新製品レビュー
SIGMA dp0 Quattro(外観・機能編)
ウルトラワイドレンズを搭載したQuattro第4弾
Reported by 永山昌克(2015/7/22 07:00)
シグマ「dp Quattro」シリーズは、独自の「Foveon X3ダイレクトセンサー」を搭載し、クリアーな発色と精密な細部描写を実現したレンズ一体型のデジタルカメラだ。その最新作として「SIGMA dp0 Quattro」が登場した。
注目は、レンズ一体型では希少な21mm相当のウルトラワイドレンズを備えること。同シリーズはこれまでに、28mm相当のdp1 Quattroと、45mm相当のdp2 Quattro、75mm相当のdp3 Quattroの3製品を発売しているが、今回の21mm相当はもっとも画角が広く、もっともマニアックなスペックといっていい。
発売は7月10日。価格はオープンプライスで、実勢価格は税込11万円前後。今回のレビューでは、その外観と機能、アクセサリーを取り上げよう。
レンズ部が大型化して迫力が増したボディ
実機を見てまず驚くのは、個性的な外観デザインだ。横長で板状の本体をベースにして、その端に円柱形のレンズを装備。無駄を削ぎ落とした骨組みのみのような形状であり、斜め後ろに突き出たグリップ部のシルエットラインは特にユニークだ。
このボディの基本フォルムは、これまでのdp Quattroシリーズから継承したもの。そのうえで、レンズ部がいっそう長くなり、デザインの個性と迫力がさらに際立っている。
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ボディサイズは、幅161.4mm×高さ67mm×奥行き126mm。幅と高さはこれまでの3台と同じだが、レンズの全長が伸びた分、奥行きが増している。重量もアップし、シリーズ中で最も重い500g(電池、カードを除く)となる。
レンズには、本モデル用に新開発した焦点距離14mmの超広角レンズを搭載。35mm換算の焦点距離は約21mm相当で、開放値はF4。FLDガラスとSLDガラスによって倍率色収差を補正し、非球面レンズによってディストーションを1%以下に抑えているという。
LCDビューファインダーLVF-01を試す
電源ボタンを押すと、約2秒強で起動し、液晶モニターが表示される。液晶には、これまでと同じく約92万ドットの3型TFTを採用。表示の精細感はまずまずで、視野角は十分なレベルだ。
明るい屋外では視認性が低下するが、そんなときはオプションの「LCDビューファインダーLVF-01」が役に立つ。液晶のまわりを覆うことで外光をカットしつつ、内蔵のルーペによって液晶表示を2.5倍に拡大して見られるアクセサリーだ。付属ブラケットを三脚穴にセットしたうえで、横からスライドするようにして装着する。
他社のコンパクトデジカメやミラーレスカメラで使われる電子式のビューファインダーとは異なり、LVF-01は液晶表示を単純に拡大しているだけなので、表示の精細感には物足りなさが残る。その代わり、表示が非常に大きいことと、ファインダーに電源を使わないことはメリットだ。
内面反射はややあるが、遮光の効果は十分に高い。接眼部を額に押し当てて使うので、ホールドバランスが安定する効果もある。屋外での使用機会が多いユーザーなら、是非入手したいアイテムといっていい。なお、LVF-01が付属する「SIGMA dp0 Quattro LCDビューファインダーキット」(実勢価格税込12万円前後)としての発売もある。
そのほか、ホットシューに装着できるタイプの光学式のビューファインダー「VF-51」を使用したり、ホールド感を高めるためにベースグリップ「BG-11」を三脚穴に装着する、という選択肢もある。
機能と操作性はこれまでのシリーズを継承
AFは、既存モデルと同じくコントラスト検出方式を採用する。AFスピードはまずまずのレベル。動体や暗所以外なら、大きなストレスを感じることなくスムーズに合焦する。
AFの作動範囲を制限する「AFリミットモード」や、AF作動中のライブビュー表示を停止する「速度優先AF」を利用することでAFスピードをさらに高めることも可能だ。
十字キーの上ボタンを押すと、AFからマニュアルフォーカスへと移行し、鏡胴部のリング回転によってピント調整がダイレクトに行える。その際、液晶モニターには距離目盛りのほかに、被写界深度の目安を表示。この仕様はこれまでと同じだが、焦点距離が短い超広角レンズなので、ピントを固定してパンフォーカスでスナップを撮る際には特に重宝する。
撮影モードは、プログラムAEのほか、シャッター優先AE、絞り優先AE、マニュアルの4モードが用意。絞りやシャッター速度、露出補正は、天面にある2つの電子ダイヤルを回すことで、それぞれ1/3ステップ刻みで調整できる。
そのほかの機能としては、オートブラケット撮影やインターバルタイマー、トーンコントロール、アスペクト比の切り替え、白とび軽減、カメラ内RAW現像などに対応する。
撮像素子には、これまでと同じく垂直色分離方式のFoveon X3ダイレクトセンサーを搭載。センサーサイズはAPS-Cサイズ相当で、有効画素数は2,900万画素。画像処理エンジンにはTRUE IIIを備える。
使い込むほど楽しく感じる個性派カメラ
SIGMA dp0 Quattroは、21mm相当のワイドレンズ専用機という、最近ではほかにはない個性が際立った製品だ。何でも撮れるオールマイティなカメラとは対極に位置する存在であり、被写体を選ぶカメラといっていい。
少々大柄で斬新なデザインのボディに加え、広い範囲が写りすぎる超広角の単焦点レンズなので、使い始めの段階では取り回しに戸惑うこともあるだろう。だが、ひとたび慣れてしまえば、直感的にあやつれるようになり、撮ること自体が無性に面白くなる。今回の試用で感じた率直な感想だ。
趣味として撮影を楽しむ人の中でも、自分の写真にマンネリをおぼえ、近ごろ撮ることに飽きてきた。そんな人にもお勧めできる、超個性派の1台である。