旅とカメラ、旅とレンズ
“モノクロ専用”のスナップシューターで写す城郭と海と
RICOH GR IV Monochrome
2026年3月8日 12:00
これまで数え切れないほど訪れたことがある街、小田原。でもそのほとんどが仕事で、昨年は箱根取材のときにも立ち寄りました。いつも東海道新幹線を利用するのですが、小田原駅にはこだまと一部のひかりが停車し、東京駅から約30分です。新宿駅からだと小田急の特急ロマンスカーで1時間ちょっと。でも今回は旅気分を味わうべく、在来線で約1時間半かけてのんびり向かいました。
一口に旅と言ってもいろいろなタイプがありますが、撮影がメインとなると、作品のテーマやコンセプトに合ったカメラやレンズを携行します。近年はミラーレスカメラと単焦点の大口径レンズの組み合わせが多いです。でも今回はガチな作品作りではなく、肩の力を抜いて街歩きを楽しみたいと思いました。
フットワーク重視で身軽に動ける選択ということで、すぐに思い浮かんだのがRICOH GR IVです。いやしかし今回は城下町小田原をモノクロで撮ってみたい。それならばモノクロ系のイメージコントロールに設定するのではなく、発売になったばかりのRICOH GR IV Monochromeをぜひ使ってみたい! カラーが撮れないモノクロ専用機なので割り切りが必要ですが、いわゆる観光写真との差別化が図りやすいなどプラス思考でいきましょう。
モノクロ専用機とはいえ、基本的なカメラ設定は最近愛用しているRICOH GR IVとほとんど同じです。RICOH GR IVの内蔵NDフィルターはまだ使ったことがありませんが、RICOH GR IV Monochromeには代わりに赤色フィルターが内蔵されています。小田原駅から小田原城へ向かう途中でOFFとONを試してみたのですが、空を入れることが多い私には表情豊かで良さそうな感じだったので、今回の旅ではオンの状態で撮影することにしました。
また、撮影モードはRICOH GRシリーズではずっと「P」でしたが、最近は「M」を多用しています。前電子ダイヤルで絞り値を設定し、後電子ダイヤル(ADJ)でシャッター速度を調節、露出補正ボタンで必要に応じてISO感度を変更します。ヒストグラムと電子水準器は常時表示しています。
朝8時に小田原駅に到着。これまで1度も行ったことがない小田原城をまずは目指します。天気は曇りで、このような条件では色に反応しづらいためRICOH GR IV Monochromeには好都合。搭載されているイメージコントロールはRICOH GR IVとは異なりますが、ひとまず[スタンダード]に設定し、ヒストグラムを確認しながらダイナミックレンジに収まるように構図や露出を整える点は同じです。
撮影中はカメラ操作ではなく被写体やシーンに集中したいので、イメージコントロールの最終決定は帰宅してから。旅を振り返りながらベストショットを選び、カメラ内RAW現像で最適な設定を吟味します。パラメーターを微調整することもありますが、今回は6つのイメージコントロールを選び直すだけにしました。
お堀端通りを歩いていると、小田原城の二の丸隅櫓が見えてきました。表情豊かな曇り空がお堀に映り込み、景色の奥行きが増幅しています。選んだのは、RICOH GR IV Monochromeのイメージコントロールで一番好きな[ソリッド]。[スタンダード]より硬調で、黒が引き締まるなど重厚な雰囲気に仕上がります。階調豊かで深みがあり、プリント欲をかき立ててくれます。
お堀に目を向けると、私から逃れるように水鳥たちが泳いでいました。イメージコントロールは[グレイニー]と見比べた結果、水面の様子がより印象的に感じられた[ハイコントラスト]を選びました。粒状感が効いていて、高感度フィルムによる銀塩写真ライクな調子である点も決め手となりました。
お堀に架かる橋を渡り、いくつか門をくぐり抜けます。銅板の装飾が施された門扉は見るからに堅固な様子。こちらも[ハイコントラスト]を選びましたが、力強さが出ている反面、ややシャープ過ぎる印象です。重厚感が損なわれない程度で、パラメーターの微調整でもう少し控えめな調子に仕上げたいです。
城内のあちこちで梅の花が咲いていました。曇天ということで[スタンダード]だといまひとつ冴えない調子です。でもコントラストが高めの[ハイコントラスト]や[グレイニー]だと効果が強すぎて、梅の花だか何なのか分かりづらくなったので、あえて[ソフト]を選んでみました。これくらい軟調のほうがこのシーンに合っているようです。階調のつながりが滑らかで、ボケも柔らかく優しい雰囲気です。さらに明るく調整してハイキーな調子にするのも良いでしょう。
