REAL FOCUS—RFレンズと行く小さな旅:写真家の眼差しとその軌跡
寄り引きの組み合わせがいつもの帰省を変えた…広角ズームで再発見する故郷・福岡
RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM
2022年9月27日 17:14
本企画「REAL FOCUS(写真家の眼差し)」は、風景に潜む鮮やかな色や美しい造形を1本のRFレンズで見出すことを目的としている。
RFレンズはその眼差しを写真として昇華させてくれる。旅の中で表現の可能性を切り拓いてゆく写真家の軌跡(ルート)を、そのままトレースしながらローケションと撮影テクニックを解説する。注目すべきは各スポットで撮影した記録枚数だ。撮影に対する写真家のこだわりを感じとれるだろう。
第8回目の旅人は、連載「あとで買う」でおなじみの岡嶋和幸さん。最新の軽量広角ズームレンズRF15-30mm F4.5-6.3 IS STMとEOS R6を手に、故郷の福岡の海辺を巡ってもらった。
1967年福岡市生まれ。東京写真専門学校卒業。スタジオアシスタント、写真家助手を経てフリーランスとなる。世界を旅して詩情豊かな作品を発表。写真集『風と土』(インプレス刊)のほか著書多数。写真展も数多く開催している
※本ページは「デジタルカメラマガジン2022年10月号」の「REAL FOCUS RFレンズと行く小さな旅 写真家の眼差しとその軌跡」を再構成したものです。
軽快なコンビで巡る慣れ親しんだ故郷の海辺
生まれ故郷の福岡には盆と正月に帰省している。実家に滞在し、カメラを手にぶらり出掛けることもある。足を運ぶのは博多湾を望むなじみのある場所で、昔を懐かしんだり、埋め立てや整備による変化に驚きながらその光景を写真に収めている。
今回は子どものころの夏休みの思い出を胸に、両親に連れて行ってもらったり、友達と遊びに行った場所を巡ることにした。バスや鉄道のほか、近くの離島へはフェリーを利用と、移動中の撮影も楽しみの1つ。距離や時間はたいしたことはないが、旅の気分を十分に味わえる。
相棒はEOS R6と新登場の超広角ズームRF15-30mm F4.5-6.3 IS STM。コンパクトな組み合わせなので身軽になれて好奇心も高められる。行く先々で出合う被写体との距離を縮めやすく、超広角ならではのダイナミックな遠近感を生かしてみるのも面白い。
慣れ親しんだ海辺の今を撮り歩きながら、子どものころの記憶と照らし合わせてみよう。
15mmの広い画角から30mmの自然な画角まで1本でカバーできるスタンダードクラスの超広角ズーム。
2枚のUDレンズと1枚のプラスチックモールド非球面レンズを含む11群13枚のレンズ構成で、コストを抑えながら優れた描写力を実現している。カメラのレンズ光学補正で諸収差も良好に補正可能。
レンズ内光学式手ブレ補正機構により5.5段、ボディ内手ブレ補正機構を搭載したEOS R5/R6との組み合わせでは協調制御により7段の手ブレ補正効果が得られる。
鏡筒側面にAF/MFスイッチはないが、代わりにコントロールリングの機能を切り替えるスイッチが備わる。
SPECIFICATION
レンズ構成:11群13枚
絞り羽根枚数:7枚
最小絞り:F22〜F32
最短撮影距離:0.28m(15mm/AF)、0.128m(15mm/MF)
最大撮影倍率:0.09倍(15mm/AF)、0.16倍(30mm/MF)
フィルター径:φ67mm
最大径×全長:約φ76.6mm×88.4mm
質量:約390g
発売日/価格:2022年8月26日/オープン
※キヤノンオンラインショップ参考価格:8万5,800円
撮影地01:相島(491枚撮影)
新宮漁港から船で約50分ほどで到着する相島は野良猫がたくさん暮らしている。猫の姿を求めて島へと向かった。
