【新製品レビュー】パナソニックLUMIX DMC-FZ200
一眼レフ風のボディに、広角から超望遠までカバーした光学24倍ズームを搭載するレンズ一体型デジタルカメラ。それがパナソニックLUMIX「FZシリーズ」である。
その最新モデル「LUMIX DMC-FZ200」の最大の特徴は、ズーム全域で開放F2.8の明るさを実現した点にある。この大口径高倍率ズームと、新高感度MOSセンサー&ヴィーナスエンジンとの連携により、超望遠域で動く被写体をシャープに写したり、薄暗い場所でのカメラブレを防いだりすることが可能になる。
また、約0.95秒の高速起動や、メカシャッターで約12コマ/秒の高速連写(フル画素)、といった速写性の高さや、電子ビューファインダーを「約131.2万ドット」と大幅に高精細化するなど、基本性能がレベルアップされているのも魅力的な点である。
2モデル前のDMC-FZ100でシリーズ初搭載されたフリーアングルタイプの液晶モニター(上下270度、左右180度。3型・46万ドット)も健在。縦位置でのローポジション撮影や自分撮りも、快適・確実にこなせる。
左右180度・上下270度と可動域の広いフリーアングル液晶を採用する。縦位置での撮影でも自由度の高い動作が対応。TFT液晶で3型46万ドットという仕様は、DMC-FZ150と同じである。 |
そして、AVCHD動画は、動きが激しい被写体を滑らかに再現できる、プログレッシブ方式60pの選択も可能になった。
撮像素子には、有効画素数1,210万画素・1/2.3型の「新高感度MOSセンサー」を採用。ISO感度設定は「AUTO、ISO100〜6400」となっている(3200より上は、拡張ISOの設定時で可能)。当然「RAW+JPEG」や「RAW」出の撮影も可能である。
発売日は8月23日。価格はオープン。実勢価格は6万5,000円前後。
■明るいレンズと強力な手ブレ補正を装備
焦点距離25-600mm相当(35mm判換算)までカバーする「LEICA DC VARIO-ELMARIT」レンズは、5枚9面の非球面レンズと3枚のEDレンズを使用した11群14枚構成。ズーム全域でF2.8を確保しながら、驚くほどの小型サイズを実現している。
そして、前モデルDMC-FZ150と同様に「ナノサーフェスコーティング」を採用。逆光時などでもゴーストやフレアを抑えたクリアな描写を得ることができる。
また、超解像技術を応用した「超解像iAズーム」を使用すれば、比較的高い解像感を保ちながらズーム倍率を48倍まで上げることができる。ちなみに、前モデルLUMIX DMC-FZ150にも光学24倍ズームが搭載されていたが(画角も同じ)、こちらの「iAズーム」だと倍率が32倍までしか上がらない。
ズーム広角端(25mm相当)時 | ズーム望遠端(600mm相当)時 |
バヨネット式の花型フードが付属。移動時や収納時には、こうやって逆付け収納も可能である(正方向よりもクリックストップ感が曖昧だが)。そういえば、昔持ってたDMC-FZ5に付属してた花型フードって、全長が妙に長くて攻撃的な印象を受けたけど、このフードは普通の恰好。まあ、径は少し太い気もするけど。 |
光学ズームのみで600mm相当、超解像iAズームを使用すれば1,200mm相当。こういった本格的な超望遠域になってくると、手ブレの発生が心配になってくる。DMC-FZ200に搭載されている手ブレ補正「POWER O.I.S」は、毎秒4,000回のブレ検知をおこなっていて、早くて小刻みな手ブレだけでなく、大きくてゆっくりとした動きの手ブレ(身体の揺れなど)も検知して補正される。実際に、カメラを構えて望遠端までズームしてみると、ファインダーやモニター上のスルー画面を見るだけでも、その手ブレ 抑制効果の高さがよくわかる。
さて、話は全域F2.8の光学24倍ズームに戻るが、600mm相当・F2.8というスペックを、望遠端の画角が近い他の高倍率ズームコンパクトと比べてみたい。前モデルDMC-FZ150は600mm・F5.2、オリンパスSZ-31MRは600mm・F6.9、ニコンCOOLPIX L810は585mm・F5.9、ペンタックスX-5は580mm・F5.9となっている。
まあ、オリンパスSZ-31MRのボディはスリム系コンパクトに近くて、レンズもかなり小型設計になっているので(レンズバリアも搭載している)、他より開放F値が暗めなのは致し方のないところ。その他のモデルは、DMC-FZ150が少し明るめだが、それでもF5.2と2絞り近くも暗い。ニコンとペンタックスの2モデルは、望遠端が600mmに達していないが、開放F値は2絞り以上も暗くなる。こうやって比較してみると、あらためてDMC-FZ200の大口径ぶりが際立ってくる。
