新製品レビュー
OLYMPUS OM-D E-M10
あなどれない実力派。新レンズも一気に紹介
Reported by 曽根原昇(2014/3/3 08:00)
オリンパスが2月28日に発売した「OLYMPUS OM-D E-M10」(以下E-M10)は、一眼レフ風スタイルのEVF内蔵マイクロフォーサーズ機「OM-Dシリーズ」の末弟として登場した。小型ながら本格的な撮影に対応できる実力派と人気のOM-Dシリーズにあって、先進機能を搭載しながらも、より小型化を達成したエントリーモデルという位置づけでの登場だ。
執筆時点での大手量販店での予約価格はボディ単体で7万9,800円、同時発売の標準ズームレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ」とのレンズキットが9万4,800円、望遠ズームレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0-5.6 R」を追加したダブルズームキットが10万9,800円となっている。上位機にあたる「OM-D E-M5(以下E-M5)」が発売当初ボディ単体で10万4,800円、「OM-D E-M1(以下E-M1)」(ボディーキャップレンズBCL-1580付)が14万4,800円だったことを考えると、E-M10が入門機として求めやすい価格に設定されていることが分かるだろう。
凝縮感の高いボディ
エントリーモデルたるE-M10の際立った特徴のひとつが、薄く小さくまとめられたスタイリッシュなボディデザインだ。大きさは、幅119.1mm・高さ82.3mm・厚さ45.9mm(CIPA準拠、突起部含まず)となっている。
これは同社製のEVF内蔵高倍率ズームコンパクト「STYLUS 1」が、幅116.2mm・高さ87mm・厚さ 56.5mm(奥行きのサイズは自動開閉式レンズキャップLC-51A装着時)であることと比べてみても、レンズ交換式デジタルカメラとしてE-M10がいかに小型に設計されているかが分かるだろう。
小型でありながらも質感や操作性は犠牲にされることがなく、フロント/リアの2ダイヤルにFn1/Fn2の2ボタンを装備するなど、上位機種のE-M5と同等の操作性を備えているのは特筆すべき点である。さすがに最上位機種のE-M1ほどの至れり尽くせりな贅沢仕様でこそないが、価格を抑えた入門機であることを考えれば、必要十分以上の優れた操作性を有しているといってよい。
ボディの外装およびダイヤルは金属製。入門機だからといって質感や剛性感に手抜かりはなく、同社がアナウンスするところの“プレミアム感”は、カメラを構えた時にも、撮影のための操作をした時にも、シッカリと実感することができる。
そんな本機であるが、ボディの堅牢性に併せて定評ある防塵防滴性を有するE-M1およびE-M5とは異なり、特別な防塵防滴性は与えられていない。これは、入門機として想定される使用条件やボディサイズを考慮しての妥当な措置だと思われるが、防塵防滴のための特殊な構造やシーリングが施されていない分、ボディデザインの制約は低くなり、細部の形状には余裕が生まれた。本機のダイヤルやボタンが大変に押しやすく回しやすいのは事実であり、EVFを内蔵する小型カメラでありながら上位機同等の優れた操作性であるのは、こうしたデザインの自由度の高さも理由のひとつとなっている。
また、OM-Dシリーズとしては初めて内蔵ストロボを搭載した点も本機の特徴で、同梱の外付けストロボ「FL-LM2」をアクセサリーポートに装着する必要のあった上位機種より、気軽にストロボを活用することができる。そのためか「FL-LM2」やコミュニケーションユニット「PENPAL PP-1」を装着するためのアクセサリーポート2は省略されているものの、フラッシュやWi-Fi機能(後述)を内蔵する本機にとって、特に問題はないだろう。
上位機に並ぶ高画質
撮像素子は有効1,605万画素の4/3型Live MOSセンサーで、E-M5と同等のスペックを引き継いでいる。しかし、画像処理エンジンは最新機種らしくE-M1の「TruePic VII」を継承しており、これによって、ローパスフィルターレスに対応した偽色低減処理や、レンズごとの光学特性や絞り値(F値)に応じたシャープネス処理や色収差補正処理が行なわれる。拡張感度としてISO100相当の「ISO LOW」も用意されているので、明るい条件でも大口径レンズの絞り開放付近を楽しむことが可能だ。
E-M10はE-M1と異なり、撮像センサーに像面位相差AFを搭載していないなど、厳密に同じ撮像素子ではないのだが、実写結果からは実質フラッグシップ機のE-M1同等といって差し支えのない高画質で、画面全域で非常に高い解像感を得ることができる。これに関しては、後発であるほどクラスを超えた逆転現象が避けられないデジタルデバイスの運命といえる。E-M10の購入を考えている人にとっては、嬉しい話だろう。
手ブレ補正機構は3軸VCM駆動式で、約3.5段の効果がある。上位機種が搭載する約5段の5軸VCM駆動よりもスペック的には劣るものの、一般的な撮影で手ブレ補正の効きの甘さを感じることはなかった。3軸となったのは小さなE-M10に合わせて手ブレ補正機構も小型化したためと思われるが、定評のあるオリンパスのボディ内手ブレ補正機構は本機においても強力。望遠撮影時のフレーミングにも効果を発揮してくれる。
カメラ内で比較明合成を試す
本機の特徴的な新機能としては「ライブコンポジット」の搭載があげられる。ライブコンポジット機能を使えば、通常のバルブ撮影やタイム撮影では露出オーバーになってしまうシーンでも、全体は希望の露出値のままで、天体の運動や花火といった光の軌跡を簡単に表現することができる。
