【新製品レビュー】RICOH PX

〜ごつくないのにしっかりアウトドア仕様の5倍ズームモデル
Reported by 北村智史

 すがすがしいくらいにシンプルなデザインのフラットボディに1/2.3型有効1,600万画素CCD、28-140mm相当の光学5倍ズームを搭載。カジュアルテイストでありながら、3m防水(連続60分まで)に加えて1.5mの高さからの落下テストをクリアする耐衝撃性を誇るタフさを備えているのが特徴的だ。

 大手量販店の店頭価格は2万9,800円程度。ボディカラーは、今回試用したライムグリーンのほか、オーソドックスなブラックとシャンパンシルバーが用意されている。


レンズが出っ張らない屈曲光学系を採用

 屈曲光学系を採用した光学5倍ズームは電源オンでもレンズが出っ張らないタイプ。センサーシフト式の光学式手ブレ補正機構を備えている。開放F値はF3.9-5.4と割と暗めのスペックだ。開閉式のレンズバリアは備えていないので、指紋などが付着しないよう注意する必要がある。防水の関係だろう、上面の小さなズームレバーは少し重めに感じられた。

 35mm判換算の焦点距離は28-140mm相当で、超解像技術を応用した超解像SRズームで280mm相当、さらにデジタルズームの併用で1,344mm相当の超望遠撮影も可能としている。個人的にはデジタルズームなどのオン、オフの切り替えがないのが気になった。画質重視で光学ズームだけ使いたいと考える人にとっては、デジタルズームに切り替わる心配がない設定が選べないのは物足りないだろう。

 その一方で、内蔵ストロボの動作をレバー式のフラッシュダイヤルで設定できるのはいいところだと思う。撮影モードを変えたときなどに自動発光モードに切り替わらないので、不用意にフラッシュを光らせてひんしゅくを買う心配がない。メカニカルなレバーだと、逆にバッグへの出し入れの際に動いてしまう可能性は否定できないが、試用中にそういったトラブルは発生しなかった。

 液晶モニターは2.7型で23万ドット。スペックとしては平凡だが、AR(反射防止)コートに加えてハードコートを採用して、キズへの耐性を高めている。標準の輝度の状態では、屋外でやや見づらく感じることもあったが、おおむねは良好だった。

 電源は、容量950mAhのリチウムイオン電池。CIPA基準の撮影可能コマ数は300コマ。実写ではフラッシュ非発光で200コマほど撮ったあたりで残量表示がひとマス減った。1日の撮影量の多いひとは予備を用意しておいたほうがいいかもしれない。

 記録メディアはSDHC/SDメモリーカードと内蔵メモリーが約40MB。実写でのファイルサイズは、フル画素の4:3比率で約5.1MBだった

レンズは28-140mm相当の“出っ張らない”仕様。開放F値はF3.9-5.4。センサーシフト式の手ブレ補正を搭載している上面右手側端にあるズームレバーは、防水の関係か、少々操作が重いのが気になった
フラッシュダイヤルは発光モードをレバーで設定できる。勝手に自動発光に戻る心配がないのがうれしい電源は薄型のリチウムイオン電池「DB-100」。CX5と同じタイプだ
左側のUSB端子から充電する仕様(USB電源アダプターが付属している)。なので、パソコンからでも充電できる記録メディアはSDHC/SDメモリーカード。40MBの内蔵メモリーも備えている

多彩なエフェクト機能を搭載

 2月に発売されたCX5など、リコーのデジタルカメラにはアート系作画機能が盛り込まれるようになった。本機も「プレミアムショット」モードの中に、一般的なシーンモードに加えて「ミニチュアライズ」「トイカメラ」といった項目が選べるようになっている。

 プレミアムショットモードの選択画面は十字キーの上キーで呼び出せるようになっているが、初期設定の状態では5項目だけの「お気に入り」が表示され、さらに下キーを押すと全モード表示となる。

 アート系作画機能としては「スイーツ」、「ミニチュアライズ」、「トイカメラ」、「ハイコントラスト白黒」、「クロスプロセス」、「ソフトフォーカス」がある。それぞれに発色や効果の強弱などを調整できるようになっているのが面白いところ。ただし、「ミニチュアライズ」と「ソフトフォーカス」はライブビュー画面には効果は反映されない。また、「トイカメラ」も周辺減光の度合いは事前には確認できない。このあたりはエンジンのパワーの問題なのかも知れないが、その分、レスポンスの低下はないので撮影自体は快適だったりする。

