特別企画

最新鋭SSD導入で写真管理はどう変わるのか

中原一雄さんがPCI express4.0の実力をチェック

ほんの数年前まで高画素デジタルカメラといえば3,000万画素クラスのカメラのことを指したが、現在はフルサイズのハイエンド機ならば4,000万画素級があたりまえ、α7R IVのように6,000万画素というカメラも出現してきた。

カメラが高画素化すると多くの人が編集に使うPCのストレージ「容量」を気にするが、快適に編集作業をするためには容量だけでなく「速度」も重要だ。そこで今回はCFD販売からリリースされたPCI Express 4.0(PCIe4.0)対応の超高速NVMe SSD「PG3VNF」を紹介しよう。リードで5000MB/sを叩き出す異次元のスピードを持ったSSDだ。

CPU性能でAMDがIntelを逆転

今パソコン業界では一つの大きな変化が起きている。長い間CPUのシェアで圧倒的であったIntelに対して、ライバルのAMDがRyzenシリーズで猛追を仕掛けているのだ。特に今年7月に発売された第3世代Ryzenは王者IntelのハイエンドCPUよりも性能、コスト共に上回るというショッキングな出来事が起こり、ついにCPU単体のシェアでIntelを上回るほどとなった。パソコンに詳しくない読者もこのニュースを耳にしたことがある人も多いはずだ。

第3世代Ryzenは処理能力が高いだけでなくもう一つ大きな特徴がある。それは第3世代Ryzenと共に登場したAMDの最新チップセットX570がPCI Express 4.0に対応するというものだ。

PCI ExpressとはグラフィックボードやSSDのデータ転送に使われる規格であり、現在の主流はPCI Express 3.0。PCI Express 4.0ではその2倍の帯域を使ってデータ転送を行うのだ。

ちなみに、カメラの次世代記録メディアとして注目されるCFexpressはPCI Express 3.0を利用してデータ転送を行う。

公称リード5,000MB/sの圧倒的なスピード

少し前置きが長くなったが、ここから「PG3VNF」の詳細について紹介していこう。CFD販売のPG3VNFシリーズは容量別に500GB、1TB、2TBの3モデルが用意されており、今回試用したのは1TBの「CSSD-M2B1TPG3VNF」だ。

中央のグレーのパーツが読み書きを制御するコントローラーIC、左側に見える黒いパーツがフラッシュメモリだ。東芝メモリの「BiCS4」を採用し両面に計4つ配置されている

最近のLightroomやPhotoshopといったクリエイティブ系アプリは容量が大きく、WQHDや4Kのディスプレイを使用しているとLightroomのカタログ(プレビューファイル)も大きくなる傾向にあるため、SSDにOSやアプリケーション、カタログなどを入れようとすると最低でも500GB、数年後まで見据えて余裕を持たせるなら1TBは欲しい所だ。

例えば、Lightroomで10万枚を超えるカタログを作るのであればそれだけで2~300GBとなることは覚えておきたい。

PCI Express 4.0対応のPG3VNFシリーズはすべてのモデルで公称シーケンシャルリードが5,000MB/sとされており、これまで超高速とされてきたPCI Express 3.0対応のNVMe SSD(約3,000MB/s)より圧倒的に速い。

一般的に普及しているSATA3.0のSSD(約500MB/s)と比べると約10倍の速度を持つ異次元のSSDだ。

現在手に入るPCI Express 4.0対応のNVMe SSDに搭載されるコントローラーICはすべてこのPHISON E16が採用されている

読み出しだけでなく公称シーケンシャルライトも4,400MB/s(500GBモデルは2,400MB/s)と圧倒的。この数年パソコンを買い換えていない人から見ると、もう何が何だか分からないくらいに速いのだ。

実際にこのスピードが出るかどうかCrystalDiskMark 6.0.2でベンチマークを取った。比較として手元にあったNVMe接続のSSD(PCI Express 3.0対応の製品、以下比較用SSD)も同条件で測定した。

ベンチマーク環境

CPU:AMD Ryzen9 3900X
MB:ASRock X570 Creator
Memory:G.Skill F4-3600C18D-32GTZN(16GB×2)
GPU:NVIDIA Quadro P400

