新製品レビュー
ソニーサイバーショットDSC-WX300
20倍ズームでポケットサイズ。Wi-Fiも対応の万能コンパクト
(2013/5/15 00:28)
ソニーの「サイバーショットDSC-WX300」は、光学20倍のズームレンズを搭載したコンパクトデジタルカメラとして世界最小・最軽量を謳うモデルだ。ラインナップ上では、同じWXシリーズで光学10倍のズームレンズを搭載した「サイバーショットDSC-WX200」、光学8倍のズームレンズを搭載した「サイバーショットDSC-WX100」の上位機種にあたる。
基本的にはシャッターを押すだけで誰でも簡単に撮れる、というコンセプトの普及モデル寄りな機種だが、高倍率ズームを搭載しながらも小さなボディであること、Wi-Fi接続機能など便利な先進機能が満載であることなどが好評を博し、いま注目の人気機種となっている。
発売は3月15日。カラーバリエーションはブラック、ホワイト、ブラウン、ブルー、レッドの5色。執筆時点での大手量販店での店頭価格は3万2,980円程度となっている。
光学20倍ズーム搭載の小型ボディ
本体のみの質量は約139g。外形寸法は幅が96.0mm、高さが54.9mm、奥行きが25.7mm。まさにポケットサイズといえるコンパクトデジカメだ。
フロントボディ、トップカバー、レンズ鏡筒部にはアルミ材が採用され、またそれぞれの質感は梨地、ヘアライン、スピン加工が施され、スタンダードモデルながらスタイリッシュに仕上げられている。デザインの好みは人それぞれであるが、サイバーショットは全般にコンパクトなボディにカメラらしい質感をだすのが上手く、デザイン性の良さも人気の一因となっているのだろうと思う。
搭載するレンズは「ソニーGレンズ」の名を冠する25-500mm相当(35mm判換算)F3.5-6.5の20倍ズーム。アルゴリズムの進化により従来比で2倍強くなったという手ブレ補正機構は、小さなボディだけに構図を定めにくい望遠域でも常に有効に作動し、ストレスなく撮影できる。AFも素早く決まるため、撮りたい瞬間を逃さず綺麗に捉えることができるという印象だった。ちなみに、この進化した手ブレ補正機構と高速AFのコンビネーションを同社では「新ピタッとズーム!」と呼んでいる。
撮像素子は1/2.3型有効1,820万画素の裏面照射型CMOSセンサー「Exmor R」。同サイズ・同画素数以上のセンサーにおいて従来比2倍の高感度性能を実現したとしており、同社のレンズ交換式デジタルカメラ「α」シリーズと同じ画像処理エンジン「BIONZ」を採用。高感度撮影時のノイズ低減に効果を発揮している。
付属のバッテリーは小型で大容量の「Xタイプ」が採用され、1回の充電で約500枚の静止画撮影が可能。旅行やイベントなどでもバッテリー切れを気にせず撮影を楽しめるだろう。公式には推奨していないが、緊急時にはPCやモバイルバッテリーからのUSB充電を行なえるのも嬉しいポイントだ。
多彩なオート撮影機能
ダイヤル上に設けられた撮影モードは、「プレミアムおまかせオート」、「おまかせオート」、「プログラムオート(P)」、「動画撮影」、「パノラマ撮影」、「シーンセレクション(SCN)」、「3D」、「背景ぼかし」の8種類。絞り優先AEやシャッター速度優先AE、マニュアル露出(M)などはなく、どの撮影モードでも露出は基本的にカメラ任せというシンプル志向のカメラなのである。
それでも最低限の露出補正は可能で、これを利用すれば画像の明暗に撮影者の意図を反映できる。ただし、露出補正はメニュー内にあるので、調整したいときにはメニューボタンを押して露出補正を選択後にパラメータを調整するという複数ステップの操作が必要だ。カメラに慣れたユーザーならダイレクトに操作したいところと思われるので、やはり基本的にはカメラ任せで綺麗な写真を撮りたい人向けのモデルなのである。
大胆に写真を明暗の調整をしたいなら、メニュー内の露出補正よりも「マイフォトスタイル」を活用したほうがむしろ分かりやすいだろう。撮影中にコントロールホイールの下側を押すと表示され、液晶モニターで被写体を確認しながら「明るさ(露出補正)」、「色合い(ホワイトバランス)」、「鮮やかさ(彩度)」を手軽に調整できるほか、「ピクチャーエフェクト」を適用することも可能。便利な機能だ。
ISO感度はオートのほかにISO80~12800まで設定可能。1/2.3型のセンサーでISO12800という高感度に対応したのはひとつのトピックで、より暗いシーンでも明るく、手ブレやノイズを抑えた写真が撮れる。
