オールドデジカメの凱旋
ソニー サイバーショットDSC-V3(2004年)
(2013/2/18 00:00)
歴代のサイバーショットの中で、「アレは気になる高級コンパクトだったよなぁ~」と思っていたモデルがいくつかある。第1回目で取り上げた、「サイバーショットDSC-R1」(2005年11月発売)もそのひとつ。また、従来のRGBにE(エメラルド)を加えた4色のカラーフィルター付CCDを搭載する「サイバーショットDSC-F828」(2003年12月発売)も、独特な高級感……というか“強烈な個性”を放っていた高級コンパクトだった。
そのDSC-F828が発売されていた頃、ボクはもう1台の高級コンパクトも気になっていた。それが、今回見つけて購入した「サイバーショットDSC-V3」である。カメラの程度は良好で、元箱はないが備品類はすべて揃った状態。これで1万と500円也。このDSC-V3、現在の中古カメラ市場では、DSC-F828と同様、あまり見かけない機種である(DSC-R1はよく見るけど)。そういうことで、迷わず速攻で買った!!
DSC-V3が発売されたのは、DSC-F828の発売から1年近く後の2004年11月。発売当時の価格は8万円前後だった。この発売時期や価格は、前回紹介したキヤノン「PowerShot G6」に近い(200年9月発売。価格8万4,000円前後)。そう、カメラの性格や機能とかも、どことなくPowerShot G6に似ている。
ご存じのとおり、サイバーショットには、いくつかのシリーズがある(あった)。その中で高機能を売りとしていたのは、Fシリーズの一部、Sシリーズ、Vシリーズ、HXシリーズ、RおよびRXシリーズ……といったところだろうか。
ちなみに、この頃のオリンパスやニコンの高級コンパクトは11~12万円くらいだったから、それらと比べると割とお手頃価格。当時のデジタルカメラでは、今ほど「高級コンパクト」という呼称は使ってなかったような気がする。
実は、密かに狙ってました、今回のサイバーショットDSC-V3を。超斬新なDSC-F828も魅力的ではありましたが、いかんせんデカくて重い!(L字型フォルムで、全長157.2mm・本体重量832g)その点DSC-V3は、DSC-F828からレンズ鏡筒を取り払ったようなスタイルで、格段にコンパクトかつ軽量なモデルに仕上がっている。
しかも、ボディ本体や各部パーツのデザインや材質感はDSC-F828を継承しているので、高級コンパクトとしての風格も十分にある。ただし、個人的にはもう少し重みがあってもイイかな。
ではここでDSC-V3の、簡単なプロフィールと機能・仕様の紹介を……。2003年5月に発売された「サイバーショットDSC-V1」の後継モデルであり、カールツァイス「バリオ・ゾナー」ズームレンズや、高度な撮影機能や充実した基本仕様を継承しながら、撮像素子の高画素化や液晶モニターの大型化などを実現した製品だ。
撮像素子には、1/1.8型・有効720万画素CCDを採用。搭載レンズのカールツァイス「バリオ・ゾナー」は、35mm判換算で34-136mm相当の光学4倍ズームで、開放F値はF2.8-4。
露出制御方式は、プログラムAE、シャッター優先AE、絞り優先AE、マニュアル露出。それから、7種類のシーンセレクションのモードも搭載する。
露出補正は±2EV(1/3ステップ)。シャッター速度は、30秒~1/1,000秒(1/6秒より遅い時はノイズリダクション処理あり。ISO800設定時は1/25秒より遅い時)。
連写能力は、高速連写:が約0.4秒間隔、連写が約1間隔。
液晶モニターは、2.5型・12.3万ドット(視野率約100%)。
記録媒体は、メモリースティックとCF。記録フォーマットは、静止画はJPEGとRAWとTIFF。動画形式はMPEG-1。
ボディの大きさと重さは、119.8×72×63mm(幅×高さ×奥行き)・約410g(装備重量)。……とまあ、こんなカメラである。
あと、ワイドやテレの専用コンバージョンレンズが用意されていたのも大きな魅力のひとつ。さらに、暗所撮影で威力を発揮する「ナイトフレーミング」や「ナイトショットショット」機能、レーザーホログラムを応用したAF補助光システムの「ホログラフィックAF」など、独自色の強い撮影機能なども挙げられる。