検証に使用した機材

結果は標準の1GB×5のテストで公称通りシーケンシャルリードは5,005.7MB/sをマーク。シーケンシャルライトは公称にやや届かなかったものの4,286.8MB/sと十分高速な値を示した。

CSSD-M2B1TPG3VNF(左)、比較用SSD(右)

シーケンシャルは大きなファイルを転送するときに効いてくる値であり、大容量のRAWデータや動画ファイルの転送に効果があることが分かる(メモリーカードからの読み出しではカードリーダーの速度がボトルネックになる)。

細かい説明は割愛するが2列目以降の値はランダム読み書きの速度を表したもので、ここが速ければアプリの起動などPCの基本動作が快適になると思って良い。また、Lightroomのカタログも経験的にランダム性能が高いストレージの方が快適に動作する。

テストサイズ4GB、8GBでもほぼ同じ性能が出ており使用条件によらず安定した速度を出してくれるようだ。比較用SSDの数値は今でも十分高速と言えるものだが、PG3VNFの数値を見てしまうとちょっと物足りないと感じてしまう。

テストサイズ1GBと同条件で4GB、8GBとサイズを大きくしていったが同じパフォーマンスを維持している

なお、より詳しいベンチマークの結果は下記リンクからも見ることができるので参考にして欲しい。

ヒートシンクを省略した合理的な設計

これだけの高速転送を実現するNVMe SSD共通の問題点は発熱だ。特にPCI Express 4.0対応SSDは発熱が大きいようで、同時期に発売された他社の製品には大きなヒートシンクが付いているものが多い。一方でPG3VNFシリーズにはヒートシンクが付いていないのだ。

これはPG3VNFの発熱が小さいと言うわけではなく、最近のマザーボード事情によるものだ。最近のマザーボードには、はじめからM.2 SSD用のヒートシンクが組み込まれているものが多く、X570用マザーボードの多くも、あらかじめヒートシンクが付いている。そのため、わざわざ高コストなヒートシンクを付けることはせず、はじめからそこにあるヒートシンクを使いましょう、という考えのようだ。

CPU側のM.2スロット用ヒートシンク。よく見ると放熱フィンが2重構造となっており効率的に熱を逃がしてくれる
裏面は粘着性の熱伝導パッドが付いている。粘着力はそれほど強くないので取り外しも簡単
サウス側のM.2スロットのヒートシンクはチップセット用ヒートシンクと一体型となる

実際PG3VNFは他社のSSDとほとんど同性能でありながら廉価な価格帯を実現している。

ここで心配になるのが、“高発熱のSSDがマザーボード備え付けのSSDで十分冷えるのかどうか”という点だが、そこは全く心配する必要はなさそうだ。次のグラフはマザーボード備え付けのヒートシンクあり/なしでCrystalDiskMarkのテストサイズ8GBのベンチマークを間を置かずに2回連続で行ったものだ。

HWiNFOでモニタリングし、ベンチマーク開始時間を0として揃えた

ヒートシンクを付けずにベンチマークを走らせると45度付近から一気に70度オーバーとなり、最高で78度を記録。かなりの発熱であることが分かるが、ヒートシンクを付けていればジワジワ上がってはいくものの、60度を超えることはなかった。

ヒートシンクをとりつけていない状態。中央に位置しているのがPG3VNF

高負荷時でも60度以下であれば、通常の作業において発熱が問題になることは無いはずだ。たとえばLightroomで編集や書き出しを行う作業をした場合のアイドル時からの温度変化は2~3度程度と、非常に小さい。

サーモカメラ(FLIR ONE Pro)で直接測定すると、ヒートシンクありの場合は55.2度と、マザーボードの他の場所の温度に比べ特段高い値ではないことも分かる。

一方、無しの場合はフラッシュメモリー部分は85.8度とかなり発熱しており、サーマルスロットリングで速度が低下する恐れが出てくる。ヒートシンクはマザーボード備え付けのもので十分だが、必ず付けた方がよさそうだ。

