新製品レビュー
ソニー α1 II
「AIプロセッシングユニット」搭載で大幅に進化した撮影性能…オールジャンルに強い新フラッグシップモデル
2025年1月28日 07:00
2024年12月に発売されたソニー「α1 II」は、フルサイズの撮像センサーを搭載したEマウントのミラーレスカメラ。2021年3月に発売された「α1」の後継機、すなわち最新のフラッグシップモデルということになります。
「α1」発売以降も、「α7R V」や「α9 III」など数々の名機を世に送り出し、快進撃を続けるソニーの最新フラッグシップモデルだけに、その性能の高さに注目が集まるところです。
撮像センサーと画像処理エンジン
第2世代となった「α1 II」の撮像センサーは、約5,010万画素の35mmフルサイズセンサー。これは第1世代である「α1」と基本的に同じで、画像処理エンジンも「BIONZ XR」と、こちらも基本的には同じ仕様となっています。
撮像センサーも画像処理エンジンも基本的に同じということですので、得られる画像の解像感も基本的に同じと考えて良いでしょう。約5,010万画素という高画素で、大変に解像感にあふれた緻密な画が得られます。
撮像センサーと画像処理エンジンが基本的に同じということは、ISO感度設定の幅も同じということになり、「α1 II」の常用最高感度は「α1」と同じISO 32000になります。
さすがフルサイズセンサーだけに、常用最高感度であっても実用的な、十分な高感度性能をもった画質と言えるのではないでしょうか。
ちなみに、よく使うところの高感度であるISO 6400での画質は下の画像の通り。ノイズ感をほとんど気にする必要のない高画質で、条件さえ許すのであれば、動きモノの撮影であっても、このくらいの範囲に収めたいものだと思わせるだけの画質を保っていると思います。
しかし、「α1 II」のスゴイところは、基本的に同じ撮像センサーと画像処理エンジンであっても、さらにAI処理に特化した最新の「AIプロセッシングユニット」を加えて搭載しているところにあります。これが動体撮影を行う上で非常に重要なポイントで、最新世代と呼ぶにふさわしいフラッグシップモデルとしてのAF性能にも関連してきますので、後ほど詳しく見ていくこととしましょう。
サイズ感と操作性
「α1 II」の外形寸法は、幅が約136.1mm、高さが約96.9mm、奥行が約82.9mmで、質量が約743g(バッテリー、メモリーカード含む)となっています。実はこれ、質量こそ異なりますが、発売時期的にひとつ前の最新モデルになる、「α9 III」とまったく同じサイズです。
おおむね同じデザインを採用しているのが特徴となっている、ソニーのαシリーズではありますが、現実的には求められた要求に応じて微妙にデザインが異なっているのが実際のところ。ホールディング性に優れたグリップ形状と、丸みが加えられたことで押しやすくなったシャッターボタン周辺のデザインを採用しているのは「α9 III」からの継承。スピードモデルの性能をも引き継いだ、フラッグシップたる本モデルらしい進化といえるでしょう。
歴代の「α7シリーズ」「α9シリーズ」「α1シリーズ」の進化を蓄積しているだけあって、カメラ上部右側の操作性も向上しています。
「α1」の「露出補正ダイヤル」は露出補正以外にも好みの機能が割り当てられる「後ダイヤルR」に変更されるとともに、モードダイヤルの同軸下には、静止画と動画の切り換えに便利な「静止画/動画/S&Q切換ダイヤル」が搭載されています。さらに、使用頻度の高い「C1」と「C2」のカスタムボタンは、指がかりも良く背が高くなり、ファインダーを覗いたままのブラインド操作がやりやすくなっています。
「ドライブモードダイヤル」と「フォーカスモードダイヤル」を上下2段で独立装備するのは前モデル「α1」と同じ。ただし、「ドライブモードダイヤル」に、メニューやカスタムボタンから切り換えられる「*」モードが追加されています。あらかじめ「Fnメニュー」や「カスタムボタン」に「ドライブモード」を割り当てておいたうえで、「*」モードを選択すれば、右手だけで「ドライブモード」の切り換えが簡単にできます。文字で書くとややこしいのですが、やってみると意外に便利ですのでぜひ活用したいところですね。
背面モニターは、前モデル「α1」の3.0型から3.2型へと大型化しているうえに、ドット数は約144万ドットから約210万ドットへと大幅に精細感が向上しています。さらに「α1」では「上下チルト式」であったところ、横位置撮影でも縦位置撮影でも光軸を揃えることができる、ソニー独自の「4軸マルチアングル液晶モニター」が採用されています。
また、前モデル「α1」にはありませんでしたが、グリップを握ったままでも押しやすい位置のカスタムボタンとして、新たに「C5」が追加されています。カスタムボタンには、さまざまな好みの機能を割り当てることができますが、連写性能にも優れた「α1 II」ですので、連写ブーストなど動体撮影向きの機能を割り当てるのが良いかもしれません。
電子ビューファインダー(EVF)は、総ドット数944万ドットで、倍率約0.90倍、視野率100%。こちらは前モデル「α1」から変更はありません。もともとミラーレスカメラのなかでもトップクラスの高性能でしたので、不満を覚えることはまったくありません。フレームレートが通常の60fpsから、最高240fpsの間で切り替えられる、動体撮影に特化した高性能も継承されています。
