【新製品レビュー】キヤノンPowerShot D20

〜個性的なボディに手堅い機能を詰め込んだ防水デジカメ
Reported by 小山安博

 キヤノンから久々に防水デジカメが登場した。PowerShot D20(以下D20)は、2009年4月発売のPowerShot D10(以下D10)の後継機種で、独特のデザインテイストを踏襲しながらも、様々な面がスペックアップしている。


 発売は5月10日。実勢価格は2万7,800円前後。


アクティブに活用できる防水デジカメ

 防水デジカメとしてのアウトドア性能はしっかりと確保。水深10mまで耐えられる防水性能、IP6Xの防塵性能、-10度まで耐えられる耐寒性能、1.5mの高さから落としても壊れにくい耐衝撃性能を備えている。D10と比べると、落下性能が1.22mから1.5mに向上した程度で、アウトドア性能は同等。



 大きな違いはそのデザインだ。D10は、どちらかというとゴロッとしたボディで、潜水艦をモチーフとしたスタイルは賛否両論があった。


前モデルのPowerShot D10(2009年4月発売)

 D20では、ツートンカラーのボディは変わらないが、曲面を生かしたデザインではなくなり、どちらかというと流線型のようなシェイプを採用。「海」のイメージは継承しつつも、見た目が大幅に変更されている。


フラットだが曲面を生かした独特のデザイン。鮮やかなフロントパネルが特徴的

 外形寸法も112.3×70.8×28mm、約228gになり、特に48.8mmだった奥行きが28mmまでコンパクト化した。実は40g弱ほど重くなっているが、前モデルよりも凝縮感のあるボディに仕上がっている。


本体側面にはUSBやHDMI端子を搭載バッテリとメモリカードは底面に入る

 ツートンカラーは、ブラックを基調に、鮮やかな水色のボタン類やフロントパネルを採用しており、目を引くデザイン。背面のボタンは、凹凸がはっきりして大きく、グローブをつけても押しやすい。ボタン自体はクリック感があるが、全体的にはボタンの高さを合わせてフラットにし、全体的に曲線を生かしたデザインは、サーフボードの機材を傷つけない、という。


背面のボタンも鮮やかな水色。ズームボタンの下には親指を置くスペースがあり、誤操作を防ぎやすい。特にその隣にムービーボタンがあり、構えていて間違って押してしまう、ということはない

 アクセサリーも充実。ただ、D10の時はショルダーストラップや専用ポーチなどが付属していたが、今回は別売。ソフトケース、シリコーンジャケット、カラビナストラップ、フロート、ショルダーストラップがセットになった「アクセサリーキット」が1万円で用意されているほか、ソフトケースは個別販売も行なわれる。また、深度40mまで対応するウォータープルーフケースもある。


アクセサリーキットに含まれるシリコーンジャケットこちらはソフトケース
カラビナストラップショルダーストラップ

 斜めがけのストラップは素早い撮影に有効だし、ベルトループに引っかけられるストラップも、よく考えられた構造で、サッとカメラを構えられるようになっている。傷からボディを守るシリコーンジャケットや、ダイビングスーツと同じ素材のソフトケースはアクティブシーンで便利だし、シュノーケリングで海に入るときは、フロートがあると役立つ。よりアクティブに活用したいなら、オプションの購入を検討するといいだろう。


GPSなど、アウトドアに役立つ機能

 アウトドアで活躍する防水デジカメということで、最近定番になってきた「GPS機能」も搭載する。GPS衛星による位置情報は、屋内やビル・山の陰などでの取得が難しい面はあるが、開けた場所であれば比較的正確に現在地を取得してくれる。


GPSのオン・オフは撮影時のいつものUIから素早く行なえる。いちいちメニューから選ばなくていいので、GPS機能を使いたい場面、使いたくない場面で細かく変更できるそのままMENUボタンを押すとロガー機能のオン・オフも可能

 D20では、取得した現在地を撮影画像に記録し、画像再生時には緯度・経度・高度を画面上に表示できる。カメラ内で位置情報を元に地図を表示してくれたり、住所を補完してくれたり、特に際立った機能があるわけではないが、位置情報を記録できるとできないとでは大違いであり、「あると便利」な機能の1つだ。

 


メニュー内にあるGPS設定。記録したログファイルの記録結果を一覧表示することもできる

 また、ロガー機能も搭載。ロガー機能をオンにすると、電源オフ時も常時GPS電波を受信しつづけ、移動した位置情報を随時プロットし、ファイルに保存する。そのファイルをPCに取り込み、ログファイル対応ソフトウェアから移動経路を確認したり、あとからログを元に画像に位置情報を記録する、といったこともできる。電池消費が気になる場合はオフにした方がいいだろう。「電源オフ時はロガー機能をオフにする」という設定はない。