小田原城を離れて南下し、東海道(国道1号)を越えると江戸時代から明治、大正、昭和時代へと街の様子が変化します。閑静な住宅街には歴史的建造物が点在し、縦横に走る小路はカメラ片手に散策するのにぴったりです。小田原と言えば「かまぼこ」が有名ですが、かまぼこ屋の本店が軒を構えるかまぼこ通りには、食べ歩きを楽しむ観光客がたくさん訪れていました。さつま揚げや小田原おでんなどを味わったのですが、それらはモノクロ写真では全然美味しそうに見えません。仕方なくスマートフォンで記録し、その先にある御幸の浜へ。
映えスポットとして有名な、西湘バイパスをくぐり抜けて海へと続くトンネルがあります。前方を歩くカップルをアクセントに慌てて撮影したこのシーンは、イメージコントロールは[スタンダード]が1番自然でイメージ通りの調子。漆黒の感じがとても良いです。起動とAFが高速でチャンスに強いのは、モノクロ専用機とは言えやっぱりRICOH GRです。ダイナミックレンジも広めに感じられます。
海岸の岩場に登ると、海鳥ではなくハトがいました。繁華街や公園などではよく見かけますが、海は似合わないというか、何だかちょっと不思議な感じです。イメージコントロールは[ソリッド]です。ピントはシャープで、奥行きや立体感もしっかり伝わってくる仕上がり。羽根や岩の質感もリアルに再現されていて、このあたりはRICOH GR IVのモノクロ系のイメージコントロールで撮影したときとは少し違う印象です。
山頂でもないのに積み石がありました。イメージコントロールは[グレイニー]を選んでみました。[ハイコントラスト]とは違った印象で、飛ばさずつぶさず、硬調でとてもシャープです。粒状感もあって銀塩プリントのような仕上がりです。[ハイコントラスト]は低コントラストのシーンで使いたくなりますが、[グレイニー]は反対に高コントラストのシーンが面白いように感じました。
御幸の浜の近くにプールがありました。オフシーズンなので水は張られていませんが、日差しがあるので夏っぽい雰囲気です。RICOH GR IVでカラーだとそうじゃない季節感が出てしまったかもしれませんが、[グレイニー]を選んだらちょうど良い感じの調子になりました。ハイライトに乗った粒状感がフィルムライクで好印象です。その粒状感は柵の前ボケにも絶妙に効いています。
小田原城のお堀に架かる学橋を歩く外国人観光客のカップル。朝この場所に来たときとは打って変わって、とても良い天気になりました。イメージコントロールをいろいろ試したところ、[HDR調]が予想外にはまりました。HDRは日なたと日陰など明暗差が極端な状況では絵画調の写真になるためあまり好きではないのですが、このシーンでは路面の質感が浮かび上がるなど面白い仕上がりです。何事も食わず嫌いはよくありませんね。固定観念を捨て、今後は[HDR調]も積極的に使ってみたいと思いました。
教会を見上げると、薄雲がかかった太陽が目に入りました。高コントラストの画面構成で、空が白く飛んだり、建物が黒くつぶれたりしやすい状況です。そこでイメージコントロールは[ソフト]を選択。ふわっと柔らかく滑らかな調子になりました。バライタ系のファインアート紙でプリントしたくなる仕上がりです。SNSなどインターネットで公開し、液晶画面で見てもらうのも良いのですが、RICOH GR IV Monochromeの高画質はプリントで本領を発揮するように思います。
小田原ちょうちんの灯台がある小田原漁港まで足を延ばしたり、小田原駅周辺の繁華街を歩き回ったり、小田原の街を6時間くらいかけて散策しました。トータルで約3万歩と、普段のスナップ撮影より多めの歩数ですが、小型軽量のRICOH GR IV Monochromeだからこそ疲れ知らずでした。
RICOH GR IVとの2台持ちでも全く負担にならないでしょう。RICOH GR IIIxとの組み合わせも楽しそうです。ただいずれも抽選販売の状態で、欲しくてもまだ手に入れられていない読者がたくさんいるようです。
RICOH GR IVxやRICOH GR IVx Monochromeの登場がこの先あるのか気になるところですが、今回は一足お先にRICOH GR IV Monochromeでの撮影を楽しませていただきました。正統進化した最強のスナップシューターの待望のモノクロ専用機ですが、そのポテンシャルは高く、イメージコントロールのテイストなどは期待以上。基本性能の優秀さはRICOH GR IVですでに実感していますが、このカメラでしか得られないモノクロ表現の醍醐味を存分に満喫できました。
















