おもしろ写真工房
「水中宙玉」大ブレークか!?
意外にマッチする水の中と宙玉……水中写真家たちの力作を紹介!
Reported by上原ゼンジ(2014/9/9 08:00)
「水中宙玉」(すいちゅうそらたま)とはカメラを水中ハウジングに入れ、水中で撮影する宙玉写真のこと。これが最近ブームになりつつあるのだ。しかしダイビングのできない私は、対抗手段として“水中を携帯する方法”を編み出したのであった。
最初の出会いはFacebookだった。「水中宙玉」のグループができたという案内を受け、私も参加することにした。加わってみるとすでに大勢の人が「水中宙玉」を楽しんでいた。そしてその中心となっていたのが、管理人であり、千葉館山の「波左間海中公園」というダイビングサービスで働いている萩原慎司氏だった。
萩原氏は水中でお金をかけずに魚眼撮影を行う方法として、玄関のドアスコープを使った撮影法を試していたが、そんな中で宙玉と出会ったとのこと。最初は自分1人で研究していたが、ダイビングに訪れるお客さんに作ってあげるようになり、どんどんはまっていったようだ。
お客さんにはタダで作ってあげているので、材料は極力安いものを使っている。透明アクリルを円型に切るのも1枚1枚ノコギリで切っているのでよくみるとゴツゴツしたりしている。筒には自転車のタイヤ・チューブを巻いたりして手作り感満載なのだが、深い海の中でも耐えられるように水圧を考えたその仕組みは質実剛健だ。
1番びっくりしたのは玉と円板を黒い両面テープで貼付けているところ。普通は写真に写る接着箇所を黒にしようとは思わないと思うが、玉の影に隠せば光が屈折するおかげで、接着箇所の黒い部分が写らなくなってしまうのだ。確かに多少接着剤がはみ出したりしても写りには影響ないことは知っていたが、ちょっと衝撃的だったな(笑)。
まあ黒を使う必要はないけれど、萩原氏みたいな両面テープによる工作はありですね。接着剤によってはアクリルが曇ってしまったりすることがあるけれど、テープなら曇ることはないし、失敗しても貼り直すことが可能。玉を自作する場合にいい方法だと思います。
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萩原氏が水中宙玉を進化させたのは、宙玉をハウジングの外側に取り付けるという方法を考えだしたことだ。それまでは宙玉をハウジング内に収めるため、極力レンズと宙玉部分を短くする。ハウジングのポートを延長するというのが当たり前だった。しかしポートが延長できるようなハウジングばかりではないので、この宙玉外付け法の発明により、さまざまなハウジングへの対応が可能になったというわけだ。
では実際にどうやって取り付けているのかというと、シリコン製の漏斗を使っている。私も現物を見るまでどんなものなのかよくわからなかったのだが、100円ショップなどで売られているもので、折りたたむとコンパクトになる道具だ。それを接続箇所に取り付けるだけなのだが、うまく付けると水圧も加わり水中で外れてしまうこともないそうだ。人のハウジングに工作をしているので、接着剤を使ったりすることができず考えた方法だとのこと。
さらに最近では、宙玉部分が密閉されていれば、「レンズと宙玉の間に水の層があっても大丈夫」ということがわかり、シリコン漏斗ではなく、フィルターネジで取り付けるという方式も考案された。これはハウジングにフィルターネジが切ってあるタイプの製品の場合で、ステップアップリングなどを使って宙玉部をハウジングに取り付けるものの、シリコン漏斗による防水対策は施さないのだ。
ネジの隙間から水が入り込み、薄い水の層ができるのだが、あまり写りには影響せず、工作が簡単になるということで、水中宙玉界で注目を集めているシステムだ。水中宙玉の場合、チップスターの空き箱で工作するというわけにはいかず、日夜技術革新のための努力が成されているのである。
どんどん広がる水中宙玉の輪
萩原氏が「水中宙玉グループ」を作ってくれたおかげで、宙玉使いのダイバーたちと知り合うことができるようになった。塩入淳生氏は沖縄の久米島で水中宙玉写真を撮っている「宙玉人」(そらたまんちゅ)だ。
いつもはFacebookできれいな海の写真を見せていただいているが、今回は機材の写真を提供してもらった。キヤノンPowerShot S100をRecseaのハウジング(WHC-S100)に入れた宙玉用の機材は、黒くてなかなかカッコいいですね。
ハウジングと宙玉部は67mm径のネジで接続できるようになっており、この間は海水で満たされているとのこと。67mmというのは水中の機材としては汎用性の高いネジ径で、クローズアップレンズやワイコンにも水中で取り替えることができるそうだ。これはみんな真似したいんじゃないかな。
