【新製品レビュー】リコーCX6
リコーCX6は、その名のとおり初代CX1(2009年3月発売)から6代目となるモデルだ。同シリーズはおよそ半年ごとにモデルチェンジを行なっており、その都度ブラッシュアップを重ねている。今回もいくつかのデバイスに手が入り、同社のスタンダードモデルとして完成度が増した。
発売はブラックが12月3日、シルバーとピンクが12月16日。テキスト執筆時における販売価格は、大型量販店で4万2,900円前後となる。
■便利な「ズームアシストモニター」
CXシリーズはモデルチェンジの度に、ボディの細かな意匠や外装の質感などが変化する。本モデルも、先代CX5からグリップ部の指掛かりの廃止、ストロボとセルフタイマーランプを兼用するAF補助光の位置の移動、レンズ根元(ベゼルといってよいか悩むところ)の形状の変化などがある。さらにボディ表面の処理もこれまでと異なり、より光沢感のあるものとなっている。
ただし、ボディシェイプのアウトラインは継承しており、初見でもすぐにCXシリーズのカメラと分かるものである。余談とはなるが、ボディ前面部のグリップ表面は皮脂のあとなどが付着しやすい上に拭き取りにくく、このレビューのブツ撮影では少々苦労した。
今回のレビューにあたり筆者個人が特に気になっていたのが「ズームアシストモニター」だ。11月15日掲載の「リコー、絞り/シャッター速度優先AEを新搭載した『CX6』」でも触れているが、望遠側にズームすると、フルサイズ判換算で85mm相当のモノクロ画像が液晶モニターの右下に小さく表示される。その画像に実際のレンズで写す範囲が白い罫線で示されるというものである。CX6には、CX5から継承する28-300mm相当の光学10.7倍ズームを搭載するが、テレ側での撮影の際、どこを狙っているのかこれによって見極めることができる。
ズームアシストモニターの画像は、内蔵ストロボ横のパッシブAFセンサーによるもので、約93mm相当から自動的に表示を開始する。表示はモノクロ。画像自体も粗いが、このような使用では実用として十分といってよい。三脚にカメラをセットすると画面の四隅にも気が使えるため、よりこの機能が活かせるように思えた。なお、掲載したキャプチャーではカメラから1mほどしか離れていない被写体を狙っているためパララックスが生じているが、遠景の撮影ではほぼ正確に表示されるので安心してほしい。
「ズームアシストモニター」は画面右下に表示される。白い罫線が実際のレンズの画角となる。掲載した写真は、被写体との距離が短いためパララックスが生じてしまっているが、遠景では正確に表示される |
撮影モードに絞り優先モードとシャッタースピード優先モードを備えたのも新しい部分だ。絞り優先モードでは、設定する絞り値は通常あるような絞り値を設定するものではなく、「開放」と「最小絞り」の2つから選択する。この設定ではちょっと心細く感じるデジタルユーザーもいるかも知れないが、搭載するイメージセンサーのサイズが1/2.3型と小さく、絞りを細かく変えてもその効果の違いが期待できそうにないことを考えるとこれで十分に思える。むしろ、このような割り切った設定方法をよく考えついたなぁと個人的には感心する。シャッタースピード優先モードについては、8秒から1/2000秒まで選択できる。
絞り優先モード/シャッタースピード優先モードでの撮影が可能となった。絞り優先モードは、「開放」と「最小絞り」の2つから選択を行なうシンプルなものだが、実用を考えたら十分 |
いわゆるフィルター機能であるクリエイティブ撮影モードには、新しく「ブリーチバイパス」を追加。これは彩度を抑えたうえに、コントラストを上げて明暗比を強調する仕上がりで、リコー独自のものといったよいだろう。クロスプレセスなどとは少々異なる“渋い”独特の色調の画像が得られ、より表現の幅が広がったといってよい。ブリーチバイパス搭載で、クリエイティブ撮影モードは7つのモードを備えることとなる。
「クリエイティブモード」は、いわゆるフィルター機能。ダイナミックレンジ/ソフトフォーカス/ミニチュアライズ/トイカメラ/ブリーチバイパス/クロスプロセス/ハイコントラスト白黒の7つを搭載する |
■パッシブ方式併用のハイブリッドAFを採用
液晶モニターも今回のリニューアルで一新されている。サイズは3型と変わらないものの、高輝度タイプ123万ドットとなる。この液晶モニターは、同社のハイエンドコンパクト、GR DIGITAL IVに採用されているものと同じもので、RGBの画素のほかホワイトの画素を加えたものとのこと。そのためだろうか、従来のものよりコントラストが高いうえに、画面も明るく感じられる。特にメニューの文字は、GR DIGITAL IVと同様小さいものであるが、クッキリと表示されるので筆者のような老眼持ちでも何とか読むことができる。
ところで、リコーのコンパクトデジタルを使うときにいつも思うのが表示されるアイコンや文字の大きさだ。なかでも撮影時の画面のアイコンやメニューの文字のサイズは、人によっては厳しく感じられる。このカメラは若いマニアだけをターゲットにしていないのだから、改善されるとカメラとしての評価も一層アップするはずだ。
操作系で変わったことといえば、動画ボタンがカメラ背面部に備わり、その代わりとして撮影モードダイヤルの動画モードが廃止されたことである。わざわざ撮影モードダイヤルを動画モードに設定する必要がないため、動画を撮る機会の多いユーザーならば、使い勝手がよく感じられるはずだ。反面、うっかり押して動画撮影が勝手に始まってしまうこともあり、動画をほとんど撮らないようなユーザーにしてみれば具合がよいとはいえないことも。動画ボタンはユーザーによって一長一短ではあるが、メニューに同ボタンの機能をキャンセルできる機能があれば解決できそうに思えるが、いかがだろうか。
