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スマホライターが「Insta360 Luna Ultra」を買った理由
ジンバルカメラならではのメリットとは?
2026年6月30日 07:00
アクションカメラで定評のあるInsta360が、新たにジンバルカメラのジャンルに参入し、「Insta360 Luna Ultra」の販売を開始した。1型センサーを搭載したメインカメラと望遠カメラの“2眼”を搭載したジンバルカメラだが、スペックだけ見ると、まるでスマートフォンのカメラのようにも見える。
これまでInsta360が開発していたアクションカメラは、たいてい超広角レンズを搭載してコンパクトで堅牢性が高く、強力な手ブレ補正(電子式)で自転車やバイク、ボートなどといった過酷な現場でも撮影できるというもの。その点ではスマートフォンと棲み分けられていた。それに対して今回のジンバルカメラは、スマートフォンとの棲み分けが難しい製品ではある。
スマートフォンカメラとジンバルカメラ。筆者がこの製品を購入した理由を紹介しつつ、この2つの製品の棲み分けを考えてみたい。
コンパクトで強力な手ブレ補正
という前置きをしたものの、基本的にはニーズに応じて使い分ける、というのが身も蓋もない回答になる。
一般的にスマートフォンのカメラは、多様な使い方ができるとされている。モバイル通信機能もあり、撮影した写真や動画を大画面ですぐに編集してそのまま送信できるというのは他のカメラにはない大きな強みだ。最近は複数のカメラを搭載して幅広い焦点距離をカバー。特に超広角から100mm強の画角まで1台でコンパクトに対応できるのはメリットだ。
画質面でも1型センサーを搭載したハイエンドスマートフォンを中心に高画質化が著しい。センサーの複数のピクセルを大きな1つのピクセルとして扱うピクセルビニングによってダイナミックレンジを含めて画質が向上しており、通常の用途であれば写真も動画もスマホ1台で撮影できるようになった。特に手ブレ補正機能も最近はかなり強化されている。
それに対してジンバルカメラ。そもそもジンバルとは、電動式のスタビライザーであり、カメラを設置してモーターによって揺れを制御して手ブレを防ぐことに特化した機器だ。電動という点では比較的新しく、2010年代頃に一般化していった。今でも連綿と続くDJIのカメラ用ジンバル「Ronin」が登場したのは2014年。スマートフォン用のジンバルでは、例えばDJIは2016年に「Osmo Mobile」を発売している。そしてジンバルカメラとして「DJI Osmo Pocket」が発売されたのは2018年だった。
ジンバルは、モーターを動かすことで手ブレを押さえるため、当然、手ブレには強い。当初は映画業界向けだった通り、特に映像において強力で、上下左右、ピッチ、ヨーのいずれのブレにも3軸のジンバルであれば補正してくれるので安定性が高い。Luna Ultraではさらに電子式手ブレ補正も併用しており、写真であっても、望遠カメラ(60mm相当)でシャッタースピード1/2秒でもブレずに撮影できる。
手ブレ補正はアクションカメラが強い分野だったが、最近はスマートフォンもかなり強力になっている。多くは光学式手ブレ補正と電子式手ブレ補正の組み合わせだが、スマートフォンはより大胆にセンサーの中央部分を使って撮影し、余白を補正領域として使っている。スマートフォンによってはさらに余白を大きくすることで、激しいモータースポーツだけでなく、端末を1回転させても水平が維持できる、といったようなことまでできるようになっている。
このレベルになると、ジンバルカメラよりも手ブレ補正性能は高い。もともとジンバルカメラは、モーターで手ブレを補正するため、モーターの可動範囲を超えるようなブレは補正できない。モーターの補正速度があるので、急激なブレにも対応できない。電子式手ブレ補正があるとはいえLuna Ultraの主役はあくまでジンバルで、その可動域が補正範囲なので、急激な動きや1回転させるといったブレ補正には非対応だ。
