新製品レビュー
OLYMPUS STYLUS SP-100EE
“照準器”がユニークな50倍ズーム機
Reported by 大浦タケシ(2014/4/23 08:00)
カメラメーカー各社がコンパクトデジタルカメラのリストラクチャリングを相次いで行っているが、それでも勢いの衰えないのが高級機と高倍率ズーム機である。特に後者は、比較的手に入れやすい価格設定のものが多いこともあり、老若男女問わず多くの写真愛好家から支持されている。
今回試用した「STYLUS SP-100EE」もそのようなレンズ一体型の高倍率ズーム機で、ポップアップ式の照準器が目を引く。ちなみに製品名の“EE”とは、被写体を捕捉する鷲の目”Eagle’s Eye(イーグルズアイ)”を表している。今回のレビューでは、その操作性を中心に見てみることにしたい。
SP-100EEに搭載されるレンズは、焦点距離4.3-215mmまでの光学50倍ズームレンズ。35mm判換算するとワイド端24mm相当、テレ端ではなんと1,200mm相当の画角となる。ズーム倍率もさることながら、テレ端の画角には改めて驚かされる。デジタル一眼レフやミラーレスでは、こうした超望遠画角で撮影する機会は一般に多くないことを考えると、これまでトライできなかったような表現にも気軽に挑戦できそうに思える。
しかし、焦点距離が長くなると、被写体によっては捕捉しづらくなることも少なくない。特に野鳥のように小さく、しかも忙しく動き回る被写体では、ファインダーや液晶モニターでは見失いやすく、捕捉に難儀する。そこで便利なのが、野鳥を被写体とするバーダーの間でマストアイテムともなっている照準器(ドットサイト照準器)である。通常はアクセサリーシューやアタッチメントを介してカメラに装着するが、このSP-100EEはボディ上部にドットサイト照準器を内蔵。これはデジタルカメラとして初めてとなるものだ。
照準器はトップカバーに収納され、内蔵ストロボと同じ要領でポップアップさせる。仕組みとしては、光源とする赤い光をアイピースの上部から被写体方向に投影し、ストロボ発光部の下にあるハーフミラーで折り返して照準ターゲットマーク(レティクルという)を結像させるというもの。ユーザーは照準器を覗いて、被写体にレティクルを重ねると、実際の画面でも被写体が画面の中央となる。超望遠のためEVFや液晶モニターの画像では見失いやすい被写体も、この照準器によって素早く捕捉できるというわけだ。
掲載した野鳥の作例は、いずれもこの照準器を使ったものであるが、そのような超望遠撮影では実に使い勝手がよい。照準器を覗いて被写体と照準ターゲットマークを重ねた後、液晶モニターもしくはEVFを覗けば、ほぼ画面の中央に被写体がきている。その操作自体が手間のように思えるかもしれないが、液晶モニターやEVFを覗いて被写体を探すよりも格段に早いことはいうまでもない。バーダーがなぜ照準器を装着しているのか、改めてその理由を知らしめるものといえる。
カメラ内蔵の照準器ならではと思えるのが、ピントが合っていない場合、照準ターゲットマークが点滅することだろう。照準器で動く被写体を追いながらシャッターを切るような撮影では重宝する。さらに光軸に近い位置に照準器を設置しているため、外付けタイプのものよりパララックスが小さいのも特徴。狙ったものが実際の画面で大きく外れてしまうようなことがない。
なお、照準器はデフォルトで無限遠に調整されているが、被写体の距離などに応じ調整も可能としている。設定は簡単で、レンチなどの工具を用意する必要もない。SP-100EEの照準器は野鳥ばかりでなく、モータースポーツや鉄道、航空機などアイデア次第で様々な被写体に応用できそうに思える。
カメラの撮影性能に関しては、まず1/2.3型・有効1,600万画素の裏面照射型CMOSセンサーを搭載。画質を追い求めるならより大きなセンサーが欲しくなるが、テレ端1,200mm相当の50倍ズームレンズが搭載できたのは、このフォーマットサイズだからこそだ。
