【新製品レビュー】GE「GE-X5」

〜実売1万9,800円の高倍率ズームモデル
Reported by 本誌:折本幸治

 2009年春の国内市場への本格参入が記憶に新しいGE(General Electric Company)ブランドのデジタルカメラ。エントリークラスとスタイリッシュクラスに加え、今年5月には、GE初の高倍率ズーム機「GE-X5」を投入した。

 特徴は、光学15倍ズームレンズ搭載の高倍率ズームモデルにして、スタートから実勢価格2万円前後で販売されていること。初期モデルのブラックは1万9,800円という販売価格がよく見られる。デジタルカメラの価格低下が続く昨今とはいえ、高倍率ズーム機で2万円を切るとはすごい。また、7月からはホワイトモデルも登場。こちらも2万円強という低価格で頑張っている。

 GE-X5を試用する機会を得たので、その実力を紹介してみたい。


一通り揃った基本スペック

 撮像素子は、有効1,410万画素の1/2.3型CCD。2010年における各社のCCD搭載モデルで良く見かけるスペックだ。アスペクト比4:3での撮影に加え、3:2、16:9での撮影も可能。設定可能な感度はISO80、ISO100、ISO200、ISO400、ISO800、ISO1600、ISO3200。RAW記録には非対応だ。

 高倍率ズーム機だけあって、露出モードにも手抜きはない。プログラムAE、絞り優先AE、シャッター優先AE、マニュアル露出を備えている。シャッター速度は4〜1/2,000秒。マニュアル露出時には30秒の長時間露光も可能だ。

 測光方式も3種類を用意。一眼レフカメラ並みに、分割測光、中央部重点、スポット測光を切り替えられる。以前はエントリークラスで測光方式を選択できない機種が多かったが、本機では中央部重点測光やスポット測光にもしっかり対応する。

 注目のレンズは、焦点距離27-405mm相当(35mm判換算)の光学15倍ズームだ。今年は各メーカーとも、光学20倍を超える超高倍率ズーム機を打ち出していることから、本機の15倍はいささか物足りなく感じるかもしれない。ただし数年前なら、15倍はトップクラスの性能。しかも27mm相当の広角からカバーしていることを考えると、2万円を切るカメラであることに驚かされる。

 もっとも最近の15〜18倍ズーム機と同様、開放F値はF3-5.6と暗め。そのため、比較的細い鏡胴や小柄なボディを実現できたわけだが、シャッター速度の低下に気を使い、高感度での撮影を受け入ることになる。もっとも本機は光学式手ブレ補正も装備しており、効きはかなり良い。ISOオートも利用可能だ。

広角端望遠端
花型レンズフードを思わせる先端のパーツ。レンズフードとしての働きはなく、レンズ保護のためにあるという
電源ボタンとモードダイヤル背面の操作部
EVFを装備。ドット数は20.1万ストロボをポップアップさせたところ。ホットシューは非搭載
電源に単3電池本を使用する付属のレンズキャップ。何の修飾もないシンプルな意匠

 EVFを搭載しているのもポイントだろう。最近は液晶モニターが大型化したこともあり、メーカーによっては省略する方向にあるEVFだが、日差しが強い中での撮影や、手ブレが気になる望遠撮影などで活躍する。20.1万ドットという冴えないスペックながら、ファインダーに接眼して撮れるのはうれしい点だ。

 液晶モニターは2.7型約23万ドット。3型が主流になった現在、固定式で2.7型は少々寂しいものの、実用的にはさして気にならなかった。

 そのほか、シーン認識によるオートシーンモードをはじめ、顔認識AF、カメラ内パノラマ合成、HDR(ハイダイナミックレンジ)など、流行の機能もしっかり搭載している。

 では、一般的な現行の高倍率ズーム機に対してスペック的に劣る点はというと、動画機能がまず思い浮かぶ。720pからフルHDへと主流が移行しつつある現在、640×480ピクセル/30fpsのMotion JPEG。動画性能を重視する人には物足りないかもしれない。

 また、徐々に増えてきたCMOS搭載機に対し、連写速度が約1.39コマ/秒と低い点も留意したい。数年前なら当たり前のスペックだが、定着しつつある高速連写をいかした機能、例えば「手持ち夜景モード」などが利用できない。つまり本機は、「とにかくベーシックな高倍率ズーム機」といえるだろう。

 なお最近では珍しいことに、電源に単3電池4本を使用するのも特徴。27-405mm相当の画角をカバーすることや、電源の入手性の良さから、旅行に持参するカメラとしての魅力は高い。CIPA規格準拠の撮影可能枚数は、アルカリ電池で約300コマ、ニッケル水素電池で約500コマだ。

撮影時の画面HDR機能は連写するのではなく、1枚の画像に対して適用される
シーン認識のオートシーンモードを搭載自動的にシーンモードを選んでくれる
メニュー画面の背景は変更できる背景にユーザーの撮影画像も使用可能

不満のない性能。旅行用カメラとしても

 その価格ゆえ色眼鏡で見ていしまいがちな本機だが、こと画質に関しては、ほかの1/2.3型CCD機と、それほどクオリティに差があるわけではない。ただし歪曲収差や色収差をデジタルで補正していないようで、被写体によってはレンズのアラが目立つケースもある。