ただし、ISO6400以上の高感度は「全画素超解像技術」と「重ね合わせ連写」(連写合成)を使って実現されたものであり、当該感度に設定すると自動的に連写となり少々驚いてしまう。しかし、実写ではISO6400やISO12800での撮影結果はISO3200での撮影結果と同等以上の低ノイズ・解像感が実現されており、なかなか効果が高いと感じた。
また、本機の本領を発揮する撮影モードが「プレミアムおまかせオート」だ。「夜景」、「風景」、「マクロ」といった11種類のシーン認識に加え、「動き(暗い)」、「動き(明るい)」、「オート」、「三脚」といった被写体や撮影者のコンディションまでも認識して、合計44パターンの組み合わせの中から、シーンに合った最適な設定にきめ細かく自動調整してくれる。
暗い条件では最大6枚の連写画像を重ね合わせて鮮明な1枚にしたり、逆光シーンでは明るさを変えた3枚の連写画像を重ね合わせることで、明るすぎる白飛びや暗すぎる黒つぶれを抑えるなど、複雑な設定なしで誰でも簡単・確実に綺麗な写真を撮ることができる。まさに先進機能を結集した撮影モードであるといえるだろう。
20倍の光学ズームと、40倍ズーム相当の「全画素超解像ズーム」
前述の通り、本機は広角25mm相当から望遠500mm相当の光学20倍ズームレンズを搭載しており、風景をワイドに撮ったり、遠くの被写体を引き寄せるなど幅広い撮影ができる。
さらに、画質の劣化を抑えながらデジタル的にクローズアップをする「全画素超解像ズーム」も搭載しており、これを利用すれば40倍ズーム相当の超望遠撮影も楽しむことができる。ただし、40倍相当の望遠撮影ではたとえ手ブレ補正機能があっても構図を安定させるのは容易でないので、肘をついたり体を壁に寄せて撮影するなどカメラの構えを安定させる工夫をしたほうがよいだろう。可能であれば三脚を使用することをオススメしたい。
Wi-Fi接続機能も搭載
本機はスマートフォン連携に向けたWi-Fi接続機能も内蔵している。スマートフォンやタブレット端末に無償の専用アプリ「PlayMemories Mobile」をインストールすることで、撮影した写真や動画をカメラから簡単に転送することが可能になる。
SNSには、スマートフォンや携帯電話の内蔵のカメラで撮影した画像をアップロードする機会が多いと思う。こうしたWi-Fi機能を利用することで、スマホ撮影より迫力のある美しい写真を手軽にアップできるにようになるという訳だ。
さらにWi-Fi接続したスマートフォンやタブレットでは、ライブビューを見ながらカメラのシャッターが切れる「スマートリモコン」も利用できる。三脚にカメラを据えて、手元で構図を確認しながらの記念撮影もできるというわけだ。Wi-Fi機能によるリモート撮影では、ズーム、セルフタイマー、フラッシュなどの操作も可能だ。
このように様々なシーンで心強い20倍ズームレンズと、昨今のトレンドでもあるスマホ連携にも対応。本機はそれらをシャツの胸ポケットにも収まるような小型ボディに凝縮した。デジタル技術を柔軟に取り入れる最新コンパクトの進化ぶりは、硬派なカメラファンにも興味深いところだろう。
実写サンプル
- ・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- ・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・ISO感度
高感度ノイズリダクションの強弱を調整することはできない。また、ISO6400相当とISO12800相当は全画素超解像技術と重ね合わせ連写が使われている。
・ピクチャーエフェクト
本機は、アーティスティックな写真表現が手軽に楽しめる9種類の「ピクチャーエフェクト」を搭載している。9つのモードから多彩な演出を選ぶことが可能で、通常の静止画撮影に加え、パノラマ撮影や動画撮影に適用することもできる。
・背景ぼかし
1回のシャッターで2枚を連続撮影し、その2枚の写真から被写体と背景の距離を検出して背景にぼかし処理を行なう撮影モードだ。被写界深度が深く背景をぼかすことの難しい本機のようなコンパクトデジタルカメラでも、一眼レフで写したかのように美しいぼけ味で被写体を際立たせることができる。
・スイングパノラマ
カメラを一定方向にスイングさせながら連続撮影し、その連続写真を合成して一枚のパノラマ写真にする撮影モードだ。カメラは縦位置でも横位置でも撮影可能で、人物など動きのあるものでも検出して自然に補正してくれる。周囲に広がる景色を360度撮影可能な「360スイングパノラマ」、4,290万画素の高精細なパノラマ写真が撮影できる「パノラマHRモード」など、同社のレンズ交換式カメラに搭載されたパノラマ機能より多彩になっている。
・作例