さて、今回は「OLYMPUS PEN E-P3」に似合いそうな望遠ズームを取り上げようと思う。マイクロフォーサーズの望遠系のレンズで、焦点距離が100mmを越えるのは現時点で7本。オリンパスでは高倍率の「M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6」のほか、望遠ズームは「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 R」、「M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7」の3本だ。カタログ上は“R”なしの「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6」もあるが、大手量販店には在庫はないようである。
一方、パナソニックからは、高倍率の「LUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S.」、パワーズームの「LUMIX G X VARIO PZ 45-175mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.」のほか「LUMIX G VARIO 45-200mm F4-5.6 MEGA O.I.S.」、「LUMIX G VARIO 100-300mm F4-5.6 MEGA O.I.S.」の4本が発売されている。あと、トキナーとケンコーから300mmと400mmのミラーレンズが出ているが、焦点距離は長すぎるしAFが使えないもの面倒だし、ということでスルーである。
もっとも、レンズ交換式のノンレフレックス機としては重めの部類に入るE-P3だが、一眼レフに比べればぐぐっと軽量だ。なので、大きくて重たいレンズはパスしたい。望遠ならなんでもいいとかじゃなくて、せめてボディよりは軽いのがいいと思っている。となると、候補となるのは純正のM.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6(260g)とM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 R(190g)、パナソニックのLUMIX G X VARIO PZ 45-175mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.の3本だ。
■M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6
高倍率ズームのいいところは、なんといっても広角から望遠まで1本でカバーできること。標準ズームと望遠ズームの組み合わせなら、いちいちレンズ交換しないといけないが、高倍率ズームならズームリングを回すだけでOK。とってもらくちんなのである。だからスナップ撮影なんかには重宝するのである。特にこのレンズの場合、10倍超のズームとは思えないほどに小型軽量、携帯性抜群なので、とても魅力的な存在なのだ。
M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6。発売は2010年5月 |
広角端は少しタル型の歪曲収差が目立つが、わりと素直な形なので画像処理ソフトでの補正は難しくない。解像力は10倍超のズームとしては良好だと思う。画面四隅でも大きく崩れるようなことはない。望遠端の至近だけは1段ぐらい絞ったほうがいいように思うが、中~遠距離なら絞り開放から安心して使える。この3本の中ではもっとも最大撮影倍率が高いのもうれしいポイントだ。
相応にお安くない(量販店で7万3,900円前後)のと、フードが別売(しかも4,200円もするのだ)なのが引っかかる点ではあるが、予算に問題がないなら標準ズームをパスしてこちらを選ぶのもいいと思う。
■M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 R
ダブルズームキットなら、実質2万円ぐらいで手に入れられるレンズだが、E-P3には設定がない。それでも、大手量販店で買えば3万5,500円前後。還元されるポイントの分で別売のフードがゲットできる。大きさはM.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6とまったく同じで、重さは70g軽い190g。軽快さならばっちりだ。
M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 R。発売は2011年7月 |
歪曲収差はほとんど気にならないし、画質面でも不満はない。望遠端の四隅は若干だがこちらのほうがいいように思う。安価なレンズでも十分に高い描写能力を備えているのはマイクロフォーサーズのいいところだ。最短撮影倍率は0.16倍とちょっと低くはなるものの、めいっぱい寄っても絞り開放から使えるだけの解像感がある。
標準ズームの「M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R」と同様、デザインは悪くないのに素材感のせいなのか、少しばかりチープな印象があるのと、マウントがプラスティックなのは好きになれない点。低予算派にはうれしいレンズなのだが、ダブルズームキットがあればというのもあって、いまいち乗り気になれないレンズだったりする。
■LUMIX G X VARIO PZ 45-175mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.
パナソニックの望遠ズームは重めのモデルがほとんどだが、このレンズだけは不思議と軽い。望遠端がちょっと長めの175mmで、長さはオリンパスの2本より7mm大きいだけ。重さは210gだから携帯性の面では文句なしである。
LUMIX G X VARIO PZ 45-175mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.。発売は2011年10月 |
電動ズーム機能を内蔵しているものの、幅広にズームリングを備えていて、切り替えなしで使い分けられる。電動ズームは動画撮影時にはありがたい反面、思い通りの画角で止めるのが案外に難しいから、手動ズームが使いやすいのはポイントが高い。ただし、レンズ側の手ブレ補正機構はオンオフスイッチがなくて、E-P3との組み合わせでは作動しないっぽい。まあ、ボディ内手ブレ補正機構があるからいいけれど。
画質も良好。広角端、望遠端ともに周辺部まできっちり解像しているし、高輝度のエッジ部分が崩れにくい感じがするのも好印象。このあたりはコーティングのよさなのかもしれない。お値段も3万8,300円前後とほどほど。オリンパスのM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 Rより少し高いが、こちらはフードが付属しているので実質的には大差ない。
■まとめ
個人的にはファインダーレスのカメラで300mm相当とかそれ以上の望遠はしんどいのではないかと思っている。ファインダー付きのカメラであれば、カメラを顔で支えられるからブレを抑えやすいのに対して、ファインダーレスのカメラは両手しかサポートがない。このシャッター速度ならまだ粘れるはず、と思って撮ったカットがことごとく手ブレしてたりすると気が滅入るのである。老眼化が進みつつある筆者の場合、モニターを見るには両手を伸ばして構えることになるので、さらにブレやすかったりする(なので、状況にもよるのだけれど、基本的にはメガネを外してモニターを見るようにしているのだ)。やっぱしEVF買ったほうがいいかなぁ。
と言うのはさておき、3本からどれを選ぶかがなかなかに難しい。M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6は、高倍率の便利さは魅力だが、お値段は安くない。M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 Rは軽くて安いのはうれしい反面、プラスティックマウントなのが惹かれない点だ。で、あれこれ考えていくと、LUMIX G X VARIO PZ 45-175mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.がよさそうな気がするのだが、レンズ内手ブレ補正が付いているのに使えないもったいなさが引っかかるのと、デザインのテイストがちょっと好みと違うこともある。まあ、そのあたりに目をつぶれば、という感じではあるのだけれど、望遠よりもEVFのほうが先かも、とかもあって、やっぱり悩ましいのである。
■実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6
E-P3 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6 / 約5.3MB / 2,688×4,032 / 1/200秒 / F5.5 / -0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 90mm |
・M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 R
E-P3 / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 R / 約6MB / 2,688×4,032 / 1/125秒 / F7 / 0EV / ISO200 / プログラムAE / WB:晴天 / 150mm |
・LUMIX G X VARIO PZ 45-175mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.
E-P3 / LUMIX G X VARIO PZ 45-175mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S. / 約6.5MB / 2,688×4,032 / 3秒 / F8 / -0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 45mm |
2012/7/5 00:00