新製品レビュー
パナソニックLUMIX FZ1000(機能・外観編)
1インチセンサー搭載の高倍率ズームモデル 4K動画記録も
曽根原昇(2014/7/30 08:00)
パナソニックの「LUMIX DMC-FZ1000」(以下FZ1000)は、比較的明るい高倍率ズームレンズを搭載したハイエンドクラスのコンパクトデジタルカメラ「FZシリーズ」の最新機種だ。
特徴のひとつが、1型というコンパクトデジタルカメラとしては大型の撮像素子を搭載していること。同じくFZシリーズの「LUMIX DMC-FZ70」(以下FZ70)や「LUMIX DMC-FZ200」(以下FZ200)は1/2.3型の撮像素子を搭載しているため、面積比にすると一気に4倍近く大きくなったことになる。
レンズも特徴的だ。35mm判換算で広角25mm相当から望遠400mm相当のLEICA DC VARIO-ELMARITレンズを固定搭載。大型の撮像素子と、高性能ライカブランドレンズの連携で、従来とは次元の違う高画質を期待できる。
撮像素子が大型になったことで、レンズ、ボディともにFZ70やFZ200よりサイズアップしているが、ボディサイズに余裕が生まれた分、ボタンやレバーなどのレイアウトは大変に分かりやすく、直感的で優れた操作性の獲得に成功している。
また、4K動画記録が可能であるのも特筆すべき点。同社のミラーレスカメラ「LUMIX DMC-GH4」(以下GH4)の他、他社製を含めても、ボディ単体で4K動画を撮影できるデジタルカメラは数機種に限られており、FZ1000はレンズ一体型デジタルカメラとして世界初の4K機となる。
発売日は7月17日。本稿執筆時点での実勢価格は税込9万5,880円前後となっている。
1型センサー&高性能ズームレンズの合わせ技
搭載する撮像素子は有効2,010万画素の1型高感度MOSセンサー。下位機種にあたるFZ200が有効1,210万画素の1/2.3型高感度MOSセンサーなので、画素数にして約1.66倍、面積にして約4倍の大型化である。
画素サイズもFZ200比で約2.4倍に拡大しているため、1画素ごとの飽和露光量も増加しているものと予想でき、ダイナミックレンジや高感度特性は相対的に向上していると考えてよいだろう。
ISO感度の設定幅はFZ200がISO100〜3200(拡張ISO6400)であるのに対し、FZ1000はISO125〜12800(拡張ISO80〜25600)となっている。
撮像素子の大型化は、被写界深度を浅くしたボケ表現の幅を広げ、被写体をより立体的に写すことに対してもアドバンテージがある。
レンズは光学16倍のLEICA DC VARIO-ELMARITレンズを搭載。35mm判換算で焦点距離25-400mm相当の高倍率ズームであり、広角端で開放F2.8、望遠端でも開放F4と、ズーム全域で明るい大口径レンズだ。
欲をいえば、FZ200のようにズーム全域で開放F2.8ならなお嬉しかったが、そうするとレンズサイズがさらに大きくなってしまうか、ズーム倍率が短くなってしまうのを避けられないため、本レンズのスペックはやはりこれが妥当なところだろう。
レンズ構成は11群15枚で、色収差を補正するEDレンズを4枚に、諸収差を抑えながら高倍率化と小型化を実現する非球面レンズを8面5枚と、ライカブランドを名乗るに相応しい贅沢な造りである。
この、1型高感度MOSセンサーとライカレンズの連携によって生み出される画像がどれほどの表現力をもつのかは、次回の実写編で紹介していきたいと思う。
上位機種に通じる優れた操作性
FZ1000は一応、レンズ一体型のコンパクトデジタルカメラにカテゴライズされているものの、しっかり握れるグリップや、光軸の真上に内蔵されたEVFの存在などもあって、実質的にはレンズ交換のできないミラーレスカメラと捉えてもいいだろう。
ボディデザインも他のFZシリーズより、むしろ同社のミラーレスカメラである「GH4」などに近い印象である。
カメラに向かって右肩に設置されたドライブモードダイヤルは、単写や連写、オートブラケットなどの切り換えが可能。
ファインダー横のフォーカスモードレバーはAFやMFの切り換えをレバー操作で直感的に行なうことが可能で、これらはGH4の操作系を受け継いでいる。