ヒートシンクあり(左)、ヒートシンクなし(右)。2つの写真の色スケールは同一ではない

実作業で速度を体感

次にPG3VNFを実際の編集作業で使った場合の快適さはどうなのかを検証してみた。

前述の比較用SSDを用い、同条件で比較をしたところ、PCの起動やLightroom、Photoshopの立ち上げ速度、RAW→JPEGへの書き出し速度、約7万枚のLightroomカタログの操作感はほぼ同じ結果となった。

あくまでも推測だが、RAW現像程度の作業負荷であればPCI Express 3.0の比較用SSDでもストレージの速度としては十分な速度がでており、他の部分がボトルネックとなってマシンやアプリがPCI Express 4.0のスピードをいかしきれていなかったのではないかと考えられる。

いくつか比較した中で唯一差が出たのがLightroomのカタログ転送スピードだ。

検証のために約7万枚のカタログおよびプレビュー(元画像は含まず)をNVMe SSDに転送したところ、PG3VNFが12分47秒、比較用SSDが13分54秒と1分以上の差を付けた。

カタログ転送時間

・CSSD-M2B1TPG3VNF:12分47秒
・比較用SSD:13分54秒
※SanDisk Extreme Portable SSD(SDSSDE60-500G)からの転送

Lightroomのカタログは非常に小さなプレビューファイルが含まれており、その転送にはランダム性能が効いてくる。約100GB、ファイル数11万という重い転送ではランダム性能が高いPG3VNFで差が出てきたようだ。

Ryzen9 3900X & PCIe4.0対応PG3VNFの速度はすごい

最後に私が普段使っているIntel Corei7 8700KのPC(GPU:NVIDIA GTX1070、Memory:PC4-19200 48GB、SSD:500GB / 1TB[ともにPCI Express 3.0])と検証用マシンを使い比べてみた印象もお伝えしたい。端的に言えば笑ってしまうくらいサクサク快適であった。

システム構成自体が全く異なるうえ、バックグラウンドで動くアプリの数も違うため単純な比較にはならないが、例えばα7R III(約4,200万画素)の編集済みRAWファイル100枚をLightroomでオリジナルサイズのJPEGへ書き出したとき、私のCorei7 8700Kのマシンでは3.1秒/枚の時間が掛かったが、検証機(Ryzen9 3900X)は1.2秒/枚という圧倒的なスピードで書き出しを終えた。

RAW100枚書き出し時間1枚あたりの時間
私のマシン
Corei7 8700K
5分10秒3.10秒
検証機
Ryzen9 3900X+PG3VNF
1分55秒1.2秒

PG3VNFの効果がどの程度出たか知ることはできないが、12コア24スレッドのRyzen9 3900Xの効果が非常に大きいことは容易に想像が付く(Lightroomの書き出し速度はマルチスレッド性能が効いてくる)。

ライブラリーモジュールでの写真送りも拡大しなければ3枚/秒くらいのスピードで送っていっても詰まることはなく非常に快適だ。

しばらくIntel CPUのマシンを使ってきた私だが、Ryzen9 3900XとPG3VNFの組み合わせがここまで快適だとはビックリしてしまった。検証作業をしながら早めにPCを更新することを心に誓ったほどだ。

まとめ

以上、PCI Express 4.0に対応したSSDがどれだけ速くなったのか、写真管理という視点からCFD販売のNVMe接続SSD「PG3VNF」をみてきた。

実際の作業環境ではPCI Express 3.0のNVMe SSDと大きな差は出なかったものの、ベンチマークでは圧倒的なスピードが出ていることが分かった。

PG3VNFはヒートシンクを付けない分価格も抑えられており、PCI Express 3.0 NVMe SSDのハイエンド製品と比べても僅かな価格差しかない。今後、アプリケーションや他のハードがより高性能化したときにPCI Express 4.0対応のNVMe SSDなら性能面で十分な余裕があることを考えると、今PG3VNFシリーズを選ぶ意義が見えてくるかと思う。

制作協力:CFD販売株式会社

中原一雄

1982年北海道生まれ。化学メーカー勤務を経て写真の道へ。バンタンデザイン研究所フォトグラフィ専攻卒業。広告写真撮影の傍ら写真ワーク ショップやセミナー講師として活動。写真情報サイトstudio9を主催 。