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「Insta360 X5」で描くダイナミックな星空風景

星空風景の場合、10秒以上の露光になるため、自撮り棒を三脚に固定して撮影しているが、驚いたのは小さな星まで鮮明に写っていたこと。天の川も弧を描くように写り、夜空に包み込まれているような、没入感のある不思議な写真になった。Insta360 STUDIOを使い、360°カメラならではの空間全体を生かしたイメージに仕上げた
マニュアル露出(F2、30秒)/ISO 1600/WB:オート/撮影地:長野県

360°カメラには以前から興味があったものの、正直なところ使いこなせるか、少し不安もあった。しかし、実際に手にしてみるとセットアップや操作は思っていた以上にシンプルで、直感的に扱えた。そして何より驚いたのは画角の概念を超えた360°の世界。見たままというより、その場にいる感覚をそのまま記録できるのが面白く、気付けば夢中になって撮影していた。しかもカメラ内で360°の画像を確認できるのがうれしい。

Insta360 X5

今回、特に試してみたかったのが、星空風景。X5は従来機よりも低照度下での撮影が強化されており、高感度時のノイズ処理やダイナミックレンジの最適化が図られている。実際に撮影してみると、星の1つ1つがくっきりと、しかも360°すべての方向で美しく写る。さらに、撮影後にInsta360 STUDIOを使って、1枚の360°写真から好みの画角を切り出し、構成する楽しさは、私の知っている写真表現とはまったく異なる世界だった。

これまでの写真表現では捉えきれなかった空間や時間の流れを直感的に、しかも高画質で記録できる点はまさに新しい体験であった。これからの写真表現の幅が一気に広がったように感じられた。

館野二朗

若い頃からバックパッカーの旅やフライフィッシングを通して自然と向き合い、手付かずの自然美にインスピレーションを受け、2000年頃から創作活動を開始。近年は、奄美大島をテーマに精力的に活動している。

※本企画は『デジタルカメラマガジン2025年8月号』より転載・加筆したものです。

月の光が地上に届き始めたタイミングで撮影した1枚。わずかな月明かりでの撮影であったが、地上の風景までしっかりと描き出されている。ディテールが失われてメリハリのない、のっぺりとした画像になることもなく、星空から地上まで鮮明な結果が得られたのは、AIを用いたノイズ処理とダイナミックレンジの最適化によるものであろう
マニュアル露出(F2、40秒)/ISO 1600/WB:オート/撮影地:北海道
星の撮影で活用したいのがスターラプス機能。この機能を使えば、星の軌跡を描き出し、時間の流れを視覚的に表現できる光跡の写真が楽しめる。さらに、Insta360 STUDIOではスターラプス動画からも光跡の写真を自動で生成できる。通常の星空写真だけではなく、さまざまな星空表現ができるのも魅力だろう
マニュアル露出(F2、20秒)/ISO 1600/WB:オート/撮影地:北海道
Insta360 X5
発売日:2025年4月22日
価格(税込):8万4,800円(通常版)、11万8,240円(エッセンシャルキット)

●SPECIFICATION
センサーサイズ:1/1.28インチ
レンズ口径:F2.0
焦点距離:6mm相当
360°動画解像度:8K 30p、5.7K 60p、4K 120p
写真画素数:約7,200万画素
ISO感度:100-6400
シャッター速度:1/8,000秒~120秒(写真)
記録メディア:microSD
外形寸法(W×H×D):46.0×124.5×38.2mm
重量:約200g

交換式で頑丈なレンズ

周囲360°を写すため、本体からせり出しているレンズは一見すると傷つきやすいと思われるかもしれない。しかし、特殊なフィルムを使用しており、以前のモデルと比較しても耐落下性が向上し、傷や割れに強くなっている。また、万が一レンズに傷や破損があったとしても、レンズユニット部分だけを取りかえられるのは大きな利点だ。

防水&冒険仕様

今回もさまざまなシーンで使用したが、Insta360 X5の防塵・防水設計は非常に役立った。海辺や砂埃が舞う中など、これまで機材の故障が気になって避けていたような環境でも、安心して撮影できる。カメラ単体でも15mの防水性能を備えているが、専用のX5 見えない潜水ケースを使用すれば水深60mまでの本格的な水中撮影も可能だ。

大容量バッテリー

野外で撮影する上で、バッテリーの持続時間が大幅に向上している点は大きな利点。長時間の撮影や夜間のタイムラプス撮影など、バッテリーの残量を気にするようなシーンでも、安心して撮影に集中でき、ストレスを感じることなく使い続けられる。交換用バッテリーもコンパクトなため、持ち運びも容易。急速充電にも対応している。

見えない自撮り棒

自撮り棒が写真や映像に写り込まないのは、Insta360シリーズの特筆すべき機能。実際に撮影してみると、自撮り棒は完全に見えなくなり、ドローンで撮影したかのような自然な印象に仕上がる。また、自撮り棒の下部には1/4インチのネジ穴が設けられており、カメラ用のクイックリリースプレートを取り付けられるため、三脚使用時に便利だ。

1枚の写真からさまざまな切り取り方ができる

従来のカメラとは異なるInsta360 X5の最大の特徴は一度の撮影で360°すべての景色を記録し、後から好きなアングルや構図を自由に選べるという点にある。中でも面白いのが、「クリスタルボール」や「小惑星」といった特殊な視点。360°の写真を球体の中に収めることや、まるで宇宙から地球を見ているかのようなアングルも簡単に生み出せる。

マニュアル露出(F2、25秒)/ISO 800/WB:オート
マニュアル露出(F2、25秒)/ISO 800/WB:オート
マニュアル露出(F2、25秒)/ISO 800/WB:オート

画像書き出しの方法

まずはInsta360 STUDIOに画像を取り込む。PC用のこのソフトは購入者であれば、公式Webサイトから無料でダウンロード可能。直感的な操作性のため、迷うこともない
次に切り取り方を決める。マウスやトラックパッドを使い、360°任意の方向へ視点を動かして構図を作れる。また、写真のアスペクト比も選べる
最後に写真を書き出す。構図が決まったら、「書き出し」ボタンを押し、保存先や解像度を選択。「リフレーム写真書き出し」ボタンを押せば完了となる

動画撮影機能も充実

最大8Kで360°動画を撮影できるだけでなく、手ブレ補正も優秀で、歩きながらの撮影でも驚くほど滑らかだった。静止画同様に暗所での撮影にも強く、低照度シーンでも自然でクリアな映像を記録できる。撮影後に視点や構図を自在に変えられるので、1本の動画からさまざまなバリエーションを作ることが可能だ。

Insta360 X5で写真家・館野二朗が描くダイナミックな風景 - YouTube
館野二朗