トピック

High-FIVE「EOS R5 Mark II」で挑む感動の撮影体験

アップスケーリングがもたらす鉄道風景の新撮影スタイルを福島啓和さんが体感

林を抜けて飛び出してくる特別列車「36ぷらす3」を被写体検出の「乗り物優先」に設定して撮影。車両の顔が見えたと同時にAFが認識し、狙ったポイントで30コマ/秒の高速連写を開始した。車両の先頭部分に映り込みがないわずかなポイントを狙い通りに収められた
キヤノン EOS R5 Mark II/RF50mm F1.2 L USM/50mm/マニュアル露出(F1.6、1/1,250秒)/ISO 1250/WB:オート

5本の指を高く掲げて手を合わせる。キヤノンの「EOS R5 Mark II」は、結果を見て思わずハイタッチをしたくなるような、感動的な撮影体験ができるカメラに仕上がっている。EOS R5を超える存在として進化を遂げた次世代機を手に、福島啓和さんが鉄道風景の撮影に挑んだ結果をフィールドレポートする。

福島啓和

1975年生まれ、JR九州の広告やカレンダー・オフィシャルスチール及びムービーを撮影。JR時刻表の表紙も担当。2004年から広告写真スタジオ勤務を経験し、2013年鉄道広告写真家として独立、現在に至る。日本鉄道写真作家協会会員

※本企画は『デジタルカメラマガジン2024年10月号』より転載・加筆したものです。

EOS Rシステム最高画素機に最新AFとアップスケーリングを搭載した究極のカメラへと進化

広告用途で鉄道を撮影することが大半な私にとって、高画素機であるEOS R5 Mark IIはとても心強い存在だ。EOS R5では物足りなかったAF性能は期待以上にアップデートされ、動体撮影を難なくこなせるようになった。

さらに、約1億7,900万画素の画像を生成できるカメラ内アップスケーリングは撮影の幅が大きく広がる特筆すべき機能だ。横位置の写真を縦にトリミングしても十分な画質が得られるし、超望遠レンズの持ち合わせがなくても撮影後に臆せずクロップできるので、後から望遠効果が得られる。

R5 Mark IIは高感度画質も優れているが、ニューラルネットワークノイズ低減を使うことでさらに滑らかな画質が手に入る。従来はパソコンで処理していたものがカメラだけで行えるため、現場で確認できるようにもなった。

EOS Rシステムの中で最大の解像度を誇るR5にこれだけの機能が新搭載されると「不満」を探すことが難しいくらいだ。手にした際の重量バランスやサイズもR5とほぼ変わらず、右手で電源オンできるなど操作性も抜群だ。

EOS R5 Mark II
発売日:2024年8月30日
キヤノンオンラインショップ参考価格(税込):65万4,500円(ボディ)、80万8,500円(RF24-105L IS USM レンズキット)

●SPECIFICATION
イメージセンサー:約4,500万画素(裏面照射積層型)
画像処理エンジン:DIGIC X & DIGIC Accelerator
常用感度:ISO 100~51200
最高シャッター速度:1/32,000秒(電子)、1/8,000秒(メカ)
最高連写速度:約30コマ/秒(電子)、約12コマ/秒(メカ)
手ブレ補正:周辺協調制御&5軸対応、中央8.5段、周辺7.5段
動画記録:8K/60p 他
ファインダー:0.5型約576万ドット約0.76倍
外形寸法(W×H×D):約138.5×101.2×93.5mm
質量(バッテリー・カード含む):約746g

POINT 01.カメラ内アップスケーリングで一度の撮影で2つの構図を得る

鉄道撮影は近寄れず望遠や超望遠が必要となるポイントがあるが、カメラ内アップスケーリングを前提に撮影すれば、寄り切れなくても後でトリミングして納得いくサイズに仕上げられる。超望遠レンズを持っていなくても十分な解像度で超望遠の世界を手に入れられる。横位置を縦位置にトリミングすることも現実的になり、1台で縦横の写真が同時に手に入るようになった。

カメラ内アップスケーリングで画像を高画素化する
キヤノン EOS R5 Mark II/RF100-300mm F2.8 L IS USM+EXTENDER RF2x/600mm/マニュアル露出(F5.6、1/800秒)/ISO 1250/WB:オート/カメラ内アップスケーリング
約1億7,900万画素から切り出せば横位置から高画素の縦位置に対応可能

POINT 02.ニューラルネットワークノイズ低減で薄暮を駆ける新幹線を高精細に写す

マジックアワーの空のグラデーションの中、暗く落ちた地上を流れ星のように駆ける九州新幹線を写し込む。山の形や海にさざなみのディテールを残したかったので過度なスローシャッターにはできず、列車の室内灯の明かりを引き立たせるために高感度で撮影。そのままでも不満はなかったがニューラルネットワークノイズ低減の処理をすることで残したいディテールはそのままにシルキーな質感に仕上げられた。

キヤノン EOS R5 Mark II/RF28-70mm F2 L USM/41mm/マニュアル露出(F4.5、1/30秒)/ISO 16000/WB:オート/ニューラルネットワークノイズ低減(標準)
ニューラルネットワーク
ノイズ低減(標準)
通常の高感度
ノイズ低減(標準)
ノイズが除去されてクリアな空に仕上がる

POINT 03.突然現れる車両も鉄道検出とトラッキングAFで最後まで追尾する

EOS R6 Mark IIでもレベルの高さを感じていた鉄道の被写体検出とトラッキングAFだが、EOS R5 Mark IIはさらにパワーアップしていた。最初の食いつきから滑らかに追尾していく反応の良さはEVF越しに見ていても気持ち良く、安心して撮影に専念できる。突然画面内に飛び込んでくる対象車両も、瞬時に運転台を認識して最後まで追尾した。特に順光下であれば完璧に追尾してくれる。