つまり、相対的に比較すると、スマートフォンカメラは「弱い光学式手ブレ補正と強い電子式手ブレ補正」なのに対し、ジンバルカメラは「強い機械式手ブレ補正と弱い電子式手ブレ補正」である、と言ってもいいかもしれない。これが、用途の違いから来る性能差というわけだ。
“非クロップ”によるブレ補正の優位性
機械的な構造が露出しているため、衝撃にも弱い。もし、自転車やサーフィンなどといったアクティブなシーンで使いたいなら、アクションカメラまたはスマートフォンの方が向いている。ただ、こうしたシーンに遭遇することがあまりないのであれば、アクションカメラの必要性は薄い。
それに対して、散歩や観光の街歩きぐらいであれば、ジンバルカメラの方が便利。ジンバルカメラの場合は手ブレ補正用にセンサーをクロップしていないからだ。Luna Ultraの場合、電子式手ブレ補正用に余白が確保されているはずだが、静止画・動画で同じ画角なので、「動画モードにすると急に画角が狭くなる」ということがない。
逆にスマートフォンカメラは動画の手ブレ補正のためにクロップをしており、写真撮影時よりも画角が狭くなる。さらに強力な手ブレ補正を利用すると、いっそう画角は狭くなり、望遠カメラや超広角カメラが使えなくなるなどの制約も出てくる。
ジンバルカメラでは、広角も望遠でもレンズを問わずに、常に最も強力な手ブレ補正が利用できる。スマートフォンのように撮影のたびに「ここは超強力な手ブレで……でも広い画角で撮りたいから……」といったことを考える必要がなく、シンプルに撮影できるのがジンバルカメラだ。
自撮りでも強力に撮影できる点も見逃せない。Luna Ultraの場合、スティックボタンを3回押すとジンバルが回転してカメラが自分の方を向く。そのままメインカメラで自撮りができるのは、他にはないメリットだ。スマートフォンのインカメラはメインカメラよりも画質や手ブレ補正などの機能が劣り、メインカメラで自撮りをしようとすると画面が見えなくなる。
それに比べれば、特に悩むことなく、自撮りも風景撮りも強力な手ブレ補正をしながらメインカメラで撮影できるのがジンバルカメラの強みだ。
望遠でも強力な手ブレ補正
ジンバルカメラはこれまで、基本的にはカメラが1つで画角は固定だった。一部デジタルズームに対応した機種もあるが、複数カメラを搭載するスマートフォンカメラのようにはいかない。
Luna Ultraは、1型センサーのメインカメラと1/1.3型センサーを搭載した望遠カメラの2つを搭載している。35mm判換算の焦点距離はそれぞれ20mmと60mm、デジタルズームでは最大12倍(240mm相当)までをカバーする。これは、今までのアクションカメラやジンバルカメラにはなかったものだ。
これによって今までの弱点だったズーム性能が改善された。今まで、ズームしたいときはスマートフォンを使う必要があったが、Luna Ultraなら1台で完結するため、さらに実用度が上がったと言える。
12倍ズームしても手持ちでブレの少ない撮影ができるというのも重要だ。スマートフォンもデジタルズームで強力な手ブレ補正が使えるが、動画になるとなかなか厳しい。その点では、機械式で望遠でも安定して手ブレ補正ができるジンバルカメラの強みが発揮されている。
とはいえ、カメラが2つになって重くなった分、ジンバルも大きくなるため、従来のジンバルカメラよりは大きく重くなっている。個人的にズーム倍率を重視したが、「ここまでズームはいらないし、コンパクトな方がいい」という意見もあるだろうから、DJIのように今までのノーマル版の「Osmo Pocket 4」と、複数カメラの上位モデル「Osmo Pocket 4P」を用意するのが正しい。
スマートフォン用ジンバルとの差は?
