中古カメラのススメ

中古カメラのススメ(第1回)導入編

いまなぜ、中古カメラなのか?

カメラにはクルマと同じく「中古」市場が存在する。買い手側から見れば、新品を買うよりリーズナブルで、すでに生産を中止した貴重なカメラや交換レンズも手に入れられる。中古カメラを扱うショップにしても専門とするショップから量販店まで、街を歩けば見かけることも少なくない。

しかしながら、一般に中古カメラは好事家向けと捉えられることも多く、さらに故障や保証などの不安から敬遠する向きもある。

そこで、今回から「中古カメラのススメ」と題し、中古カメラの実情を紹介。その理解を深めていただこうと考えている。

第1回目となる今回は、新宿のマップカメラを例に、中古カメラの世界やそのメリットなどを紹介したい。お話を訊いたのは、マップカメラ本館5階売場リーダーの土田麻子さんである。

東京・新宿のマップカメラ本館
今回お話を伺った本館5階売場リーダー・土田麻子さん。カメラに関する知識も豊富で、購入の際は快く相談にのってくれる。所有するカメラはGR DIGITAL III、ライカM6、パナソニックLUMIX GF1、オリンパスペンEE3など多数。

実は巨大な中古カメラ市場。普通の人が普通に利用する時代?

まずは中古カメラ店にはどの程度の商品点数があるのだろうか。

マップカメラの場合では、インターネット掲載分も含め約7,000点とのこと。アクセサリーの類いも含まれるが、これはとにかく膨大な量といってよい。しかも、「現在は1日に最低でも300点から350点以上ものカメラ、交換レンズが追加されます」と土田さん。これだけの量の商品が毎日ショーケースに追加されるということは、中古カメラが市場としてきちんと成立していることを示す。

ちなみに同店の場合、まずインターネットに先行して商品が掲載され、翌々日店頭に並ぶ。また、店頭に毎日新たに商品を並べてもショーケースが溢れないことを考えると、1日あたりの売り上げ台数もそれに準じたものであると考えてよい。

マップカメラ本館5階はソニー、フジフイルム、オリンパス、パナソニックなどを扱う。欲しかったミラーレスがリーズナブルで手に入るはずだ。
ずらりと並んだαシリーズの一眼。大型の中古カメラショップなら同じカメラが複数ショーケースに並んでいる場合も少なくないので、見くらべて決めることもできる。
マップカメラ本館4階はキヤノンをメインとする売場だ。いわゆる白レンズがずらりと並ぶショーケースは圧巻。憧れの大口径超望遠単焦点レンズも揃う。
ニコンの中古カメラ、レンズは本館3階がそのフロア。他のフロア同様整然とショーケースが並ぶ。カメラ、交換レンズとも探しやすく陳列されている。
地下1階、ライカ関連売場もこの通りの物量。デジタルのM型ライカをはじめバルナックライカやLマウントレンズも充実している。これらのライカはもちろん、全てのフロアの商品は試すことが可能だ。

カメラを購入する客層については来店、インターネットとも「幅広い世代」だと土田さんはいう。もちろん男性の比率が多いものの、女性の比率も決して少なくなく、カメラ女子ブームが始まる5年ほど前に比べて確実に女性にも中古カメラが浸透しているそうだ。また、“若い人の物離れ”が世間的に言われて久しいが、「カメラに限っていえばそのようなことは特別感じない」とのことである。

さらに筆者として気になるのが、デジタルカメラとフィルムカメラの比率であるが、マップカメラに限っていえばデジタルが圧倒的。「フィルムカメラは結果的に費用がかかるので、やはりデジタルカメラが人気です。フィルムカメラはここ一番というような撮影で使われるお客さまの購入が多い」という。

人気のある中古カメラとは

現時点の人気のある中古デジタルカメラについても訊いてみた。「新品で人気の高かったものは中古でも人気」と話すように、ソニーα7シリーズ、キヤノンEOS 5D Mark IIなど特に人気が高い。ニコンもフラグシップのすぐ下のモデルの動きがよいという。