岡空圭輔氏は関西在住で、和歌山県で潜ることが多いようだ。宙玉以外の水中写真もマクロの世界を繊細に撮った写真がなかなかいい感じ。機材は35mmフルサイズの一眼レフ機。ドームポートを使いすべてをハウジング内に収めるシステムだ。
水中宙玉に向いたカメラは、まず専用のハウジングが入手しやすいということ。それと接写に強い機種。どうしてもケラれてしまう(筒の内側が映る)場合はクローズアップレンズを使ってケラレを解消する。
またOLYMPUS STYLUS TG-3 ToughやRICOH WG-4といった機種は接写に強く、クローズアップレンズなしでピントが合い、筒も短くできるのでおすすめ。ほかにもこういう機種はあると思うので、見つかったらぜひ情報をお教えください。
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レンズ交換式カメラの場合は、接写リングを使用する、コンパクトな広角系レンズのレンズを使うということで、レンズ長(宙玉や筒も含む)を短くすることが可能。さらにハウジングにエクステンションリングやドームポートが用意されている場合には、ハウジング側を延ばすことができる。
以下は私が水族館で撮影した際の機材だ。フルサイズのカメラにAPS-C用のマクロレンズ(40mm)を使用している。クローズアップレンズや接写リングは不要。しかしこれが60mmとか90mmのマクロレンズの場合は、宙玉をレンズから離さないと(筒を延ばす)、玉が画面内で大きくなりすぎてしまう。
筒を短くする、背景にもなるべく広い範囲を写しこむ、玉の輪郭をハッキリ写す、という観点から言えば、24mm~50mm(35mm判換算)ぐらいの焦点距離のレンズが、宙玉には向いていると言える。ただし、この焦点距離のマクロレンズというのは少ないので、マクロでない場合は接写リングの使用は不可欠。クローズアップレンズよりも倍率を上げやすく、筒を短くすることができる。
水中を携帯する?
さて、今回はダイバー達による水中宙玉を紹介してきたわけだが、最後に私が思いついたアイディアを披露したい。Facebookの水中宙玉グループではよく「水没」という言葉を見かける。私はハウジング内に水が入ってしまうのかと思って、ちょっとビビっていたのだが、実際にはハウジングの外側に付けた宙玉部に水が入ってしまうということで、カメラが水浸しになるということではないと聞いて安心した。
しかし、水没して宙玉が水面に浮かんだような写真がおもしろく、「これを再現できないだろうか?」と思った。宙玉部にわざと水を入れて持ち歩けば、陸でも水に浮かぶ宙玉のイメージを撮影することができるというわけだ。
工作は簡単にテストするため塩ビ製の円柱型クリスタルBOXを使って行った。これならハサミやカッターで切ることができる。フタの部分に穴を空け、宙玉を取り付ける。底側にはステップアップリングを付けてカメラのレンズに装着。そして水が出し入れできるような穴を空ければ完成だ。屋外で使うのであれば多少水が漏れたって構わない。
撮影は宙玉写真を撮るのと同じように接写リングを付け、クローズアップで行う。実際に撮影してみたのが以下のような写真だが、ちょっとおもしろいイメージが撮れたと思う。なんか水と宙玉というのは相性がいいみたいだな。水の量を調整したり、上向きにしたり下向きにしたりで、雰囲気も変わってくる。ネーミングは「水没宙玉」というのを考えたのだが、ちょっとネガティブな感じなので「水面宙玉」とした。「水中宙玉」ともどもよろしくお願いします!
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これは館山に行った時に宙玉で撮影してきた夕焼けのタイムラプスムービー。宙玉とタイムラプスの組み合わせは相性が良さそうだ。D5300でインターバルタイマー撮影し、Adobe Lightroomでつなげた。
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https://www.facebook.com/groups/832273703465153/
最近「ZEN NEWS」というのを始めました。写真関連の情報を配信の予定。(宙玉で打ち上げ花火を撮ると/宙玉工作に向いた接着剤について)
http://www.zenji.info/wp/
萩原慎司氏の勤めるダイビングサービス「波左間海中公園」
http://hsmop.web.fc2.com/
塩入淳生氏が運営するダイビングサービス「COLORCODE」
http://www.dive-colorcode.com/
岡空圭輔氏のブログ「Welcome to My Under Sea World」
http://white.ap.teacup.com/underseaworld/