コンポジットの名が示すように、要はボディ内で連続して行なう画像合成処理であるのだが、指定した露出値よりも明るく変化した部分のみを合成していく「比較明合成」であるところがポイント。言葉で説明すると難しくて理解しにくいかもしれないが、実際にライブコンポジット撮影を行ない、液晶モニターで刻々と変化していく光の軌跡をみれば、直ぐにこの機能が革命的に便利であることが納得できるだろう。
ライブコンポジットは、ライブバルブやライブタイムのような長時間露光に似ているものの、実際は明るい変化部分を抽出するための連続撮影といった方が適切であるため、「長秒時ノイズ低減」をONの場合でも、撮影後に要するノイズリダクションの時間は設定したシャッター速度分でしかない。
非常に優れた新機能であるため、可能であればE-M5やE-M1にもファームアップによって機能追加をして欲しいものである。
また、本機はWi-Fi機能を内蔵しており、発売に合わせてバージョンアップされたスマートフォン用アプリ「OLYMPUS Image Share」のワイヤレスレリーズ機能を使えば、撮影の開始、終了の操作でカメラをぶらすことなく撮ることができ、ライブコンポジット撮影を行なう際にも有効だ。
もちろん、Wi-Fi機能を利用した「OLYMPUS Image Share」は、露出値やホワイトバランスなどのカメラ設定をスマートフォンで遠隔操作したり、撮った写真をその場でスマートフォンに転送したりするなどの機能も備えている。
同時発表の新レンズも検証
M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ
E-M10のキットズームである本レンズは、従来のキットズームである「M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R」の半分以下の薄さを実現した電動式“パンケーキ”ズームレンズだ。カメラ本体の電源をON/OFFすると自動的に伸縮する沈胴式で、収納時の薄さは22.5mm。携行性に特に優れ、小型のE-M10とのマッチングはすこぶるよい。
ズームミングも電動式で行なわれ、鏡筒の電動ズームリングを回す方式(回転角度±10度)なので、レバー式の採用が多い電動式ズーミング操作に比べて操作しやすいと感じる人が多いだろう。ズーミング動作が機械式か電動式か、どちらがよいかは好みによるところであるが、本レンズでは電動式を採用したことでレンズ自体を格段に薄くすることができたのも事実。動画撮影時にズーミング操作のノイズを抑制できるのも長所のひとつである。また、前述のWi-Fiリモート撮影では、スマートフォン側から電動ズームを操作することも可能だ。
薄型ながら、非球面レンズ3枚、EDレンズ1枚、スーパーHRレンズ1枚を採用した7群8枚の贅沢な光学設計であり、実写では従来のキットズーム同様の高画質を得ることができた。
M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8
こちらもE-M10と同時に発表された新レンズ。今回E-M10とともに試写する機会が得られた。35mm判換算で50mm相当のいわゆる標準単焦点レンズであり、ポピュラーな画角であることから以前より多くの要望があった訳だが、これまで同社のマイクロフォーサーズ用レンズとしてはラインナップされていなかった。
グレードとしては同じくオリンパスの「M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8」によく似ており、比較的簡易な外装で価格を抑えながらも、クラスを超えた優れた光学性能をもつレンズである。マイクロフォーサーズ用の標準単焦点レンズとしてはパナソニックから「LEICA DG SUMMILUX 25mm F1.4 ASPH.」が発売されているものの、こちらはライカブランドの高級レンズ。活用範囲の広い標準単焦点レンズを、E-M10とともに気軽に楽しめるようになったのは嬉しいところである。
同時発表のアクセサリーも
「マクロコンバーター MCON-P02」は、対応レンズの先端に取り付けることで、気軽に接写を楽しむことができるコンバージョンレンズだ。1群1枚のレンズ構成だった「マクロコンバーター MCON-P01」のレンズ設計を見直し、1群2枚とすることで拡大性能と画質の向上を図っている。フィルター径は46mmであるが、同梱のステップアップリングを装着することでフィルター径37mmのレンズにも取り付けることが可能だ。
「フィッシュアイボディーキャップレンズ BCL-0980」は、カメラに取り付けるとレンズとしても使える“ボディーキャップレンズ”の第2弾。焦点距離9mm、開放値F8の魚眼レンズであり、4群5枚のレンズ構成に非球面レンズを2枚採用するなど、簡易的なレンズとしては贅沢な仕様で、見た目に反して予想以上によく写るのは第1弾の「BCL-1580」と同じ。ただし、対角180度を超えるような本格的な魚眼レンズではなく、取り扱いもZUIKOレンズではなく関連アクセサリーとしてなので、過剰な期待はしない方がいいだろう。それでも、「写真も撮れるボディキャップ(しかもよく写る)」としてお楽しみ感満点の粋な製品であることに変わりはない。
E-M10専用のグリップ「ECG-1」は、E-M10のホールディング性を高める専用アイテム。ボディと同じ質感で造られており一体感が高く、E-M10の特徴である小ささを犠牲にせず握りやすさを向上できる。底面のレバーによりワンタッチで外すことができるので、バッテリーやメモリーカードの交換が容易なのも優れどころ。OM-Dシリーズ用に用意された専用グリップは、いずれもギミックが効いた優れものであるが、本製品もまた使い勝手を向上させる実用品としてオススメだ。