【新製品レビュー】ニコンCOOLPIX P310

〜操作性を強化。完成度を増したF1.8レンズ搭載モデル
Reported by 本誌:折本幸治

 COOLPIX P310(以下P310)は、2011年3月発売のCOOLPIX P300(以下P300)の後継機にあたるコンパクトデジタルカメラだ。P300で好評を博した広角端F1.8の光学4.2倍ズームレンズはそのままに、有効画素数を1,220万から1,610万に増加。加えて、特定の機能を割り当てられるFn(ファンクション)ボタンを新設するなど、操作性についても進化が見られる。

 発売は3月22日。価格はオープン。実勢価格は3万1,700円前後。


FnボタンやUser Settingを追加

 外観は、前モデルP300をほぼ踏襲。レンズ脇のFnボタンを見つけられない限り、見分けは付かないだろう。相変わらず、カメラ好きの心をとらえるフォルムとディテールの数々(金属外装、コマンドダイヤル、モードダイヤル、彫り込みのNikonロゴなど)が魅力的だ。いわゆる「高級コンパクト」の流れを汲むスタイリングといって良いだろう。

 P300と唯一異なるFnボタンには、「画像サイズ」「Picture Control」「ホワイトバランス」「測光方式」「連写」「ISO感度設定」「AFエリア選択」を割り当てられる。少し指を伸ばすだけで届き、突出具合もほどよいので誤操作も起きにくいなど、操作性は悪くない。ニコンのデジタル一眼レフカメラ上級モデルもレンズ脇にもFnボタンが搭載されているが、本機はその思想を受け継いだものといえるだろう。

新設のFnボタン。RAW記録ができないこともあり、ホワイトバランスを割当てるのが妥当かFnボタンに設定できる機能一覧。クリエイティブエフェクトを割り当てたかった

 もうひとつの主要な新機能が、撮影モード「U(User Setting)」の存在だ。任意の設定の組み合わせを記憶させておけるモードで、基本となる撮影モードP/A/S/Mはもちろん、ズーム位置やフォーカス距離(MF時のみ)など、計19種類の設定を組み合わせられる。「ズーム位置=広角」「フォーカス=MF」などを組み合わせ、目測パンフォーカス専用のモードを作り上げるなど、活用方法が色々考えられる。

 その他、ズームレバーを押すと、24mm相当、28mm相当、35mm相当……と主要な撮影画角に切り替わる「ズームメモリー」も新機能。リコーでいうところの「ステップズーム」であり、これも高級コンパクトらしい装備といえるだろう。1レンズで2コマ撮影するタイプの3D撮影機能も、今回からシーンモードに追加された。


利便性の高い24mm相当F1.8スタートのズームレンズ

 撮像素子は有効1,610万画素の1/2.3型裏面照射型CMOSセンサー。1/2.3型の撮像素子を採用することもあり、本機を高級コンパクトデジカメの範疇に入れることには躊躇してしまう。他社の高級コンパクトデジカメが1/1.7型を中心に採用していることを考えると、P300の時もそうだったが、何か釈然としない。

 ただしP300と同じく、画質面でのクオリティは高い。厳密に見れば1/1.7型搭載機より若干の見劣りは感じられるものの、1/2.3型としては満足いくものだと思う。

 その一端を担っているのが、24-100mm相当F1.8-4.9の光学4.2倍ズームレンズだろう。P300でも評価は高かったが、解像性能に秀でている印象。レンズシフト式の手ブレ補正も良く効くし、片手で比較的ラフに撮ってもブレが目立たない画像が得られる。暗部の階調と適度なコントラストを両立している点にも感心した。

 このズームレンズだが、個人的に24-100mm相当という焦点距離域は絶妙に思えた。やはり広角側が24mm相当からあると何かと便利。引きのとれない屋内や、目の前の巨大な建物を収めたいときなど、とりわけ旅行中の記録写真を撮る上で役立つことしきりだった。それでいてズームメモリーをONしておけば、28mm相当や35mm相当にもすぐチェンジできる。ズームレンズを単焦点レンズのように使える点は、レンズ交換式デジタルカメラにない面白さだろう。

