おもしろ写真工房

万華鏡写真にチャレンジ!(応用編)

「宙玉」をヒントに新たな可能性を探る

 以前、万華鏡写真を撮影する方法を紹介したが今回はその応用編。万華鏡と透明球と組み合わせた撮影法などにチャレンジしてみたい。

万華鏡のパターンの中に水滴のようなものが見えます。これが今回の実験のポイント!

 前回の紹介が4年ほど前のことなので、私の万華鏡を使った撮影の仕方も地味に進化している。一番大きな変化はケラレなくなったということ。通常の万華鏡では覗き穴が小さいのでそのまま撮影するとどうしてもケラレてしまう。そこで大きなサイズの万華鏡を自作したのだが、最初の頃はどうしても周囲に黒い部分が映りこんでいた。そこで撮影後に丸くトリミングしてごまかしたりしていた。

 しかし、最近はケラレず撮影できるようになってきた。なぜかと言えばセンサーの小さなミラーレス機の普及で、万華鏡写真向きのコンパクトなレンズが増えてきたからだ。センサーの大きな一眼レフでとりあえず撮影して後でトリミングをするよりも、液晶画面で仕上がりを確認しながら撮影したい。

 私が最近万華鏡での撮影に使っているレンズはオリンパスの「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8」だが、同社からは「フィッシュアイボディーキャップレンズ」なんていうのも発売されており、これもまた万華鏡で撮影すると歪みがいい感じのパターンになり、オススメ。また、コンデジでもスマホでもレンズが小さい方が、万華鏡写真には向いているということだ。

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レンズと万華鏡のサイズが合っていないとこんなふうにケラレてしまう。なるべく前玉の大きなレンズを使えれば良いのだが、そうすると巨大な万華鏡を作らなければならないということだ。ニコンD200、SIGMA 28mm F1.8 EX DG ASPHERICAL MACRO
ケラレた場合はこんなふうに丸くトリミングしていた。Photoshopで円形の選択範囲を作り、それを反転。周囲を黒く塗りつぶせばこんな感じの絵になる
レンズが小さくなればこんなふうにケラれずに撮影できるようになる。OLYMPUS PEN E-P5、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
53×226mmの表面反射鏡を組み合わせテープで張り付けただけのもの。これで万華鏡になる
作った万華鏡はチップスターの空き箱の中に入れ、小さく切ったスポンジで固定する
チップスターの底部分には67mmのステップアップリングがぴったり合うので、レンズのフィルター径に合わせて接続する。詳しくは前回の作り方を参照のこと
左はオリンパスのフィッシュアイボディーキャップレンズ(9mm F8.0 Fisheye)。これだけレンズが小さければケラレてしまうことはない。35mm判換算18mm相当のレンズなので、ふだん持ち歩けば引きのない場合などに活躍する
フィッシュアイボディーキャップレンズ+OLYMPUS PEN E-P5で撮影。このレンズは万華鏡写真に向いてますね。オリンパスのボディーキャップレンズにはBCL-1580(15mm F8)もあるけど、こちらも使いやすい。ただしフィルターネジは備えていない
フィッシュアイボディーキャップレンズ+OLYMPUS PEN E-P5。画角が広がったおかげでパターンの数が増え、周辺に行くほど歪んで小さくなる
フィッシュアイボディーキャップレンズ+OLYMPUS PEN E-P5。鏡で反射を繰り返すと少しずつ暗くなっていく。反射率の高い、クリアな鏡を使うといい

 万華鏡を使って撮影する場合は、被写体に万華鏡を近づけて撮るといい。被写体に近ければ同じ三角形のパターンが繰り返されることになるが、被写体から離れるとパターンが崩れ出す。わざとこれを生かして撮影する方法もあるが、近付いて撮影したほうが万華鏡らしい絵になる。

万華鏡を被写体に近づけて撮影するとこのような感じに写る。OLYMPUS PEN E-P5、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
同じ被写体で万華鏡を被写体から離すとこんな感じになる。遠い風景などだとパターン化されず、わけのわからない写真になる。OLYMPUS PEN E-P5、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8

「テレイドスコープ」もコンパクトに

 遠景をパターン化したい場合は万華鏡の先端に透明球を着けて「テレイドスコープ」にするといい。

最初に作った時は透明アクリルの筒を使った大きくて重いものだったが、今回はマーブルチョコの空き箱を使いコンパクトに工作できた

 いったん透明球に映った景色が鏡で反射するので、大きな被写体や風景なども万華鏡のパターンにすることができる。これも前回の記事で紹介をしたが、今回はかなり小さく軽くすることができた。これもコンパクトなレンズを使って撮影するようになったからだ。

テレイドスコープでは大きなものを撮影することができる。さて、これは何を撮影したものでしょう? OLYMPUS PEN E-P5、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
答え:店頭にぶら下がっていたサンダルでした。黒い線のようなのが鼻緒です。オリンパス PEN E-P5、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
雑貨屋の店先を外から撮影。光って見えるのは店内の照明。こうやって大きなものを撮ることができるのが、テレイドスコープのおもしろいところ。オリンパス PEN E-P5、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
ちょっと引いて撮れるので、花びらだけでなく、花全体を撮影することが可能。オリンパス PEN E-P5、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
筒自体は直径30mmと小さいので、普通の万華鏡ではこんな感じには写らない。オリンパス PEN E-P5、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
これは大きいサイズのマーブルチョコレート。「マーブルジャンボ」(明治製菓)の空き箱。「アポロジャンボ」の筒でもいい。表面反射鏡は25×154mmのサイズにカットした
30mmのアクリル球がぴったりはまったので、両面テープで留めた。マーブルチョコレートって私の同い年だったのだな。当時CMをやっていたマーブルちゃんの上原ゆかりと苗字が同じなのでシンパシーを感じていた
筒の後ろ側には52mm→37mmのステップダウンリングを両面テープで装着。たとえばフィルター径が52mmのレンズであればそのまま着けられるし、他のサイズであればステップアップリングなどで調整すればいい

