旅×カメラ:OLYMPUS STYLUS XZ-2(その1)

画質・操作性・ボケ・高感度……基本性能を香港で試す
Reported by上田晃司

 筆者のライフワークの一つは、世界を旅して街の風景などを撮影することだ。それ故、旅用のカメラにはこだわりがある。

 今回、オリンパスのハイエンドコンパクトデジタルカメラ「STYLUS XZ-2」を試用する機会を得たので、早速チケットを取って香港へ向かった。



旅×カメラ:OLYMPUS STYLUS XZ-2(その2)
旅×カメラ:OLYMPUS STYLUS XZ-2(その3)



  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

キャセイパシフィックCX509で香港へ。天候は悪いがドラマチックトーンでダイナミックに仕上げた。悪天候が似合うフィルターだ。XZ-2 / 約7.0MB / 3,968×2,976 / 1/640秒 / F3.5 / -1.3EV / ISO100 / WB:オート / 6mm / アートフィルター:ドラマチックトーン

搭乗して窓に付いている水滴を撮影。1cmマクロと明るいレンズのおかげで大きなボケを得られた。XZ-2 / 約5.1MB / 2,976×3,968 / 1/250秒 / F2.5 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 6mm / アートフィルター:トイフォト



コンパクトデジカメならではの凝縮感

 まず簡単にXZ-2のスペックを見てみよう。XZ-2はXZ-1の後継機にあたるハイエンドコンパクトデジタルカメラだ。撮像素子には1/1.7型、有効1,200万画素の裏面照射式CMOSセンサーを採用。画像処理エンジンにはTruePic VIを搭載している。

 注目すべきは、35mm判換算で28-112mmの開放F1.8-2.5という、非常に明るいズームレンズを搭載していることだろう。今まで様々なコンパクトデジタルカメラをサブ機として旅に持って行ったが、一眼レフカメラの単焦点レンズなどと比べると、開放F値が暗いため、結局はご飯やロケ場所の記録くらいにしか使っていなかった。しかし、XZ-2は開放F1.8-2.5の明るいレンズを搭載。広角端だけではなく望遠端まで明るいのが特徴だ。これで画質が良ければ、サブというより、メインの旅カメラとしても期待できる。

 大きさは、一般的なコンパクトデジタルカメラと比べるとやや大きめの印象。重量も346gとずっしりと感じる。スペックだけを見ると明らかに大きく感じると思うが、実はこの大きさは非常に使いやすい。


片手に収まるサイズ感がコンパクトデジカメの魅力だ。このボディに28-112mm相当F1.8-2.5の4倍ズームレンズを搭載している

 グリップは大きくホールド感に優れ、各部に金属パーツを使うなど細部まで高級感がある。持っていて自慢したくなる高級感だ。ずっしりとした重さもコンパクトデジタルカメラとしては重いかもしれないが、一眼レフやミラーレス機と比べるとだんぜん軽くて小さい。一日中持ち歩いて苦になることはまずないだろう。街中で移動を繰り返した今回のような旅では、これが有利に働いたのは間違いない。




道端の鍵屋を撮影。瞬時にスナップできるのもコンパクトデジタルの強みだ。XZ-2 / 約6.2MB / 3,968×2,976 / 1/100秒 / F2 / -0.7EV / ISO125 / WB:日陰 / 9.8mm

屋台を撮影。コントラストが高く、香港の屋台らしさを表現できた。XZ-2 / 約4.8MB / 2,976×3,968 / 1/100秒 / F1.9 / +0.3EV / ISO160 / WB:晴天 / 7.1mm / アートフィルター:トイフォト

香港名物の竹の足場。見ているだけで怖い。XZ-2 / 約7.4MB / 3,968×2,976 / 1/160秒 / F3.2 / 0EV / ISO100 / WB:日陰 / 13.4mm

お寺の正面を撮影。模様のディテールまでしっかり表現できている。XZ-2 / 約6.6MB / 3,968×2,976 / 1/80秒 / F1.8 / -0.7EV / ISO250 / WB:晴天 / 6mm




良好な操作性。柔軟なカスタマイズも

 次に操作性について。旅のメイン機としてさまざまなシーンで撮影してみたが、操作感は非常によい印象だ。

 モードダイヤルはもちろんのこと、カスタマイズ自由自在のハイブリッドコントロールリングの搭載、コントロールレバー、ファンクションボタン機能、タッチパネルなど、使いこなすほどに馴染んでいく操作性のおかげで、ストレスなく撮影に集中することができた。

 そのうち代表的なものが「ハイブリッドコントロールリング」だろう。これは革命的な機能だと感じる。コントロールレバーでクリックありとクリックなしを切替えられるところが他の機種にない特徴で、特にMF時にクリックなしで操作できるのが便利だった。1/1.7型センサー搭載のコンパクトデジカメとしては良くボケる本機だけに、MFでの操作感が良いのはありがたい。コントロールレバーの位置も絶妙で、非常に使いやすい。