 高級機らしく、液晶モニターは3型約92万ドット。精細感は高い。タッチ操作は非対応だ。

バッテリーおよび記録メディア室。SDXCメモリーカードやEye-Fiカードにも対応するHDMI出力端子も装備。H.264形式のフルHD記録に対応する
側面のレバーでストロボがポップアップする今回からホワイトボディが選べるようになった。モードダイヤルやシャッターボタンなども白仕上げとなる

 画像仕上げは、ニコンデジタル一眼レフカメラと同じ名称となる「ピクチャーコントロール」。ハイライトを抑えて黒つぶれを軽減する「アクティブD-ライティング」もそうだが、ニコンデジタル一眼レフカメラとの共通性が見られるのが面白い。

 またオートホワイトバランスには、電球色を補正する「オート1」と、電球色の暖かみを残す「オート2」が用意されている。これもD7000などニコンデジタル一眼レフカメラとの共通点だ。オート1とオート2の切替は、結婚式やレストランなど屋内で意外と役立つ機能だ。

 流行のカメラ内エフェクト機能も搭載されている。本機では「スペシャルエフェクト」という名称で、「ソフト」、「ノスタルジックセピア」、「硬調モノクローム」、「ハイキー」、「ローキー」、「セレクトカラー」、「絵画調」、「高感度モノクロ」、「シルエット」の9種類から選べる。いずれも他機種に負けない美しい効果が得られるが、メニューの深い階層にあるため、通常撮影からとっさに切り替えられないのは不満が残る。それこそ、Fnボタンに割り当てられれば良かったのにと思う。また、モードダイヤルのU(User Setting)にも設定を反映できないなど、積極性が感じられない位置付けになっているのが気になった。

 他にも、起動時の画角を設定しておける「起動ポジション設定」、アスペクト比の変更(4:3、3:2、16:9、1:1)、H.264でのフルHD動画記録、HDMI出力端子の搭載など、充実した装備を誇る。専用ケーブルとはなるものの、USB充電に対応しているのもうれしい。


まとめ

 試用して感心したのは、全般的に動作がキビキビしていること。起動も比較的速く、スナップやメモ用途に向いているカメラだと感じた。ダイヤル類やボタンの追随性も悪くない。AFもあまり迷わず高速だ。日常持ち歩くスナップ用途として、または旅行中の記録用途として活躍することだろう。

 残念なのはRAW記録に対応していないことと、NDフィルターが非搭載なこと。センサーサイズが小さいとはいえ、F1.8ともなるとボケを活かした撮り方をしたくなるので、NDフィルターは一考してほしかった。撮影画像の縦横自動判別がないのもマイナスだ。Uモードも1つではなく、U1、U2の2つあれば活用範囲が広がると思う。実用上は問題ないとはいえ、他の高級機に比べてメニューのフォントが低解像度なのも、購入意欲を下げる要因になるかもしれない。また個人的な趣味になるが、ストラップは両吊りに対応して欲しかった。

 と、色々気になる点はあるものの、ポケットに入れて持ち歩けて、しかも明るいズームレンズを搭載。広角端24mm相当からという仕様のおかげで汎用性も高く、しかも一般的なコンパクトデジカメを凌駕する充実した機能を誇る。ボディの質感も悪くない。センサーサイズが1/2.3型なのは残念だが、そのおかげでライバル(キヤノンPowerShot S100)より1段安い価格帯になっているわけで、そのポジショニングは独自だ。一見地味な立ち位置にありながら、ハマる人はハマるデジカメなので、興味のある方は一度お試しいただければと思う。


実写サンプル

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

・画角

広角端 / COOLPIX P310 / 約5.3MB / 4,608×3,456 / 1/800秒 / F2.8 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート1 / 4.3mm望遠端 / COOLPIX P310 / 約5.4MB / 4,608×3,456 / 1/320秒 / F4.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート1 / 17.9mm