では、この2絞り以上のアドバンテージで得られる作画上のメリットを考えてみたい。超望遠でF2.8と聞くと、何となく「大きなボケ効果が得られそう」と期待してしまうかもしれない。だが、DMC-FZ200は1/2.3型という小さな撮像素子を採用している。600mm相当の超望遠画角でも、実際のレンズ焦点距離は108mmなのである。この焦点距離で被写体を狙っても、その背景はさほど大きくはボケないだろう。もちろん、割と近い被写体をアップめに狙えば、かなり大きなボケ効果が期待できるのだが。
それよりも、同じISO感度で2段以上速いシャッターで撮影できるというメリットに注目したい。
1/2.3型のような小さな撮像素子を採用するカメラだと、どうしても高感度画質がレンズ交換式デジタルカメラより見劣りしてしまう。かといって、感度を抑えぎみにすると、光量に恵まれない状況や動きの速い被写体では、手ブレを起こしたり、被写体ブレが目立ってくる。だが、レンズの開放F値が明るいと、ISO感度を上げなくても速いシャッターで撮影できるようになる。
たとえばF5.6で1/30秒の状況なら、F2.8の場合1/125秒のスピードで撮影できるのだ。それによるブレ抑制効果こそが、DMC-FZ200の最大の魅力といえる。
また、これは多くの人が実感しているだろうが、望遠や超望遠の撮影では、液晶モニターよりもファインダーを使った方が、構えや構図が安定する。そして、結果的に手ブレも起きにくい(個人差はあるだろうが)。そういう観点からすると、EVFが「約131.2万ドットの高精細タイプに進化している点も見逃せない。
まあ、画面サイズが0.2型と相変わらず小さい点や、アイセンサーによる自動切り換え機能が搭載されていない点など不満もある。それでも、従来モデルDMC-FZ150の0.2型・20.2万ドットと比べると、積極的に使いたくなるEVFであるのは間違いない。
電子ビューファインダーは、従来の20.2万ドットから約131.2万ドットに高精細化された。ファインダーとモニターの自動切り替え機能が搭載されていないのが残念! |
FZシリーズでは、2010年に発売されたDMC-FZ100からAVCHD規格のフルHD動画撮影が可能になっている。今回のDMC-FZ200では、従来のインターレース方式(60i)に加えて、垂直方向の情報量が2倍になり動きのある被写体も滑らかに記録できるプログレッシブ方式(60p)も可能になった。
ちなみに、レンズ一体型のLUMIXの中で、60p記録が可能なのはLUMIX DMC-LX7と、春に発売されたDMC-TZ30になる。
■操作性にも工夫が見られる
ボディは大口径化の影響か、外形寸法は前モデルよりも高さと奥行きの数値アップが見られる。また、本体重量も50g以上重くなった。外形寸法は125.2×86.6×110.2mm、本体重量は537g。事実、鏡筒部の太さが目立っており、その出で立ちはどことなく大口径単焦点レンズを装着した小型の一眼レフカメラのようである。
しかし、その見た目のボリューム感とのギャップのせいだろうか、実際に手にすると「あ、意外と軽い!」と感じられた。正直、高級感や剛性の高さはあまり感じないボディだが、首からぶら下げてもあまり負担に感じないのは、個人的にはとてもうれしい。
なお前述のとおり、このカメラは約0.95秒の高速起動も特徴としているのだが、電源を入れて液晶モニターの表示が整うには少し時間を要する。もちろん、約0.95秒の高速起動だから、電源を入れてシャッターを押し込めば素早く撮影はできる。しかし、電源を入れて何かの設定をしようと思ったら、少しばかり時間を要するのだ。「高速起動」を謳うのもいいが、各種の操作や表示などのレスポンスも向上させて欲しいものだ。
ズーム操作は、シャッターボタン外周のズームレバーや、鏡筒横のサイドレバー(セットアップメニュー内の設定による)で行なう訳だが、ズームスピード、動きの滑らかさ、画角の微調節、いずれの操作感とも良好。また、ズーム時の動作音も気にならないレベルなので、動画撮影時の音声に与える影響も少ないだろう。
鏡筒横にはサイドレバーを装備。前モデルDMC-FZ150にも装備されていたが、DMC-FZ200ではサイズが大きくなり、操作性がより向上している、とのこと。初期設定ではズームの機能が割り当てられているが、セットアップメニューのサイドレバー設定により、MF時のピント合わせやAF時(半押し状態)のピント微調整などが行なえる。 |