レンズ鏡筒根元にある「ハイブリッドコントロールリング」。その脇のレバーにより、操作をクリックありとクリックなしに切替えられる。「ISO感度の切替はクリックあり」「MF操作はクリックなし」といった使い分けが可能だ

 ちなみにMF時のピント位置は非常に鮮明で、夜景でも昼間の風景でも厳密なピント合わせが可能だった。液晶モニターもタッチパネル液晶とは思えないほどクリアでコントラストが高く、日中でもしっかり確認することができた。さらにEVFの装着も可能なので、明るい南国の屋内での撮影も楽にこなせるはずだ。

 また、アートフィルターを使用している際も、ハイブリッドコントロールリングをPs(プログラムシフト)に変更すれば自由に絞り値やシャッタースピード値を変更できるので便利だ。これほど、カスタマイズしやすく操作感に優れているコンパクトデジタルカメラは珍しい。

 メニューは整理されており、瞬時に設定したい項目にたどり着くことができる。さらに、液晶モニターは可動式を採用しており、ローアングルも楽々撮影可能。料理を撮るときはローアングルで、人ごみを頭越しに撮るようなときはハイアングルでと、撮影の幅が広がることだろう。


扱いやすい上下可動式のバリアングル液晶モニターを搭載



香港らしさが漂う通りを撮影。バリアングル液晶を使えばローアングルも撮影しやすい。XZ-2 / 約5.8MB / 3,968×2,976 / 1/320秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO100 / WB:日陰 / 7.5mm



明るいレンズで気になる被写体に近寄る

 冒頭でも少し述べたが、このカメラの魅力は何と言っても、広角端から望遠端までレンズの開放F値が明るいことだ。例えば香港の夜を手持ちで撮影するのであれば、明るいレンズは欠かせない。このレンズであれば、夜でも十分なシャッタースピードを得られ、夜など暗い場所でもISO感度を上げすぎることなく撮影できる上、ある程度のボケも得ることができるのだ。

 また、露出3段分のコントロール可能なNDフィルターも内蔵しており露出オーバーする際や長秒露光する場合に光を減光させることができる。NDフィルター機能はメニューから行なえるが、Fn1に割り当てておくと瞬時にON/OFFが行なえるのでオススメだ。


「i.ZUIKO DIGITAL」の名を持つレンズ。明るい上に解像力も高いNDフィルターのON/OFFが可能。明るい屋外でもボケを活かした作品が撮れる



お寺の中にあった何かの像。100mm付近で撮影することで綺麗な丸ボケを得られた。XZ-2 / 約7.1MB / 3,968×2,976 / 1/50秒 / F2.4 / 0EV / ISO800 / WB:晴天 / 20.7mm

線香を撮影した。ボケは大きく綺麗なのがわかるだろう。XZ-2 / 約6.4MB / 2,976×3,968 / 1/125秒 / F2.4 / +0.3EV / ISO800 / WB:晴天 / 20.7mm

ズームを望遠側にして絞り開放に。檻を目立たなくすることができた。XZ-2 / 約5.8MB / 2,976×3,968 / 1/160秒 / F2.5 / 0EV / ISO400 / WB:晴天 / 24mm

お店に置いてあったサンタクロースの人形を撮影。望遠端のボケも柔らかく綺麗だ。XZ-2 / 約5.4MB / 3,968×2,976 / 1/100秒 / F2.5 / +0.3EV / ISO200 / WB:晴天 / 24mm

SOHOにあるおしゃれな花屋で撮影した。標準画角周辺でも撮影距離が近いとボケを得られる。XZ-2 / 約5.7MB / 2,976×3,968 / 1/125秒 / F2.5 / +0.3EV / ISO200 / WB:曇り / 13.4mm




天候が悪いときは「ドラマチックトーン」で

 また、オリンパスのカメラらしく、多彩なアートフィルターも特徴だ。何気ない風景も一瞬にアーティスティックに仕上げてくれるので、写欲が湧く。正直いうと今回、天気にはあまり恵まれなかったものの、アートフィルターのおかげで撮影は楽しかった。

 中でもドラマチックトーンIは香港の風景と非常にマッチしているように感じるし、最近の機種から追加されたリーニュクレールも、イラスト調の仕上げが面白い。

 アートフィルターは、絞り優先AEやシャッター優先AE、プログラムAEなどにおいても、仕上がり設定から選択できる。さらにホワイトバランスを変更して色味を変えることで、もっと個性的な雰囲気を求めることも可能だ。


金鐘の駅からトラムステーションを撮影。絞り優先AEとアートフィルターのドラマチックトーンでダイナミックに撮影した。XZ-2 / 約7.8MB / 2,976×3,968 / 1/500秒 / F4 / -0.7EV / ISO100 / WB:日陰 / 16.7mm

こちらはアートフィルターのリーニュクレール。イラスト風も面白い。XZ-2 / 約6.9MB / 2,976×3,968 / 1/500秒 / F3.2 / -1.0EV / ISO100 / WB:オート / 6mm

曇りの港をドラマチックトーンで。おかげで、ダイナミックな印章に仕上げることができた。XZ-2 / 約7.3MB / 3,968×2,976 / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 12mm