また、「α1 II」には、標準のアイカップ「FDA-EP19」の他に、深型のアイカップ「FDA-EP21」が同梱されています。深型のアイカップは外部からの光を、より効果的に遮断できるため、視認性がさらに高くなります。好みに合わせてアイカップの形状も選ぶことができるという配慮は、最上級機ならではの心配りと言ったところでしょうか。
バッテリー「NP-FZ100」を、2個同時に急速充電可能なバッテリーチャージャー「BC-ZD1」が付属するのも、最新のフラッグシップモデルならでは。USB PD(USB Power Delivery)に対応しており、2個の「NP-FZ100」を約2時間半で充電できます。ただし、USBケーブルは同梱されていませんので、対応するUSB PDのケーブルを別途用意する必要があります。
AIプロセッシングユニットの搭載
被写体認識機能は前モデル「α1」から備えられていた機能ですが、「α1 II」が決定的に違うところは、ディープラーニングを含むAI処理を専門で受け持つ「AIプロセッシングユニット」が搭載されているところです。
これによって、「α1」では人物、鳥、動物の3種類でしかなかった認識対象が、オートを含めて、人物、動物/鳥、動物、鳥、昆虫、車/列車、飛行機と数多くの認識対象に拡大されました。今回は鳥をメインに撮りましたが、骨格や姿勢などの詳細に基づく人物の認識はもちろん、その他の認識対象でも精度が段違いに向上していることは、撮影していてすぐに実感できるほどです。
画面内における被写体の割合が小さくても、素早く認識して正確にピントを合わせに行ってくれます。カメラが判断するまでの時間を待つ必要はほとんどありません。
動く被写体であっても、正確に対象を補足し続けてくれるのは、「AIプロセッシングユニット」に加えて、「α1 II」がもともと持っているAF性能の瞬発力と精度が組み合わさってのことだと思います。
ただ、「α1 II」の連写速度は最高で約30コマ/秒(これは「α1」と同じ性能)ですので、スピード性能に特化してグローバルシャッターを搭載する「α9 III」(最大約120コマ/秒)と比べると、コマ間が空いてしまう分だけ、AF性能に見劣りを感じてしまうかも知れません。
しかし、連写速度を差し引いて考えれば、被写体認識機能に対する「α1 II」のAF性能は、「α9 III」に勝るとも劣らずと言ったところが実感でありました。これはつまり、トップクラスのAF性能をもっていると言うことにほかなりません。
プリ撮影機能の搭載と高画素の有効性
他社にちょっと出遅れてしまっていたけれども、2023年11月に発売された「α9 III」で初搭載されたのが、「プリ撮影」機能です。これはシャッター半押し状態においてバックグラウンドで映像を記録し続けており、シャッター全押しにすると、全押し状態から遡って最大1秒前までの画像を連写で記録するという機能。引き続いて本モデル「α1 II」でも搭載されました。と言うより、なぜ前モデル「α1」にはなかったのかと思えるほどの、優れた機能です。
この機能を使えば、「鳥が飛び立つ瞬間」といった、人間の反応速度と忍耐では捉えることの難しい「一瞬」を、比較的簡単に捉えることができるようになります。
「α1 II」でしたら、この瞬間にも前述の「AIプロセッシングユニット」が効果を発揮してくれますので、カワセミの飛翔のような、非常に素早い小鳥の動きであっても正確にAFを合わせつづけてくれます。
「プリ撮影」機能が役立つのは、なにも三脚でカメラを固定している場合だけでなく、被写体を追いながらシャッター半押し状態を続けている場合でも有効です。ファインダーあるいはモニターで被写体を追っていて、「あっいま欲しい瞬間だった!」と思ったところでシャッターを全押しすれば、ちゃんとその前の1秒以内が連写で記録されます。
「α1 II」のすごいところは、これらの凄まじい瞬間を、約5,010万画素の高画素で記録してくれているところ。トリミング耐性がとても高く、APS-Cサイズで撮影しても、あるいはAPS-Cサイズにトリミングしても、約2,100万画素が確保されます。
場合によっては、1,000万画素程度までトリミングしても、SNSと言ったネット上での掲載や、ある程度までのプリントでしたら十分な解像感を保ってくれると思います。前モデル「α1」から、高画素であっても高い高感度性能を引き継いでいることも強みと言えるでしょう。
まとめ
「α7R V」以降のモデルに搭載された「AIプロセッシングユニット」や、「α9 III」で向上した優れた操作系などが惜しまず継承されたことで、最新のαフラッグシップと呼ぶに相応しい性能を手に入れた「α1 II」です。
最大の長所は、最新にしてトップクラスの動体撮影性能をもちながらも、約5,010万画素の高画素を維持しているところではないかと思います。風景撮影や建築撮影など、緻密で繊細な描写が必要とされる場合でも満足な能力がありますし、連写速度こそ「α9 III」に譲るものの、動きモノの撮影では現実的に強く要求されるトリミングに対する十分な耐性があります。
かなりの性能進化を果たしていますので、さぞかしお値段も跳ね上がっているのかと思いきや、意外にも「α1」と大差のない価格で販売してくれています。決して安くはありませんが、なんだかソニーの良心が感じられる本モデル。あらゆるジャンルの撮影で強力な相棒となってくれることは間違いありません。