 広角端は絞り開放付近が最もシャープで、四隅のボケは絞り開放でもわずか。ただし陣笠状の歪みが目立ち、F4.6までは周辺光量不足も認められる。若干不自然に感じるほど強いシャープネスと、ノイズリダクションに起因すると見られる解像力の低さが気になるが、これらは近年のコンパクトデジタルカメラに共通するものだ。

 望遠端は糸巻き型の歪みが生じているものの、画面中央部は比較的シャープ。色収差については、画面周囲で輝度差の強い箇所で良く見られた。

 逆光にも特別弱いわけではなく、太陽を正面に捉えても、小さなゴーストが画面横に出るだけだ。

 ジェネラル・イメージング・ジャパン社長の小宮弘氏によると、中国でデザインから生産まですべてを行なうことがGEデジタルカメラの安さの一因であり、近年はOEM/ODMメーカーのレンズ開発力が顕著に上がっているという。GEが廉価な高倍率ズームにチャレンジできたのは、こうした環境変化によるものといえそうだ。

 この価格で15倍ズームレンズを搭載し、単3電池駆動にも対応。ギリギリまで贅肉をそぎ落とした本体のコンパクトさも加味すれば、本誌読者なら気軽な旅行用として、あるいは大事な撮影における「最後の保険」として持参する手も考えられるだろう。値段を考えると本体の質感も高く、オートシーンモードに設定しておけば、大きな失敗はないということで、旅行にでかける両親へのプレゼントにも良さそうだ。今後のGEブランドにも注目したい。


実写サンプル

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、別ウィンドウで800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。

・絞りによる変化(広角端)※絞り優先モード
F3
GE-X5 / 約6.3MB / 4,320×3,240 / 1/1500秒 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.9mm
F3.2
GE-X5 / 約6.4MB / 4,320×3,240 / 1/1300秒 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.9mm
F3.8
GE-X5 / 約6.4MB / 4,320×3,240 / 1/900秒 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.9mm
F4.6
GE-X5 / 約6.4MB / 4,320×3,240 / 1/600秒 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.9mm
F5.8
GE-X5 / 約6.3MB / 4,320×3,240 / 1/400秒 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.9mm
F7.3
GE-X5 / 約6.3MB / 4,320×3,240 / 1/240秒 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.9mm

・絞りによる変化(望遠端)※絞り優先モード
F5.2
GE-X5 / 約6.5MB / 4,320×3,240 / 1/280秒 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 73.5mm
F6.6
GE-X5 / 約6.6MB / 4,320×3,240 / 1/150秒 / F6.6 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 73.5mm

・歪曲収差と周辺光量落ち(広角端)
F3
GE-X5 / 約6.6MB / 4,320×3,240 / 1/220秒 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.9mm
F3.2
GE-X5 / 約6.6MB / 4,320×3,240 / 1/200秒 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.9mm
F3.8
GE-X5 / 約6.6MB / 4,320×3,240 / 1/140秒 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.9mm
F4.6
GE-X5 / 約6.6MB / 4,320×3,240 / 1/100秒 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.9mm
F5.8
GE-X5 / 約6.6MB / 4,320×3,240 / 1/60秒 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.9mm
F7.3
GE-X5 / 約6.4MB / 4,320×3,240 / 1/38秒 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.9mm

・歪曲収差と周辺光量落ち(望遠端)
F5.2
GE-X5 / 約6.4MB / 4,320×3,240 / 1/75秒 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 73.5mm
F6.6
GE-X5 / 約6.6MB / 4,320×3,240 / 1/50秒 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 73.5mm

・感度
ISO80
GE-X5 / 約6.4MB / 4,320×3,240 / 1/50秒 / F6.4 / 0EV / WB:日陰 / 35.8mm
ISO100
GE-X5 / 約6.4MB / 4,320×3,240 / 1/70秒 / F6.4 / 0EV / WB:日陰 / 35.8mm
ISO200
GE-X5 / 約6.5MB / 4,320×3,240 / 1/125秒 / F6.4 / 0EV / WB:日陰 / 35.8mm
ISO400
GE-X5 / 約6.6MB / 4,320×3,240 / 1/240秒 / F6.4 / 0EV / WB:日陰 / 35.8mm
ISO800
GE-X5 / 約6.6MB / 4,320×3,240 / 1/500秒 / F6.4 / 0EV / WB:日陰 / 35.8mm
ISO1600
GE-X5 / 約6.3MB / 4,320×3,240 / 1/1,000秒 / F6.4 / 0EV / WB:日陰 / 35.8mm
ISO3200
GE-X5 / 約5.9MB / 4,320×3,240 / 1/2,000秒 / F6.4 / 0EV / WB:日陰 / 35.8mm

・逆光
GE-X5 / 約6.7MB / 3,240×4,320 / 1/680秒 / F5.5 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 11.2mmGE-X5 / 約2.3MB / 4,320×3,240 / 1/2,000秒 / F5.2 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 73.5mm

・シーンモード(夕日)
GE-X5 / 約6.0MB / 4,320×3,240 / 1/320秒 / F6.2 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 15.6mm

・動画

  • 動画作例のサムネイルをクリックすると、未編集の撮影動画をダウンロードが始まります。再生についてのお問い合わせは受けかねます。ご了承ください。
640×480 / 9.55MB / 30fps




本誌:折本幸治

2010/8/12 00:00