 

 アウトドア用途としては、シーンモードに「水中」「水中マクロ」を搭載。ホワイトバランスが補正される。「水中」モードでは、マクロボタンに「クイック」が追加され、水中で3m程度離れた被写体を撮影する場合に、よりAFが高速になる。その代わり、「水中」モードではマクロを選べなくなるので、近接撮影をしたい場合は「水中マクロ」を選べばいい。

 シーンモードでは、「スノー」モードも搭載。-10度まで対応でき、雪に濡れたり、スキーで転んでも壊れる心配の少ない防水デジカメなので、雪山でも活躍できるだろう。

4方向ボタン上を押すとモード選択画面になる。上下で選択し、水中モードなどの一部のモードでは、左右方向でさらにモードを変更できる

基本性能も充実

 D20のレンズは、焦点距離が28-140mm(35mm判換算時)の光学5倍ズームレンズを搭載。F値はF3.9-4.8。D10では35-105mmの3倍ズームだったから、高倍率化、広角化したのは嬉しいところ。マクロは従来の3cmから1cmまで近寄れるになったのは便利。防水デジカメのため、屈曲光学系を採用しており、電源オン・オフでレンズの繰り出しはない。

 撮像素子は有効画素数1,210万画素の1/2.3型裏面照射型CMOSセンサー。こちらも従来は1,210万画素1/2.3型CCDセンサーだったので、センサーサイズ・画素数は変わらず、CCDから裏面照射型CMOSに変更になった形。高感度撮影時のノイズ低減などが期待できる。

 裏面照射型CMOSセンサーを搭載したことで、感度はISO100-3200になり、ISOオートではISO1600まで上がるようになった。シーンモードの「ローライト」を選ぶと、ISO6400まで上昇する。

 通常の撮影は、「32シーン認識こだわりオート」または「P」モードを選択するといいだろう。認識できるシーンが多く、通常はこだわりオートでおおむね問題ないが、ISO感度やホワイトバランスなどの撮影設定を変更したい場合は、Pモードを選ぶといい。


中央のFUNC.ボタンを押すと、左側に撮影設定が表示される。モードによって表示される項目は異なり、ISO感度やホワイトバランスはPモード時のみ表示される

 手ブレ補正は光学式で、公称ではシャッター速度換算で約2段分の手ブレ効果を発揮する、という。シーンに応じて手ブレ補正を切り替える「マルチシーンIS」機能も搭載。静止画、流し撮り、三脚、マクロ、動画、歩き撮りといったシーンをカメラが自動認識、それに適したIS効果を適用してくれる。マクロ撮影時に角度ブレとシフトブレを同時に抑える「ハイブリッドIS」や、三脚時にISを停止する、動画撮影時のISといった具合に、最適なISが選択されるのはよくできている。


手ブレ補正の設定画面。手ブレ補正は「入」「撮影時」「切」から選択。動画撮影時の望遠でのISを強化するパワードISのオン・オフもできる

 映像エンジンは「DIGIC 4」。AF速度やレリーズタイムラグも高速化されたほか、主要被写体を自動で認識してAFをあわせ、その主被写体を追尾する「主役フォーカス」といった機能も搭載する。

 動画性能も大幅に向上。背面のムービーボタンですぐに動画撮影が可能で、1,920×1,080のフルHD動画の撮影に対応。D10は640×480だったので、画質は格段にアップした。フレームレートは24fpsで、1280×720のHD動画では30fpsで撮影できる。

 HDサイズではミニチュア模型のような効果と早送りによる動きが記録できる「ジオラマ風動画」、320×240で240fps、640×480で120fpsの動画を撮影できる「ハイスピード動画」機能も搭載する。HDMI端子も搭載しているので、ケーブルをつないですぐにテレビ出力も可能だ。


シーンモードから「ハイスピード動画」を選択できる

 動画機能では、静止画を撮影するのと同時に、直前の動画を最大4秒まで記録し、1日の間に撮影した動画を一つのファイルとして保存する「ダイジェストムービー」機能を搭載。D20では記録サイズが640×480ピクセルとなっているが、どんな場面で撮影しようとしたかわかって面白い。


