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【COSINA Otus ML WORLD】小林紀晴×ZEISS Otus ML 1.4/50
ミラーレス用に“復活”の高画質レンズで、日本統治時代の景色が残る台南を撮る
- 提供:
- 株式会社コシナ
2025年4月30日 12:00
月刊誌「デジタルカメラマガジン」と連動したこのページでは、11年の時を経て“復活”したZEISSブランドの「Otus ML 1.4/50」を、小林紀晴さんの作品とインプレッションで紹介します。(編集部)
1968年、長野県生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。新聞社カメラマンを経て1991年独立。アジアを多く旅して作品を制作する。近年は故郷である諏訪地方でも撮影を行っている。
写真集・著書に『ニッポンの奇祭』『見知らぬ記憶』『愛のかたち』『まばゆい残像』『孵化する夜の啼き声』など多数。1997年 写真集『DAYS ASIA』で日本写真協会新人賞、2013年 写真展『遠くから来た舟』で第22回林忠彦賞を受賞。初監督映画作品に『トオイと正人』がある。
※このページは『デジタルカメラマガジン2025年5月号』との連動企画です。
「Otus ML 1.4/50」を携え台南へ
東京がまだ春浅い頃、台湾の台南へ向かった。そこを目的地にしたのは夏が恋しかったからだ。Tシャツで過ごせるはずだと考えた。ただ、意外なことに天気によっては肌寒く、曇り空の日にはダウンジャケットを着ている人も見かけた。それでも日差しが出るとTシャツだけで過ごせる日が数日あった。
目に飛び込んでくるのは街角に咲く花々。吸い込まれるようにそれらに視線がゆく。自然とカメラを向ける。風に揺れる花が昔から好きだ。以前から南の国々を旅するとき、いつも花を撮ってきた。何かを告げられているように感じるからだろうか。あるいは、どういうわけか、切ない感情が静かに湧いてくるからだろうか。
旅に携えたのはコシナのOtus ML 1.4/50。開放値で撮ることが多かった。ピントが浅いと写真がエモーショナルに見えてくるからだ。マニュアルレンズなので開放値のピント合わせに若干の不安を覚えていたが杞憂に終わった。電子ファインダーと相性が良いことを強く感じた。
構図を決めたあと、ファインダー内でフォーカスポイントを100%拡大する。そして素早くピントを合わせる。レンズ自体の階調はやわらかな印象だが、ピントの山は見えやすい。光学ファインダーの場合、どんなに目を凝らしても開放値で合わせきれない(目視での確認が難しい)ことが度々あった。それが確実にコントロールできることは大きい。
花は風に身をまかせて揺れる。その動きに合わせて、ひんやりとした金属のフォーカスリングを指先で回すのは、思いのほか心地良かった。
日本統治時代の景色が残る台南で
風に揺れ、咲くハイビスカス。花柱が特徴的なので、それを強調するため開放値でピントを合わせる。被写界深度は浅いが、電子ファインダーを覗きながら100%拡大することで確実に合わせることができた。背後のボケ味もきれいに出た。
日本統治時代に日本人建築家・梅澤捨次郎の設計によって建てられた林百貨。10数年前に改修工事がされて蘇った。台南のシンボル的存在となり、観光名所となっている。滞在中、何度も時間をかえて撮影を試みた。
台湾には亭仔脚(ていしきゃく)と呼ばれるアーケイドが道路沿いの建物のほとんどにある。それらは柱によって支えられている。あいだにはバイクが停められているのが常だが、ときどき鮮やかな色の花の蔓(つる)が絡まっている。
台南駅から目的地も決めずに歩く。ご飯を食べられるお店を探す。どの店に入るべきか躊躇する。漢字の羅列を見ておおよそを想像する。角で立ち止まる。壁に桜の造花。ゆえに、よりいとおしくなる。
日本統治時代、台南警察署だった建物。設計は林百貨と同じく梅澤捨次郎。現在は台南市美術館(1館)となっている。内装もさることながら、中庭のガジュマルの樹に魅了された。ライトアップされたそれは主(ぬし)の存在感があった。
撮影に疲れると適当にローカルの食べ物屋へ入る。日本と大きく違うのは麺だけ、豚だけ、牛だけという専門店が多いこと。ただし、こんなつまみは割とどの店にもあるが、お酒を置いている食べ物屋は意外なほど少ない。
重厚な作りに信頼感
——今回訪れた台南は、どんな街なのでしょうか。(青字は聞き手。以下同)
台湾の中でも古く、そして静かな街です。お寺が多かったりと、日本でいうと京都のような雰囲気もあります。1800年代の末から、第二次世界大戦の終わるころまで台湾は日本の統治下にあり、その当時の建築物や古蹟を撮影する目的で、去年から何度も訪れています。
——今回の旅に活用した「Otus ML 1.4/50」ですが、最初に手にしたときの第一印象はいかがでしたか?
重量が700gあるので、最近のミラーレスカメラ用レンズと比較すると軽いとは言えないかもしれません。しかし金属素材からくる重厚感により、モノとしての存在感をまとっていて、信頼できる感覚がありました。
またフォーカスリングも金属製で、高級感がありますね。ほかのレンズはこの部分がプラスチックだったりするものもあるので、独特な感触がありました。個人的には金属のひんやりする感じが好きだったりします。
——台南での撮影では「開放値で撮ることが多かった」とのことですが、絞り開放の描写をどのように感じましたか?
とても階調が柔らかく感じられてよかったと思います。F5.6からF8くらいまで絞っての撮影もしましたが、全体的に柔らかいイメージはありつつも、綺麗に解像しているなと思いました。
またこれだけの大口径だと絞り開放では被写界深度も浅いため、一眼レフカメラ時代は光学ファインダーではどうしてもピントが正確に確認できないことがありました。しかしミラーレスカメラ版となり、電子ビューファインダーでピントの山も見やすいですよね。使い勝手の面でも、ミラーレスカメラとの相性が良いと感じました。
——「Otus ML 1.4/50」をどんな場面で活用したいと思いましたか?
50mmというのは街の一角を“切り取って”撮影できる感じがして、個人的にはスナップ撮影において好きな焦点距離です。この1本でちょっとした旅に出かけてみるというのも楽しそうですね。