フルサイズセンサーを搭載するソニーRX1シリーズは、コンパクトデジタルらしからぬプライスも特徴であるが、中古ならちょっと現実的な価格に。
ハイエンド機の並ぶショーケース。新品では高価で手の出にくかったモデルも中古ならリーズナブルに。欲しかったカメラが手軽に手に入る。
高級レンズも多数あり。製品サイクルの長いレンズは中古派が多いジャンルだ

先般キヤノンからEOS 7D Mark IIが発売された。そのため、前モデルのEOS 7Dの動きも活発だ。「現在でも見劣りしないスペックでありながら、EOS 7Dの中古価格は新品のEOS 7D Mark IIの3分の1ほどなので狙っている人が多い」とのこと。

ちなみに、現在出回っているEOS 7D の中古は、EOS 7D Mark IIのユーザーが下取りとしてショップに売ったものが多くを占めている。そのような下取りに出されたカメラはマップカメラの場合検品の後、専門のスタッフによってメンテンスが行なわれる。さらにインターネット用に写真撮影を行い、その際同じく専門スタッフによって状態のチェックを行った後に、中古カメラとして売りに出される。「二重三重のチェックによって不備を見逃さないようにし、そしてなるべく早くお客様にご覧いただけるようにしています」と話す。

保証やメンテナンスもしっかり

中古カメラの程度の話が出たところで気になるのが保証だろう。中古カメラを敬遠するひとの理由のひとつは、故障や不具合があったときのことを考えてとのことと思われる。だが、心配しないでほしい。

「マップカメラでは難有り品や一部商品を除き、中古カメラはデジタルで3カ月ないし6カ月、フィルムで12カ月の保証を付けています。さらに初期不具合による交換,返品に関してはデジタルカメラで2週間、フィルムカメラで1カ月としています」と土田さんは胸を張る。中古カメラに保証を付けるショップは少なくはないが、ここまで長期に渡り保証を行なうショップは稀だ。

なお、フィルムカメラの保証期間がデジタルカメラよりも長いのは、フィルムだと撮影後に現像が上がるまで時間を要することが理由だが、こちらもフィルムユーザーにはありがたい配慮である。「不安がらずに中古カメラをぜひお買い求めください」と頼もしい。

中古のプライスカードにはそのカメラやレンズの状態や程度などが記載されていることがある。購入の際は注意して確認するようにしよう。
カメラも交換レンズもホコリや汚れなど可能なかぎり清掃されているので、買ってすぐに使うことが可能。スタッフのすすめるカメラには、ご覧のようなプライスタグが付く。
多くの中古カメラショップでは、カードによる支払いに対応している。一期一会の中古カメラの場合、カードが使える意義は大きい。
マップカメラでは24回払いまで金利0%キャンペーンを行なっている(12月31日まで)。このようなタイミングを見計らって中古カメラを購入するのもありだ。

中古カメラショップというと敷居が高く感じられ、初心者には入りづらい印象を持つひともいるかもしれない。しかし、実際には筆者の知るかぎりそのようなショップは現在見当たらない。むしろ、いろいろと話を訊くと初心者にも来てほしく思う店は多い。

マップカメラも同様で、誰でも入りやすくしかも店員に声のかけやすい環境となるよう気を払っている。さらに、今回お話を伺った土田さんをはじめカメラに精通している女性店員も各フロアに配置されているのも特徴である。

ファッショナブルなカメラバッグ(新品)も充実。アルチザン&アーティストをはじめワンランク上のバッグが多数揃う。

まとめ:中古カメラは安心お得。ぜひチャレンジ!

昨今ネットオークションが人気だ。しかし、出品者は素人で、なかには姑息な手段で出品した商品を実際以上によい状態に見せかけたり、仲間と組んで落札価格のアップを目論む者もいると聞く。当然ノークレーム、ノーリターンである場合がほとんどで、不具合があっても泣き寝入りするしかない。

それに比べ、今回取材したマップカメラのようなカメラショップの中古カメラは整備が行き届き、さらに長期の保証が付くなど実に心強い。「中古カメラのよいところは実際に見て、触れて決められることです」と土田さんがいうように、じっくりと感触を確かめることも可能である。これまでさまざまな理由で中古カメラを敬遠していたひとは一度、中古カメラショップをのぞいてみることをオススメしたい。

編集協力:株式会社玄光社
取材協力:シュッピン株式会社

大浦タケシ