09:30|島へと向かう船(36枚目)
相島へ向かうフェリーで一緒だった母娘。航行中は海や空の表情を夢中になって撮ることが多いが、人が入っている方がドラマチックだ。ゆがみなどは良好に補正され、画面内のラインが真っ直ぐ捉えられていて気持ち良い。
10:14|猫との出合い(127枚目)
日陰から出てきた猫と遭遇。バリアングルモニターと動物優先AFでローポジションで追いかけたが、こちらの様子に見向きもせず木陰に移動してしまった。超広角だが、猫目線での臨場感がダイレクトに伝わってくる絵作りだ。
撮影地02:海の中道海浜公園(211枚撮影)
相島から船で戻り向かった先は、博多湾に向かって伸びる砂州にある海の中道海浜公園。広大な敷地では1年を通して季節の花が楽しめる。
撮影地03:シーサイドももち海浜公園(12枚撮影)
海の中道からフェリーで博多湾をショートカット。フェリーの発着所があるシーサイドももち公園から福岡タワーに向かいがてら撮影を楽しんだ。
撮影地04:福岡タワー(211枚撮影)
海浜タワーとして日本一の高さを誇る福岡タワー。展望室からは福岡の街並みや博多湾などを一望できる。
撮影地05:姪浜渡船場周辺(129枚撮影)
2日目は能古島に渡るため、姪浜渡船場から撮影を開始した。フェリーの時間まで姪浜渡船場近くで散策を楽しむ。
撮影地06:のこのしまアイランドパーク(338枚撮影)
姪浜渡船場から約10分で能古島に到着。海を背景に四季折々の花が楽しめる自然公園・のこのしまアイランドパークへと向かった。
16:10|人懐っこいヤギ(1,019枚目)
ミニ動物園でヤギに餌やり。レンズを向けても嫌がらなかったので、15mmのAF時の最短撮影距離28cmまで接近。ローアングルからデフォルメ効果を狙ってみる。近距離での撮影だがAFの動作もスムーズだった。
撮影地07:能古渡船場周辺(59枚撮影)
撮影を終え、ふたたび博多に戻るため、渡船場へ向かう。船が来るまでの間、この旅の最後の撮影を楽しんだ。
セオリーを覆す広角ズームで故郷の新たな表情を発見
作品制作では単焦点の標準レンズを使うことがほとんどだ。通常は帰省のときもRF50mm F1.2 L USMの1本しか携行しないのだが、今回はRF15-30mm F4.5-6.3 IS STMを選んだ。
単焦点でのシンプルな撮影が好きとはいえ、15mmまたは30mmのどちらか1本だったら持て余していただろう。広角系はあまり得意ではないのだが、2つの焦点距離の使い分けが訪れた場所や出合った被写体の魅力の発見につながり、表現の幅を大きく広げてくれた。
望遠系より広角系のレンズの方が1mmの画角の違いが大きい。15-30mmはほかの焦点域の2倍ズーム以上の絵作りの変化が楽しめるが、小さな被写体は豆粒みたいにしか写らない。うまく距離を詰められないと散漫な絵になりがちである。
特に15mmは大胆なフットワークが決め手となるが、相島と能古島では猫やヤギの人懐っこさに助けられた。画角が広いため、望遠系でアップで撮るより情報量が多く表現力も豊かだ。MF時は0.52倍までの接写が可能と、花のマクロ撮影も通常のレンズで近接するのとはひと味違った面白さがある。
寄りは望遠、引きは広角という使い分けが一般的だが、このレンズは寄りは15mm、引きは30mmという組み合わせが楽しい。普段の撮影とは被写体へのアプローチが極端に異なるため撮れる絵も大きく変わる。何度も訪れたことのある場所でたくさんの新しい発見があるなど、これまでとは違った故郷・福岡の夏を楽しめた。
合計撮影枚数:1,262枚
現場写真:HARUKI
制作協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社