・感度

COOLPIX P310 / 約4.7MB / 4,608×3,456 / 1/2秒 / F1.8 / -2.0EV / ISO100 / WB:オート1 / 4.3mmCOOLPIX P310 / 約4.8MB / 4,608×3,456 / 1/4秒 / F1.8 / -2.0EV / ISO200 / WB:オート1 / 4.3mm
COOLPIX P310 / 約4.7MB / 4,608×3,456 / 1/8秒 / F1.8 / -2.0EV / ISO400 / WB:オート1 / 4.3mmCOOLPIX P310 / 約4.7MB / 4,608×3,456 / 1/20秒 / F1.8 / -2.0EV / ISO800 / WB:オート1 / 4.3mm
COOLPIX P310 / 約4.9MB / 4,608×3,456 / 1/40秒 / F1.8 / -2.0EV / ISO1600 / WB:オート1 / 4.3mmCOOLPIX P310 / 約5.1MB / 4,608×3,456 / 1/80秒 / F1.8 / -2.0EV / ISO3200 / WB:オート1 / 4.3mm
COOLPIX P310 / 約5.3MB / 4,608×3,456 / 1/125秒 / F1.8 / -2.0EV / ISO6400 / WB:オート1 / 4.3mm

・オートホワイトバランス

 D7000などと同じように、「オート1」と「オート2」を選べる。初期設定はオート1。オート2は、白熱灯の暖かみを残したいときに使える。

COOLPIX P310 / 約4.7MB / 4,608×3,456 / 1/10秒 / F2.5 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート1 / 4.3mmCOOLPIX P310 / 約4.7MB / 4,608×3,456 / 1/10秒 / F2.5 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート2 / 4.3mm

・マクロ

 マクロモードでの最短撮影距離は広角端で約2cm、望遠端で約60cm。広角端は24mm相当なので、ワイドマクロが楽しい。

COOLPIX P310 / 約4.8MB / 3,456×4,608 / 1/1,600秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート1 / 8.1mm

・シーンモード(料理)

 他のCOOLPIXシリーズと同様、画面上のスライダーで色温度を段階的で変更できる。

シーンモード:料理 / COOLPIX P310 / 約5.1MB / 3,456×4,608 / 1/15秒 / F3.7 / 0.0EV / ISO720 / WB:オート1 / 9mmシーンモード:料理 / COOLPIX P310 / 約5.3MB / 3,456×4,608 / 1/15秒 / F3.7 / 0.0EV / ISO640 / WB:オート1 / 9mm
シーンモード:料理 / COOLPIX P310 / 約5.2MB / 3,456×4,608 / 1/15秒 / F3.7 / 0.0EV / ISO560 / WB:オート1 / 9mmシーンモード:料理 / COOLPIX P310 / 約5.2MB / 3,456×4,608 / 1/15秒 / F3.7 / 0.0EV / ISO560 / WB:オート1 / 9mm

・スペシャルエフェクト

硬調モノクローム / COOLPIX P310 / 約4.7MB / 4,608×3,456 / 1/400秒 / F2.8 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート1 / 4.3mmソフト / COOLPIX P310 / 約4.3MB / 4,608×3,456 / 1/250秒 / F4 / +1.0EV / ISO100 / WB:オート1 / 9.9mm
ノスタルジックセピア / COOLPIX P310 / 約5.4MB / 4,608×3,456 / 1/125秒 / F5.5 / 0.0EV / ISO180 / WB:オート1 / 17.9mm絵画調 / COOLPIX P310 / 約6.2MB / 4,608×3,456 / 1/1,000秒 / F2.8 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート1 / 4.3mm

・逆光

COOLPIX P310 / 約5.6MB / 4,608×3,456 / 1/1,000秒 / F5.3 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート1 / 5.5mmCOOLPIX P310 / 約5.4MB / 4,608×3,456 / 1/1,000秒 / F6.2 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート1 / 17.9mm

・かんたんパノラマ

 カメラを振りつつ連写された画像を合成するタイプ。撮影範囲を180度、または360度を選べる。「かんたんパノラマ」に加え、撮影後にパソコンで合成する旧来の「パノラマアシスト」も利用できる。

かんたんパノラマ / COOLPIX P310 / 約442K / 3,200×560 / 1/800秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート1 / 5mm





本誌:折本幸治

2012/6/1 00:00