上面のモードダイヤル周辺のボタン配置は、基本的にDMC-FZ150を踏襲している。が、電源スイッチのあった場所にはFn1ボタンが配置され、電源スイッチはモードダイヤル基部に移動した。 |
セットアップ内にある、Fnボタン設定(Fn1、Fn2、Fn3)や、サイドレバー設定。これらのボタンやレバーに、自分の撮影スタイルや多用する機能を設定しておけば、いろんな設定や操作が、迅速かつ快適におこなえる。 |
前モデルと同様、このDMC-FZ200は、メカシャッターによるフル画素(12M)での高速連写もウリのひとつである。AFを追従させるなら約5.5コマ/秒で、AF固定でいいなら約12コマ/秒で連写できる。
ちなみに、最大連写コマ数は、約5.5コマ/秒までは100コマで、約12コマ/秒だと12コマ。ただし、データ容量が大きくなるクオリティ設定のRAW+JPEGやRAWでも、約12コマ/秒で11コマという数値なのは、レンズ一体型デジカメとしては立派である。
また、こういった高い連写性能のおかげで、自動的に露出をばらす「オートブラケット」撮影の連写スピードもかなり速い。これなら、被写体や撮影状況に関係なく、日常的にオートブラケットを使って撮りたくなる。事実、今回の撮影の多くは、オートブラケットで撮影した。
■特に不満のない画質
600mm相当まで全域F2.8の大口径ズームレンズと、有効1,210万画素・1/2.3型新高感度MOSセンサー&ヴィーナスエンジン。これらの最新技術の連携によって生み出される画質も気になるところ。
まず、最初に気になるのが、ズーム倍率や画角を維持しながら大幅に大口径化された「LEICA DC VARIO-ELMARIT」レンズの性能である(実際にはヴィーナスエンジンの働きもあるだろうが)。これが、なかなか立派だった。
広角端と望遠端をチェックすると、歪曲収差も少ないし、解像感が高くて画面周辺部の像のアマさや流れなどもあまり目立たない。
また、高感度画質もこのクラス(1/2.3型のセンサーを搭載するカメラ)としては良好で、ISO400〜800くらいまでなら、けっこう満足できる画質が得られるだろう。
■他にない魅力を持つ孤高の1台
以前、DMC-FZ100の新製品レビューを担当した際に、「最近の高倍率ズーム機は、光学ズームの高倍率化が著しい。光学30倍で720mm相当や840mm相当の望遠域までカバーしちゃうんだもんなぁ」と、当時の状況を感心したコメントを述べている。
……あれから約2年。その時のコメントの後半部分を「光学50倍で1,200mm相当の超望遠域までカバーしちゃうんだもんなぁ」と変更させてくださいな(笑)。そういったモデルが登場している現在では、DMC-FZ200の光学24倍・望遠端600mm相当というレンズ仕様は、高倍率ズーム機としては、ごく平凡に感じられる。
しかし、各社から発売されている高倍率ズーム機の多くは、ズームレンズの倍率や望遠画角は競っても、開放F値に関しては「ほとんど気にしてないんじゃないの?」と思えるくらいの暗さだ。まるで、ブレ発生の問題に関しては「手ブレ補正と高感度の性能で解決すればいいんじゃない?」とタカを括っているかのようである。
そんな状況のなか、DMC-FZ200のズーム全域F2.8というスペックは、非常に大きなインパクトを与えてくれた。しかも、大型センサーを搭載するレンズ交換式カメラとは違う、レンズ一体型ならではの可能性をも感じさせてくれるのである。
ポップアップ式の内蔵ストロボ。ISO感度「AUTO」設定時(上限値AUTO)の撮影可能距離は、広角端約0.3〜13.5m、望遠端約1〜約13.5m。 |
グリップ部側面のカバー内に、「HDMI端子」と「AV OUT/DIGITAL端子」を装備する。 |
記録メディアは、SDXC/SDHC/SDカードで、あらたにUHS-Iに対応した。それと、約70MBの内蔵メモリ。使用電源DMW-BLC12の撮影可能枚数は約540枚で、動画の記録時間はAVCHD/60p設定の場合、約160分となっている |
■実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・フォトスタイル
色や階調など、写真の仕上がり具合を選ぶ「フォトスタイル」。7種類の設定から選択する。また、各設定での画質調整(コントラスト、シャープネス、彩度、ノイズリダクション)も、簡単に行なえる。
スタンダード | ヴィヴィッド | ナチュラル |
モノクローム | 風景 | 人物 |
・画角
広角端 | 望遠端 |