①被写体検出を「乗り物優先」に設定して鉄道を検出
②サーボAF中の全域トラッキングを「する」にして検出した列車を追尾させる
③スポット1点AFで線路付近に合わせておくと列車を検出しやすい
キヤノン EOS R5 Mark II/RF100-300mm F2.8 L IS USM+EXTENDER RF2x/449mm/マニュアル露出(F5.6、1/1,000秒)/ISO 1250/WB:オート
画面手前に来るまでしっかりと追尾を続ける

POINT 04.約30コマ/秒の超高速連写で木々の隙間を走る列車を捉える

約30コマ/秒の超高速連写に頼るシーンは鉄道撮影では多々存在する。わずかな空間に車両の顔や象徴的な部分を思い通りの場所に収めるのは至難の業だからだ。少しでもずれるだけで台なしとなる条件の厳しい場所でも約30コマ/秒の連写なら、コマを選べるくらい像を残せる。下の写真のシーンでも、わずかな木々の隙間に高速で走る列車の顔を見事に収められた。前後のコマは木に重なっていて、コマ速が遅ければ逃していたかもしれない。

キヤノン EOS R5 Mark II/RF24-105mm F2.8 L IS USM Z/26mm/マニュアル露出(F4、1/2,000秒)/ISO 800/WB:オート
OKカット
NGカット(1コマ後)

1コマ後でさえ枝と重なってしまう

POINT 05.電子シャッターでもゆがまない高速読み出し

電子シャッターではできるだけ避けていた真横からの撮影だが、高速読み出しに優れる積層センサーを搭載したEOS R5 Mark IIで試してみたところ、ローリングシャッターゆがみは目を凝らして見てもほぼ感じられなかった。ためらうことなく真横からの撮影に臨める。

EOS R5 Mark IIは裏面照射積層フルサイズCMOSセンサーを搭載。高速読み出しが可能なためローリングシャッターゆがみが大幅に抑制されている
キヤノン EOS R5 Mark II/RF200-800mm F6.3-9 IS USM/637mm/マニュアル露出(F18、1/2,000秒)/ISO 6400/WB:オート

福島啓和が厳選 鉄道を撮るならこのRFレンズ4本

RF28-70mm F2 L USM
取材の際に最も多用している。標準域のズームでありながら開放値がF2と明るく、ボケを生かすシーンや露出が厳しいシーンでも難なくこなしてくれる相棒レンズ。使用頻度が最も高い
RF70-200mm F2.8 L IS USM
RFレンズになり小型化され、機動性がアップ。解像力も格段に向上し、不満のない優等生レンズ。コンパクトになったおかげでカメラバッグにもう1本レンズを入れられるようになった
RF100-300mm F2.8 L IS USM
サンニッパの後継となる存在だが、解像感がさらに向上し100mmからのズームになったのはうれしい限り。使用頻度が格段に増えコストパフォーマンスが高いレンズだと実感している
RF50mm F1.2 L USM
単焦点レンズの中で最も気に入っているレンズ。情景的なシーンや客室乗務員のサービスシーンなど、印象的なスナップを中心に使用する機会が多く、最初にセットするくらいお気に入りだ

高画質と高速性の両輪が撮影スタイルをも変える

待望のカメラが登場したと撮影しながら何度も感じた。R5シリーズは有効画素数が約4,500万画素と通常の撮影でも十分に高画素なのだが、それがカメラ内アップスケーリング機能でさらに進化した。

鉄道撮影は列車がやってくる限られたチャンスにしか撮影できない。特に風景を絡めるときは空模様など気象条件にも左右され、まさに一期一会のチャンスをつかまなければならない。時には寄り引きや縦位置・横位置の両方を狙いたい場面もあるが、アップスケーリングされた約1億7,900万画素の画像が1枚あれば、トリミングによってその両方をかなえられる。

列車を確実に捉えられるAFや連写性能も重要となる。EOS R5 Mark IIは従来のDIGIC Xに加え、主にAFに関する処理を担うDIGIC Acceleratorを新搭載。被写体検出やトラッキングの性能が底上げされている。従来機ではローリングシャッターゆがみを気にして多用できなかった電子シャッターも場面を問わず使用可能で、高速連写も自由自在。撮影スタイルを変えてしまう驚異的なスペックのカメラに仕上がっている。

被写体検出「乗り物優先」で撮影。唯一残存する103系の1500番台が奥のカーブを抜けて顔を出した瞬間に車両を検出し、フレームアウトするまでAFが追尾し続けた
キヤノン EOS R5 Mark II/RF100-300mm F2.8 L IS USM/280mm/マニュアル露出(F3.5、1/2,000秒)/ISO 200/WB:オート
逆光の条件下で九州新幹線を流し撮り。「ブラックアウトフリー表示」の設定で撮影したことで最初のコマから被写体を見失うことなく滑らかで快適に車両を追い続けられた
キヤノン EOS R5 Mark II/RF100-300mm F2.8 L IS USM/241mm/マニュアル露出(F4.5、1/125秒)/ISO 100/WB:オート
夜明けの日南線普通列車を狙っていると光の筋が出てきたので、アップの構図から光を入れた引きの構図に変更。撮影後、アップスケーリングしてアップの構図も切り出した
キヤノン EOS R5 Mark II/RF28-70mm F2 L USM/40mm/マニュアル露出(F3.5、1/1,250秒)/ISO 3200/WB:オート
福島啓和