万華鏡に宙玉を合体させてみる

 テレイドスコープは透明球に映る世界をパターン化するものだが、透明球の周囲も同時に写すことはできないだろうかと考えた。なんかそれを実現するための便利なグッズがあった気がするぞ。そうだ、宙玉と組み合わせてみよう! ということで「万華鏡&宙玉」の組み合わせを実験してみたい。

 宙玉はチップスターの空き箱の先に着けて撮影をしているが、万華鏡の工作にもチップスターを使っている。つまり、万華鏡の入ったチップスターの先に宙玉を取り付ければいいというわけだ。これは私にとってすごく簡単な工作だ。こんな写真が撮れました。

三角形の真ん中にあるのが宙玉。こんな感じに写るわけです。オリンパス PEN E-P5、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
玉の中は広角レンズで写しているようなものなので、被写体は小さくなり歪む。オリンパス PEN E-P5、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
これも宙玉同様、玉の内側と外側のバランスを考えながら撮影するといいようだ。オリンパス PEN E-P5、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
アクリル製の宙玉をチップスターの箱のフタの部分に付けた状態。直径70mmの円型のアクリル板がぴったり入るサイズ
万華鏡の先に宙玉を着けた状態。なんか玉に映ってる模様がカッコいいな。宙玉の先に万華鏡を付けるというのも試すべきだったか

 最後はこの透明球をもっと小さくして、万華鏡のパターンの中に散りばめることはできないだろうか? というアイディア。方法としては、小さなアクリル球をたくさん接着する方法。それから透明アクリル板に水滴を着けるというのもアリだ。 ただし水滴はうまく付着させるのが難しく、いざ撮ろうとすると下の方に垂れてなくなってしまう、といった状況になりそうだ。

そこで今回試してみたのは、透明の樹脂をアクリル板に水滴のように着ける方法。これだったら固まってしまえば落ちてはこない。いろいろ検討した結果、手元にあった「セメダインBBX」と、標本を封入したりするのに使うクリスタルレジンを試してみることにした。これをチップスターの空き箱にぴったりの直径70mmの透明アクリル板に垂らして固まるのを待てばいい。

ただし、実際に試してみたら想定していたような仕上がりにはならなかった。表面張力でぷっくりと膨らむ水滴のようなものを想像していたのだが、接着剤の方は粘度が高くて糸を引いてしまい、いまいちきれいな形にならない。一方レジンの方はサラサラ過ぎて広がり丸くできなかった。いいこと思いついたと思ったのにガッカリ。

 しかし、せっかくだからと撮影してみたら、なかなかおもしろい描写になった。玉の形がいびつなのは置いといて、可能性はアリだな。今回はすべてAFで撮影しているので、玉の方に合わせるべきかバックに合わせるべきか、カメラがけっこう迷ってしまったが、きっちりと撮影したいならMFにすればいいだろう。

水滴のように写っているのが、接着剤の雫。よくみるといびつなので、よく見ないでください(笑)。オリンパス PEN E-P5、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
雫付きのアクリル板を回転させると、雫の配置も変わる。同じ被写体でも、たまに回転させながら撮影するといい。OLYMPUS PEN E-P5、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
光の当たる角度によっても見え方は変わってくる。ちょっとハイライトが入ったほうがおもしろいかな。OLYMPUS PEN E-P5、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
今回使った接着剤は「貼って剥がせる弾性粘着剤 セメダインBBX」という製品。ちょっと粘度が高すぎて使いづらかった。これはもう少しいろんな製品を試してみる必要がある
直径70mmの透明アクリル板に接着剤を垂らしたところ。糸を引いてしまったのでイマイチ
チップスターの空き箱に組み込んだところ。このアクリル板を回転させて、できる模様を見ながら撮影を行う

 玉の方にピントを合わせてバックをボカすというのは宙玉と同様だが、今までになかったような万華鏡写真の可能性を感じた。一度は諦めかけたが、この方法は継続して探求する必要がありそうだ。

※表面反射鏡について

万華鏡に向いている鏡は反射率の高い表面反射鏡。プラスチック製、ガラス製のものがあり、プラスチック製はカッターなどで切れるので加工が簡単。ガラス製のものはガラス切りなどを使わなければならないので、加工は難しいがクリアで美しい像が得られる。

どちらもDIY店等で買うことができる。今回私が使ったのと同じサイズのものはまとめてカットしてもらったので、「マミンカ」(カミさんが店長を務めるネットショップ)で購入可。

上原ゼンジ

(うえはらぜんじ)実験写真家。レンズを自作したり、さまざまな写真技法を試しながら、写真の可能性を追求している。著作に「Circular Cosmos―まあるい宇宙」(桜花出版)、「写真がもっと楽しくなる デジタル一眼レフ フィルター撮影の教科書」(共著、インプレスジャパン)、「こんな撮り方もあったんだ! アイディア写真術」(インプレスジャパン)、「写真の色補正・加工に強くなる レタッチ&カラーマネージメント知っておきたい97の知識と技」(技術評論社)などがある。
上原ゼンジ写真実験室