そのほかのデバイスについては、基本的にCX5と同一となる。搭載するイメージセンサーは前述のとおり1/2.3型で、有効1,000万画素の裏面照射型CMOS。このセンサーについての評判については今さら述べるまでもなく、特に階調再現性や高感度特性は、一回り大きい1/1.7型クラスと肩を並べるレベルだ。センサーシフト方式の手ブレ補正機構を搭載していることもこれまでどおりである。
搭載するレンズはフルサイズ判換算で28mm相当から300mm相当までの光学10.7倍ズーム。開放値はワイド端でF3.5、テレ端でF5.6となる。もともと解像感は高倍率ズームとしては高いほうであるが、「光学ズーム超解像」機能でより解像度がアップする。設定はOFF/弱/強から選べるが、超解像を使用する場合は「弱」がほどよいものでオススメ。「強」はシャープネスを強くかけ過ぎたような仕上がりになりやすい。
搭載するレンズは、フルサイズ判換算28mm〜300mm相当の光学10.7倍ズーム。開放値はF3.5〜F5.6なる。高倍率ズームであることを考えると、画面周辺部の解像感の低下や色のにじみは少ないほうといえる。掲載した写真は左よりテレ端、ワイド端、レンズ収納時となる |
「光学ズーム超解像」はOFF/弱/強から選択できる。「強」はシャープネスを強くかけたときのように画像が荒れやすいが、「弱」は日常使いにも適している |
AFはCX5から採用されているコントラスト方式とパッシブ方式を組み合わせた独自のハイブリッドAFとなる。このAFのウリは望遠や、暗い場所でも測距が速いということである。たしかに所有するコントラストAFのみの高倍率ズーム機とくらべると速く迷いがない。狙った瞬間にシャッターを切りたいスナップのような撮影では特に有効な気がする。以前は位相差方式を採用するデジタル一眼レフが測距の速さではコンパクトデジタルを圧倒していたが、ミラーレスと同様さほど大きく変わらなくなってきていることをあらためて実感した。
ストロボの右側がパッシプ方式のAFセンサー部。コントラストAFとの合わせ技で、高速のAFを実現する。このセンサーはズームアシストモニター用画像の撮影も担う |
相変わらず感心させられたのが、設定操作の要となる「ADJ./OKボタン」だ。短いジョイスティックタイプのもので、CXシリーズでは伝統的に採用されている。マクロおよびストロボの設定のほか、撮影設定メニューの呼び出しや設定などが直感的にでき、使い勝手がこのうえなくよい。予備知識が無くカメラ背面を見ると「なぜ十字キーが上に付いているのだろう」と誤解を招きそうだが、実際に使うとこのカメラが手放せなくなるほどだ。GR DIGITALシリーズには及ばないまでも、本シリーズも根強いファンがいるようだが、このような部分が好まれる要因のひとつとなるだろう。
使い勝手のよい「ADJ./OKボタン」。短いジョイスティックタイプで、撮影時に押すと撮影設定メニューを表示。上下左右の動きで設定を行なう。カメラを構えた状態での設定も容易だ | バッテリーはリチウムイオン充電池(DB-100)。撮影可能枚数はCX5より20枚少ない260枚(CIPA準拠)となる。使用メディアはSDHC/SDメモリーカードおよびEye-Fiカード。なお、内蔵メモリは約40MBとなる |
インターフェースはAV-OUTを兼ねるUSB端子(上)とHDMI端子の2つを備える | 一般的なコンパクトと同様、ストラップ用のホールはひとつとなった。先代CX5では上下に2つあったので、ストラップの縦吊りができたのだが、残念 |
「シーンモード」は13モード。選択したシーンのガイドが表示されるで、初心者でも使いやすく感じるだろう |
6代目となり成熟に成熟を重ねたCX6は、誰が使っても満足できて楽しめるカメラに仕上がっている。特に絞り優先モード/シャッタースピード優先モードの搭載ではより好みの露出が得やすくなり、光学10.7倍ズームを活かすズームアシストモニターの搭載では、周囲の状況を確認しながらアングルが決めやすい。さらに先代から継承するハイブリッドAFやADJ./OKボタンなどたいへん使いやすく感じられる。
リコーというとGR DIGITALやGXRに我々カメラ愛好家の注目はいきがちだが、同社コンパクトのスタンダードに位置付けられる本モデルの実力もなかなか侮れない。
■実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・画角
広角端 / CX6 / 約3.7MB / 3,648×2,736 / 1/380秒 / F7.4 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 4.9mm | 望遠端 / CX6 / 約3.8MB / 3,648×2,736 / 1/1,000秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 52.5mm |
・クリエイティブ撮影モード
・超解像
・歪曲収差
広角端 / CX6 / 約3.7MB / 3,648×2,736 / 1/217秒 / F3.5 / +0.7EV / ISO100 / WB:曇天 / 4.9mm | 望遠端 / CX6 / 約3.8MB / 3,648×2,736 / 1/52秒 / F7.4 / +0.7EV / ISO100 / WB:曇天 / 4.9mm |
・感度
・作例
2011/12/8 00:00