前ダイヤルやファンクションレバーは備えておらず、露出などの操作は後ダイヤルのみで行なうが、ダイヤルをプッシュすることで簡単に機能を切り換えることができるので特に不便を感じることはない。
Fn1からFn5の5つのファンクションボタンに使用頻度の高い撮影機能などを割り当てることができるので、自分の好みに合わせて操作方法をカスタマイズできるのも便利だ。
3型92万ドットのフリーアングルモニターを搭載し楽な姿勢でモニターを確認可能。高精細で視野角も広く、見え具合も使い勝手も上々である。
ただし、LUMIXのミラーレスカメラでは標準搭載となっているタッチパネルは不採用で、他機種でタッチによる操作を主体にしていた人は多少とまどうことがあるかも知れない。
EVFには236万ドットの有機ELディスプレイが採用されている。ファインダー倍率は約1.88倍(35mm判換算:約0.7倍)と大きく、表示のタイムラグもほとんどなく視認性は非常によい。
GH4に採用されているEVFと同等と思われ、現行デジタルカメラの内蔵EVFとしては、トップクラスの見栄具合といってよいだろう。
そして、FZ1000で特徴的かつ有効な操作系が、レンズ鏡筒に新設されたマニュアルリングだ。鏡筒側面にある切換スイッチを切り換えるだけで、リングを回してパワーズームのコントロールやMF時のフォーカシングを行なうことができる。
なお、シャッターボタン周りにはコンパクトデジタルカメラらしくズームレバーが搭載されており、パワーズームはマニュアルリングだけでなくこちらのレバーでも操作できる。レバーの角度を調節することで、5段階にズームの速さを変えることができるため、動画撮影時のスムースなズーミングのために有効だ。
空間認識技術による快適AF
GH4と同じく空間認識AFを採用したことによって非常に速いAF速度を得ることができるのも特徴だ。
空間認識AFとは、画面に写る全ての被写体との距離を瞬時に算出する技術。メーカー公称値では広角端で0.09秒、望遠端で0.17秒という素早さ。カメラの設定や測距する被写体の条件にもよるので、さすがに0.09秒の高速AFが常に約束されるものではないが、AF速度に関してFZ200から飛躍的に進化しているのは確実だ。
インタビュー:LUMIX GH4の「空間認識AF」は何が凄い?
高倍率ズームを搭載するコンパクトデジタルカメラのコントラストAFでありながら、最新のデジタル一眼カメラと遜色のない快適AFを達成していることに感心せずにいられない。
AFエリアの数もFZ200の23点から49点へと増加し、撮影の自由度が大幅に向上している。
4K動画記録が可能。800万画素の静止画切り出しも
FZ1000はレンズ一体型デジタルカメラとして、初めて4K動画撮影に対応している。
クリエイティブ動画モード(モードダイヤルを動画モードにして露出設定をP、A、M、Sから選択する)のみ撮影が可能といった制約はあるものの、比較的一般的な価格ともいえる本機で4Kでの動画撮影ができるのは実に画期的なことである。
4K動画のサイズは3,840×2,140でフレームレートは30p。ビットレートは100Mbpsで、記録方式はMP4に固定される。外部レコーダーを使用しなくても、カメラ内のメモリーカードに直接記録することが可能。UHSスピードクラス3(U3)のメモリーカードに対応しているので、4K動画撮影ではこれを使用したほうが安全だろう。
また、撮影した動画から、好みのコマを約800万画素の静止画として切り出す「4K PHOTO」機能を備えている。アスペクト比が16:9に制限されるものの、これまで写真では捉えるのが難しかった決定的な瞬間を、4K動画の30コマ/秒の中から自由に抜き出せるのである。
切り出しはカメラ内で可能。動画再生中に一時停止して[MENU/SET]ボタンを押すだけという簡単さである。新しい写真撮影の方法として、試してみる価値は大いにある機能だと思う。
これまでも動画から静止画を切り出すことは可能だったが、800万画素というある程度の高画素で切り出せるようになったのは大きい。しかもカメラ内で切り出せるので、誰でも楽しめるだろう。