くのレンズを割り振った設計になっている。

レンズは4つのスイートスポットを持つが、それ以外でももちろん撮影可能
4つのレンズのうち3つを近距離用にした。ポートレートやストリートフォトに最適という

会場ではモデル撮影を試すことができた。写りはインスタントカメラから想像されるものよりもシャープで、バストアップだとまつげまでくっきり写っているレベルだった。

会場で撮影した写真

AFでは測距に超音波センサーを採用している。現代ではこうしたセンサーを採用するカメラはあまりないが、今回パーツの機構設計とソフトウェアの調整で誤動作を防いだ理想的なセンサー動作が実現できたとのこと。

ソナーオートフォーカスは超音波の反射時間で距離を測る
Polaroid Flipの超音波センサー(右)は従来品より小型化されている
超音波センサーのユニット
レンズ部分。メッシュの所は超音波センサー

またストロボの強化もトピックだ。William氏は、「インスタントカメラではスマホなどに比べて多くの光を必要とすることから重要なポイント」だとした。光量を増したことで室内や暗所でもユーザーが心配せずに写せるようになったという。

ポラロイドカメラで最も強力なストロボという
発光部分

製品名の”Flip”は可動機構のことだが、William氏によると撮影時に気をつけるポイントの意味も込められているそうだ。

Fはフラッシュを焚くかどうか考える。lはライトで、光の当たり方を考える。iはイマジネーションで、撮りたい写真のイメージを膨らませる。pはパララックス(視差)で、近接撮影ではファインダーの像を少しずらす。「アナログカメラを楽しむ4つの視点がこっそり隠れているんです」とWilliam氏。

ヒンジ、落下、光漏れ、シャッターボタンなど80以上のテストを行ったとのこと

アプリでマニュアル撮影も

発表会ではフォトグラファーのHayashi Kosuke氏とAkio Nakai氏が作品を披露し使用感などを語った。

Hayashi Kosuke氏:「普段ストリートスナップを撮ることが多く、スローシャッターをよく使います。Polaroid Flipはアプリと連携してシャッタースピードなどを全部マニュアルで設定できます。ポラロイドカメラでもこうしたスローシャッターの表現ができるということです」

Hayashi Kosuke氏
Hayashi Kosuke氏の作品

Akio Nakai氏:「アプリを使えばストロボの強さを細かく調整できるので、夜に地明かりを生かした撮影もできます。それから、多重露光はアプリを使わないでできるのがすごいですね。素晴らしいのでぜひ試してみてください」

Akio Nakai氏
Akio Nakai氏の作品
アプリの画面でマニュアル撮影を選択したところ。任意のフォーカスレンジも選べる
シャッターはバルブも設定可能。カメラとアプリの接続はBluetoothとなっている

また会場にはPolaroid Goの新色となるパープルの展示もあった。5月22日から1万6,880円で販売されている。

発表会が行われた新宿 北村写真機店

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。