新製品レビュー
ソニーサイバーショットRX100 IV(実写編)
新EVFやスーパースロー動画も見逃せない、1型コンパクト最新版
Reported by藤井智弘(2015/8/21 11:00)
RX100 IIIのデザインと基本スペックを踏襲しながら、世界初の積層型CMOSセンサーを搭載したソニーサイバーショットRX100 IV。従来比5倍以上の高速化を実現し、1/32,000秒の超高速シャッターや4K動画、960fpsのハイフレームレート(スーパースローモーション)動画記録などを可能にしている。
またポップアップ式のEVFも進化し、235万ドットのXGA OLED Tru-Finderを搭載。ツァイスT*コーティングを施し、高精細でクリアな視界が得られる。従来のRX100シリーズから表現力を大きくアップさせたカメラだ。
24-70mm相当F1.8-2.8レンズを継承
レンズはRX100 IIIと同じ24-70mm相当のツァイスVario-Sonnar T*レンズ。コンパクトデジタルとしては、ズーム倍率は控えめだ。特に最近のコンパクトデジタルは望遠に強い機種が目立つため、やや物足りないように感じる。とはいえ、街中のスナップでは気にならなかった。
それよりも、バッグのポケットに入るほど小さいので、さり気なく撮影できるのがありがたい。大きめの1型CMOSセンサーでズーム倍率を上げると、ボディの大型化に繋がるはず。携帯性と機動力を重視するのがRX100 IVの使いこなしのひとつだと感じた。
描写は、ズーム全域で絞り開放から高い解像力を持つ。画面周辺でも中心部との画質の差が少なく、ワイド端では像が流れることもない。テレ側も甘さがなく、優秀なレンズだ。近接撮影では、やや柔らかくなるものの、ボケ味は自然。逆光でもフレアやゴーストが発生しにくく、コントラストの高い写真が撮れるのは、さすがツァイスT*レンズだ。
コンパクトデジタルでよく使われる1/1.7型や1/2.3型より大きい1.0型なので、高精細で階調も豊かだ。特にシャドーから中間にかけて滑らかに再現し、ハイライトの階調も豊富。1.0型の高画質を存分に味わえる。
高感度画質をチェック。歪まない電子シャッターもテスト
1.0型と大きな撮像素子は、高感度でも有利だ。ベース感度のISO125と、ISO200からISO12800まで1段ずつ変えて撮影したところ、ISO800までは常用域。ISO1600は拡大するとやや高感度らしさを感じるものの、十分実用の範囲内。ISO3200やISO6400でも、拡大しなければ高感度とは思えない仕上がりだ。ISO12800は、さすがに粗さが目立つものの、どの感度でもシャドー部が浮くこともなく、メリハリのある写りが得られる。
アンチディストーションシャッターもテストしてみた。ここで比べたのは、一般的なスマートフォンの内蔵カメラ。メカシャッターを持たないので、走る電車の窓やドアは見事に歪んでいる。RX100 IVは、メカシャッターにならないように、メニュー画面から電子シャッターのみに設定。同じように電車を撮ってみると、窓もドアも歪まず撮ることができた。積層型CMOSセンサーの高速読み出しは威力絶大だ。
アンチディストーションシャッターの効果
4K動画とスーパースロー動画を試す
RX100 IVの特徴である、動画も見てみよう。RX100シリーズ初の4Kに対応している。画素加算のない全画素読み出しが可能だが、連続撮影時間は最大約5分。例えばコンサートやスポーツをすべて連続で撮影する、ということは不可能だが、日常や旅行などを高画質に記録するのに便利だ。カメラが小さいので、4Kを意識することなく、気軽に撮影できる。なおこれは前回もお伝えしたが、100Mbpsで撮影する場合、SDカードはU3を使用する。
そしてもうひとつ、960fpsのハイフレームレートだ。ここではグラスにジンジャーエールを注いで、液体の動きをスローモーションで撮影した。スローで見てみると、液体の動きや泡の様子がよくわかる。これはMOVIEボタンを押して記録を開始するスタートトリガーで撮影。ハイフレームレートは肉眼を超えた世界が記録できるため、被写体の動きとMOVIEボタンを押すタイミングを合わせるのが難しい。何度かトライするのがおすすめだ。
さらに高まった完成度。RX100は“選べる”シリーズに
小型ながら、高画質の写真と高画質動画、そしてスーパースローモーションが撮影できるRX100 IV。高速AFの「ファストインテリジェントAF」により、ストレスのないAF速度を実現している。ただコントロールリングやコントロールホイールを回したとき、絞り値など表示の反応が遅いのが気になった。これが改善されると、より使いやすくなるだろう。
とはいえ、その他のレスポンスは良好。完成度の高さを感じた。スマホからステップアップはもちろん、デジタル一眼レフユーザーのサブ機としても注目したい。しかも画面のアスペクト比は、一般的なコンパクトデジタルに多い4:3ではなく3:2なので、デジタル一眼レフと併用しても違和感なく扱える。カメラバッグや上着のポケットに入れておいて、気軽に作品が撮れるカメラだ。
なおRX100 IVはRX100 IIIの後継機ではなく、RX100シリーズは4機種すべて現行モデルとしてラインナップしている。自分にとって必要な機能を備えているか確認して、あとは予算に応じた選択をするのがいいだろう。
作品集
テレ側70mm相当。高倍率ズームと異なり、極端な画角の変化は不可能だが、見た目に近い、自然な写真が撮れる。
ワイド側24mm相当で近接撮影。絞り開放では、わずかに柔らかくなり、優しい雰囲気の写真になる。ボケも自然だ。
輝度差があるが、壁のトーンと窓のハイライトのトーン再現は申し分ない。1.0型のCMOSセンサーと、画像処理エンジンBIONZ Xのおかげだろう。
1.0型は一般的なコンパクトデジタルの撮像素子より大きいとはいえ、APS-Cクラスよりは小さいため、大きなボケを得るのは難しい。だが被写体に迫って絞りを開けるとしっかりボケる。しかもボケすぎないので、その場の状況がわかる写真になる。
真夏の強い光。こんな状況でも、1/32,000秒まで選べるRX100 IVならF1.8絞り開放で撮れる。シャッター速度は1/12,800秒に設定。小さなコンパクトカメラとは思えない写真が撮れた。
ISO1600に設定。拡大するとやや高感度らしさがあるものの、十分実用的なのがわかる。手ブレ補正機構も備えているので暗所にも強い。
ISO125、F1.8、1/32,000秒の世界。まるで夜のような不思議な写真になった。夏の太陽は位置が高いため、液晶モニターをチルトさせて、レンズをほぼ真上に向けている。太陽の強烈な光が入っているが、フレアは出ていない。ツァイスT*コーティングが施されたレンズの高い描写力を感じる。
ビルの窓に夕暮れ間近の光が当たっている。微妙な階調を、1.0型CMOSセンサーとツァイスT*レンズが見事に再現した。作品が撮りたくなるコンパクトデジタルだ。
営業していないバーの窓にミニボトルを見つけてクローズアップ。思い切って露出を切り詰めた。携帯性に優れたRX100 IVなら、撮りたいときにすぐ撮影できる。
シャッター速度は1/25秒。EVFを使ってしっかりカメラを構えて、手ブレ補正も活かすことでシャープに撮れた。