 個人的に気になったのは、左右キーを押すとフルオートの「通常撮影」モードに切り替わってしまうこと。このモードではホワイトバランスや感度はオート固定になる。おそらく初心者の使用を意識してのことだと思うが、何でも自分で決めたい人には不親切。左右キーは何気なく触ってしまうことも多いのだから、「通常撮影」モードに切り替わるかどうかを選べるようになっているほうがいいと思う。

十字キーまわりの操作部。上キーを押すと「プレミアムショット」モードが選択できるこの「お気に入り」画面はカスタマイズが可能で、好みのモードを登録しておくことができる
「プレミアムショット」モードは全部で23種類。個人的には、説明いらないから1ページにまとめて欲しいって思う
「ミニチュアライズ」モードの設定画面。上下キーでシャープに残す範囲、左右キーでその範囲の広さを変えられる撮影時の画面。グレーのマスクでボケる範囲を示している。よく見ると、少しはボケているっぽいが仕上がりイメージはつかみづらい
アート系効果を適用した写真と、加工なしの写真の両方を保存できるオプションがあるのはいい点。「MENU/OK」ボタン押しで呼び出せる「クイック撮影メニュー」。この画面もカスタマイズできると便利かもしれない
「クイック撮影メニュー」画面を非表示にして、直接メニューに移行できる。こういう親切はありがたいと思う

まとめ

 ごつごつしたいかにもアウトドア仕様ではないデザインでありながら3m防水に耐衝撃性まで備えているというのは意表を突いていていい。レンズも逆光でフレアが出やすいのと、望遠端でもう少し解像力が欲しいかなぁと感じられるものの、コンパクトカメラの5倍ズームとしては不満のないレベル。感度やホワイトバランスを変えるのにメニューの2ページ目に入らないといけないのはちょっと面倒な感じだが、まあそんなに目くじらを立てなくてもよさそうな気もする。

ホワイトバランスや感度の設定はメニューの2ページ目。わりと頻繁に使う項目なので、もう少しアクセスしやすい場所にして欲しかった

 小さくて軽くて、しかも防水性があること、アート系作画機能が楽しめること、別売で5色のプロテクションジャケット(各2,625円)やネックストラップ(各2,625円。商品名は「ネック」だが、同色のリストストラップも同梱されている)が用意されているなど、夏のお遊び向けカメラとしておすすめできる1台なのではないかと思う。

「プロテクションジャケット」はホワイト以外は透明なので、ボディカラーによって色味が違って見える長短の2種類がセットになった「ネックストラップ」も5色が用意されている

実写サンプル

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。

・光学/超解像/デジタルズーム

 搭載レンズは28-140mm相当の光学5倍ズーム。超解像SRズームが2倍(合成で10倍)、デジタルズームが4.8倍(合成で480倍)。歪曲収差は画像処理で補正しているようで、広角端でも気にならない。

 解像感は広角端がもっともよく、周辺部はややアマさもあるが、全体的には良好な画質と言える。一方、望遠端は全体的にディテール不足で50%縮小で見てもアマさが目立つ。超解像SRズームは、光学の望遠端を素直に拡大したような感じ。画質劣化がないとは言えないが、用途によっては使えなくはないレベルだ。

広角端:28mm相当 / 4,608×3,456 / 1/570秒 / F3.9 / -0.3EV / ISO100 / WB:太陽光光学5倍:140mm相当 / 4,608×3,456 / 1/189秒 / F5.4 / -0.3EV / ISO100 / WB:太陽光
超解像SRズーム10倍:280mm相当 / 4,608×3,456 / 1/176秒 / F5.4 / -0.3EV / ISO100 / WB:太陽光デジタルズーム48倍:1,344mm相当 / 4,608×3,456 / 1/164秒 / F5.4 / -0.3EV / ISO100 / WB:太陽光

・超解像

 初期設定ではオフになっている「超解像」だが、オンにするとぐっと解像感がアップする。仕上がりだけを見ると常時オンにしたいところだが、多少なりとも処理待ちが生じるのが難点。風景などをのんびり撮るにはいいだろうが、せっかちな人には使いづらいかもしれない。

超解像:オフ / 4,608×3,456 / 1/760秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 5mm(28mm相当)超解像:オン / 4,608×3,456 / 1/870秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 5mm(28mm相当)