これもドラマチックトーン。空がダイナミックだったので試したところ、イメージ通り仕上げることができた。XZ-2 / 約7.1MB / 3,968×2,976 / 1/1,000秒 / F5.6 / -2.0EV / ISO100 / WB:日陰 / 6.8mm




明るいレンズで暗いところにも強い

 付属の小型バッテリーの持ちは意外によく、朝から晩まで撮影して1本を消費した程度だ。ただ、気温などにもより変化するので、旅にはもう1本持っていきたい。

 ちなみに充電はUSBから行なえるので、パソコンやスマートフォン用バッテリーからの充電が可能だ。専用充電器を持参する必要がないのは、荷物をなるべく少なくしたい旅人にとって好ましい。ただし、汎用のmicroUSBケーブルなどではなく、専用ケーブルが必要なのは少々残念だ。


USB充電に対応。荷物が少しでも減らせるのはうれしい。移動中にスマホ用外付けバッテリーから充電できるのも良い

 画質に関しては、コンパクトデジタルカメラとは思えない高い描写に驚かされた。遠景でもスナップでもディテールまで非常にシャープで窓枠や看板までしっかり見えてしまうほどだ。レンズの良さがうかがえる結果となった。

 また、高感度にも比較的強く、ISO1600であれば何の問題もなく常用できる。レンズが明るいためほとんどのシーンでISO1600もあれば十分な印象だ。ボケもコンパクトデジタルカメラとしては美しい。室内、路地、夜景など、旅先では厳しい撮影条件も多くなりがちだ。XZ-2なら、これまでレンズ交換式デジタルカメラを取り出していたこうしたシーンでも実力を発揮してくれる。




路地裏で出会った猫をISO1600で撮影。ノイズも少なくピント位置もシャープだ。XZ-2 / 約5.5MB / 3,968×2,976 / 1/160秒 / F1.8 / 0EV / ISO1600 / WB:マニュアル / 6mm

味のあるトラムの料金入れを撮影した。蛍光灯の雰囲気がレトロだ。XZ-2 / 約4.7MB / 2,976×3,968 / 1/160秒 / F2.3 / -0.7EV / ISO160 / WB:曇り / 15.4mm

トラムの行き先表示を撮影。暗めの場所でも高感度で明るいレンズのおかげで撮影できた。XZ-2 / 約6.3MB / 3,968×2,976 / 1/80秒 / F2.5 / 0EV / ISO1600 / WB:晴天 / 24mm



旅の相棒にふさわしいコンパクト

 今回、弾丸で3日間香港をXZ-2と旅をしたが、気軽に被写体をスナップすることができた。レスポンス、画質とも良く、小さなボディゆえの軽快さもある。おかげで、今までの香港旅行よりも行動範囲を広げることができた。

 また、移動が多い旅において、装備の軽さはそれだけで有利になる。昼間の香港のように暑い地域だとなおさらだ。もちろん性能的にレンズ交換式カメラには敵わないものの、適所適材としてもっとコンパクトデジタルカメラが見直されて良いと感じた。

 とにかくXZ-2は、撮影していて非常に楽しいカメラだ。メインの旅カメラとしても、あるいはレンズ交換式カメラのサブ機としても、旅を盛り上げてくれるだろう。




フェリー乗り場を撮影。天気は悪いが明暗がしっかりしており雰囲気がある。XZ-2 / 約5.9MB / 3,968×2,976 / 1/1,250秒 / F5 / -0.7EV / ISO100 / WB:日陰 / 24mm

骨董街で見つけた綺麗なお茶碗を撮影。細かいディテールまでしっかり描写している。XZ-2 / 約6.6MB / 2,976×3,968 / 1/160秒 / F2.5 / 0EV / ISO100 / WB:曇り / 10.7mm

骨董街の屋台で売っているコイン。周辺は少し流れているが、ピント位置は非常にシャープ。XZ-2 / 約5.0MB / 3,968×2,976 / 1/2,000秒 / F2 / 0EV / ISO100 / WB:曇り / 6mm

路地から見える古いビルを撮影。手持ちだがディテールまでしっかり撮影できた。XZ-2 / 約5.0MB / 2,976×3,968 / 1/30秒 / F1.9 / -0.7EV / ISO400 / WB:晴天 / 6.4mm

九龍サイドから見た夜の香港島。圧倒的な解像感に驚かされる。XZ-2 / 約5.9MB / 3,968×2,976 / 15秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 12.3mm

香港の最後の夜に食べた酢豚。料理を気軽に撮影できるのもコンパクトデジタルカメラの魅力だ。

(協力:オリンパスイメージング株式会社)






(うえだこうじ)1982年広島県呉市生まれ。米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強しながらテレビ番組、CM、ショートフィルムなどを制作。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フリーランスのフォトグラファーとして活動開始。人物を中心に撮影し、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影している。現在は、カメラ誌やWebに寄稿している。
ブログ:http://www.koji-ueda.com/

2012/11/14 00:00