・歪曲収差/絞りによる描写の差
広角端 / F2.8 | 広角端 / F4 | 広角端 / F5.6 |
広角端 / F8 |
望遠端 / F2.8 | 望遠端 / F4 | 望遠端 / F5.6 |
望遠端 / F8 |
・レンズ描写
広角端、中間、望遠端の3つのポジションでレンズ描写をチェックしてみた。だが、光学24倍ズームだと、ひとつの場面でチェックするのはキビシイなぁ〜。ということで、広角端のみ別の場面を撮影している。
どの画角もF2.8の開放からキレのよい描写が得られている(反対に、F5.6以上に絞ると、シャープさが落ちてくる)。特に好印象だったのが、超望遠600mm相当の望遠端。中央付近だけでなく、周辺部まで流れなどの乱れが少ない点に感心した。それと比べると、中間域の開放の描写などは、ややもの足りなさを感じる。
F2.8 | F4 | F5.6 |
F8 |
中間域 / F2.8 | 中間域 / F4 | 中間域 / F5.6 |
中間域 / F8 |
望遠端 / F2.8 | 望遠端 / F4 | 望遠端 / F5.6 |
望遠端 / F8 |
・超解像
同時期に発売されたDMC-LX7のような、効果の強弱(強、中、弱)は選べない。
※サムネイル画像は元画像を等倍で切り出したものです。
超解像:OFF | 超解像:ON |
・超解像iAズーム
超解像技術を応用して、高い解像感を保ちながらズーム倍率を48倍まで上げられるのが「超解像iAズーム」機能。……とはいうものの、等倍サイズでチェックすると、さすがに粗さは感じられる。
超解像iA:OFF | 超解像iAズーム:ON |
・感度
当然、ISO感度が上がるほど画質は低下していくが、ISO400くらいまでは細部描写もノイズ感も悪くない。そのうえのISO800も、何とか実用に堪えられるレベル(この撮影シーンではそう感じた)。だが、ISO1600になると、細部描写の悪さが気になってくる。
※サムネイル画像は元画像を等倍で切り出したものです。
ISO100 | ISO200 | ISO400 |
ISO800 | ISO1600 | ISO3200 |
ISO6400 |
・iDレンジコントロール
被写体と周囲との明暗差が大きい場合などで、コントラストや露出が自動的に補正される「iDレンジコントロール」機能。こちらは、効果の強弱(強、中、弱)が選べる。
OFF | 弱 | 中 |
強 |
・ボケ
コスモスまでの距離は3m以上。まず、感心するのが「この撮影距離でも、600mm相当ならここまで花が大きめに写せるのか!」ということ。そして、絞り値によるボケの違いにも感心した。
F2.8 | F4 | F5.6 |
F8 |
センサーサイズが小さいコンパクトデジカメだと、手前のネットや金網が目立たないくらいまでぼかすのは難しい。だが、ズーム全域F2.8のDCM-FZ200なら、これまで諦めていた金網越しの撮影でも、ここまで自然に撮影できる。これは有難いね。
F5.6 | F2.8 |
・逆光
画面内に太陽は写り込んでいないが、サルの輪郭の毛の輝きからもわかるとおり、かなりキビシイ逆光状態。だが、独自の「ナノサーフェスコーティング」の効果だろうか、フレアやゴーストの目立たないクリアな描写である。
DMC-FZ200 / 約4.9MB / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F2.8 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 70.5mm |
・連写性能
DMC-FZ200は、メカシャッターによるフル画素での高速連写が可能。電子シャッターと異なり、動体歪みが防げる。しかも連写性能は、AF追従なら約5.5コマ/秒、AF固定なら約12コマ/秒とかなり高い。
下の例は約12コマ/秒で撮影。ちなみに、電子シャッターで2.5M画素なら約60コマ/秒の超高速連写が可能である。
・クリエイティブコントロール
明るさ、ボケ具合、画像効果の強さなども調整できるが、ここでは初期状態で撮影している。
ハイキー | ローキー | インプレッシブアート |
クロスプロセス | トイフォト | ワンポイントカラー |
・作例
・動画
- 動画作例のサムネイルをクリックすると、未編集の撮影動画をダウンロードします。再生についてのお問い合わせは受けかねます。ご了承ください。
AVCHD60p |
ハイスピード動画:120fps(HD) |
ハイスピード動画:240fps(VGA) |
2012/10/15 00:00