……でもまあ、高級コンパクトとしては、やっぱ基本機能の充実がいちばん魅力を感じる部分かな。RAWデータ記録対応(JPEG同時記録)や、ジョグダイヤルで迅速に操作できるMF(フォーカスプリセット)機能とかも、高級コンパクトらしい点である。
それと、これは機能じゃないけど、安定したホールディングを実現する大きいグリップを採用している点も好印象。この手にした際の安定感の高さは、現在の高級コンパクト「サイバーショットDSC-R1」や「サイバーショットDSC-RX100」にはない特徴だからねぇ。もちろん、それによってボディの厚みは増すけど、大丈夫、このカメラはグリップ部を除外しても十分厚いから(笑)。
起動の遅さは、この時代の高級コンパクトのお約束(このDSC-V3の起動時間は約2.8秒らしい)。電動ズームの速度も、なかなかにゆっくりだ。まあ、それでイライラすることは少なかったけどね。
ジョグダイヤル操作(回転とプッシュ)による、露出関連の項目選択や設定は予想以上に快適! また、ボタン配置の関係でワンハンド操作とはいかないが、AFとMF(フォーカスプリセット)の切り換えや、AF測距枠の選択なども、シンプルでとても使いやすい。
実写結果に関しては、ズーム広角側の画角の物足りなさはともかく(発売時期的にしょうがない)、粗が目立たない安定したレンズ性能は満足感が高い。極端な逆光条件とかでも、けっこうクリアな描写が得られるし。あと、高感度画質は……まあ、これは古いデジカメで最も見劣りする部分だから、しょうがないよねぇ。
2005年11月発売のサイバーショットDSC-R1以降、ソニーからは「高級コンパクト」と呼べる製品は長らく登場しなかった。だが、2012年の6月にはDSC-RX100が、同年11月にはDSC-RX1が発売されている。DSC-RX100を高級コンパクトと考えると、約6年半ぶりの復活といえる。
今回購入したDSC-V3は、それら新たな高級コンパクトと比べると、ボディデザインやレンズ仕様をはじめ異なる点が多い。また、今から8年以上も前の製品だから、基本性能もかなり見劣りしてしまう。だけど、持つ喜びや操作性を重視して作られたボディの作りや撮影機能の数々には、今の高級コンパクトにも継承してもらい点が少なからずある! と、ボクは感じたね。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・画角変化
・歪曲収差
広角端(34mm相当)での描写。画面周辺部を見ると、樽型(陣笠型か?)の歪曲収差がやや目立つ。ちなみに、このDSC-V3には格子線表示機能とかはないので、水平や垂直の調節、人工物でのシンメトリー構図などでは、ちょっと苦労する。
・逆光
画面内に強烈な光(太陽光)を入れた際の描写。広角側では、一部に目立つゴーストが発生することもあるが、画面全体としてはまずまずクリア。望遠側も、同様の描写を見せる(ここで紹介している写真を見る限りでは)。
・ナイトショット
「ストロボ撮影禁止」の夜行性動物の展示施設内で、ナイトショット機能を使って撮影。これはビデオカメラ「ハンディカム」ではお馴染みの機能で、かつてはDSC-V3のような高機能タイプのデジタルスチルカメラにも搭載されていた。夜行性動物や夜間の子どもの寝顔の撮影などに威力を発揮する。ただし、被写体との間(距離)を置いてしまうと、照射される赤外線の効果が弱くなり、シャッターが低速化するので注意が必要。
・感度
赤い被写体の暗部とか少し気になる部分もあるが、最低感度のISO100はまずまず満足できる描写。ISO200になると全体的に少しノイジーな描写になるが、ボク的には何とか観賞の許容範囲内かも。ISO400になると、暗部を中心にノイズが目障りになってくる。当然、ISO800は許容範囲外。だが、強引なノイズ処理がおこなわれないぶん(まあ、現在のようなノイズ処理技術もなかったろうし)、最高感度まで被写体の輪郭や細部描写はしっかりしている。
・作例