ダイジェストムービーはモード設定にあり、これを選ぶと撮影はオートモードになって、ISO感度などの設定は行なえなくなる

まとめ

 前モデルのD10は、特徴的すぎるデザインで、日常的に使うという印象がなかったが、D20ではデザインもサイズもより一般的になり、普段使いもできるデザインになった。

 広角化・高倍率化は使い勝手を格段に向上させており、特に画角が狭くなる水中での撮影にも有効だし、より遠くの魚もアップで撮影できるようになって便利。裏面照射型CMOSやフルHD動画、各種撮影機能など、基本性能も向上しており、GPSも楽しい。

 防水デジカメとして、実用的でいつでも活用できるカメラに成長したといえるだろう。


作例

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

・感度

PowerShot D20 / 約2.3MB / 4,000×3,000 / 1/80秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 9.4mmPowerShot D20 / 約2.4MB / 4,000×3,000 / 1/160秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 9.4mm
PowerShot D20 / 約2.4MB / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 9.4mmPowerShot D20 / 約2.5MB / 4,000×3,000 / 1/640秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO800 / WB:オート / 9.4mm
PowerShot D20 / 約2.6MB / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F8 / 0.0EV / ISO1600 / WB:オート / 9.4mmPowerShot D20 / 約2.8MB / 4,000×3,000 / 1/640秒 / F8 / 0.0EV / ISO3200 / WB:オート / 9.4mm

・手持ち夜景

 

 連写して合成することでノイズを低減する「手持ち夜景」での撮影。ISO800だが、通常時よりはるかに少ないノイズで撮影できている。

PowerShot D20 / 約2.2MB / 4,000×3,000 / 1/500秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO800 / WB:オート / 9.4mm

・特殊な撮影モード

 

魚眼風 / PowerShot D20 / 約2.1MB / 4,000×3,000 / 1/100秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO160 / WB:オート / 9.4mmジオラマ風 / PowerShot D20 / 約1.2MB / 4,000×3,000 / 1/100秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO160 / WB:オート / 9.4mm
トイカメラ風 / PowerShot D20 / 約2.1MB / 4,000×3,000 / 1/100秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO160 / WB:オート / 9.4mmモノクロ / PowerShot D20 / 約2.2MB / 4,000×3,000 / 1/100秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO160 / WB:オート / 9.4mm
極彩色 / PowerShot D20 / 約2.7MB / 4,000×3,000 / 1/100秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO160 / WB:オート / 9.4mmオールドポスター / PowerShot D20 / 約1.7MB / 4,000×3,000 / 1/100秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO160 / WB:オート / 9.4mm
ワンポイントカラー / PowerShot D20 / 約2.4MB / 4,000×3,000 / 1/100秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO160 / WB:オート / 9.4mmスティッチカラー / PowerShot D20 / 約2.6MB / 4,000×3,000 / 1/100秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO160 / WB:オート / 9.4mm

・i-コントラスト

 

 明暗差のある画像で暗部を持ち上げるi-コントラストの作例。ONにするとISO感度がISO200になっているが、影になった部分が明るくなっている。

i-コントラストOFF / PowerShot D20 / 約4.4MB / 4,000×3,000 / 1/160秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 5mmi-コントラストON / PowerShot D20 / 約4.4MB / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 5mm

・作例

 

PowerShot D20 / 約2.7MB / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F4.5 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 19.2mmPowerShot D20 / 約1.9MB / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F8 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 5mm
PowerShot D20 / 約2.0MB / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F8 / 0.0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 5mmPowerShot D20 / 約2.5MB / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F4.8 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 25mm
PowerShot D20 / 約3.2MB / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 5mmPowerShot D20 / 約1.7MB / 4,000×3,000 / 1/200秒 / F5 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 21.0mm
PowerShot D20 / 約1.7MB / 4,000×3,000 / 1/160秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 5mmPowerShot D20 / 約3.1MB / 4,000×3,000 / 1/500秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 8.6mm
PowerShot D20 / 約4.5MB / 3,000×4,000 / 1/250秒 / F4.8 / 0.0EV / ISO500 / WB:オート / 25mmPowerShot D20 / 約2.6MB / 3,000×4,000 / 1/500秒 / F8 / 0.0EV / ISO320 / WB:太陽光 / 5mm
PowerShot D20 / 約2.5MB / 3,000×4,000 / 1/640秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 5mmPowerShot D20 / 約1.7MB / 4,000×3,000 / 1/800秒 / F8 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 8.4mm

・動画

 

  • 動画作例のサムネイルをクリックすると、未編集の撮影動画をダウンロードします。再生についてのお問い合わせは受けかねます。ご了承ください。

 ズームボタンを押したときの音が入ってしまっているが、撮影中のズームも可能だ。

PowerShot D20 / 65MB / 1,920×1,080/30fps/H.264





小山安博
某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。

2012/8/9 00:00