・アスペクト比

 撮影設定メニューの「画質・サイズ」でアスペクト比を変えられる。「4:3」「3:2」「1:1」「16:9」の4種類。

4:3 / 4,608×3,456 / 1/52秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 5mm(28mm相当)3:2 / 4,608×3,072 / 1/45秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 5mm(28mm相当)
16:9 / 4,608×2,592 / 1/48秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 5mm(28mm相当)1:1 / 3,456×3,456 / 1/48秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 5mm(28mm相当)

・感度

 1/2.3型有効1,600万画素CCDというスペックから考えれば、それほど高感度画質は期待できそうにないが、ISO800までならまずまずの印象。暗部ではそれなりにノイズが出ているのが見えるが、ディテールもよく残っているし、あまり大きなサイズにプリントするとかでなければ使えるだろう。ISO1600では全体的にノイズも増えるし解像感も発色も悪くなる。

感度の設定範囲はISO100からISO3200まで「ISO AUTO」時の上限を好みに合わせて設定できる
ISO100 / 4,608×3,456 / 1/470秒 / F3.9 / -0.3EV / WB:オート / 5mm(28mm相当)ISO200 / 4,608×3,456 / 1/930秒 / F3.9 / -0.3EV / WB:オート / 5mm(28mm相当)
ISO400 / 4,608×3,456 / 1/270秒 / F10.6 / -0.3EV / WB:オート / 5mm(28mm相当)ISO800 / 4,608×3,456 / 1/540秒 / F10.6 / -0.3EV / WB:オート / 5mm(28mm相当)
ISO1600 / 4,608×3,456 / 1/1000秒 / F10.6 / -0.3EV / WB:オート / 5mm(28mm相当)ISO3200 / 4,608×3,456 / 1/1230秒 / F10.6 / -0.3EV / WB:オート / 5mm(28mm相当)

・プレミアムショット(主なもの)

 十字キーの上キーから「プレミアムショット」モード選択画面を呼び出す仕様。角窓と丸窓が選べる「スイーツ」は初期設定では1:1比率の画面となる。「ミニチュアライズ」はシャープに残す範囲の広さと位置を選択可能。「トイカメラ」は周辺減光の度合いを2段階、こってりめの「トイカラー」のオン、オフが選べる。粗粒子チックな「ハイコントラスト白黒」はオプションはなし。「クロスプロセス」は発色を「ベーシック」「マゼンタ」「イエロー」から選べる。「ソフトフォーカス」はぼかし具合を「強」「弱」に切り替えられる。

通常撮影 / 4,608×3,456 / 1/10秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 5mm(28mm相当)
スイーツ(角窓) / 3,456×3,456 / 1/7秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 5mm(28mm相当)スイーツ(丸窓) / 3,456×3,456 / 1/7秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 5mm(28mm相当)
ミニチュアライズ / 4,608×3,456 / 1/10秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 5mm(28mm相当)トイカメラ / 4,608×3,456 / 1/10秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 5mm(28mm相当)
ハイコントラスト白黒 / 4,608×3,456 / 1/10秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 5mm(28mm相当)クロスプロセス / 4,608×3,456 / 1/9秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 5mm(28mm相当)
ソフトフォーカス / 4,608×3,456 / 1/9秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 5mm(28mm相当)セピア / 4,608×3,456 / 1/9秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 5mm(28mm相当)
白黒 / 4,608×3,456 / 1/9秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 5mm(28mm相当)

・作例
4,608×3,456 / 1/760秒 / F4.1 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 5.6mm(31mm相当)4,608×3,456 / 1/270秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 5mm(28mm相当)
4,608×3,456 / 1/380秒 / F5.1 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 11.2mm(63mm相当)4,608×3,456 / 1/660秒 / F5.8 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 16.7mm(94mm相当)
4,608×3,456 / 1/570秒 / F3.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 5mm(28mm相当)4,608×3,456 / 1/270秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 15.3mm(85mm相当)
4,608×3,456 / 1/570秒 / F7 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 25mm(140mm相当)4,608×3,456 / 1/153秒 / F3.9 / -2.0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 5mm(28mm相当)
4,608×3,456 / 1/1150秒 / F4.5 / -1.0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 7.4mm(41mm相当)4,608×3,456 / 1/48秒 / F3.9 / -0.3EV / ISO100 / WB:太陽光 / 5mm(28mm相当)
4,608×3,456 / 1/36秒 / F3.9 / -0.7EV / ISO100 / WB:太陽光 / 5mm(28mm相当)




北村智史
北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら

2011/7/8 00:00