ここまで来て、「スマートフォン用ジンバルでいいのでは?」という意見もあるだろう。スマートフォン用ジンバルであれば、スマートフォンカメラ側の手ブレ補正は最小限でいいし、高倍率時の手ブレ補正も安定する。ただ、ジンバルは載せられるカメラのサイズに応じて本体の大きさが変わってくる。
レンズを合わせれば1kgを超えることもあるカメラ向けは当然かなりの大きさになるが、スマートフォン自体もハイエンド機種だと200gを超えるものも多く、ジンバルもそれなりのサイズ感になる。それに対してジンバルカメラはカメラ部だけでは小さいので、全体として小型軽量なサイズとなっている。デュアルカメラのLuna Ultraは、従来のジンバルカメラよりも大型だが、それでもスマートフォン用ジンバルに比べれば小さい。
さらに撮影の手間もある。スマートフォン用ジンバルは大きめのサイズのボディを取り出してスマートフォンを装着してから撮影を始める必要がある。あらかじめ調整も必要だし、ジンバルのバッテリーも必要になる。ジンバルカメラなら取り出して即撮影ができる。特にLuna Ultraはディスプレイを縦力横位置に軽く回転させるだけで電源が入り、設定によってはそのまま撮影を開始できるため撮影を開始しやすい。
もちろん、スマートフォン単体が一番手軽なのは間違いない。それでも、スマートフォン単独では自立しないのに対して、自立して撮影できる点、カメラ部が動いて人を追尾してくれる点など、固定して撮影する際に便利なのはジンバルカメラだ。
ジンバルカメラは、手ブレを補正するだけでなくモーターでカメラ部を動かすことができるのも特徴だ。前述の自撮り用に回転するだけでなく、スティックボタンで上下左右に動かすこともできるし、カメラが自動で動いて複数枚の写真を撮って合成するパノラマ撮影機能も備えている。
2億画素の180度パノラマに加え、360度の全天球画像も撮影可能。スマートフォンカメラを手動で動かすパノラマに比べて、自動で撮影してくれるため繋がりも自然だし簡単。顔を追尾する機能を使えば、ジンバルの可動範囲内であれば自由に動き回っても、常に顔を追跡してくれるというのも便利な機能だ。このあたりもスマートフォン単体では撮影できない。
ライカの協力で実現した高画質
Luna Ultraの画質面はスマートフォンに近い。1型と1/1.3型と、スマートフォンとしては大型のセンサーを採用。いずれもピクセルビニングによって画質を改善しており、特に夜景撮影に強い印象で、動画も静止画もクリアに夜景を撮影できる。当然、夜景撮影時の手ブレにも強い。
1型センサーで、さらにライカとの協業ということもあってか、昼間の画質も悪くない。静止画画質は、スマートフォンを含めてもトップクラス、とまでは言えない印象だが、必要十分なレベルだろう。
写真の解像度は最大37MP(7,040×5,288)で、標準の写真解像度はピクセルビニングにより9MP(3,520×2,644)になる。1型センサーの画素数だと50MPが多いので、その分が電子式手ブレ補正に使われているのかもしれない。
AFにも対応しており、画面タッチした場所にピント合わせが行われるほか、人の顔や動物などを検出して追尾する機能も搭載。メインカメラで9cm、望遠カメラで15cmまで寄れて、デジタルズームも併用すればマクロ性能も高いので、テーブルフォトにも向いていて万能選手だ。
ディスプレイ+コントローラー部分が取り外せてリモコンにもなる点も便利だし、前後のマイクも集音性能は悪くない。リモコンにはマイクが付いているので、遠隔からも音声を録音できる。
Insta360製のワイヤレスマイクだけでなく、他社製のBluetoothマイクやUSBに送信機を装着するタイプのワイヤレスマイクが使えるので、しっかりとした音声記録もできる。もちろんスマートフォンに接続して遠隔での撮影やデータの転送などもできる。
難点と言えば、ジンバルという機構がむき出しの関係上、防塵防水性能がないという点。さらに、撮影後の処理時間が長く、特に静止画の連続撮影ができない点が気になった。特に後者は撮り直しをしようにも数秒待つ必要があり、不便な部分だ。今後のアップデートで改善ができそうな部分なので期待したいところではある。
「動画をメインに静止画もそれなりに撮影する人」であり、散歩や観光などでも使いやすい。近距離にピント合わせがしやすい「商品説明」モードもあって、YouTuberにも最適な製品の1つだろう。またDJIもデュアルカメラの「Osmo Pocket 4P」を発売し、ジンバルカメラの選択肢が増えることになる。