画像処理エンジンは同社ミラーレスにも搭載されている「TruePic VII」を採用。絵づくりに関しては、コンパクトデジタルにありがちないたずらに強くシャープネスをかけたようなものではなく、ナチュラルなキレのよさがある。階調再現性も同じクラスのイメージセンサーと比較するとよく粘っているように思われる。高感度特性に関しても、比較作例を見る限り高感度特性はISO800までなら気になるようなレベルではない。強力な手ブレ補正機構との合わせ技で、カメラを手持ちしての超望遠撮も安心して臨める。感度はISO125から6400までの設定を可能としている。
連写はフル画素で最高7コマ/秒を達成。最大300万画素とはなってしまうものの、最高60コマ/秒での撮影も楽しめる。AFに関しては同社ミラーレス同様のFAST AFを採用。使用した印象では、合焦速度が特別速いとは感じないまでも十分実用レベル。望遠側での撮影でも、動きの速い被写体でなければストレスを溜めるようなことなどないはずだ。なお、動画は1,920×1,080のフルHD(60P)での撮影を可能としている。
肝心のズーム倍率50倍の搭載レンズについては、想像以上の描写だ。焦点距離の違いによる描写の変動は少なく、さらに画面全体を見渡しても高い次元の均質性を誇る。また、ディストーションはワイド端の場合、表れ方は穏やか。テレ端も含め周辺減光もクラスを考えれば少ないほうだろう。逆光にも強く、フレアやゴーストもよく抑えている。もちろん高倍率ズームにありがちな“粗”がないわけでもないが、パソコンの画面で等倍まで拡大して厳密に見ないかぎり気になるようなことはない。むしろ静止画用のレンズとしては驚異的なズーム倍率にも関わらず、十分作品レベルの描写が得られることは驚きといってよい。
ただし、フードは欲しく感じられる。ワイド端の画角に合わせると、当然その深さは最小限のものとなるが、それでもレンズに光が直接当たることを抑えられるはずだ。何より見た目もぐっと向上する。別売のアクセサリーでも用意されていないのはちょっと寂しく感じられる。レンズ先端から最短の撮影距離はワイド端で7cm、テレ端で3.5m。焦点距離が固定されものの、スーパーマクロモード時にはレンズ前1cmを実現している。
操作性に関しては同社ミラーレスのOM-Dシリーズに近く、トップカバーのコントロールダイヤルとカメラ背面の十字キーを中心に行う。コントロールダイヤルの機能を任意で選択できれば、さらに使い勝手は向上したに違いない。ズームレバーはシャッターボタン同軸のほか、カメラを正面から見て鏡筒の右側面にも備わる。コンパクトデジタルカメラに慣れ親しんだユーザーならシャッターボタン側のレバーを、レンズ交換式カメラの扱いに慣れたユーザーなら鏡筒側のレバーが使いやすく感じるだろう。
92万ドットのEVFと3型46万ドットの液晶モニターだが、いずれも見え具合などクラスとして不足のないところ。ただし、両者を自動的に切り換えるアイセンサーは省略されており、その都度ファインダーアイピースの右横にあるEVFボタンを押すのは少々面倒に感じられる。
このところのデジタルカメラではブームのGPSおよびWi-Fi機能は、残念ながら内蔵していない。しかし、無線LAN機能搭載のSDHCカード「FlashAir」に対応しており、オリンパスのスマホアプリ「OI.Share」との連携機能も活用しつつ、画像をスマホに転送できる。例えば、散歩中の公園で出会ったカワセミをSP-100EEで超望遠撮影しFacebookなどへ即アップすれば、そのインパクトから「いいね!」が増えることは間違いないだろう。
最近流行りの高級機に比べればボディの質感はさほど高くなく、AEBなど省略されている機能もいくつか見受けられる。しかし、手頃な価格で超望遠撮影が楽しめ、さらに野鳥などの撮影では便利な照準器を備えるSP-100EEはたいへん魅力的に映る。
特にデジタル一眼レフもしくはミラーレスユーザーなら、サブ機としてカメラバッグのなかに忍ばせておけば、遠くの被写体を画面のなかに大きく引き寄せたいときなど重宝すること請け合いだ。照準器搭載というオンリーワンの特徴とあわせ、手軽に超望遠撮影の世界が楽しめる1台である。